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[ No.701〜800 ]

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実際にあった事件や犯罪に関する新刊本・注目本などを週単位で紹介しています(更新は主に水曜日)。

下記の
★の日付は更新日で、その日付は下(↓)が古く、上(↑)が新しい

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★2023.4.12(No.800) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『歌舞伎町アンダーグラウンド』
(駒草出版/単行本/本橋信宏/2023.4)


2001年9月1日未明、44人もの死者を出した明星56ビル火災は、歌舞伎町最大の悲劇だった。
このビルにまつわる人物たちが交錯したことが、本書を書き下ろすきっかけにもなった。

悲劇を知る人物たちを追いかける……それは東洋一の殷賑地帯、新宿歌舞伎町を追う旅でもあった!

戦後、焼け野原の街を復興させるべく、地元有志が歌舞伎劇場の建設を目指したものの、主役の歌舞伎劇場がなかなかやってこない。街は主役不在のまま歴史を刻みはじめる。やがて、未完に終わった歌舞伎劇場の怨念か、歌舞伎町は女と男がかぶく街になった。

歌舞伎町は、靖国通りを四角形の下辺とすると、上辺は職安通り、向かって左側は西武新宿駅前通り、右側は明治通りになる。
四角いエリアの真ん中を昭和初期に暗渠にして通ったのが花道通りだ。
花道通りは歌舞伎町の中央を横切るまさに花道であり、この道から靖国通りまでを歌舞伎町一丁目、反対側の職安通りまでを歌舞伎町二丁目と分けている。
歌舞伎町一丁目はJR新宿駅から流れてくる人々を吸い込む、いわば表の歌舞伎町であり、ひらけたエリアである。都内最大級のシネコン「TOHOシネマズ新宿」をはじめ、超高層ホテル「ホテルグレイスリー新宿」が入るビルとして人気を集め、最近ではこの建物の足下に蝟集し、倦怠感をちらつかせる若者たちをトー横キッズと呼んでいる。
一方、歌舞伎町二丁目はディープ歌舞伎町とでもいうべきエリアである。

このさほど広くない歌舞伎町には、人間の欲望を満たす施設がすべてそろっている。
本書に登場する男女によって、今、歌舞伎町は脈動をはじめることになる。
そして、あなたの知らなかった歌舞伎町の全貌がここに明らかになっていく。

著者・本橋信宏・・・1956年埼玉県所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。集合写真で「一人おいて」と、おかれてしまった人物、忘れ去られた英雄を追いつづける。執筆内容はノンフィクション・小説・エッセイ・評論。主な著書に『裏本時代』『AV時代』など。
★2023.4.5(No.799) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『懲役ぶっちゃけ話 私が見た「塀の中」の極道たち』
(清談社Publico/単行本/竹垣悟/2023.5)

「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)、
「情報7DAYSニュースキャスター」(TBSテレビ系)、
「サンデージャポン」(TBSテレビ系)など続々出演、話題沸騰!

竹中正久、中野太郎など「伝説の侠客」たちの服役中の姿、そして組員の「獄中死」の真相とは?

「逮捕、裁判、刑務所…… 誰も書けなかった“リアル”が、ここにある。」
(元山口組顧問弁護士・山之内幸夫)

つねに死と隣り合わせで生きるやくざには、避けては通れない場所が三つあります。
一つ目は「病院」、二つ目が「警察と裁判所」、そして最後に「刑務所」です。振り返ると、山口組の歴代組長をはじめ、天下に名だたる親分は例外なく懲役を経験しています。名前を並べるのも恐縮ですが、私もそれなりの懲役を経験しております。そんな私の『懲役ぶっちゃけ話』を、ぜひともご笑覧ください。――「はじめに」より

著者・竹垣悟・・・1951年生まれ、兵庫県姫路市出身。義竜会会長、初代竹中組組長秘書、のちに竹中武組長の下で若頭補佐、中野会若頭補佐、古川組舎弟頭補佐を歴任。2005年に二代目古川組の盃を拒否して破門処分となり、カタギとなる。現在は暴力団員の更生を支援するNPO法人「五仁會」代表。2016年の山口組分裂騒動ではヤクザに精通した第一人者として、「新・情報7DAYSニュースキャスター」(TBSテレビ系)などテレビ各局の報道番組にコメントを寄せ、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)へのゲスト出演で話題となる。2019年の神戸山口組幹部襲撃事件では「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ系)に緊急出演し、そのくわしい解説が反響を呼んだ。2021年にYouTubeに開設した「竹垣悟チャンネル」も好評を博している。著書に『極道ぶっちゃけ話 「三つの山口組」と私』 / 『若頭の社会復帰と三つの山口組の行方 中野太郎の激震から七代目の野望まで』など。

【目次】
第1章 極道と懲役と私
第2章 人生で必要なことは、すべて獄中で学んだ
第3章 塀の中から見た山一抗争
第4章 裁判官、弁護士をめぐる攻防戦
第5章 警察官、刑務官というお仕事
第6章 あるやくざの獄中死
第7章 出所後の理想と現実
★2023.3.29(No.798) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『赤ちゃんの虐待えん罪』
(現代人文社/単行本/秋田真志ほか/2023.4)

日本で虐待疑惑があるとSBS/AHT仮説に基づいて親子分離や捜査が進められるが、海外ではその仮説には問題があるとされ、多くの人が冤罪被害に遭っている。SBS/AHT仮説に基づく虐待疑惑には慎重に対応すべきであり、根本的に見直す必要がある。本書では、この問題を明らかにし、誤った親子分離や訴追を防ぐための対策を考える。

本ブックレット推薦のことば
SBS自動診断による〈えん罪〉の撲滅を期待/青木信彦

はじめに
パート1 Q&A SBS/AHTえん罪って何?
 Q1 SBS/AHTえん罪という言葉をはじめて聞くのですが、どういうことでしょうか?
 Q2 SBS/AHTはどこが発祥なのでしょうか?
 Q3 なぜ、SBS/AHTえん罪は起きるのですか?
 Q4 SBS/AHTが疑われた事件で、無罪判決を言い渡されたものはありますか?
 Q5 SBS/AHTをめぐる最近の議論状況はどうなっていますか?
 Q6 SBS/AHTによる子ども虐待が疑われると、どうなるのでしょうか?
 Q7 病院は、SBS/AHTによる虐待が疑われる場合、どこに通告するのですか?
 Q8 虐待を疑った児童相談所は、養育者と子どもに対して何をするのですか?
 Q9 SBS/AHTの疑いで一時保護をされた場合、養育者と子どもはどうなるのでしょうか?
 Q10 通報を受けた警察は、被疑者となった養育者に対して何をするのですか? どう対応すべきですか?
 Q11 SBS/AHTの事件では、よく医学鑑定が使われていると聞きますが、どういう問題がありますか?
 Q12 SBS/AHT仮説の問題点について教えてください
 Q13 SBS/AHT仮説の循環論法とはどういうことでしょうか?

パート2 SBS/AHTえん罪 ケース紹介・当事者の思い
ケース1 山内事件
 1 SBS理論に警鐘を鳴らした無罪判決/我妻路人
 2 [当事者の思い]/山内泰子
ケース2 河村事件
 1 低位落下による発症可能性が認められた逆転無罪/秋田真志
 2 [当事者の思い]/河村透子(仮名)
ケース3 永岡事件
 1 ソファからの落下とSBS──岐阜地裁・名古屋高裁の重要な指摘/秋田真志
 2 [当事者の思い]/永岡麻美(仮名)
ケース4 小田事件
 1 事実関係を冷静に分析しなかった警察・検察/村井宏彰
 2 [当事者の思い]/小田雅矢(仮名)
ケース5 市谷事件
 1 「三徴候=激しい揺さぶり」という決めつけがかたちを変えて起きたえん罪/川上博之
 2 [当事者の思い]/市谷あかり(仮名)
ケース6 菅家事件
 1 つかまり立ちからの転倒を虐待と誤認され逮捕された事案/陳愛
 2 [当事者の思い]/菅家英昭
ケース7 田中事件
 1 事故による親子分離・面会制限の違法性が認められた事例/秋田真志
 2 [当事者の思い]/田中ちえ(仮名)

パート3 SBS/AHTえん罪の原因
 1 SBS/AHT虐待えん罪と捜査・裁判の問題点/宇野裕明
 2 医学鑑定と刑事手続/徳永光

パート4 SBS/AHTと親子分離
 1 はじめに──司法審査導入に向けて/古川原明子
 2 司法審査と親子の権利/山口亮子
 3 親子分離の実情と問題点/三村雅一

参考資料一覧
SBS検証プロジェクトの歩み
あとがき
★2023.3.22(No.797) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『我が身を守る法律知識』
(講談社/現代新書/瀬木比呂志/2023.3)


法的紛争・危険を防止するためには、個別的、断片的な知識・情報も必要ですが、より重要なのは、それらの基盤になる法的なものの考え方や感覚を身につけることです。それが身についていさえすれば、個別・断片的な知識・情報を超えた範囲の事柄についても、おおむね適切に対処することができるからです。

本書は、普通の日本人が一生の間に出あう可能性のある各分野の法的紛争を網羅し、そうした紛争に巻き込まれないための予防法、そして万一トラブルが起きたときの対処法となる法律知識・情報・基本的な法律論を、わかりやすく、正確に、かつ興味深く読めるようなかたちでまとめ上げた、コンパクトながら、実用性と密度の高い一冊です。著者は、33年にわたり膨大な民事訴訟を手がけてきた元裁判官・現大学教授で、民事訴訟法の権威でもあります。

具体的には、まず、第2章で、遭遇することが最も多く、結果も重大なものとなりがちな交通事故関係につき、損害賠償の実際と過失相殺、危険性の高い行為、保険の内容、事故対応、保険会社との交渉、訴訟等の事柄を、基本的な前提知識をも確認しつつ論じます。

第3章では、民事訴訟の数が非常に多い「不動産関連紛争」一般につき、使用貸借と賃貸借、土地・建物購入、建物新築と欠陥住宅紛争、競売物件、隣人間紛争等の各側面から説きます。

第4章では、痴漢冤罪を含め、刑事事件関係全般について、若者や子どもをも含めた普通の市民が注意しておくべき事項について述べます。

第5章では、親族法の領域につき、離婚事由や手続、これに伴う各種の給付・親権者指定、夫婦間の子の奪い合い、国際結婚、不貞慰謝料等の事柄を語ります。

第6章では、近年非常に紛争の増えている相続法の領域につき、相続人と相続分、相続放棄、各種の遺言、遺産分割、遺留分侵害額請求、相続税対策の落とし穴等の事柄を、いずれも、できる限り詳しく、わかりやすく、また、正確に解説します。ことに第6章は本書の大きな目玉であり、具体的な例についてのかなり突っ込んだ記述をも含みます。相続法は近年大改正された分野の一つであり、また、読者にとっての必要性も高いと思われるからです。

第7章と第8章では、それ以外の多様な紛争・危険防止策について、前者では、雇用、投資、保証といった経済取引の、後者では、医療、日常事故、いじめ、海外旅行、高齢者をねらった犯罪といった日常生活上の紛争・危険の各観点からくくった上で、重要と思われる事項をピックアップしてゆきます。

著者・瀬木比呂志・・・1954年、名古屋市生まれ。東京大学法学部卒業。1979年から裁判官。2012年、明治大学教授に転身、専門は民事訴訟法・法社会学。在米研究2回。著書に『絶望の裁判所』『ニッポンの裁判』(第2回城山三郎賞受賞)など。
★2023.3.15(No.796) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』
(講談社+α新書/伊藤喜之/2023.3)

「どこまで書く気やねん」(ガーシー)

社会に混乱と破壊をもたらしながら真の悪を斬る「闇の仕事人」か、あるいはただの時代の「あぶく」として消え去るのか――

ガーシーとその黒幕、そして相棒たち。日本に遺恨を持つ「手負いの者たち」の正体と本音とは。
日本の政治、経済、芸能、メディアの歪がつくりあげた爆弾男……彼らの本当の狙いとは何か、当事者本人が次々と実名で語る!

目次
すべてを失い、ドバイにやってきた男
ガーシーとの出会い
秘密のドバイ配信
急展開の示談成立
幻のインタビュー 「自分は悪党」
参院選出馬
FC2創業者
朝日新聞の事なかれ主義
元ネオヒルズ族
ガーシー議員の誕生
黒幕A
元大阪府警の動画制作者
元バンドマンの議員秘書
ワンピースと水滸伝 「悪党」と「正義」
嵐のバースデー
モーニングルーティン
年商30億の億
王族をつなぐ元赤軍派
痛恨のドバイ総領事館事件
近親者の証言
★2023.3.8(No.795) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『学ぶことを選んだ少年たち 非行からの離脱へたどる道のり』
(晃洋書房/単行本/大江將貴/2023.2)

矯正施設を退所後に再び学ぶことを選択した少年たちへの追跡的なインタビュー調査で得られた語りをもとに非行からの離脱過程を明らかにする。

著者・大江將貴・・・2022年、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了 博士(教育学)。現在、京都大学大学院教育学研究科研究員。専門・教育社会学・犯罪社会学。「非行少年の『復学』のプロセス――更生保護施設在籍者へのインタビュー調査をもとにして」『司法福祉学研究』19号(2019年)/「少年院の経験と進路希望の形成――高校進学希望者に着目して」『現代の社会病理』36号(2021年)。

目次

序章 問題の背景
1 少年院出院者の現状
2 本書にかかわる定義
3 本書の目的と独自性
4 本書の構成

第1章 先行研究の検討と本書のねらい
1 犯罪・非行からの離脱に関する研究
2 学校と非行に関する研究
3 課題集中校に関する研究
4 若者の移行に関する研究
5 先行研究の課題と本書のねらい

第2章 調査の概要
1 更生保護施設の概略
2 A更生保護施設の特性と対象としての妥当性
3 インタビュー調査の概要

第3章 矯正施設入所以前の学校経験
1 問題設定
2 学校内における人間関係にかかわるトラブル
3 学校に対する肯定的な意味づけ
4 まとめと考察

第4章 少年院の経験と進路希望の形成―教育機関への移行を希望する少年に着目して―
1 問題設定
2 少年院入院に至るまでの生活と少年院の経験
3 少年院内における進路希望の形成
4 まとめと考察

第5章 教育機関への移行と非行からの離脱
1 問題設定
2 教育機関へ移行するまでの過程
3 教育機関移行後における修学の継続
4 修学の継続に伴う困難
5 まとめと考察

終章 結論と今後の課題
1 本書のまとめ
2 学問的示唆
3 実践的示唆
4 今後の課題と展望

補論 少年院における処遇と出院時の困難―教科指導に着目して―
1 問題設定
2 事例の収集とインタビュー調査の概要
3 少年院における処遇と出院に伴う困難
4 まとめと考察
文献
あとがき
★2023.3.1(No.794) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『公安警察』
(祥伝社新書/古野まほろ/2023.3)


日本国家の治安維持を担う、密やかで特殊な警察。


「非公然のスパイ組織」「国家の諜報機関」「陰謀結社」「特高の末裔」……
一般社会が「公安警察」に求めているリアルは、エンターテインメントとして割り切っている方も多いが、事実とはなはだ乖離した現代の神話、あるいは怪談話である――。かつて中の人として、約20年警察官僚を勤め上げた著者はこう述べる。盗聴、潜入、証拠のでっちあげ、ハニートラップなど、国家的治安維持のためなら何でもアリ!このようにとらえられる彼らの素顔は、明解な法令と厳重な秘密の内側にあった。生態、内情、真の目的とは?
元警察官僚の本格ミステリ作家がその実像を浮き彫りにする。世の暴露本には記されてこなかったファクトのすべて。

著者・古野まほろ・・・東京大学法学部卒。警察庁旧T種(現・総合職)警察官として交番、警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務の後、警察大学校主任教授にて退官。複数の都府県と交通部門以外の全部門を経験。主たる専門は、公安警察・地域警察・保安警察。

●目次

まえがき――公安警察と私

第1章 「公安」概論
「公安」とは何か?/状態としての「公安」の大きな特徴/組織としての「公安」

第2章 公安警察のリアリティライン
公安警察の規模と予算/公安警察の目的と性格
公安警察官という生き方/「いわゆる」協力者工作/……

第3章 公安警察の組織
警備警察=公安警察/警察庁警備局の複雑さ
どのセクションが〈公安警察〉かを知るには/国の公安警察と都道府県の公安警察/……

第4章 とある公安警察官像のリアリティライン

日本一有名な公安警察官/その職位・階級・身上――超エリートか?
警察庁警察官と警視庁警察官の組み合わせ?/「潜入捜査」「盗聴」「協力者運営」の実態
「ゼロ」、その真実/現実の警察官にとってR・Fさんとは/……

第5章 公安警察の機能と実務
公安警察の機能総論――思想と行為/「思想を取り締まらない」という縛り
要はカルト対策/公安警察と組織犯罪対策部門/警察予算の特殊性

第6章 とある公安事件のリアリティライン
★2023.2.22(No.793) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『同和のドン 上田藤兵衞 「人権」と「暴力」の戦後史』
(講談社/単行本/伊藤博俊/2023.2)

政界でもメディアでも知らぬ者はいない「京都のドン」が初めて語った。没落と反抗、暴力と抗争の修羅場を経て、自民党系同和団体のトップとなった上田藤兵衞は、あらゆる差別と闘ってきた。その人生は、そのまま戦後の暴力団・同和・経済事件史そのものでもある。山口組五代目と親交を結び、野中広務とタッグを組み、部落解放同盟と拮抗した上田が見たもう一つの戦後史とは何か? 発売前から業界を賑わせている本格ノンフィクション。

著者・伊藤博敏・・・ジャーナリスト。1955年、福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。著書に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』/『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』など。
★2023.2.15(No.792) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『統一協会問題の闇 国家を蝕んでいたカルトの正体』
(扶桑社新書/小林よしのり&有田芳生/2023.3)


銃撃犯・山上徹也を生んだ「宗教2世問題」、杜撰極まりなかった要人警護の在り方、不当な高額献金や悪質な勧誘に見て見ぬふりをした穴だらけの法規制、そして、結果として数多くの政治家が取り込まれていた「政治と宗教」の歪な関係など――。

1992年、芸能人や有名アスリートらが参加した国際合同結婚式が連日ワイドショーで報じられ、マインドコントロールによる勧誘や悪質な霊感商法が大きな社会問題となったにもかかわらず、なぜ、韓国発のカルト教団が日本社会のなかで今に至るまで存続できたのか?

その答えは30年前に遡る。

「オウムの次は統一協会だ……」

1990年代半ば、本書の著者の一人で、かつて『朝日ジャーナル』や『週刊文春』誌上で統一協会をテーマに批判記事を精力的に書いてきたジャーナリストの有田芳生氏にこう告げたのは、取材の過程で知己を得た公安の最高幹部だったという。

「当時、公安は統一教会をマークしていました。それにはいくつもの理由があります。(中略)なぜかマスコミではほとんど報じられていませんが、1969年、日本にあった統一教会の関連企業は、韓国にある本部から殺傷能力のある空気散弾銃2500丁輸入し、この問題は国会でも取り上げられました」(有田氏)

公安の次なるターゲットが統一協会と聞いてから10年の月日が流れた2005年、有田氏が再び邂逅したその元幹部らに「(この10年間)何もありませんでした。今だから話せることを教えてください」と詰め寄ると、その元幹部は苦渋に満ちた表情でこう言葉を絞り出したという。

「政治の力があった……」

 なぜ捜査に突如としてブレーキがかかったのか? 待ったをかけたのは一体誰なのか? そして、そもそも統一協会は一体何を目指していたのか?

その後、統一協会はいくつのも訴訟を抱えていたにもかかわらず、いつの間にか「世界平和統一家庭連合」と名前を変え、何事もなかったかのように国家権力の中枢に近づいていったのだ。

 教祖・文鮮明、北朝鮮の「建国の父」・金日成、統一協会と表裏一体の関係にある反共政治団体「国際勝共連合」、戦後の大物右翼・児玉誉士夫、笹川良一、そして、故・安倍晋三元総理の祖父。「昭和の妖怪」・岸信介……。「70年安保」という政治の季節が過ぎ去った束の間の静けさのなか、多くの魑魅魍魎が蠢き、日本を「サタン」の国と定義する統一協会は徐々に日本社会に侵食していく。

本書のもう一人の著者である漫画家の小林よしのり氏が言う。

「侵略とは、究極的に言えば他国の憲法を書き替えることだ。統一協会という『反日・反天皇カルト』を掲げる外国勢力に、日本はいつの間にか国家権力の中枢まで蝕まれていた。これは武力を伴わない『ステルス侵略』にほかならない!」

統一協会が教勢を増していた1987年、ある一つの事件が起きる。

折しも、有田氏が執筆していた『朝日ジャーナル』が猛烈な統一批判キャンペーンを展開した直後のことだった。それが、戦後犯罪史上、言論の自由を脅かす凶悪事件として社会を震撼させた「朝日新聞阪神支局襲撃事件」をはじめとするいわゆる「赤報隊事件」だった……。

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2023年夏前には、協会への解散命令が出される公算が高い。そして、安倍元総理を襲った山上徹也被告の裁判も始まる見通しだ。

だが、統一協会が韓国発の「反天皇・反日」を唱えるカルト教団であり、我が国の公安がいくつもの不可解な動きを把握していたにもかかわらず、「保守」を自称する多くの国会議員が協会にすり寄っていた事実は、今もって多くの謎を残したままだ。

今回、自身の親族が統一協会のマインドコントロールによって「集金奴隷」と化し、その後家族で奪還を試みるも叶わなかった小林よしのり氏と、日本のカルト問題を長年にわたって取材し続けてきた有田芳生氏が、「空白の30年」の深層に光をあてる。

著者・・・

小林よしのり・・・1953年、福岡県生まれ。漫画家。大学在学中に『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』(集英社)、『おぼっちゃまくん』(小学館)など数々のヒット作を世に送り出す。1992年、『週刊SPA!』(扶桑社)誌上で『ゴーマニズム宣言』を連載開始。このスペシャル版として90万部を超えるベストセラーとなった『戦争論』(幻冬舎)をはじめ、『天皇論』(小学館)、『コロナ論』(扶桑社)などを次々と発表。新しい試みとしてWebマガジン『小林よしのりライジング』の配信や、身を修め、現場で戦う覚悟をつくる公論の場として「ゴー宣道場」も主催する。3月、『ゴーマニズム宣言SPECIAL ウクライナ戦争論』シリーズ第2巻が発売予定。

有田芳生・・・1952年、京都府生まれ。ジャーナリスト。出版社勤務を経て、1986年にフリーランスに転身。『朝日ジャーナル』(朝日新聞社)で霊感商法批判キャンペーンに参加。その後、『週刊文春』(文藝春秋)などで統一教会問題の報道に携わる。都はるみ、阿木燿子、宇崎竜童、テレサ・テンなどの人物ノンフィクションを週刊誌各誌で執筆。2010年、参議院選挙に出馬し初当選。2022年まで2期務め、拉致問題、ヘイトスピーチ問題に取り組む。近著『改訂新版 統一教会とは何か』(大月書店)、『北朝鮮 拉致問題――極秘文書から見える真実』(集英社新書)のほか著書多数。メルマガ「有田芳生の『酔醒漫録』」(まぐまぐ)で統一教会のタブーを精力的に発信する。
★2023.2.8(No.791) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『科学捜査とエドモン・ロカール フランスのシャーロック・ホームズと呼ばれた男』
(鳥影社/単行本/ジェラール・ショーヴィ/2023.2)


ロカールがいなければ、「CSI」シリーズも「科捜研の女」も誕生しなかったかもしれない?
現在の科捜研の礎を作ったエドモン・ロカールの生涯を描く一冊。

著者・ジェラール・ショーヴィ・・・1952年生まれ。フランスのジャーナリスト、歴史研究家。主に出身地のリヨンや、第二次世界大戦中の歴史、レジスタンス活動に関する数多くの著書を出版(いずれも日本では邦訳なし)。歴史雑誌『Historia』などに寄稿。
★2023.2.1(No.790) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪』
(文藝春秋/単行本/安田峰俊/2023.2)


北関東というのは独特の匂いのする地域である。大宅賞作家・安田峰俊の最新作は、その北関東に地下茎のごとく張り巡らされた、「移民」たちのネットワークのルポだ。移民に「」がつくのは、日本には制度上、移民はいないから。しかし、悪名高い、技能実習生制度のもと、ベトナム人だけでも実習生は20万人近く。その一部は低賃金や劣悪な環境に嫌気がさして逃亡、不法滞在者の「移民」として日本のアンダーグラウンドを形成している。彼らは自国の経済が発展し、出稼ぎに出なくても食えるようになると、日本になど来なくなる。そのため、アンダーグラウンドの主役はどんどん変わる。かつて中国人が主役だったアンダーグラウンドを、今、占拠しているのは、無軌道なベトナム人の若者たちなのだ。ベトナム人によるアンダーグラウンド社会が日本人に知られたのは、群馬県で起きた「豚窃盗事件」。養豚場から盗まれた豚は、彼らのアパートで解体され、彼らのネットワークの中だけで処理されたため、警察の捜査は難航した。このように、アンダーグラウンドで完結する犯罪は表に出にくいのである。桃などの果物も、かなり派手に盗まれているが、犯人はなかなか逮捕されない。本作では、筆者と通訳の「チーくん」(彼は日本育ちのベトナム難民の2世だ)が、まるでホームズとワトソンのように、「移民」による事件現場を訪ね歩く。血なまぐさい殺人現場、タトゥーだらけのしたたかな不法滞在者たち、常にただよう薬物とバクチと女のニオイ。あちこち探り歩いて、ついに北関東ベトナム人アンダーグラウンドのボス、「群馬の兄貴」にたどり着く。スキンヘッドに気合の入った刺青、見るからに恐ろしい「群馬の兄貴」が犯した真の罪とは……。豚の窃盗から、誘拐、殺人と、あらゆる犯罪現場に、ベトナム人の好物である雷魚とアヒル、そしてビールを手土産に走り回る2人。恐ろしくて面白い、アンダーグラウンドレポート!

著者・安田峰俊(みねとし)・・・ルポライター。立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。広島大学大学院文学研究科博士前期課程修了(中国近現代史)。『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)が第5回城山三郎賞、第50回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。他に『さいはての中国』(小学館新書) / 『現代中国の秘密結社』(中公新書ラクレ) / 『「低度」外国人材』(KADOKAWA) / 『中国vs.世界』(PHP新書)など著書多数。
★2023.1.25(No.789) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『パワハラ上司を科学する』
(ちくま新書/津野香奈美/2023.1)


「どうしたらパワハラを防げるのか?」10年以上にわたる研究で、科学的データを基にパワハラ上司を三つのタイプ別に分析、発生のメカニズムを明らかにした。

著者・津野香奈美(つの・かなみ)・・・神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科准教授。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。博士(医学)・博士(保健学)・公衆衛生修士。10年以上にわたり職場のパワハラ等の人間関係や上司―部下の関係性と健康との関連に関するエビデンス(科学的根拠)を継続的に発表している、日本で唯一の社会医学系研究者。研究結果を現場に生かすべく、企業や自治体でコンサルティングを実施している。
★2023.1.18(No.788) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『東京医大「不正入試」事件 特捜検察に狙われた文科省幹部 父と息子の闘い』
(講談社/単行本/田中周紀/2023.1)


贈収賄の見返りは息子の医学部「不正合格」? 東京医大を舞台に女子受験生への入試差別など社会を巻き込んだ文科省汚職事件の真相に迫る。

事件は最初から異例の展開を辿る。東京地検特捜部による捜査の過程で、図らずも東京医大の入試で女子学生が不当に差別されていたことが判明。その余波は他大学にまで及ぶ。そのなかで、大人たちの思惑により、本人も知らぬうちに入試の点数に10点を加算されていた文科省キャリアの次男。だが、公判で明らかになったのは、加点がなくても次男は合格できていたという事実だった。特捜検事による取り調べへの恐怖から、罪を認めるような調書を取られていた東京医大の理事長と学長は、公判で全面否認に転じる。将来の事務次官候補と言われた文科省キャリアも一貫して容疑を否認。事件の中心人物として「霞が関ブローカー」と報じられた男にいたっては、特捜部は一通の調書も取れないまま公判が始まる。4人の被告が全員否認する一方、特捜部が縋る唯一の証拠は、隠し撮りされたある会食における会話の録音データのみ。しかも、事件の背後には森友学園事件や、政府の不正を告発した前川喜平文科事務次官に対する官邸の怒りも見え隠れする。緊迫の法廷劇、特捜検察に狙い撃ちされた親と息子はどう闘ったのか。

著者・田中周紀(ちかき)・・・1961年、島根県生まれ。上智大学文学部史学科卒業。共同通信社社会部で1995〜1997年、テレビ朝日社会部で2006〜2010年の計5年9ヵ月間、国税当局と証券取引等監視委員会を担当。2010年にテレビ朝日を退社し、現在はフリージャーナリスト。著書に『巨悪を許すな! 国税記者の事件簿』/『実録 脱税の手口』(文春新書)など。

第1章 不正入試
第2章 「裏口入学」の真相
第3章 第2次醍醐会食
第4章 4000万円超の補助金
第5章 特捜部のシナリオ捜査
第6章 音声データを提供した男
第7章 霞が関ブローカーと呼ばれて
第8章 判決
★2023.1.11(No.787) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ギャラリーストーカー 美術業界を蝕む女性差別と性被害』
(中央公論新社/単行本/猪谷千香/2023.1)


美大卒業後、作家として自らを売り出したいと願い、一人ギャラリーに立つ若い女性作家につきまとうギャラリーストーカー。美術業界の特殊なマーケットゆえに、被害から免れることが極めて難しいという異様な実態がある。孤軍奮闘する若い女性作家につきまとうのは、コレクターだけではない。作家の将来を左右する著名なキュレーター、批評家、美術家など、業界内部の権力者によるハラスメント、性被害も後を絶たない。煌びやかな美術業界。その舞台裏には、ハラスメントの温床となる異常な構造と体質、伝統があった! 弁護士ドットコムニュース編集部が総力を挙げて取材した実態と対策のすべて。

著者・猪谷千香(いがやちか)・・・東京生まれ、東京育ち。明治大学大学院博士前期課程考古学専修修了。産経新聞文化部記者などを経た後、ドワンゴでニコニコ動画のニュースを担当。2013年からハフポスト日本版でレポーターとして、さまざまな社会問題を取材。2017年から弁護士ドットコムニュース編集部で記事を執筆。著書に『日々、着物に割烹着』/『つながる図書館』/『町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト』など。
★2023.1.4(No.786) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『死体解剖有資格者 法人類学者が見た生と死との距離』
(草思社/単行本/スー・ブラック/2023.1)


法人類学・法解剖学の世界的権威、英国BBC Two局「長期未解決怪事件ファイル:歴史上のコールドケース」の進行役、ブラック教授が綴る、個人識別技術と身元鑑定にまつわるミステリー風回顧録。

死体解剖資格認定の解剖学教授として後進の指導にあたるかたわら、時には法人類学調査官として警察捜査を支援、時には英国法医学チームの一員として大惨事、大災害、ジェノサイドの現場に赴き、犠牲者の身元の特定に奮闘する。骨片、爪、毛髪等の硬組織のみならず、軟組織付着の遺体の剖検を通じ、先端科学技法を駆使し死体を精査、故人がいかなる最期を迎えたかを見極める。

サルティア・ソサイエティ賞ミステリー部門賞受賞作品。

著者・スー・ブラック(Professor Dame Sue Black)・・・スコットランド・インヴァネス市出身。法人類学者、解剖学者。ダンディー大学解剖学部法人類学教授、ランカスター大学副学長代理を経て、現職はオックスフォード大学セント・ジョンズ・カレッジ学長。英国王立人類学協会会長。法医解剖学および法人類学の世界的権威。解剖学的特徴による個人識別技術に詳しく、コソボ紛争での大量虐殺犯罪の法医学的調査やスマトラ島沖地震の津波犠牲者の身元特定に尽力。英BBC制作の「History Cold Case」(長期未解決怪事件ファイル:歴史上のコールドケース)のホスト役。著書に、Written in Bone(邦訳『骨は知っている』亜紀書房)、Developmental Juvenile Osteology(『幼児の発達骨学』共著、未邦訳)などがある。
★2022.12.28(No.785) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『日本の脱獄王 白鳥由栄の生涯』
(論創社/単行本/斎藤充功/2023.1)


青森、秋田、網走、札幌。4つの刑務所を脱獄した白鳥由栄(よしえ)の手口は神業といわれた。そして、その根底には、非人間的な看守がいると報復で脱走するという思想があった。漫画『ゴールデンカムイ』の白石由竹のモデルとなった脱獄王の数奇な生涯を本人の証言を元に探る。名著『脱獄王』を増補して復刊!

著者・斎藤充功(さいとう・みちのり)・・・1941年、東京市生まれ。ノンフィクション作家。東北大学工学部中退。陸軍中野学校に関連する著者が8冊。共著を含めて50冊のノンフィクションを刊行。近著に『陸軍中野学校全史』(論創社)。現在も現役で取材現場を飛び回っている。
★2022.12.21(No.784) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ある行旅死亡人の物語』
(毎日新聞出版/単行本/武田惇志&伊藤亜依/2022.11)

2020年4月。兵庫県尼崎市のとあるアパートで、女性が孤独死した。現金3400万円、星形マークのペンダント、数十枚の写真、珍しい姓を刻んだ印鑑......。記者二人が、残されたわずかな手がかりをもとに、身元調査に乗り出す。舞台は尼崎から広島へ。たどり着いた地で記者たちが見つけた「千津子さん」の真実とは? 「行旅死亡人」が本当の名前と半生を取り戻すまでを描いた圧倒的ノンフィクション。

著者・・・

武田惇志・・・1990年生まれ、名古屋市出身。京都大学大学院人間・環境学研究科修了。2015年、共同通信社に入社。横浜支局、徳島支局を経て2018年より大阪社会部。 
 
伊藤亜衣・・・1990年生まれ、名古屋市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修了。2016年、共同通信社に入社。青森支局を経て2018年より大阪社会部。

T 
発端 
兎の穴 
橋の上の密談 
警察と探偵 
錦江荘 
家系図を作る 
アルバム 
「沖宗さん」を辿る 
身元判明 
 
U 
面影 
少女時代 
消えた写真の男 
今はなき製缶工場を訪ねて 
原爆とセーラー服 
「きれいな人だったから」 
残された「謎」 
配信と余波 
旅果ての地 
★2022.12.14(No.783) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『母という呪縛 娘という牢獄』
(講談社/単行本/齊藤彩/2022.12)


深夜3時42分。母を殺した娘は、ツイッターに、「モンスターを倒した。これで一安心だ。」と投稿した。18文字の投稿は、その意味するところを誰にも悟られないまま、放置されていた。2018年3月10日、土曜日の昼下がり。滋賀県、琵琶湖の南側の野洲川南流河川敷で、両手、両足、頭部のない、体幹部だけの人の遺体が発見された。遺体は激しく腐敗して悪臭を放っており、多数のトンビが群がっているところを、通りかかった住民が目に止めたのである。滋賀県警守山署が身元の特定にあたったが、遺体の損傷が激しく、捜査は難航した。周辺の聞き込みを進めるうち、最近になってその姿が見えなくなっている女性がいることが判明し、家族とのDNA鑑定から、ようやく身元が判明した――。崎妙子、58歳(仮名)。遺体が発見された河川敷から徒歩数分の一軒家に暮らす女性だった。夫とは20年以上前に別居し、長年にわたって31歳の娘・あかり(仮名)と二人暮らしだった。さらに異様なことも判明した。娘のあかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っていたが、母・妙子に超難関の国立大医学部への進学を強要され、なんと9年にわたって浪人生活を送っていたのだ。結局あかりは医学部には合格せず、看護学科に進学し、4月から看護師となっていた。母・妙子の姿は1月ころから近隣のスーパーやクリーニング店でも目撃されなくなり、あかりは「母は別のところにいます」などと不審な供述をしていた。6月5日、守山署はあかりを死体遺棄容疑で逮捕する。その後、死体損壊、さらに殺人容疑で逮捕・起訴に踏み切った。1審の大津地裁ではあくまで殺人を否認していたあかりだが、2審の大阪高裁に陳述書を提出し、一転して自らの犯行を認める。母と娘――20代中盤まで、風呂にも一緒に入るほど濃密な関係だった二人の間に、何があったのか。公判を取材しつづけた記者が、拘置所のあかりと面会を重ね、刑務所移送後も膨大な量の往復書簡を交わすことによって紡ぎだす真実の物語。獄中であかりは、多くの「母」や同囚との対話を重ね、接見した父のひと言に心を奪われた。そのことが、あかりに多くの気づきをもたらした。1審で無表情のまま尋問を受けたあかりは、2審の被告人尋問で、こらえきれず大粒の涙をこぼした――。殺人事件の背景にある母娘の相克に迫った第一級のノンフィクション。

著者・齊藤彩・・・1995年、東京生まれ。2018年3月、北海道大学理学部地球惑星科学科卒業後、共同通信社入社。新潟支局を経て、大阪支社編集局社会部で司法担当記者。2021年末退職。本書がはじめての著作となる。
★2022.12.7(No.782) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『悪意の科学 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?』
(インターシフト/単行本/サイモン・マッカーシー=ジョーンズ/2022.12)


人間関係、ビジネス、政治、SNS、神話、文学、テロ、宗教・・・具体例をもとに、悪意の力を解き明かす。

・悪意はなぜ失われずに進化してきたか? 
・悪意をもたらす遺伝子、脳の仕組みとは? 
・なぜ自分に危害が及んでも意地悪をするのか? 
・善良な人まで引きずり下ろそうとするわけ 
・「共感」は人間が本来持っている性質か? 
・悪意と罰の起源とは? 
・悪意にはどのような効用・利点があるか? 
・悪意をコントロールするには? 

・・・脳科学・心理学・遺伝学・ゲーム理論などの最新成果を駆使して、まったく新しい人間観が示される。

著者・サイモン・マッカーシー=ジョーンズ(Simon McCarthy・Jones)・・・ダブリン大学トリニティ・カレッジの臨床心理学と神経心理学の准教授。さまざまな心理現象について研究を進めている。幻覚症状研究の世界的権威。『ニューサイエンティスト』『ニューズウィーク』『ハフィントンポスト』など多数メディアに寄稿。ウェブサイト『The Conversation』に掲載した記事は100万回以上閲覧されている。

::目次::

はじめに・・人間は4つの顔をもつ
第1章・・たとえ損しても意地悪をしたくなる
第2章・・支配に抗する悪意
第3章・・他者を支配するための悪意
第4章・・悪意と罰が進化したわけ
第5章・・理性に逆らっても自由でありたい
第6章・・悪意は政治を動かす
第7章・・神聖なる価値と悪意
おわりに・・悪意をコントロールする
★2022.11.30(No.781) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『7・8元首相襲撃事件 何が終わり、何が始まったのか? 』
(河出書房新社/単行本/河出書房新社編集部//2022.11)


その銃弾は元首相を葬っただけでなく、国家の闇を切り裂いた。あの行為はどう捉えられるべきか? そしてその銃弾が暴いたものとは何か? この事件が問うものを先鋭的な論者と共に考える。

安倍晋三元首相銃撃事件・・・2022年(令和4年)7月8日午前11時半ごろ、奈良市の近鉄大和西大寺(やまとさいだいじ)駅前で演説中だった元首相の安倍晋三(67歳)が山上徹也(当時41歳)に背後から手製の拳銃(銃身が約40センチ、銃身の金属筒2本をテープで巻いて固定しており山上の供述によると、一つの筒から一度に6発の弾を同時に発射できるという)で銃撃された。山上は安倍の後ろから近づき、約7メートルの地点で最初の発砲をした。しかし、弾が命中しなかったことからさらに接近し、今度は約5メートルの距離から2回目を撃った。1回目の銃声を聞いた安倍は後ろを振り向き、数秒後に放たれた2回目が命中したとみられている。山上は現場で警察官に取り押さえられ、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された(殺人容疑に切り替えて送検)。周囲には多くの聴衆がいたこともあり、銃撃や事件直後の混乱した様子を撮影した動画がツイッターに複数投稿された。安倍は心肺停止状態で奈良県立医科大付属病院に運ばれたが、午後5時3分に死亡が確認された。司法解剖の結果、安倍の死因は失血死と判明した。左上腕部から入った銃弾が左右の鎖骨付近の動脈を損傷したことが致命傷だった。山上は動機について、特定の宗教団体の名前を挙げ、「母親が団体にのめり込んで破産した。安倍がこの団体を国内で広めたと思って恨んでいた」などと供述した。この宗教団体は韓国発祥の世界平和統一家庭連合(旧・統一教会、日本では2015年に名称変更)。山上は母親が宗教団体に少なくとも約1億円を献金して破産し、家庭が崩壊したとした上で、当初は団体の最高幹部を襲撃しようとしたものの接触が難しかったことから、団体と関わりがあると思った安倍を狙ったという趣旨の供述をしている。安倍の祖父にあたる岸信介元首相(故人)の名前も挙げ、「そもそも団体を日本に招いたのが岸で、その孫の安倍を狙うようになった」とも話したという。2019年10月(令和元年)、山上は愛知県内であった世界平和統一家庭連合の集会で、来日した最高幹部の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁を火炎瓶で襲撃しようとしたが、会場に入れず断念したという。2022年(令和4年)7月22日、奈良地検は山上の事件当時の精神状況を調べるため鑑定留置を奈良地裁に請求し、地裁は同日付で認めた。留置期間は11月29日までの約4ヶ月間。11月17日、奈良地検は鑑定留置期間の延長請求を行い、翌2023年(令和5年)2月6日まで延長する決定が出ていた。だが、11月18日、山上の弁護人らは決定を不服として奈良地裁に準抗告の申し立てを行った。奈良地裁は準抗告の申し立ての一部を認め、鑑定留置の期間を2023年(令和5年)1月10日まで短縮する決定を出した。2022年(令和4年)12月19日、奈良地検は鑑定留置の延長請求が認められたことを明らかにし、新たな期限は翌年1月23日となった。

[目次]
大澤真幸 不可能性の時代の果て
島薗進 政治に守られた人権侵害
中島岳志 何が彼を動かしたか、そして連鎖を止めるために――秋葉原事件、朝日平吾、福田恆存
菊地夏野 安倍/統一教会問題に見るネオリベラル家父長制――反ジェンダー運動とネオリベラリズムの二重奏
杉田俊介 二十一世紀のニヒリズムに抗した「ひとつの革命」
安藤礼二 世界の「右傾化」は何を意味するか――安倍銃撃の背後にあるもの
古川日出男 7・8の真の出発点に立つ
斎藤貴男 安倍神格化を促す「冷笑」の侵襲を憂う
清水知子 「美しい国」の顛末――「失われた30年」と暴力の行方
武田崇元 統一教会問題の暗部とリベラルへの踏み絵
小泉義之 悲劇と直接行動
小田原のどか おまえはよこたわっている
井口時男 孤独なテロリストたちに贈る九句
平井玄 私怨論
友常勉 山上決起の意味するもの
仲山ひふみ 銃は外部ではない――相関主義テロリズムに関する即興的覚え書き
木澤佐登志 死後の生に対する暴力に抗して――追悼可能性と構成的暴力をめぐる諸問題
韻踏み夫 革命と支配のギャングスタ化について
水越真紀 その「革命」で追放されるわたしたち
白石嘉治×栗原康 「行為によるプロパガンダ」は「加害としての自然」をもとめる
足立正生 映画で山上を引き継ぎたい――なぜ『REVOLUTION+1』を撮ったのか
★2022.11.23(No.780) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『死刑のある国で生きる』
(新潮社/単行本/宮下洋一/2022.12)


死刑を徹底的にオープンにするアメリカ。死刑容認派が8割を超える日本。一方、死刑を廃止したがゆえに加害者と被害者遺族が同じ町に暮らすスペイン。そして新たな形の「死刑」が注目を集めるフランス――死刑を維持する国と廃止する国の違いとは何なのか。死刑囚や未決囚、加害者家族、被害者遺族の声から死刑の意味に迫る。

著者・宮下洋一・・・1976年、長野県生まれ。18歳で渡米し、米ウエスト・バージニア州立大学外国語学部を卒業。スペイン・バルセロナ大学大学院で国際論修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールで、ジャーナリズム修士。スペインの全国紙「エル・ペリオディコ」で記者経験をし、フリーに。海外の事件や社会問題から、政治、経済、スポーツ、医療まで幅広く活動する。6言語を駆使し、フランスやスペインを拠点に世界各地を取材している。『安楽死を遂げるまで』で講談社ノンフィクション賞受賞。『卵子探しています 世界の不妊・生殖医療現場を訪ねて』では小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
★2022.11.16(No.779) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『虚ろな革命家たち 連合赤軍 森恒夫の足跡をたどって』
(集英社/単行本/佐賀旭/2022.11)

「脱」というより、「没」政治化(a-political)が極限まで進んでしまった現代日本の若者にとって何を意味するのか。この困難な問題に「平成」生まれの三〇歳になったばかりのフリーランスライターが挑戦している点で出色である。――姜尚中(東京大学名誉教授)

この作品の良さは、読む者に答えを示したことではなく、さらなる問いを投げかけたことだろう。――田中優子(法政大学名誉教授)

すべてを政治化することの危険性、不安と恐怖から湧き上がる防衛意識など、現代においても重要な問題を提示しているのだ。――藤沢 周(芥川賞作家)

時代の「感触」は、このようにして人から人へと受け継がれていくのだろうか。ノンフィクションによる「経験の伝承」という視点からも素晴らしい作品と言えよう。――茂木健一郎(脳科学者)

今年三〇歳になる筆者が同世代の若者に対して、なぜ政治的なイシューを共有できないのかと向ける切実な問いかけだ。――森 達也(映画監督・作家)

(開高健ノンフィクション賞選評より・五十音順)

<連合赤軍事件とは。今、若者の目線で見つめ直す。>

大学院で学生運動について研究していた著者は、ある手紙に出合う。父から子への想いが綴られたその手紙は、12人の同志を殺害した連合赤軍リーダー森恒夫によるものだった。残酷な事件を起こした犯人像と、手紙から受ける印象が結びつかない筆者は、森恒夫の足跡(そくせき)を追い……。
なぜ28歳の青年・森恒夫は日本に革命を起こそうとしたのか、なぜ同志を殺害したのか、そしてなぜ自ら命を絶ったのか……。
その答えを求め、森の高校時代の同級生、北朝鮮に渡った大学時代の後輩、「総括」を生き延びた連合赤軍の元メンバー、よど号ハイジャック事件実行犯の一人・若林盛亮らと対話する。

――誰だって、「彼」に成りうるのかもしれない。
開高健ノンフィクション賞を史上最年少で受賞した若き著者が、事件を追いながら、いつの世もつきまとう「政治と暴力」を解決するヒントを探る。

著者・佐賀旭(あさひ)・・・1992年、静岡県静岡市生まれ。明治大学情報コミュニケーション学部卒業後、早稲田大学大学院政治学研究科政治学専攻ジャーナリズムコース修了。日刊現代入社後、ニュース編集部で事件や政治分野を担当する。2019年退社。以降『週刊現代』『週刊朝日』を中心に記者として活動している。

関連ページ・・・
連合赤軍あさま山荘事件
★2022.11.9(No.778) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ルポ 特殊詐欺』
(ちくま新書/田崎基/2022.11)


強盗まがいの凶行で数百万円だまし取られる被害者。「家族を殺すぞ」と脅され、犯行から抜け出せない末端従事の若者。今最も身近で凶悪な犯罪のリアルに迫る。

著者・田崎基(たさき・もとい)・・・1978年生まれ。神奈川新聞記者。デジタル編集部、報道部遊軍記者、経済部キャップ、報道部(司法担当)を経て、現在報道部デスク。憲法改正問題、日本会議、経済格差問題、少子高齢化問題、アベノミクス、平成の経済などを担当し、取材を続けている。参画した神奈川新聞『時代の正体』取材班が、2016年度JCJ賞受賞。著書に『令和日本の敗戦』 ほか。
★2022.11.2(No.777) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『プリズン・ドクター』
(新潮新書/おおたわ史絵/2022.11)


母親が望む父親と同じ道に進んだ女性医師は、刑務所のお医者さんになって「天職」を見出した。〈文身〉〈傷痕〉〈玉入れ〉など、受刑者カルテには独特の項目はあるけれど、そこには切実に治療を必要とする人たちがおり、純粋に医療と向き合える環境があったからだ。薬物依存症だった母との関係に思いを馳せ、医師人生を振り返りつつ、受刑者たちの健康と矯正教育の改善のために奮闘する日々を綴ったエッセイ集。

著者・おおたわ史絵・・・東京都葛飾区出身。東京女子医科大学医学部を卒業。総合病院を経て父親が経営する診療所を継承する。認定内科医、産業医で、ボランティア夏山診療、聾唖者の診療など、一般の医療以外の活動も行う。2018年頃から犯罪者を収容する矯正施設で行われる受刑者への医療も携わっている。
★2022.10.26(No.776) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『家族が誰かを殺しても』
(イースト・プレス/単行本/阿部恭子/2022.11)


ある日突然、家族が殺人を犯してしまった。
加害者家族と呼ばれる受刑者の家族は、その瞬間から、
過剰なマスコミ取材、ネット上での根拠のない誹謗中傷やいやがらせを受け、
辞職に追い込まれる、引っ越しを余儀なくされるなど悲惨な生活を強いられる。

そのような状況でも、罪を犯した家族を支え、そして更生の道を探るべく
「ともに生きる」決断をするのは、なぜか。
重大事件の加害者家族に寄り添い続ける著者だからこそ描けた
加害者家族の現実とその後の人生、
そして現代日本の抱える「家族」のいびつな形とは。

著者・阿部恭子・・・NPO法人World Open Heart理事長。2008年大学院在学中、日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。今まで支援してきた加害者家族は2000件以上に及ぶ。著書に『家族間殺人』 / 『家族という呪い 加害者と暮らし続けるということ』など。

【目次】
はじめに
第一章 上級国民と呼ばれた家族――東池袋自動車暴走死傷事故
第二章 夫の無実を信じる純粋な妻の悲劇――東北保険金殺人事件
第三章 揺るがない兄弟の絆――岩手妊婦死体遺棄事件
第四章 死刑囚の母として――宮崎家族三人殺人事件
第五章 なぜ加害者家族支援を続けるか
第六章 家族はどこに向かうのか
参考文献
★2022.10.19(No.775) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『事件から読みとく日本企業史』
(有斐閣/単行本/武田晴人/2022.5)


明治以降の企業がそれぞれの時代にどのような役割を果たしていたのか? またどのような役割を果たすものと考えられていたのか? 政府との関係、株主との関係、取引相手との関係、従業員との関係など企業に関わる人々や時代背景との関係から読みとく。

著者・武田晴人・・・公益財団法人三井文庫文庫長、東京大学名誉教授。

目次

はしがき
第1章 小野組破綻──曖昧だった営業の自由
第2章 日本郵船誕生──政争に巻き込まれた政商
第3章 足尾鉱毒事件の裏側──企業と地域社会
第4章 株主の異議申し立て──物言う株主
第5章 日糖事件──暗躍する「悪徳重役」
第6章 綿業総解合──市場の暴走
第7章 三菱・川崎争議──協調的労資関係の起源
第8章 東京電灯の経営破綻──株式会社亡国論の背景
第9章 経済統制と企業活動──「営利目的」は必要か
第10章 トヨタ争議──日本的経営・協調的労使関係の源流
第11章 三池争議と労働組合──協調的労使関係への最終局面
第12章 住友金属事件──行政指導と企業
第13章 公害と企業の社会的責任──長く放置された被害者
第14章 IBMスパイ事件と東芝事件──対外貿易摩擦と日本企業
第15章 投機的利潤追求と金融システム──住専問題を生んだ狂乱
第16章 山一證券の自主廃業──甘い期待が招いた失敗
あとがき
★2022.10.12(No.774) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『児童相談所と学校、そして「私たち」』
(NextPublishing Authors Press/単行本/石川美智子/2022.9)


児童相談所の方たちは、被虐待児やその保護者の対応で代表されるように大変な事例に対応しなければなりません。そして、ニュースでは虐待事例を大きく報道されますが、何か一過性のような気がしてなりませんでした。虐待事例は児童相談所や学校だけでは解決できないという思いが日増しに高まりました。まずは全国の児童相談所の方たちに生の声を聞かなければと思い、インタビュー調査のお願いをしたところ、気持ちよく受けてくださいました。そして、児童相談所の方たちが苦い経験を重ねながら立ち上がる真摯な姿勢に胸が打たれました。なかなか児童相談所の方の生の声を聞く機会は少ないと思います。本書は児童相談所にかかわる福祉職・学校・教育委員会の専門家の唯一の書です。子どもの育ちには健全な大人が必要です。特に困難をかかえた子どもや家庭を支える人々が重要となります。児童相談所に困難をかかえた子どもや家庭を支える役割がありますが、児童相談所の実態はほとんどの人々はわからない現状です。
★2022.10.5(No.773) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『イギリス花粉学者の科学捜査ファイル 自然が明かす犯罪の真相』
(白揚社/単行本/パトリシア・ウィルトシャー/2022.10)


「パット・ウィルトシャーさんですか?」

さまざまな経験を積み、五十代になった花粉学者にかかってきた一本の電話が、彼女の人生を変えた。警察の捜査に協力するなかで、彼女は試行錯誤しながら、花粉や胞子、菌類、微生物、土など自然の痕跡を利用して事件解決に導く「法生態学」という画期的な分野を編み出していく。死体や衣服、車に残された花粉や菌類を手がかりに、どのようにして殺害場所や時刻を特定し、消えた死体のありかを発見し、犯人の嘘を見破るのか? 数々の難事件の真相究明に貢献したイギリス法生態学のパイオニアが語る、波瀾万丈の人生と科学捜査の奥深い世界。

著者・パトリシア・ウィルトシャー(Patricia Wiltshire)・・・法生態学者、花粉学者、植物学者、環境考古学者。イギリスで25年以上にわたって警察に協力し、数々の難事件の真相究明に貢献する。英国法科学会、王立生物学会、リンネ協会フェロー。世界各地の学会で講演する一方、大学での指導や研究に精力的に取り組んでいる。


目次
第1章 開幕
第2章 探す、そして見つける
第3章 過去の代理
第4章 表面からは見えない場所
第5章 対立、そして解決
第6章 「あなたはその場所にいましたね」
第7章 クモの巣
第8章 死に潜む美
第9章 敵と味方
第10章 最後のひと息
第11章 「空っぽの器」
第12章 毒
第13章 痕跡
第14章 終幕
★2022.9.28(No.772) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『薬害裁判 副作用隠蔽事件を闘った町医者の記録』
(南方新社/単行本/井手節雄/2022.8)


ある町医者が、排尿障害治療薬の副作用を指摘しても、製薬会社はまともに向き合おうとしなかった。
たった一人で闘った薬害裁判が浮き彫りにしたのは、故意に無視された副作用の危険性、添付文書に仕組まれた副作用隠蔽のからくり、製薬マネーと副作用に目を瞑る専門家たち、絶対禁忌の薬が難病患者の薬として販売されているという事実……。
「患者のための創薬」は「利益追求の製薬ビジネス」に変貌していた。

排尿障害治療薬タダラフィルの服用により血圧低下の副作用に今も悩まされる著者が、そのメカニズムを解明しイーライ・リリー社と日本新薬に危険性を訴えますが、対応はなく闇に葬られそうになりました。やむにやまれず、薬害裁判を起こしました。このタダラフィルは、難病やED治療薬としても使われ続けています。この薬害が放置される現状は、タダラフィルに限ったことではなく、うつ病治療薬SSRIや、コレステロールの薬スタチンなど、広く見られること、そこには製薬マネーの莫大なバラマキが背景にあることを、著者は知ることになります。この製薬業界の異常な状況を分かりやすく解説した一冊です。

著者・井手節雄・・・
昭和20年7月9日、旧志布志町生まれ
昭和39年3月、志布志高校卒業
昭和40年4月、熊本大学医学部入学
昭和46年3月、熊本大学医学部卒業
昭和46年4月、鹿児島大学小児科学教室入局
昭和48年4月から昭和50年3月まで、上天草総合病院に出張
昭和57年1月、串間市民病院就職
昭和59年9月、旧志布志町にて小児科医院開業
★2022.9.21(No.771) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『自殺の思想史 抗って生きるために』
(みすず書房/単行本/ジェニファー・マイケル・ヘクト/2022.10)

自殺をしてはいけない。しかし、それをどう根拠づければよいだろうか? 古くは宗教的な罪とされていた自殺は、精神医学の発展に伴って倫理的に中立なものになり、現代では選択肢や権利として肯定する立場さえある。自殺をめぐる思想の変遷の歴史の中に、宗教によらない「自殺をしてはいけない理由」を見出すため、古代ギリシャ・ローマの思想、戯曲や詩から、近現代の社会学や哲学的思索まで広く繙く。切実な悩みに応えるヒント。

【目次】
まえがき
謝辞

はじめに
第一章 古代の世界――聖書、ギリシャ、ローマ
第二章 宗教は自殺を認めない――キリスト教、イスラム教、ユダヤ教
第三章 生きるべきか死ぬべきか――モダニズムの新興における新たな疑問
第四章 非宗教的な哲学による自殺の擁護
第五章 共同体の議論――古代ギリシャから現代まで
第六章 コミュニティと影響に関する現代の社会科学
第七章 未来の自分に対する希望
第八章 自殺について考察した二〇世紀のふたりの人物――デュルケームとカミュ
第九章 苦しみと幸せ
第一〇章 現代の哲学的対話――シオラン、フーコー、サズ
おわりに

原注
索引
★2022.9.14(No.770) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『孤立無援の〈医療訴訟〉』
(寿郎社/単行本/十和田みどり/2022.8)


警察も弁護士も裁判官も避けて通る、立証が難しい「医療訴訟」と「刑事告訴」に自力で挑み、札幌の総合病院と殺人未遂を犯した看護師の罪を問う元看護師による5年間の記録。医療ミスなどの被害にあいながらも泣き寝入りせざるを得ない人たちに「人はひとりでここまで闘える」という勇気と希望を与える医療裁判ドキュメント。

著者・十和田みどり・・・1960年代生まれ。看護学校を卒業後、札幌市内の複数の病院で看護師として10年ほど勤務したのち、出産を機に家庭に入る。 2016年、札幌市内の総合病院に入院中の糖尿病の母が、低血糖となって夜勤の看護師に助けを求めたにもかかわらず、看護師はなんの処置もせず母の命を危険にさらしたとして看護師を告発し、民事訴訟でも訴えた。
★2022.9.7(No.769) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ソウルで逮捕勾留されて解った 代用監獄問題』
(アメージング出版/単行本/間々田久太/2022.7)


「今、なぜ、代用監獄問題なのか?」
物事には表と裏があり建て前と本音があることは世の常であるが、特に、最近の日本では表と裏の差が大きくなっている様な気がする。例えば、表の日本は世界第3位の経済大国で世界最大の債権大国でもありG7国家として欧米先進諸国と肩を並べ、自由と民主主義を標榜する国として人権意識も高いと思われている。

一方で、裏の日本の国としての借金は1000兆円を超え2021年の1人当たりの名目GDPは世界28位に沈み、日本の勤労者の賃金は20年以上、増えない状況が続いている。つまり、外向きの建て前としては豊かな先進国を演じつつ、国内の実態は既にOECD下位の国に成り下がっている。

そして、この様な表と裏の差の拡大はあらゆる分野に及んでいる。その1つの問題として本書が取り上げたのが「代用監獄問題」である。もともと、代用監獄とは被疑者を裁判所に連れて行くまでの一時的に留め置く場所を意味するが、2005年に「監獄法」が100年振りに「刑事被収容者処遇法」に全面改正された現在でも代用監獄が刑事収容者施設の主役となっている。
「法務省平成27年の検察事務の概況」によると、勾留されている全被疑者の約9833%が代用監獄に勾留されているからだ。過去、代用監獄における自白の強要が冤罪事件の温床になったことは歴史が証明している。

つまり、表向きは世界有数の治安の良い国であるが、日本の被疑者の人権は100年間、全く見直されずに現在に至っている。この様な現実を諸外国は中世の名残である「DAIYO-KANGOKU」として批判しており、大げさに言えば日本の被疑者の人権はロシア・中国・北朝鮮クラスと言われても仕方がないのが現状である。

本書では第1章〜第4章で筆者の韓国での体験を基に韓国の代用監獄問題について考察し、第5章で日本の代用監獄問題を考える比較対象としている。そして、最後に日本の代用監獄問題に対する本書の提言に繋げている。
★2022.8.31(No.768) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』
(新潮新書/宮口幸治/2022.9)

精神科医の六麦克彦は、医局から派遣された要鹿之原少年院に勤務して5年になる。彼がそこで目にしたのは、少年院に堕ちてきた加害者ながら、あらゆる意味で恵まれず、本来ならば保護されてしかるべき「被害者」と言わざるを得ない少年たちの姿だった──。累計100万部を超えたベストセラー新書『ケーキの切れない非行少年たち』(2019)の世界を著者自ら小説化、物語でしか伝えられない不都合な真実を描きだす。

著者・宮口幸治・・・立命館大学産業社会学部教授。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「コグトレ研究会」を主催。医学博士、臨床心理士。
★2022.8.24(No.767) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『検証・免田事件[資料集]』
(現代人文社/単行本/免田事件資料保存委員会[編]/2022.8)


日本で初めて死刑確定囚が再審無罪になった免田事件。事件発生から免田栄の死まで、免田さんからの家族・友人・支援者あての手紙、捜査・裁判資料、報道記事、関係写真など膨大な資料がある。それらは、誤った捜査・裁判や冤罪の支援活動を語る貴重な記録である。それらを整理・編集し、免田さんの〈冤罪との死闘〉を浮き彫りにする。DVD(映画『免田栄 獄中の生』〔シグロ作品〕など収録)付。

◎目 次

はじめに 免田さんに二度会う 高峰 武
凡例
免田事件関係地図

第1章 通知
第2章 書簡など
第3章 真実を
第4章 時代
第5章 司法
第6章 二つの異議申し立て――無罪判決への再審申立て・年金問題
第7章 記録
第8章 写真が語る日々
第9章 死

免田事件関係年表
コラム
おわりに
付属DVD


関連ページ・・・死刑確定後再審無罪事件
★2022.8.17(No.766) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ヴィクトリア朝の毒殺魔 殺人医師対スコットランドヤード』
(亜紀書房/単行本/ディーン・ジョーブ/2022.8)

医師の仮面を被った悪辣な「紳士」はいかにして次々と女性を殺害し、逃げつづけられたのか。
歪んだ自己顕示欲に塗れた連続毒殺魔と失態が続くロンドン警視庁の攻防を描いた迫真のドキュメント。

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19世紀末のロンドン、切り裂きジャックの凶行(5名殺害)から間もなく、それを上回る9名の女性たちを手にかけた男が現れた……。

──ランベスの毒殺魔<gーマス・ニール・クリーム。

ストリキニーネによる毒殺、中絶手術での殺害、愛人と共謀した夫殺し。
女性蔑視、毒薬への信奉、強烈な承認欲求が生んだ恐るべき「墮胎医」「脅迫者」「性の偏執狂」の本性を暴く。

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「医師が悪の道に走ると最悪の犯罪者になる傾向がある。なにしろ度胸もあり、知識にも事欠かないからね」
──シャーロック・ホームズ(コナン・ドイル『まだらの紐』より)

シルクハットをかぶり、作り笑いを浮かべた邪悪なまなざしの謎めいた人物。
クリームはヴィクトリア期の典型的な悪役像である。

切り裂きならぬ、毒盛りジャック。ヴィクトリア期版ハイド氏。
人の姿をした邪悪と堕落の象徴。(エピローグより)

著者・ディーン・ジョーブ(Dean Jobb)・・・1958年生まれ。新聞記者・ジャーナリスト歴は通算35年。現在はカナダ・ノヴァ・スコシア州ハリファックスのキングズ・カレッジ教授。大学院課程でノンフィクションライティングを教える。専門は犯罪ノンフィクション。2018年よりEllery Queen's Mystery Magazine で、19世紀末から20世紀初期の犯罪を紹介するコラム“Stranger Than Fiction(事実は小説より奇なり)"を執筆中。

★2022.8.10(No.765) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『毒の恋 7500万円を奪われた「実録・国際ロマンス詐欺」』
(双葉社/単行本/井出智香恵/2022.8)


かつて「レディコミの女王」と呼ばれた漫画家のSNSに届いた、ハリウッドスターからのメッセージ。
当初はウソだと思い、相手にもしなかったが、ある日、ビデオ通話をすることに。
そこに映し出されていたのは、まさに映画で見たあのスター俳優だった――。

70歳の女流漫画家が偽りの恋に落ち、借金をしてまで工面した7500万円を失った全記録、
そして悪夢から目覚め、失意のどん底から立ち上がる女の意地と強さをここにすべて綴る。
レディコミの女王が騙された国際ロマンス詐欺の全貌が明かされる。
★2022.8.3(No.764) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『人生はそれでも続く』
(新潮新書/読売新聞社会部「あれから」取材班/2022.8)


赤ちゃんポストに預けられた男児、本名「王子様」から改名した18歳、バックドロップをかけた対戦相手の死に直面したプロレスラー、日本人初の宇宙旅行士になれなかった26歳、万引きで逮捕された元マラソン女王……。22人を長期取材して分かった、意外な真実や感動のドラマとは。大反響の連載をついに新書化。

(目次)
はじめに
1 山で「13日間」の死線をさまよった30歳〈2010〉
2 日本初の飛び入学で大学生になった17歳〈1998〉
3 「キラキラ」に決別、「王子様」から改名した18歳〈2019〉
4 「演技してみたい」両腕のない、19歳の主演女優〈1981〉
5 延長50回、「もうひとつの甲子園」を背負った18歳〈2014〉
6 断れなかった――姿を現したゴースト作曲家〈2014〉
7 福島の山荘を選んだ原子力規制委員トップ〈2017〉
8 3年B組イチの不良「加藤優」になった17歳〈1980〉
9 松井を5敬遠、罵声を浴びた17歳〈1992〉
10 この野郎、ぶっ殺すぞーー「大罪」を認めた検事〈2001〉
11 説得失敗、爆風で吹き飛んだ事件交渉人〈2003〉
12 「私は誰?」日本に取り残された「碧眼」の6歳〈1956〉
13 多摩川の珍客「タマちゃん」を「見守る会」〈2002〉
14 7度目の逮捕、マラソン女王の「秘密」〈2018〉
15 日本人初の宇宙飛行士になれなかった26歳〈1990〉
16 「火の中を通れ! 」貿易センタービル勤務の44歳〈2001〉
17 名回答がベストセラーに「生協の白石さん」〈2005〉
18 三沢光晴さんに「最後」のバックドロップを放ったプロレスラー〈2009〉
19 アフリカから来た、最も有名な国会議員秘書〈2002〉
20 難関400倍、「氷河期」限定採用に挑んだ44歳〈2019〉
21 熊谷6人殺害事件 妻と娘を失った42歳〈2015年〉
22 赤ちゃんポストに預けられた、想定外の男児〈2007年〉
★2022.7.27(No.763) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『スマホで薬物を買う子どもたち』
(新潮新書/瀬戸晴海/2022.7)


カラフルな絵文字に隠語の数々、秘匿アプリが浸透したSNS上では、今日も違法薬物の特売セール。親に隠れて手を出すのは中高生や大学生、売人もまたごく普通の若者たちだ。気楽に手早くお手軽に、スマホを介した「密売革命」によって、子どもたちの薬物汚染は急速に蔓延している。ひと昔前とは様変わりした最新ドラッグ事情から、安易な誤解で広がる大麻の脅威まで、元「マトリ」トップが実例とともに徹底解説。

著者・瀬戸晴海・・・1956年、福岡県生まれ。明治薬科大学薬学部卒業後、厚生省麻薬取締官事務所(通称:マトリ)に採用され、薬物犯罪捜査の一線で活躍。九州部長、関東信越厚生局麻薬取締部長などを歴任、人事院総裁賞を二度受賞。2018年に退官。他の著書に『マトリ 厚労省麻薬取締官』がある。

目次

はじめに――ネットで激変、薬物事情の今

第1章 スマホとクスリ――SNSでは毎日が「薬物」特売セール
SNSの普及がもたらした「密売革命」 隠語を駆使するネット密売の実態 最新のトレンドは「絵文字」 子どもが持つスマホのアプリは要確認

第2章 「わが子に限って」は通用しない(一)――真面目な女子大生が大麻に嵌るまで
最愛の娘が尿の提出を求められた 沖縄旅行で「大麻」初体験 ツイッターで売人に接触 ついに家族にバレるも…… マトリの「ガサ入れ」に遭遇 大麻は「お洒落なハーブ」 薬物乱用は仲間へ伝播する 「金パブ」に酔う若者たち

第3章 「わが子に限って」は通用しない(二)――女子高生を狙う「レイプドラッグ」
睡眠薬が犯罪ツールに 「お姉ちゃん、泣いてるで」 少女に何が起こったか 「学校にも友達にも知られたくない」 出会い系はネット犯罪の温床 「ツイッターはかかりがいい」 SNSで騙されないための注意点 お酒もレイプドラッグになる 出会わなくても「性被害」には巻き込まれる

第4章 「わが子に限って」は通用しない(三)――大学生が覚醒剤密売に手を染めたるまで
わが子が密売人として逮捕される プロが嗅ぎ取った“あやしい"兆候 垣間見える「特有の症状」 ガサ入れ開始 サイレン音で激しい発作 「エスはすげえぞ」 失恋の痛手から薬物に嵌る タタキに遭った素人「密売人」 親からもらった金が注射痕に化ける 薬物の本当の怖さ 骨までしゃぶるから“シャブ"

第5章 乱用から依存、そして死へ――薬物乱用者のリアルな証言
薬物乱用者は見た目で分かるのか 入手先は意外な人物 「乱用」の結果、「依存」が生じる 精神依存と身体依存 なぜ5回も6回も逮捕されるのか 多岐にわたる薬物の種類と、その効果 記憶に残る乱用者「健太」の証言 深入りした先に待つのは死のみ

第6章 危険ドラッグが奪った人生――「被害者にも加害者にもなってほしくない」
猛毒「危険ドラッグ」 数週間で「新種」が登場 遺族の悲痛な胸中と、切なる願い〈長野県中野市での事故〉〈香川県善通寺市での事故〉 二度と悲劇を繰り返してはならない

第7章 緊急提言:大麻合法化は危険である
近年、海外での一部合法化とともに、依存性や健康被害が少ないという安直な誤解が広がり、若者たちの間で急速に蔓延しているのが大麻だ。そもそも大麻とは何か、危険性はどこにあるのか。成分や効力など基礎知識から最新事情まで、27の質疑応答。

薬物は「自分事」――あとがきに代えて
★2022.7.20(No.762) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『明石歩道橋事故 再発防止を願って 隠された真相 諦めなかった遺族たちと弁護団の闘いの記録』
(神戸新聞総合出版センター/単行本/明石歩道橋事故 再発防止を願う有志/2022.7)


11人が亡くなり、247人が負傷した2001年7月の明石歩道橋事故。

「強制起訴第一号」であるこの事件の、「起訴相当4回 それでも地検は不起訴」となった経緯を明らかにする。
さらに、遺族たちのさまざまな取り組みを収載。二度と同じような事故が起こらないように、遺族の手記のみならず、弁護団やマスコミの記録も加え、強い想いを込めて編んだ渾身の一冊。

目次より
1章 明石歩道橋事故とは何か
あの日 歩道橋に向かった人達 / 事故の状況とメカニズム / 遺族「想」(おもい)―遺族たちの手記
2章 事故後の遺族たち
会の結成と活動 / 検察審査会への申し立て―国民のための刑事司法 / 強制起訴事件で検察官役を務める指定弁護士の実務 / 私にとっての歩道橋事故、そして現在、未来
3章 事故から20年、そして21年
遺族の投稿 / 弁護士からの寄稿 / 支援者からの寄稿
テレビ 報道で振り返る / 年表
★2022.7.13(No.761) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『刑期なき殺人犯 司法精神病院の「塀の中」で』
(亜紀書房/単行本/ミキータ・ブロットマン/2022.7)


両親を射殺して出頭。しかし「刑事責任能力」はナシ。統合失調症により心神喪失した凶悪殺人犯はどこへゆくのか。

犯罪精神医療界の構造的な歪みと限界を暴く第一級のノンフィクション。
【精神医療、司法制度に関心のあるすべての人の必読書】

愛を知らない孤独な青年が、ある日、自宅で父と母を射殺した。しかし、統合失調症のため、司法精神病院へ措置入院となる。過剰投薬の拒否、回復の徴候、脱獄未遂、自ら弁護人となっての本人訴訟・・・。そして彼は、今なお病院から出られないでいる。犯罪者は逮捕後、世の人々の前からは消えるが、いなくなったわけではない。人生は続くのだ。重警備の刑務所で、あるいは司法精神病院で・・・。本書は、評決が読み上げられ、判決が下されたところからはじまる物語だ。複雑かつ混沌としてはいるが、その後のストーリーはひっそりと、たしかに存在している。

<当代随一のノンフィクション作家にして精神分析医が描く、殺人犯の青年に降りかかった判決後の驚くべき人生とは>

著者・ミキータ・ブロットマン(Mikita Brottman)・・・作家、精神分析医。オックスフォード大学で英文学の博士号(D.Phil)を取得。イースト・ロンドン大学の講師、インディアナ大学の比較文学科客員教授、パシフィカ・グラデュエイト・インスティチュート人文科学プログラム責任者等を歴任。メリーランド大学芸術学部人文科学科教授を務める傍らメリーランド州の刑務所や司法精神科施設へも足を運び精力的に活動。『刑務所の読書クラブ』など、現実の犯罪にまつわるノンフィクションを複数上梓。

【目次】
■はじめに

1・・・止まった時間
2・・・汝の父母を敬え
3・・・想定外の誕生
4・・・水よりも濃し
5・・・罪の重さは
6・・・「フォーカス・オン・フィクション」
7・・・第八病棟
8・・・リハビリと抗精神病薬
9・・・「拘束衣を解いて」
10・・・過剰に宗教的
11・・・転換点
12・・・薬男
13・・・疑惑
14・・・思考犯罪
15・・・怒りと拘束
16・・・煉獄
17・・・レディ・キラー
18・・・「みな恐れている」
19・・・本人訴訟
20・・・正気が回復するまで

■訳者あとがき
★2022.7.6(No.760) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『日本の確定死刑囚 執行の時を待つ107人の犯行プロフィール』
(鉄人社/単行本/鉄人ノンフィクション編集部/2022.7)


1966年に起きたマルヨ無線強盗殺人事件の尾田信夫から、2015年に大阪府寝屋川市の中学1年生男女2人を殺害した山田浩二まで、2022年6月現在、全国7ヶ所の拘置所に収監されている死刑囚107人を刑確定順に列挙。事件の顛末、公判の争点、確定後の動きに加え、死刑適用の具体的基準、執行当日の手続き、死刑存廃問題など死刑に関する基礎知識も徹底解説。
★2022.6.29(No.759) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『THE GIRLS 性虐待を告発したアメリカ女子体操選手たちの証言』
(大月書店/単行本/アビゲイル・ペスタ/2022.7)


全米を震撼させた、ナサール医師の性虐待事件の真相とは?!

2016年、米国体操連盟の医師が30年近くも女子選手200人余りに性虐待を働いた事件が暴露される。少女たちを護るべき保護者やコーチ、関係機関は何をしていたのか。綿密な取材で犯罪手口や体操界の構造的問題にせまる。

アメリカ体操連盟性的虐待事件・・・事件当時アメリカ体操代表チームのドクター・オブ・オステオパシー(整体を専門に取り扱う医師。参考:オステオパシー)だった米体操協会の元医師・ラリー・ナサールによって、主に未成年の女性選手に対して振るわれた、一連の性的暴行事件。ナサールが医療行為であると偽り自らに性的暴行を行ったと主張する選手らから、ナサールに対する何百件もの訴訟が起こされており、2016年10月、最初の訴訟はに起こされてから後、アメリカ体操女子代表選手らを含む140人以上の女性がナサールから性的虐待を受けた経験があると主張している。2017年7月にはナサールは児童ポルノ法違反について罪状を認め、60年の禁固刑を宣告された。2017年11月22日、ナサールは7件の第一級性的暴行を認め、別の3件の性的暴行については1週間後に有罪答弁が行われた。(「Wikipedia」より)

[推薦] 川本ゆかりさん(新体操元日本代表、1992年バルセロナ五輪出場)

指導者は心に傷を負う選手をけっして生み出してはいけません。選手が声を上げられる環境をつくることも指導者の役割のひとつであって、この努力こそ、選手たちをエンパワーメントし、より高いパフォーマンスを引き出すことになるはずです。選手のみなさんの競技生活がより良いものになることを願います。

土井香苗さん(国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」日本代表)

読み始めたら、とまらない。そしてこれは物語ではなく、現実だ。米国での事件だが、日本のスポーツの場でも性虐待は起きている。まずは、スポーツをするすべての子ども・若者たち、その親たちに読んでほしい。手遅れになる前に。そして日本スポーツ界も今すぐ本気で取り組むべきだ。

ミンキー・ウォーデンさん(Minky Worden:国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」 グローバル・イニシアティブ・ディレクター)

日本のアスリート、保護者、子どもたちに、スポーツで体罰や虐待を受けることは、国際人権法にも、スポーツのグローバル・ルールにも反するということを知ってほしい。 アメリカのトップ体操選手に起こったこの物語は、スポーツに関心を持つすべての人に警告を発している。日本でも、スポーツの安全を担うセンターが設立され、子どもを守るとりくみが動き出すことを願っている。

著者・アビゲイル・ペスタ(Abigail Pesta)・・・ジャーナリスト・作家。ロンドンから香港まで世界各地でキャリアを積み、受賞歴多。共著『How Dare the Sun Rise: Memoirs of a War Child』は、ニューヨーク公共図書館、シカゴ公共図書館など多くから2017年の優良図書に選ばれ、ニューヨーク・タイムズ紙が「胸を切り裂きながらなお詩的な回想録」と評している。ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ各紙、ニューヨーク・マガジン、コスモポリタン、アトランティック、マリ・クレール、ニューズウィーク、グラマー各誌、およびNBCニュースなど、主要メディアに調査報道、特集報道を掲載。ニューヨーク州ブルックリン在住。

[目次]

日本のみなさんへ
まえがき
序文 進もう、手をつないで

第1章 夢
第2章 街
第3章 始まり
第4章 コーチ
第5章 すべてに別れを告げて
第6章 信じてもらえなかった女の子たち
第7章 叫び
第8章 誘惑
第9章 子どもたちの考え方は
第10章 クラブ
第11章 ペテン師
第12章 最後の行動
第13章 崩落
第14章 理事会
第15章 ポーカーゲーム
第16章 公正な裁き
第17章 記憶
第18章 解放
第19章 真相と向き合って
第20章 家族
第21章 ティーン・ウォリアーズ
第22章 法廷
第23章 アーミー・オブ・サバイバーズ

あとがき

スポーツ界における性暴力被害救済のために
訳者あとがき
★2022.6.22(No.758) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『日本昭和トンデモ事件大全』
(タツミムック/2022.3)


当時社会を騒然とさせた有名大事件から、秘かに事件史に残るトンデモ事件までエキセントリックで常軌を逸した“怪事件"の数々!! 昭和という時代ならではの恐ろしい猟奇的な事件、不可思議な事件、ユニーク・珍事件、未解決事件など、“トンデモ"と呼ぶにふさわしい怪事件の数々を紹介する。社会を騒然とさせた大事件から、本やインターネットなどでもほとんど語られていないような「知られざる事件」まで多数掲載。また、当時の新聞記事ほかのビジュアル要素も交えつつ展開する。昭和の様々なアイテム・事象を振り返る「日本懐かし大全シリーズ」の一冊。

【構成】
■第1章 狂気・猟奇事件編
・藤沢悪魔祓いバラバラ殺人事件
・三菱銀行人質事件
・津山事件
・陰獣倉吉事件
・中年男性油炒め事件
・少年誘拐ホルマリン漬け事件
・内縁の妻コンクリート詰め殺人事件
・猟奇少年の墓荒らし事件
……ほか

■第2章 不可思議事件編
・SOS遭難事件
・胎児遺体縫い込み事件
・永代橋ミイラ事件
・都知事選死人立候補事件
・2年間無賃乗車少年事件
……ほか

■第3章 オカルト事件編
・手首ラーメン事件
・「死神の夫」事件
・八幡の藪知らず関連事件
・渋谷の人喰い松事件
……ほか

■第4章 ユニーク・珍事件編
・死体買取遺言事件
・童貞老人花嫁募集事件
・名古屋城金シャチ盗難事件
・太陽の塔籠城事件
・弁当盗み食いバリケード事件
……ほか

■第5章 未解決事件編
・長岡京ワラビ採り殺人事件
・名古屋妊婦切り裂き殺人事件
・ポンプ所身元不明女性バラバラ殺人事件
・福島女性教員宅便槽内怪死事件
……ほか

■特集 明治・大正の怪事件
食人編/英雄視編/体内編/怪獣編/珍事編

■コラム
・“人体を材料とした薬"とそれを求める人々
・衝撃の「チン切り事件」!! 阿部定は複数いた!
・新聞に掲載された謎の生物たち
・新聞に掲載された“奇人"たち
・明治~昭和時代の事件・実録系映画
・昭和中期~平成初期の“神隠し"事件

■昭和カルチャーと事件年表

……etc.
★2022.6.15(No.757) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『非行少年たちの神様』
(青灯社/単行本/堀井智帆/2022.6)


福岡県警少年サポートセンターで21年間2000人に関わった、非行少年と親たちへの支援の記録。虐待による愛情飢餓、非行に走った子どもの立ち直りを、長い時間をかけて母親代わりに見届ける。・兄は祖父に殴り殺され、母は薬物依存に──万引き常習少年との出会いと成長。・7人の父親を持ち、母にラブホテルにまで付き合わされた孤独な少女。無断外泊や大暴れの日々から、自身が母親になるまでの長い交流。・父親からの性暴力を告白した少女の、「生きる」決意と支援者としての活動。・両親が逮捕され、社会に拠り所を失った少年をどう救うか。「信用できる大人」とは? ・子どもの非行防止に、親が心がけるべきこと=「親子の愛情形成」のアドバイス。

著者・堀井智帆(ほりい・ちほ)・・・1977年、横浜市に生まれる。西南女学院大学福祉学科卒業。児童養護施設勤務をへて、福岡県警察本部北九州少年サポートセンター勤務。 少年非行の根っこに寄り添い、その背後にある虐待の問題に取りくむ。2020年10月、NHKテレビ「プロフェッショナル 仕事の流儀」出演、大きな反響をよぶ。2022年、同センターを退職。現在はフリーの立場で子ども相談、講演活動などを行う。

【目次】
1 異色の職場に辿りつくまで
2 小学生の無免許バイク登校
3 あの日の出来事の記憶
4 7人の父を持つ少女 連鎖を食い止めろ
5 性虐待を受けていた女の子 這ってでも生きる
6 引きこもり少年の家庭内暴力
7 「重大事件加害者の息子」として
8 ネグレクト家庭でのトラウマ
9 初回面接 親の「愛着」と夫婦の家事分担
10 問題行動に隠されたメッセージ
11 我が子を非行に走らせないために
12 おわりに ただただ寄り添う
★2022.6.8(No.756) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『わいせつ教員の闇 教育現場で何が起きているのか』
(中公新書ラクレ/読売新聞取材班/2022.6)


長年見過ごされてきた、教員から教え子へのわいせつ事案。近年では、SNSを利用した教員・生徒間のコミュニケーションや、少子化によって生まれた「空き教室」の悪用などにより、被害者が増え続けている。読売新聞ではキャンペーン報道「許すな わいせつ教員」でこの問題を独自に調査。教育現場で起きていることや、その深刻な被害の実態、そして、国会での「わいせつ教員対策新法」の成立までを追った――。
★2022.6.1(No.755) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『重信房子がいた時代 増補版』
(世界書院/単行本/由井りょう子/2022.5)


2022年5月28日、日本赤軍の重信房子が20年の刑期を終えて出所した。 フツーの女子大生が革命家になるまでの足跡を、本人、家族、娘、同級生らの証言を丹念に聞き取ったノンフィクション。 重信房子を通して、あの時代の熱量を再現する。

著者・由井りょう子・・・1947年、長野県生まれ。 大学在学中から雑誌記者の仕事を始め、主に女性誌で女優や作家のインタビューを手がける。 著書に作家・船山馨夫婦の評伝『黄色い――船山馨と妻・春子の生涯』共著に『戦火とドーナツと愛』など。

関連ページ・・・日本赤軍と東アジア反日武装戦線
★2022.5.25(No.754) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『「死刑になりたくて、他人を殺しました」 無差別殺傷犯の論理』
(イースト・プレス/単行本/インベカヲリ★/2022.5)

「死刑になるため」、「無期懲役になるため」と、
通り魔を行い、放火をし、見ず知らずの人を傷つける凶悪犯が後を絶えない。
彼らはなぜ、計画を実行し犯罪をおかすことができたのか。
我々と、あるいは彼らと同じ境遇にいる人々と、何か違うのか。
本各界の研究者、彼らを救済する人びとに上記の問いを投げかけ、
そのインタビューの中から「彼ら」の真の姿、そして求めているものを探る、ルポルタージュ。

【取材者】
秋葉原無差別殺傷事件犯人 加藤智大の友人 大友秀逸氏
宅間守・宮崎勤らの精神鑑定士 長谷川博一氏
東京拘置所・死刑囚の教誨師 ハビエル・ガラルダ氏
永山則夫の元身柄引受人候補 市原みちえ氏
10代少女毒物殺人事件 支援者 阿部恭子氏
元刑務官 坂本敏夫氏 など

著者・インベカヲリ★・・・1980年、東京都生まれ。写真家。短大卒業後、独学で写真を始める。編集プロダクション、映像制作会社勤務等を経て2006年よりフリーとして活動。2013年に出版の写真集『やっぱ月帰るわ、私。』で第39回木村伊兵衛写真賞最終候補に。2018年第43回伊奈信夫賞を受賞、2019年日本写真協会賞新人賞を受賞。写真集に『理想の猫じゃない』 / 『ふあふあの隙間123』がある。ノンフィクションライターとしても活動しており、「新潮45」に事件ルポなどを寄稿してきた。著書に『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』 / 『私の顔は誰も知らない』など。

【目次】
第1章 加害者家族を救う人
阿部恭子
NPO法人WorldOpenHeart理事長

第2章 自殺と他殺を受け止める人
大友秀逸
「秋葉原無差別殺傷事件」犯人加藤智大の友人

第3章 殺人犯を教えさとす人
ハビエル・ガラルダ
教誨師

第4章 「傷つけたい」思いと対話する人
長谷川博一
こころぎふ臨床心理センター センター長

第5章 「生きづらさ」に向き合う人
大石怜奈・石神貴之
学生団体YouthLINKメンバー・OB

第6章 「死刑になりたい」殺人犯を支え続けた人
市原みちえ
「いのちのギャラリー」管理人

第7章 家族と嗜癖から人間を見る人
斎藤学
家族機能研究所・精神科医

第8章 社会と犯罪の関係を研究する人
岡邊健
京都大学大学院教育学研究科教授

第9章 死刑を執行する人
坂本敏夫
元刑務官
★2022.5.18(No.753) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


『トマトソースはまだ煮えている。 重要参考人が語るアメリカン・ギャング・カルチャー』
(左右社/単行本/HEAPS編集部/2022.6)


獄中でウクレレやマンドリンを奏でるアル・カポネ、動物園の猿と友達になる大御所ファミリーのボス、フォードV8で突っ走るボニー&クライドに、ギャング映画御用達俳優たちが集まる秘密の会合……
『ゴッドファーザー』『グッドフェローズ』『アンタッチャブル』などの有名映画に描かれ、殺し殺されの裏社会を生き抜いた者たちの食、ファッション、趣味を覗き見。
NYにひっそり佇む博物館、「ミュージアム・オブ・ザ・アメリカン・ギャングスター」館長の「ギャングにいちばん近いカタギ」、ローカン・オトウェイ氏を重要参考人に、時に冷酷、時に珍妙なギャングスターたちの噂話をたっぷり聴きだし、しっかり収録した、書き下ろし入りの全35エピソードにご期待あれ!
★2022.5.11(No.752) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ベリングキャット デジタルハンター、国家の嘘を暴く』
(筑摩書房/単行本/エリオット・ヒギンズ/2022.3)

国家は平然と嘘をつく。
その虚偽を真っ先に暴いたのは大手メディアではなく、
オンラインに集う無名の調査報道集団だった。
世界中が注目する彼らの活動を初公開する。

大手メディアも驚くほどの速さと正確さで次々にスクープを飛ばし、いまや世界中から注目される調査報道ユニット〈ベリングキャット〉。シリア政府の戦争犯罪をあばき、ロシアの暗殺者の身元を特定し、ウクライナで民間機を撃墜した黒幕をも突き止める。いったいかれらは何者なのか? なぜそんなことが可能なのか?

始まりは、キッチンテーブルで見た〈アラブの春〉の現地動画だった。ここはどこだ、映っているのは本物なのか。オンラインゲームにはまっていた著者は、ネット上に集った仲間とともに、独学でまったく新しい調査手法を作り上げてゆく。

かれらが使うのは、SNSの投稿や流出した名簿など公開された情報のみ。フェイクもプロパガンダも混在するウェブ情報のなかから、権力者たちが望まない真実へたどりつくのだ。

権力者は平然と、見えすいたウソをつく。その虚偽を覆すことは私たちにも可能だ──。
ポスト真実の時代に生まれたデジタルハンターたちの活躍を描く。

著者・エリオット・ヒギンズ(Eliot Higgins)・・・1979年生まれ。英国市民ジャーナリスト。民間の調査報道機関「ベリングキャット」の創設者。ウクライナで起きたマレーシア航空17便撃墜事件へのロシア軍の関与を暴いたことで一躍世界から注目される。カリフォルニア大学バークレー校の〈ヒューマン・ライツ・センター〉の研究員で、国際刑事裁判所の技術顧問委員会のメンバーでもある。2019年、『プロスペクト』誌によって世界最高の思想家50人のひとりに選ばれた。

【目次】

ベリングキャット──デジタルハンター、国家の嘘を暴く
introduction
1 ラップトップ上の革命──ネット調査の可能性に気づく
マスコミ瀕死、ニュース万歳/シリア──取材のできない戦争/情報戦争と樽爆弾/『ニューヨーク・タイムズ』の第一面/化学兵器の露見/どこまで行けるか
2 〈べリングキャット〉の誕生──探偵チームの形が整う
知らぬどうしの集まり/欺瞞と証拠/モスクワを指弾した学生/凶器の「指紋」/世界じゅうの探偵
3 事実のファイアウォール──デジタル・ディストピアへの反撃
反・事実コミュニティ/防火壁(ファイアウォール)を築く/ネットの憎悪(ヘイト)が実社会へ/罠を無効化する/一般の人々を巻き込む
4 ネズミが猫をつかまえる──スパイ事件が時代を画する事例に
オープンソースの範囲を越える/仮面を吹き飛ばす/第三の男/29155部隊と「研究所」/リスク
5 次なるステップ──正義の未来とAIのパワー
未来の戦争のための青写真/AIの危険と可能性/ここからどこへ
補遺 暗殺者と対決──〈べリングキャット〉、暗殺団に電話する
「チーム」が真のチームに/ベルリンのオートバイ殺人
謝辞/あとがき──日本の読者のみなさんへ/訳者あとがき/原註
★2022.5.4(No.751) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ルポ池袋 アンダーワールド』
(大洋図書/単行本/中村敦彦&花房観音/2022.5)


魔都東京、異形の街で見た女、死、怪ーー。
SDGsと再開発の裏で起きる怪異と殺人事件。闇に集う娼婦と異常性欲者たち。ここは暗黒街か、黄泉の国かーー。
気鋭の作家ふたりが紡ぐ妖しくも猥褻なノンフィクション。

著者・・・

中村淳彦(なかむら・あつひこ)・・・1972年、東京都目黒区生まれ、板橋区在住。無名AV女優インタビュー『名前のない女たち』シリーズ、貧困女性の実態をルポした『東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか』ほか著書多数。

花房観音(はなぶさ・かんのん)・・・1971年、兵庫県生まれ、京都府在住。2010年『花祀り』で第一回団鬼六賞大賞を受賞しデビュー。官能小説やホラー小説、エッセイほか執筆活動の傍ら京都観光のバスガイドを務めている。

第一章 池袋の怪
心霊スポット/人斬り一族/江戸川乱歩の棲家

第二章 史上最高齢のSM女王様
異常が日常/聖水ショー/未来都市の住人/女の足の匂いを嗅ぐ

第三章 池袋の女
醜い女/首都圏連続婚活殺人事件/愛さないから愛される

第四章 変態ママと殺人事件
特殊性癖を語る場所/露出が好きな主婦だった/桶川ストーカー殺人事件/高齢化する変態たち

第五章 池袋の死
悲劇を巻き込む/四面塔の怪異/上級国民の暴走/無差別殺人/ひとりでは死ねないから

第六章 街娼は駅前に立つ
消えた立ちんぼ/SDGsの犠牲者/お掃除とフェラチオ/義父に襲われる/住民票もない

第七章 池袋の宿
ラブホテル/出会いカフェ殺人事件/売春の罪/若くない女の欲望/死にたいなら殺してあげる

第八章 埼玉県の植民地
東京の入り口/女子大生風俗嬢/東武東上線で乙女ロードへ/最低な生活/子ども部屋おじさん/ちゃんとした恋したい

第九章 池袋の疫
恐山/コロナとストリップ/売る女、買う男

第十章 東口と西口のあいだ
地下道/もう元の自分には戻れない/処女のピンサロ嬢
★2022.4.27(No.750) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『誰も加害者を裁けない 京都・亀岡集団登校事故の遺族の10年』
(晃洋書房/単行本/広瀬一隆/2022.3)

惨劇で奪われた最愛の人のため、残された家族は闘った。
加害者の償いとは?  被害者とは誰か?
事故から歩み続けた遺族が見たものは。
10年にわたる取材に基づいた迫真のノンフィクション

2012年4月、京都府亀岡市で無免許の少年の運転する車が集団登校中の児童らに突っ込み、3人が死亡、7人が重軽傷を負う事故が起こった。それから10年。中江美則さんら遺族は、法改正のための署名活動や元犯罪者の更生保護に取り組むなか、「被害」と「加害」の糸のもつれに直面した。その葛藤の先に何があるのか。発生当時から取材する地元紙記者が遺族の心の奥に迫る。

著者・広瀬一隆・・・1982年、大阪生まれ。滋賀医科大学を卒業し、医師免許を取得。2009年に京都新聞社へ入社し、記者として働く。司法や警察の取材において、犯罪被害者の支援やサイバー犯罪などについて問題提起してきた。現在は、科学や医療の領域を手掛ける。

【目 次】
まえがき

第1章 登校中の大事故
暗転した日常/少年の父/散乱するかばんや帽子、そして/娘との別れ/終わらない取材/遺族と出会って/40年前の交通事故/家族がすべて

第2章 裁判と法改正
「居眠り」による事故/無軌道なドライブ/法の壁/署名活動/届かなかった遺族の声/公判、響かない謝罪/本当はゆっくり悼みたい/公判で語った思い/心臓の手術/「すべてがまちがっている」/実現した法改正

第3章 遺族の心の奥
突然の涙/姉を追い越して/幸せを祈った名前/記憶の風化/たわいない日常/会えない孫

第4章 被害者とは誰か
大津事故の現場/誰も訪れない病室で/ネットでの炎上/加害の重み

第5章 「償い」という困難
交通刑務所への取材/償いの意味/「犯罪者」の更生支援へ/元受刑者の声/犯罪更生保護団体の設立/保護司への講演/刑務所で語る「復讐」/美則さんとの対話/道なき道を歩んで

第6章 残された子と生きる街
履けなかった靴/きょうだいの死を伝える/事故後の三姉妹/7年後、語りはじめた母/被害者にも加害者にもならないために/出所後の少年に望むこと

第7章 「日常」を守るために
脳死状態の5日間/マスコミの前に/事故と家族を切り離す

第8章 遺族を取材する理由
照射し合う遺族の言葉/祇園暴走事故/忘れられる事件/京アニ事件で問われる遺族取材/遺族と生きるために

第9章 10年経った次の日
最後の訴え/意見陳述書/10年後の先に
★2022.4.20(No.749) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『獄中で酔う 逮捕という非日常がもたらす意識変容と愉快な留置場生活』
(彩図社/単行本/青井硝子/2022.4)

軽トラで車上暮らしをしながら雑草やキノコを吸いまくった%常を記録しベストセラーとなった書籍『雑草で酔う 人よりストレスたまりがちな僕が研究した究極のストレス解消法』の著者・青井硝子氏が、幻覚成分を含む茶を販売したなどとして2020年3月3日「麻薬及び向精神薬取締法違反幇助容疑」で京都府警に逮捕された。通常、逮捕されれば落ち込むところだが、青井氏はその状況を心から楽しみ、留置場という非日常の空間でさまざまな遊び方を編み出した。

「取調べで酔う」
「アルコールスプレーで酔う」
「筋トレで酔う」
「脳内修行で酔う」
「歯科医の麻酔で酔う」
「愛する人との面会で酔う」
「裁判で酔う」

本書はその内容をリアルかつユーモラスに綴ったものである。
マスコミが注目する裁判の判決は2022年5月9日。判決とともに本書を楽しんでいただけると幸いだ。

著者・青井硝子(あおい・がらす)・・・大学在学中に水質浄化の特許を取り起業するも、人と話すと頭が痛くなる奇病を発症し、芽が出ず失敗。多額の借金を負う。その後、一回死のうと思って行ったバリ島にてシロシビン含有キノコに出会い、心の傷が劇的に癒え頭痛も解消される。この時の経験から、自作の軽トラハウスに住みつつ薬用植物と精神の相関研究に没頭する生活が始まった。二年前に軽トラハウスから山奥の手作り小屋へと拠点を移し、なお研究を継続している。最近は、俗にスピリチュアルと呼ばれている分野を集中して掘り下げている。薬用植物群でも取り切れなかった心の傷にリーチできるような技術をかき集めてきて実践し、自分と同じ悩みを持った人に様々な形で提供している。目指せシャーマン!
★2022.4.13(No.748) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『トゥルークライム アメリカ殺人鬼ファイル』
(光文社/単行本/平山夢明[監]/2022.4)


人知を超えた凶悪殺人犯たち。彼らはなぜ生まれたのか。――犯罪大国アメリカで実際に起きた凶悪殺人事件の真相に迫る、犯罪ドキュメンタリー番組を初書籍化。カリスマ<eッド・バンディから、2010年代の最新事件まで、ラインナップの妙が光る全10事件を、平山夢明による解説と共に完全収録。
★2022.4.6(No.747) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ルポ 性暴力』
(鉄人社/単行本/諸岡宏樹/2022.4)


ここ最近、性暴力を伴う犯罪は増加傾向にある。警視庁の発表によると、令和2年度に都内で発生した性犯罪は強制性交等が約230件、強制わいせつは約550件にのぼるが、あくまで氷山の一角。その他の性犯罪や事件化していないものも含まれば数千件は下らないだろう。本書は、事件の公判記録や関係者への取材を通じて、報道からは伺い知れない性暴力の実態に迫ったルポルタージュである。事実は小説よりも奇なり、加害者と被害者の置かれた特殊な状況は、通常の感覚ではとても理解できないものだ。また本書では、事件の「その後」も可能な限り追いかけた。被害者が当時のトラウマを抱え、報道による二次被害などにも苦しめられているのに対し、加害者は……。性暴力の被害者と加害者が抱える深い闇。

著者・諸岡宏樹・・・ほとんどの週刊誌で執筆経験があるノンフィクションライター。別名義でマンガ原作多数。近著に『実録 怖い女の犯罪事件簿』など。1969年生まれ。三重県出身。
★2022.3.30(No.746) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『リーゼント刑事 42年間の警察人生全記録』
(小学館新書/秋山博康/2022.3)

「おい、小池!」――2001年に発生した徳島・淡路父子放火殺人事件の指名手配犯ポスターは、見る者に強烈な印象を残した。

前代未聞のポスターを生み出したのが、当時・徳島県警で特別捜査班班長を務めていた秋山博康氏だ。少しでも多くの情報提供が寄せられるよう、外部の専門家の力も借りて考案されたものだった。目撃情報を募るために各局の「警察24時」にも多数出演した秋山氏は、その独特な風貌からいつしかこう呼ばれるようになった。

リーゼント刑事――。

2021年3月末で徳島県警を退職した秋山氏が、初の著書で42年の警察人生を1冊にまとめた。

刑事を志したきっかけから、“地方公務員”としては異色のリーゼントを貫く理由、交番勤務の新人時代の苦労や失敗、警視庁出向時の体験、部下の若手刑事たちへの指導などのエピソードを完全収録。「おい、小池!」事件では、潜伏中の容疑者が死亡して発見されるまでの間、どのような思いで11年にわたる執念の捜査を続けたかを明かしている。

著者・秋山博康・・・1960年、生まれ。徳島県吉野川市出身。1979年、徳島県立川島高等学校卒業、徳島県巡査拝命。交番勤務、機動隊を経て、1984年、23歳の時刑事として初配属される。殺人など重大犯罪を担当する本部捜査第一課、凶悪犯罪の最前線の所轄刑事課を中心に31年間刑事として捜査を担当。2000年、警視庁刑事部捜査第一課に出向。オウム真理教事件やルーシー・ブラックマン事件、営団日比谷線中目黒駅構内列車脱線衝突事故、日本航空機駿河湾上空ニアミス事故、世田谷一家殺害事件などに携わる。2001年に発生した「おい!小池」で有名な徳島・淡路父子放火殺人事件に長らく携わり注目され、その後フジテレビ系列、テレビ東京系列などの警察特番で「リーゼント刑事」との呼称で度々登場した。2021年3月31日付で定年退職し上京。「刑事バカ一代」をモットーに元警察官の犯罪コメンテーターとして活動中。
★2022.3.23(No.745) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『知れば知るほど背筋が凍る 世界の未解決ミステリー』
(鉄人社/単行本/鉄人ノンフィクション編集部/2022.3)


犯人の手がかりさえつかめぬまま時効を迎えた殺人、被害者の不可解な行動、身元不明の遺体、警察が事故と結論づけた変死事件、こつ然と姿を消した少年少女、科学では説明できない怪現象。
いったいなぜ? いったい誰が?
今も真相が解明されないコールド・ケース89本!

●千葉港女性バラバラ死体遺棄事件 中年男性3人と同居していた被害者の奇妙な暮らし
●プレジデントホテル1046号室殺人事件 身元不明の被害者、部屋に残された別人物の指紋
●アルファベット殺人事件 犠牲者の少女3人それぞれの名、姓、遺体放置場所の頭文字が一致
●ハリウッド女優ジーン・スパングラー失踪事件 メモに書かれていた「カーク」とは誰?
●日野市小4男児首つり事件 「オートエロティック」による不慮の事故の可能性も
●「L−8飛行船」墜落事件 船内にいるはずの乗務員2人が神隠しのように消失
●実業家チャック・モーガン変死事件 見知らぬ女からの謎の電話と消えた大金
●夜狸猫事件 一晩のうちに全村民、家畜が消失。中国政府の関与を疑う説も
●ハマル=ダバン事件 嘔吐、出血、けいれん。唯一の生存者が語った恐るべき死の瞬間
●堺市市営住宅首つり事件 「あなたの部屋で人が死んでいる」。始まりは1本の怪電話だった and more
★2022.3.16(No.744) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『死体とFBI 情報提供者を殺した捜査官の告白』
(早川書房/単行本/ジョー・シャーキー/2022.3)


史上初めてFBI捜査官が殺人で有罪判決を受けた衝撃の事件を、ニューヨーク・タイムズ紙のベテラン記者が徹底取材した犯罪ノンフィクション。

映画『エージェント・スミス』原作!
主演:エミリア・クラーク、ジャック・ヒューストン 監督:フィリップ・ノイス

1987年。若きFBI捜査官マーク・パットナムは聡明な妻と幼い娘とともに、生まれ育ったアメリカ東海岸を離れ、ケンタッキー州の山間の田舎町パイクビルに赴任した。新しく入る者を拒むヒルビリーの町、出世を望むには厳しすぎる地でよすがとなったのは、彼の「情報提供者」となった麻薬中毒者の女、スーザン・スミスだった。麻薬と元夫の暴力、2人の子どもによってがんじがらめにされたスーザンは、マークの存在に光を見出し、依存を強めていく。家庭にまで浸食してくるスーザンに疲弊しきったマークの妻、強い性的欲求や悪意を隠そうともしないFBIの同僚。谷間によどんだ狂気はやがてマークを深い谷底へと導いていく――。

「生々しく際立つキャラクター、刺すように鋭い洞察力、心理的に打ちのめされる犯罪実録の傑作」
――《カーカス・レビュー》誌

著者・ジョー・シャーキー(Joe Sharkey)・・・作家。アリゾナ州ツーソン在住。ニューヨーク・タイムズ紙で19年間コラムニストを務めたほか、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、フィラデルフィア・インクワイアラー紙でも執筆した。現在はアリゾナ大学で講師を務めている。
★2022.3.9(No.743) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『常識として知っておきたい裏社会』
(彩図社/単行本/懲役太郎&草下シンヤ/2022.3)


「懲役太郎チャンネル」40万人&「裏社会ジャーニー」70万人
YouTube登録者数110万人超えの2人が対談。

現代日本では表と裏との境界が曖昧になり、犯罪の魔の手はあちこちから忍び寄っている。しかし、裏の世界の実情について、一般からうかがい知ることは困難だろう。本書では、裏社会情報の発信者として注目を集める2人による対談を行った。身を守るためにも「常識」として知っておきたい、裏社会のさまざまな事情を詳細に解説。ヤクザや半グレとは何か? どのような活動を行っているのか? どこに危険が潜んでいるのか? 警察や刑務所の内情は? 豊富な経験から語られる真実がここにある!
★2022.3.2(No.742) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『黙殺される教師の「性暴力」』
(朝日新聞出版/単行本/南彰/2022.3)

かたくなに事実を認めようとしない学校、周囲からの誹謗中傷、弁護士からの揺さぶり。 苦悩しながらも声を上げ続けた被害者家族の記録から、性犯罪に対する社会の構造的課題が浮かび上がった。 被害者に強いられる理不尽な現実とは。 埋もれがちな教育現場での「性暴力」の実態を描く。

2020年度に「性犯罪・性暴力等」を理由に処分された公立学校の教員は200人。2011〜2019年度に「わいせつ行為等」で処分された人数を加えると、10年間では2163人になる。被害者の多くは子どもたちで、数字の裏側には、性的虐待で心身を傷つけられ、信じる力を削られた子どもたちがいる。 しかも、この文部科学省の統計には私立学校の教員は含まれていない。もちろん、被害者が泣き寝入りしたり、学校側がかたくなに事実を認めなかったりしたケースも反映されていない。氷山の一角の数字だ。 本書は、こうした統計にも出てこない学校での性犯罪の実態を、実在する被害者の母親の視点からまとめた。筆者の20年間の記者生活で最も印象に残り、権力報道のあり方についても深く考えるきっかけになった事件である。ルポルタージュでの執筆も考えたが、当事者が直面する悩みや苦しみを共有しやすくするため、あえて被害者の母親を一人称にした文体でつづった。関係者のプライバシーを保護する観点から全員を仮名にし、地名も伏せ、一部配慮を施した箇所もあるが、できる限り、裁判記録や議会の議事録などに沿って構成している。

第1章は、子どもが性被害を申告したときの家族の戸惑いと学校の初動。
第2章は、最初からすべての被害をなかなか言い出せないという性犯罪の特徴。
第3章は、裁判闘争の過酷さと人間関係の分断。
第4章は、刑事裁判の結論を受けた学校側の反動。
第5章は、刑事裁判と民事裁判を通じて見えてきた性犯罪被害者の救済を阻んでいる「正体」についてまとめた。

2021年5月に国会で、教員による児童生徒への性暴力を禁止する新法が成立したが、子どもたちを性暴力から守るにはどうしたらいいのか。そして、人生を狂わせる性暴力をなくしていくためにはどうしたらいいのか。一緒に考えたい。(本書「はじめに」より)

著者・南彰・・・1979年生まれ。2002年、朝日新聞社に入社。仙台、千葉総局などを経て、2008年から東京政治部・大阪社会部で政治取材を担当。2018年9月から2020年9月まで全国の新聞・通信社の労働組合でつくる新聞労連に出向し、委員長を務めた。現在、政治部に復帰し、国会担当キャップを務める。著書に『報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったのか』 / 『政治部不信 権力とメディアの関係を問い直す』など。
★2022.2.23(No.741) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『二本の棘 兵庫県警捜査秘録』
(KADOKAWA/単行本/山下征士/2022.3)

「兵庫県警には、”棘”が刺さったまま残っているんや。2本も。これは絶対に忘れてはならん」。先輩刑事が表現した”棘”とは、「114(グリコ森永事件)」「116(朝日新聞襲撃事件)」の2つの未解決事件のことである。その「2本の棘」は、警察退職後30年を経た今なお、著者の心の中に突き刺さり、後悔の念が強く残っている。なぜこの2事件は解決できなかったのか。また、捜査一課長として指揮を執り、執念の末に「少年A」の逮捕に至った背景とは。昭和・平成に起きた凶悪事件担当の元捜査一課長が初めて明かす事件の全て。

著者・山下征士・・・1938年、鹿児島県生まれ。鹿児島県立甲南高等学校卒業後、1958年、兵庫県警巡査を拝命。捜査三課、捜査一課で刑事畑を歩む。1980年代の未解決事件「グリコ・森永事件」「朝日新聞阪神支局襲撃事件」の捜査を担当。1997年の神戸連続児童殺傷事件では捜査一課長として現場を指揮し、解決に導いた。1998年、伊丹署長を最後に退職。最終職階は警視正。

目次(一部抜粋)
・1章 神戸連続児童殺傷事件
チャート図に掲載された「14歳少年A」の実名
神戸新聞社に送られた声明文
6人の幹部たちに限定した「捜査会議」
少年Aを「シロにする」捜査
職質で確認された直径3ミリの「血痕」
ダンテ『神曲』に影響された作文
極秘に進められた早朝の任意同行
・2章 グリコ・森永事件
秘密主義で進められた捜査
「焼き切り」で割られていたガラス
大阪府警と兵庫県警の主導権争い
「キツネ目の男」と7つの音声
・3章 ノンキャリ刑事の青春 昭和事件簿1
「国鉄集団スリ事件」
北朝鮮工作員が上陸した「切浜事件」
・4章 亡き者たちのために 昭和事件簿2
駅へと続いていく「ルミノール反応」
新・指紋照合システムによる事件解決「第1号案件」
特捜部長が語った「取り調べに必要なもの」
「編物教室女性殺人事件」
・5章 朝日新聞阪神支局襲撃事件 「赤報隊」を追って
新聞社「デスク十戒」が示すもの
2種類の「赤報隊」犯行声明
休日の夜に響き渡った銃声
目撃された不審な「白のマーク2」
始動した朝日新聞の「特命チーム」
「疑惑の中心地」からの肉声


関連ページ・・・神戸須磨児童連続殺傷事件 / 赤報隊テロ事件
★2022.2.16(No.740) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ザ・コーポレーション キューバ・マフィア全史 上』
(早川書房/単行本/T・J・イングリッシュ/2022.2)


『ザ・コーポレーション キューバ・マフィア全史 下』
(早川書房/単行本/T・J・イングリッシュ/2022.2)


レオナルド・ディカプリオプロデュース、ベニチオ・デル・トロ主演映画化進行中!

「強靭な血の結束、裏切り、絶大な権力と眩い成功、そして圧倒的な『ゴッドファーザー』の存在。マフィア・サーガに必要なすべてが揃った、残酷なまでの面白さだ」
――ドン・ウィンズロウ

腐敗政権を打倒し、キューバを共産主義化したフィデル・カストロ。その攻撃を避けアメリカへと逃れた人々の中に、ホセ・ミゲル・バトルはいた。キューバの汚職警官であった彼は復讐心を胸に、米軍によるカストロ政権への反攻作戦を担う2506旅団に参集する。ピッグス湾での大敗と悲惨な虜囚生活。辛酸ののち帰米し一族と共に始めたボリータ(数当て賭博)事業の大成功と徹底的な暴力の行使によって、彼はキューバ系アメリカ人による裏社会を牛耳る「ゴッドファーザー」と化していく。冷戦の背後で不気味に蠢く20世紀アメリカの闇を鮮烈に描きだすクライム・ノンフィクション。

著者・T・J・イングリッシュ・・・作家、ジャーナリスト、脚本家。ニューヨーク在住。前作『マフィア帝国 ハバナの夜』を含む3作がニューヨーク・タイムズ・ベストセラーとなったほか、『Born to Kill』(未邦訳)はエドガー賞候補作にも選ばれた。脚本家としてドラマ『NYPDブルー』『ホミサイド 殺人捜査課』にも参加しており、後者では担当話が優れたTV番組に贈られるヒューマニタス賞を受賞している。
★2022.2.9(No.739) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『日本の虐待・自殺対策はなぜ時代遅れなのか 子供や若者の悲劇を減らすための米国式処方箋』
(開拓社/単行本/吉川史絵/2022.2)


メンタルケア先進国アメリカで行われている各種セラピーや対応策を具体的に示し日本での活用方法をアドバイスする!


著者・吉川史絵・・・1982年、埼玉生まれ。ロサンゼルス在住。明治大学文学部卒、ぺパーダイン大学大学院臨床心理学専攻結婚・家族心理セラピー修士課程修了。カリフォルニア州公認結婚・家族心理セラピスト。現地私立中高一貫校のスクールカウンセラーを経て、カリフォルニア州政府犯罪被害者支援プログラム認定の犯罪被害者専門の心理支援エージェンシーに勤務。現在はアメリカ合衆国の3大健康保険システムの一つである健康維持機構カイザーパーマネンテと業務提携にあるクリニックで病院と連携し、クライアントへ心理療法を行っている。

■目次■

まえがき

第1章 虐待にどう立ち向かうか
・子供に接する職業に介入の権限と専門的な知識を与えるべき
・アメリカでの取り組み
子供の虐待がその後の人生にどう影響するかが判明した
・米国では絶対に通報しなくてはならない
・子供に傷が残れば「虐待」となる
・性的虐待で通報義務があるケース
・見過ごされがちだがネグレクトも危険
・虐待とDVは同時に起こっている場合が多い
・虐待防止策はリスク要因を減らし、保護要因を促進すること
・虐待被害者への心理支援にアートセラピーとプレイセラピーを
・オンライン遠隔学習時の虐待対策
〔コラム〕カリフォルニア州ではどのように心理支援を行っているか

第2章 自殺・他殺にどう対処したらよいか
・日本に必要なのは介入に関する専門知識
・自殺に関する「よくある勘違い」と危険信号
・危険信号を見つけた場合の米国での対処法
・他殺願望を吐露された場合の対処法
・アメリカの心理士としての自殺願望への対処法
・米国で積極的介入がされるきっかけになった二つの事例
〔コラム〕心理支援はどのような手順で行われるか

第3章 不登校にどう対処すべきか
・米国では不登校は引きこもりの初期段階と捉えられる
・不登校や引きこもりへの日本での対応はうまくいっていない
・米国では高校生が不登校だと、ネグレクトとして通報されてしまう可能性も
・日本の不登校はほとんど学校と家庭に要因がある
・ルールを破れば罰を与えられる。中高生では評定にも影響する
・問題行動が直らなければ心理士に依頼
・様々な事情でホームスクーリングを選ぶ子が増えている
・コロナ禍でさらに広がるホームスクーリング
・日本でも学校と教師の役割を明確にすべき
・カリフォルニア州では生徒を登校させる義務がある
・教育法に基づき、不登校には4段階の介入
・不登校防止プログラムが若者の非行と犯罪を減少させている
・「不登校=引きこもりの前段階」と捉え、専門家も入れて解決すべき

エピローグ アメリカで心理士として働く私が思うこと

謝辞
★2022.2.2(No.738) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『証言 昭和史の謎 日本を震撼させた重大事件 最後の真実』
(宝島新書/別冊宝島編集部/2022.2)


三億円事件、グリコ・森永などの「未解決事件」。日航機墜落、ロッキード事件、狭山事件など「疑惑の事件」。長嶋茂雄電撃解任、山口百恵引退、猪木vsアリ戦など日本を揺るがした「スターたちの事件」。昭和史に残るさまざまな「事件」を関係者による証言や発掘資料から読み解く、オムニバス事件ノンフィクション。
★2022.1.26(No.737) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『生涯弁護人 事件ファイル1』
(講談社/単行本/弘中惇一郎/2021.12)

村木厚子事件(厚労省郵便不正事件)、小澤一郎事件(陸山会政治資金規正法違反事件)、鈴木宗男事件、マクリーン事件、クロマイ・クロロキン薬害訴訟、医療過誤訴訟、三浦和義事件(ロス疑惑)など、日本の戦後刑事司法史に残る大事件を手がけてきた、伝説の弁護士、弘中惇一郎。「絶対有罪」の窮地から幾度となく無罪判決を勝ち取ってきた「無罪請負人」と呼ばれるその男は、歴史的なそれらの裁判をどのように闘ったのか? 受任の経緯から、鉄壁といわれる特捜検察の立証を突き崩した緻密な検証と巧みな法廷戦術、そして裁判の過程で繰り広げられるスリリングな人間ドラマまで、余すところなく書き尽くす。稀代の弁護士による、法廷を舞台にした唯一無二の思考の指南書にして、類稀なる現代史。

安部英医師薬害エイズ事件、野村沙知代事件、 中森明菜プライバシー侵害事件、加勢大周事件、中島知子事件、「噂の眞相」名誉毀損事件、痴漢冤罪事件、カルロス・ゴーン事件などを扱った『生涯弁護人 事件ファイル2』も同時刊行。

著者・弘中惇一郎・・・弁護士。法律事務所ヒロナカ代表。1945年、山口県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。1970年に弁護士登録。クロマイ・クロロキン事件などの薬害訴訟、医療過誤事件、痴漢冤罪事件など弱者に寄り添う弁護活動を続けてきた。三浦和義事件(ロス疑惑)、薬害エイズ事件、村木厚子(郵便不正事件)、小澤一郎事件(「陸山会」政治資金規正法違反事件)など、戦後日本の刑事訴訟史に残る数々の著名事件では無罪を勝ち取った。

目次
第一章 国策捜査との闘い 
村木厚子事件 
小澤一郎事件 
鈴木宗男事件 

第二章 政治の季節
マクリーン事件
刑事公安事件 

第三章 医療被害と向き合う 
クロマイ・クロロキン事件 
医療過誤事件 

第四章 「悪人」を弁護する 
三浦和義事件  
★2022.1.19(No.736) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ソ連兵へ差し出された娘たち』
(集英社/単行本/平井美帆/2022.1)


崩壊した「満州国」に取り残された黒川開拓団(岐阜県送出)は、日本への引揚船が出るまで入植地の陶頼昭に留まることを決断し、集団難民生活に入った。しかし、暴徒化した現地民による襲撃は日ごとに激しさを増していく。団幹部らは駅に進駐していたソ連軍司令部に助けを求めたが、今度は下っ端のソ連兵が入れ替わるようにやってきては、“女漁り”や略奪を繰り返すようになる。頭を悩ました団長たちが取った手段とは・・・・・・。

著者・平井美帆・・・1971年大阪府吹田市生まれ。ノンフィクション作家。1989年に高校卒業と同時に渡米し、南カリフォルニア大学に入学。同大学で舞台芸術と国際関係学を学び、1993年卒業。その後、一時東京で演劇活動に携わるも、1997年に再び渡米し、執筆活動を始める。2002年に東京に拠点を移す。著書に『中国残留孤児 70年の孤独』 / 『獄に消えた狂気 滋賀・長浜「2園児」刺殺事件』など。
★2022.1.12(No.735) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『臓器収奪 消える人 中国の生体臓器ビジネスと大量殺人、その漆黒の闇』
(ワニブックス/単行本/イーサン・ガットマン/2022.1)

なぜ中国の政治リーダーたちはこのような危険な道を進む医療制度を奨励したのだろうか? この謎に迫るため、ガットマンは、反体制とみなされる法輪功、チベット、ウイグルのコミュニティに深く入り込み、普遍的な抵抗のドラマ、裏切り、精神性に救われた瞬間などを聞き出していく。
脳死による臓器移植が本人の意思の確認なく認められ、人体が部品化されていく現代社会で、一般社会に知られていない闇の部分に光をあて、人道支援を訴える一冊。

著者・イーサン・ガットマン・・・中国専門のアナリスト。人権問題の調査者。共産主義犠牲者記念財団(VOC)中国研究の上席研究員。中国での臓器移植濫用停止ETAC国際ネットワーク共同創設者。The Wall Street Journal Asia, The Weekly Standard, National Review, Investor's Business Dailyなどに寄稿。米国議会、CIA、欧州議会、国連で報告。ロンドン、オタワ、キャンベラ、ダブリン、エジンバラ、プラハ、エルサレムで証言。ブルッキングズ・インスティテューションの元国外政策研究アナリスト。PBS, CNN、BBC、CNBCに出演。2017年のノーベル平和賞候補者。
★2022.1.5(No.734) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ゴーイング・ダーク 12の過激主義組織潜入ルポ』
(左右社/単行本/ユリア・エブナー/2021.12)

過激主義者はどうやって「普通の人びと」を取り込むのか?
白人至上主義、ミソジニー、移民排斥・・・差別的で攻撃的なイデオロギーを掲げる組織は、オンラインプラットフォームを駆使して、周縁のムーブメントをメインストリームへと押し上げる。オンラインで始まった憎悪が、次第に現実世界へと移行していく様子をとらえた、緊迫のノンフィクション。

目次
はじめに

パート1 新人勧誘
第1章 白人以外お断り ネオナチに採用される
第2章 初心者のためのレッドピル −−ヒップな極右組織ジェネレーション・アイデンティティ

パート2 社会化
第3章 トラッドワイフ 反フェミニスト女性たちの罠
第4章 シスター限定 聖戦士の花嫁のシスターフッド

パート3 コミュニケーション
第5章 情報戦争 トミー・ロビンソンの新たなメディア帝国
第6章 ミーム戦争 ヨーロッパ最大のトロール軍団

パート4 ネットワーキング
第7章 オルトテック 世界中の急進派をつなぐプラットフォーム
第8章 Qを追いかけて 陰謀論者の奇妙な世界へようこそ

パート5 動員
第9章 ユナイト・ザ・ライト 過激主義者が集うシャーロッツヴィルの集会
第10章 シルト・ウント・シュヴェルト ネオナチの音楽フェスティバル

パート6 攻撃
第11章 ブラックハット ISISとネオナチのハッカーに弟子入り
第12章 ゲーミフィケーションされたテロリズム ニュージーランド銃乱射事件の背後にあるサブカルチャー

パート7 未来は暗いか?
第13章 最初はすべてうまくいっていた
第14章 2025年の10の予測
第15章 2020年のためのソリューション

あとがき
用語集
謝辞

解説  木澤佐登志
原註
索引
★2021.12.29(No.733) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ルポ 座間9人殺害事件 被害者はなぜ引き寄せられたのか』
(光文社新書/渋井哲也/2022.1)


座間9人殺害事件・・・2017年(平成29年)10月30〜31日にかけて神奈川県座間市のアパートの一室で9人(女性8人・男性1人/東京、神奈川、埼玉、群馬、福島の1都4県の若者)の遺体が発見された。被害者の多くはツイッターで自殺に関する投稿をしていたとされ、この部屋に住む白石隆浩(当時27歳)が死体遺棄容疑で逮捕された。逮捕容疑は8月22日〜10月30日ごろ、氏名や年齢、性別不詳の被害者の死体を損壊し、クーラーボックス内に猫用の砂のようなものをかけて隠し、遺棄した疑い。白石は金銭目的や乱暴目的のために殺害したという趣旨と証拠隠滅をしたと認める供述をしている。部屋からは事件に使用したとみられるノコギリが見つかった。部屋にはクーラーボックスと大型の収納ボックスが計8個あり、このうちの7つに遺体の一部が入っていたという。2020年(令和2年)12月15日、東京地裁立川支部で死刑判決。12月18日、弁護側が判決を不服として控訴。12月21日、白石が控訴取り下げ。控訴期限の2021年(令和3年)1月5日午前0時に死刑確定。

◎内容紹介◎
わずか2ヶ月ほどで9人が犠牲となった座間9人殺害事件。発覚から3年を経て、犯人には死刑判決が下された。しかし、これで終わったとは言えない。Twitterに希死念慮を吐露した女性を大学生がホテルで殺害した池袋ホテル殺害事件(2019年)や、SNSで知り合ったいじめに悩む女子中学生の自殺を幇助した事件(2021年)など、類似の事件は今もなくなっていないのだ。
なぜ、座間9人殺害事件は起きたのか。犯人に引き寄せられた被害者たちはどんな心の傷を負っていたのか。同じような事件を二度と起こさせないために、長年若者の生きづらさについて取材を続けてきたジャーナリストが事件を再検証する。

著者・渋井哲也・・・1969年、栃木県生まれ。ジャーナリスト、中央大学文学部講師。東洋大学大学院文学研究科教育学専攻博士前期課程修了。長野県の地方紙「長野日報」の記者を経てフリーに。これまでにネット事件、自殺問題、若者の生き方、サブカルチャーなどを中心に取材。1998年からはウェブと生きづらさをテーマにした取材も進めている。主な著書は『学校が子どもを殺すとき』 / 『ルポ 平成ネット犯罪』など。

◎目次◎

はじめに
第一章 事件発覚 錯綜する初期報道
1‐1 初期報道
1‐2 報道から見える白石
第二章 面会 見えない犯行の背景
2‐1 最初の面会
2‐2 再びの面会
2‐3 最後の面会
第三章 裁判 明らかになる事件の全貌
3‐1 8月の犯行に関する審理
3‐2 9月の犯行に関する審理
3‐3 10月の犯行に関する審理
第四章 10人目に憧れた女性 「死にたい」とつぶやく理由
4‐1 若者の自殺の現状
4‐2 白石とDMした女性の本音
おわりに
◎著者プロフィール◎

★2021.12.22(No.732) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『エビデンスから考える現代の「罪と罰」』
(現代人文社/単行本/浜井浩一/2021.12)

凶悪犯罪が起こるたびに叫ばれる「厳罰化」は、実は犯罪対策としては機能しない。犯罪の背景には、差別や格差、孤立、生活苦などの、人としての尊厳に関わる困難な環境が存在する。そこへの対応こそが重要である。著者はかつて少年鑑別所、少年院、少年刑務所、刑務所などで働き、また国連機関で各国の事情を研究し、現在は大学で研究を続けている。その豊富な経験と多くの科学的証拠(エビデンス)から、犯罪対策を考える上で忘れてはならないのは、罪を犯す人たちが私たちと同じ人間であり、刑罰を受けた後は地域社会で生活を共にするという事実であると、著者は説く。そして刑罰について考える際には、そのような人たちにどのような人になって地域社会に戻ってきて欲しいのか、そのために何が必要なのかという視点が不可欠だという。このような視点から、最近の国会や法制審議会で具体的に議論となっているテーマを中心に、あるべき犯罪対策・刑事政策を考えるのが、本書である。

著者・浜井浩一・・・龍谷大学法学部教授。1960年生まれ。1984年、早稲田大学教育学部卒業、法務省入省。刑務所、少年院、少年鑑別所などの矯正施設、保護観察所(保護観察官)や矯正局に勤務したほか、米 国・南イリノイ大学大学院派遣留学、法務総合研究所研究官、在イタリア国連犯罪司 法研究所研究員等を経て、2005年、龍谷大学大学院法務研究科教授、2017年から現職。2020年から日本犯罪社会学会会長。法務総合研究所在籍時には、犯罪白書の作成にも携わる。

目次

はしがき

序論 犯罪学とは何か
犯罪とは何か
犯罪者とは何者か
犯罪学とは何か
筆者と犯罪学
本書の構成

第1部 少年非行の諸問題

第1章 少年非行減少の原因を探る
はじめに
世界で減り続ける少年非行
非行減少を説明する3つのキーワード
日本における少年非行減少の理由
日本の少年非行の変化
おわりに サブカルチャーとしての非行文化の衰退

第2章 非行少年たちはどこに行ったのか
はじめに
統計からみた非行文化の衰退
子どもの貧困の増加と非行の減少
警察の取締り方針や防犯対策と少年非行
日本の少年非行はなぜ減少しているのか
スマホと日本の少年非行の減少
おわりに 少年非行減少の先にあるもの

第3章 犯罪統計から見た少年法適用年齢引下げの問題点
はじめに
日本の少年非行の動向
日本の治安に対する少年司法の貢献
年齢引下げが非行少年処遇に与える影響とその問題点
若年犯罪者の特徴
おわりに

第4章 少年事件の裁判員裁判で議論されるべきこと 少年院と少年刑務所の違いを中心に
はじめに
少年犯罪の動向
少年院と少年刑務所における処遇の違い
専門家証人の経験から
おわりに

第5章 家族と非行の犯罪学
はじめに 親と非行
非行と家族の経済状態との関係
エビデンスに基づく刑事政策
保護観察の弱点
因と縁
司法ソーシャルサービスと家族支援
イタリアの社会内処遇
おわりに

第2部 刑罰の諸問題

第6章 刑務所と社会との関係を考える 大井造船作業場の逃走事案から
はじめに
大井造船作業場とは
逃走の原因
逃走の何が問題か
開放刑務所からの逃走をどう防ぐか
逃走しても再犯させない対策
おわりに

第7章 刑事司法と認知症 認知症受刑者から見える刑事司法の課題
はじめに
認知症とは
認知症と責任能力
認知症と矯正処遇
諸外国での状況
おわりに

第8章 懲役刑の廃止と自由刑の一本化の課題
はじめに
懲役刑とは何か
懲役刑の歴史
懲役と強制労働
自由刑の執行における労働の義務と懲役との違い
懲役刑としての刑務作業の功罪
懲役刑と受刑者の高齢化
懲役刑廃止後の刑務作業
ソーシャルファームの活用
おわりに

第3部 犯罪学の最前線

第9章 矯正保護に関するエビデンスから見た日本の犯罪者処遇
はじめに
エビデンスに基づいた政策決定
更生(立ち直り)のプロセス
矯正保護処遇に関するエビデンス
おわりに エビデンスから見た日本の矯正保護の進むべき方向性

第10章 犯罪生物学の過去・現在・未来 脳・遺伝と犯罪
はじめに
犯罪(生物)学の誕生とロンブローゾの生来性犯罪人
ガルの骨相学
ゴダードとカリカック家
遺伝と犯罪
サイコパスと遺伝
脳と犯罪
虐待と脳
脳と責任能力
脳科学と自由意志
おわりに

第11章 日本における外国人犯罪
はじめに
検挙段階で見た来日外国人による犯罪
外国人被告人・受刑者の処遇
各国の外国人受刑者比率
出国命令制度
国際受刑者移送制度
日本におけるマイノリティ問題
おわりに
★2021.12.15(No.731) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『2022年の連合赤軍 50年後に語られた「それぞれの真実」』
(清談社Publico/単行本/深笛義也/2022.1)


逃亡か、死か……。
本当は、何と戦うべきだったのか……。
彼らの「運命」を分けた瞬間とは?

事件をモチーフにしたコミック『レッド』『ビリーバーズ』作者
山本直樹氏インタビューも掲載!

「組織」の前史から崩壊まで、詳細資料も満載!

著者・深笛義也・・・1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援する。所属していたセクトの独善に嫌気がさして決別。30代からライターになり、「週刊新潮」の連載『黒い報告書』などを執筆。著書に『エロか? 革命か? それが問題だ! 』 / 『女性死刑囚 十四人の黒い履歴書』など。

【目次】
Special Interview 1 山本直樹(『レッド』『ビリーバーズ』作者)
Interview 1 加藤倫教
Interview 2 植垣康博
Interview 3 岩田平治
Interview 4 前澤一義
Special Interview 2 大泉康雄(吉野雅邦の友人)
資料編 「組織」の前史から崩壊まで


関連ページ・・・連合赤軍あさま山荘事件
★2021.12.8(No.730) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『暴く者 暴かれるモノ 文書鑑定人の極秘事件ファイル』
(主婦と生活社/単行本/吉田公一/2021.12)

嘘や不正は、かくして暴かれる!
文書鑑定の第一人者が明かす
あの大事件、難事件の舞台裏

著者・吉田 公一(よしだ・まさかず)・・1931年、群馬県生まれ、1953年、東京写真短期大学卒。国家地方警察本部科学捜査研究所に入り、科学警察研究所文書研究室室長、法科学研修所教授、科学警察研究所付属鑑定所長などを歴任。1975年から77年まで、警視庁化学検査所管理官文書鑑定科長。現在、吉田公一文書鑑定研究所代表。主な著書に『文書鑑定人の事件ファイル』 / 『ニセ札鑑定人の贋金事件ファイル』がある。

目次
第一章 筆者識別
第一話 無国籍児を救った外国人女性二人のサイン
第二話 そろって冤罪をまねいた下田事件の四人の鑑定人
第三話 満州国皇帝・愛新覚羅溥儀を裁いた国際軍事裁判
第四話 政界の騒ぎに巻き込まれた竹下登の念書の鑑定
第五話 第二次大戦後の「新教育勅語案」、筆者は誰だ
第六話 土田邸爆破事件、背伸びが過ぎた大学教授の筆跡鑑定
第七話 誤用の漢字が決め手となった父親の遺言書
第八話 借用証書の署名を否認した連帯保証人
第九話 ウソがバレて弁護士をクビにした小料理屋の女将

第二章 世間を騒がせた文書事件
第一話 不法入国でFBIに捕らえられた日本赤軍の菊村憂
第二話 蜂谷真由美こと、北朝鮮工作員・金賢姫の偽造日本国旅券
第三話 不法入国女性“ジャパゆきさん"の偽造パスポート
第四話 認証スタンプを悪用した入国審査官の小遣い稼ぎ
第五話 変造されたアメリカ財務省発行の八十五枚の小切手
第六話 ロッキード事件を暴いた児玉誉士夫の四十九枚の領収証
第七話 テープライターで印字された道警・道庁爆破事件の犯行声明文

第三章 文字にまつわるさまざまな話題
第一話「俺はサムライ」で署名を裁いた内閣総理大臣・吉田茂
第二話 日本人はサインを持っていない
第三話 方言やなまりも文字に書かれる
第四話 似ている漢字の書き方、あなたはどっち派?
第五話 本名から生まれる異名(偽名)
第六話 異体字と呼ばれるさまざまな漢字
第七話 法廷で問題視された漢字の部首名
第八話 筆順には“誤った筆順"はない
第九話 気付かずに書かれている誤字と誤用
第十話 筆順が多い「必」と、一字に七十通りもある「蔵」の筆順
第十一話「千」を「干」と書いても誤りにならない

第四章 文書鑑定雑稿
第一話 ヨーロッパで生まれた「科学捜査」
第二話 日本語版小冊子もある「FBI御案内」
第三話 指紋を廃止とした中曽根康弘の覚書と法務省の水面下の調査
第四話「インク」と「インキ」はどこが違うの?
第五話 機械で大量に作られている三文判
第六話 コンピューターが音をあげた筆者識別の試み
★2021.12.1(No.729) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『マル暴 警視庁暴力団担当刑事』
(小学館新書/櫻井裕一/2021.11)


この刑事は鬼か仏か。ヤクザが恐れた男

暴力、殺人、抗争、恐喝、闇金、地上げ、反グレ、けん銃、覚せい剤、エンコ飛ばし。社会の裏面で蠢く、そんなヤクザたちと常に対決し、身を徹して表社会との防波堤となってきた人たちがいる。暴力団犯罪を専門とする警察の捜査員たち、いわゆる「マル暴」だ。日々の柔剣道訓練で体を鍛え抜き、組員の威勢や恫喝にひるまず、巧妙化する暴力団の知能犯罪を見抜き、取調室でヤクザ一人ひとりの人生と対峙する。四ツ木斎場暗殺事件、日本医科大学病院ICU射殺事件、群馬前橋スナック銃乱射事件、住吉会幹部らによる東京防潮堤工事入札談合事件、岡本ホテル預託金詐欺事件、極東会幹部らによる小指切断重傷傷害事件、山口組幹部らによるC型肝炎薬ソバルディ詐欺事件など。警視庁において40年にわたって暴力団捜査にかかわり、社会を震撼させたヤクザ犯罪をいくつも解決に導いた「剛腕マル暴」が、その捜査秘録を初めて明かす。これが暴力団捜査のリアルだ!

【編集担当からのおすすめ情報】
暴力団事務所に踏む込む刑事たちの映像や写真を見たことがある人は多いはずです。鋭い眼光、ダブルのスーツに、いかついネクタイ。その太い腕に巻かれた「警視庁の腕章」がなければ、どちらが”本職”か見分けがつかないぐらいの迫力。彼らが、いわゆる「マル暴」です。本書では、警視庁で叩き上げの刑事として、暴力団捜査を担当する組織犯罪対策課の管理官まで務めた著者が、自身の経験をもとに「マル暴とは何か」「ヤクザとは何か」をまとめました。緻密で地道な捜査から、取調室での緊張感のあるやり取り、ガサ入れでの丁々発止まで、ここまで詳細に、暴力団担当刑事の活動が、経験者によって記された本はほかにはありません。
★2021.11.24(No.728) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『工作員もどきはスパイの夢を、ターゲットは工作員の幻を見る。 ハイテクノロジー犯罪の落とし穴回避マニュアル』
(デザインエッグ社/単行本/宮嶋久雄/2021.10)


著者・宮嶋久雄・・昭和40年9月26日、秋田県生まれ。学習院大学文学部史学科(専攻は中国史)平成元年3月卒業。同年4月に訪問販売業界の専門紙である(株)訪販ニュース社(東京都文京区)入社。一年半で退職し、以後37歳まで業界紙記者を転々とした。平成15年11月より、警備員として(株)テイケイ(東京)に入社し、令和3年2月まで勤める。平成18年6月からは同社で、駐車監視員として働く。ハイテクノロジーによる加害が酷くなったため、同社を退社し、実家のある秋田に帰る。現在も加害を受けている(令和3年10月)。

目次 

序文 社会主義思想と一神教の戒律が加害プログラムに埋め込まれている  

一、日常的な出来事:多様な解釈が可能/新聞記事の事件 
二、ハイテクノロジー犯罪とターゲット:マインドコントロール/攻撃を知ると軟禁状態となる/音声送信・脳内盗聴/集団ストーカーを意識すると罠にはまる/工作員もどきを欺く為のプログラムか/スパイの証言を信じれるか/統合失調症/言葉は紙に記さなければならない 
三、経緯:南大塚―東長崎/東長崎―秋田 
四、狙われた理由:風車とツキノワグマ/駐車監視員・再開発 
五、攻撃の方法:頭部衝撃波、電気が身体に満ち溢れる/憎悪を増幅させる性器への攻撃/肛門のフツフツ感と低体温 
六、ターゲットの周囲:周囲の人間にも同様の攻撃/母親の原因不明の血便/ドアガラスが破損事件/行動・運動・脳内物質放出の抑制七、映画的シナリオで展開:SFの世界に同化させ英雄願望を刺激/脳内侵入を知る/電気により腹筋が鍛えられる/奇行・恐怖心・服従/劇中劇プログラム/常に自己批判の機会を設ける/善悪二元論で展開するシナリオ/記憶の消去/イメージの訓練と視覚のカクテルパーティ効果/服従の訓練その一 王様ゲーム/服従の訓練その二 四股 
八、マインドコントロールによる行動:交通事故へ誘導/電磁波グッズの工作を指示される/日記はひらがなで書け/奇行への誘導/夜中に秋田駅まで往復/三億円と空素沼 
九、聴覚操作:俳優のような声で音声送信/雑音に言葉を聞かせ、雑音から思考を読み取る/情報を吸い取るだけのバキュームカー/何を言っているか分からない声/短音から言葉が発生、音に言葉を埋め込む/音声の遠近感と方角を操れる/私の理解と同期するルール/「オレの知らない言葉を言ってみろ」/AIが関与している根拠 
十、2021年2月の日記 
十一、鉄塔=GWENタワー説に誘導:某被害者団体に送った手紙/死刑執行の秒読みを聞かせる/「人民の人民による統治システム、AIによる統治システム」(加害者の声)/写真の撮り方を指示される 
十二、軍事機密?に反応を示す 
十三、一回目の110番通報 
十四、人工衛星と登山 
十五、南大塚の出来事の詳細:不可解な隣人/たこ焼きかチジミか/電気は消え物音は聞こえる/謎の外国人名義の郵便物/盗撮で無く脳内が把握されていた/不動産屋と警察から引越をアドバイスされる/2021年5月9日110番通報/一晩中繰り返される「撃て」の命令。「警察だ、やべえ、立ち上がるとやべえ!」/背景に波のような波長の雑音/ファンクションジェネレータの操作か/攻撃的なオルゴール音/耳が遠いのになぜ聞こえたか 
十六、東長崎での出来事の詳細:引っ越し直後から何となく聞こえていた/下のオジさんに部屋での歩き方を注意される/重低音が聞こえ始める/ハラワタ鷲づかみ、肛門が沸騰、部屋が電気風呂/ネットカフェも電気風呂/会社での攻撃/新幹線待合室でも攻撃 
十七、再び経緯を振り返る:トリックはトリガーの設定/some stupid with flare gun/一方的な侵略戦争である

★2021.11.17(No.727) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』
(文藝春秋/単行本/樋田毅/2021.11)


内ゲバが激化していた1972年、秋、早稲田大学構内で起きた川口大三郎君リンチ殺人事件を機に、蜂起した一般学生の「自由」獲得への闘い、その時、キャンパスでは何が起きていたのか。渦中で理不尽な暴力と対峙し続けた筆者による渾身のルポ。

著者・樋田毅・・1952年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部社会学科卒業。朝日新聞社和歌山総局長などを歴任し退社。ジャーナリスト。著書に『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』など。
★2021.11.10(No.726) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ルポ 死刑 法務省がひた隠す極刑のリアル』
(幻冬舎新書/佐藤大介/2021.11)

暴れて嫌がる囚人をどうやって刑場に連れて行くのか?
執行後の体が左右に揺れないよう抱きかかえる刑務官はどんな思いか?
薬物による執行ではなく絞首刑にこだわる理由はなにか?

死刑囚、元死刑囚の遺族、刑務官、検察官、教誨師、元法相、法務官僚など異なる立場の人へのインタビューを通して、
密行主義が貫かれる死刑制度の全貌と問題点に迫る。

●「勘弁してください」刑務官が涙する刑場の業務
●絞首刑を再現した実験では頭部が切断
●最期に会う牧師の苦悩「殺人に加担して赦されるのか」
●確定囚78人が自筆で答えた獄中アンケート
●囚人が目撃した、刑場へと連行されるオウム元幹部
●死刑制度が国家にもたらすプラスとマイナス
●執行方法を定めた法律は明治6年のもの
●極刑を望まない被害者遺族が浴びたバッシング

著者・佐藤大介・・1972年、北海道生まれ。明治学院大学法学部卒業後、毎日新聞社を経て2002年に共同通信社に入社。韓国・延世大学に1年間の社命留学後、2009年3月から2011年末までソウル特派員。帰国後、特別報道室や経済部(経済産業省担当)などを経て、2016年9月から2020年5月までニューデリー特派員。2021年5月より編集委員兼論説委員。著書に『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』(角川新書) /『オーディション社会 韓国』(新潮新書)など。
★2021.11.3(No.725) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『児童養護施設 施設長 殺害事件 児童福祉制度の狭間に落ちた「子ども」たちの悲鳴』
(中公新書クラレ743/大藪謙介&間野まりえ/2021.10)


虐待を受けた子ども、身寄りのない子どもたちが暮らす児童養護施設。2019年、児童養護施設の元入所者が、誰よりも自分に救いの手を差しのべた施設長を殺害。不可解な事件の背景には児童福祉制度の構造的な問題があった。どんな境遇に生まれようが、子どもには等しく未来があるはずだ。そんな思いで筆者は立ち上がった。NHK総合「事件の涙 未来を見せたかった ~児童養護施設長殺害事件~」をもとに執筆した渾身のルポルタージュ。

児童養護施設施設長殺害事件・・2019年(平成31年)2月25日、東京都渋谷区の児童養護施設「若草寮」施設長の大森信也(46歳)が殺害された。同日、殺人未遂の疑いで住所不詳で自称・無職のT(当時22歳)が現行犯逮捕された。Tは若草寮の元入所者で、容疑を認め「施設に恨みがあった。施設の関係者であれば誰でもよかった」と供述している。2012年(平成24年)3月から2015年(平成27年)3月まで、Tは母親との関係性を巡って入所していたという。なぜ、Tは退所から4年後に同施設を訪れ、凶行に及んだのか。同施設には、さまざまな事情で家族と一緒に暮らせない6〜18歳の子供ら約30人が暮らしていた。同施設の評判は良好だが、原則として入所していられるのは18歳まで。2018年(平成30年)9月、Tは家賃を滞納するなどしてアパートを退去させられたが、その際に同施設職員が対応した。そのとき、Tは無職で、ネットカフェで寝泊まりしていた。社会への恨みが、施設への恨みに変わったのだろうか。Tは退所してからも施設職員に金や仕事の話をされることに対し「ストーカーされた」と話していたという。2019年3月13日から5月13日まで、東京地検は刑事責任能力の有無を調べるための鑑定留置を実施。5月17日、Tは鑑定留置の結果などを踏まえ、理由は明らかにしていないが、刑事責任能力は問えないとして不起訴処分となった。10月9日、東京第6検察審査会が「不起訴不当」と議決。検審は議決で「男性が心神喪失中に殺人を犯した蓋然(がいぜん)性が高いとした検討は不十分だ」と指摘。「検察官の判断には納得できないため、再度の検討を求める」とした。2020年(令和2年)4月7日、東京地検は検察審査会の「不起訴不当」の議決を受けたTを再び不起訴処分とした。処分理由を明らかにしていない。

著者・・・

大藪謙介・・NHK報道番組ディレクター。 1985年、京都府生まれ。2008年、NHK入局。名古屋放送局を経て、2013年から報道局政経・国際番組部で政治番組の取材・制作を担当。日曜討論、国会中継のほか、クローズアップ現代「“政治を変えたい"女性たちの闘い」などの制作を担当。

間野まりえ・・NHK社会部記者。1988年、愛知県生まれ。2011年、NHK入局。京都放送局・甲府放送局を経て、2018年、報道局社会部へ。警視庁クラブや厚生労働省クラブで事件・社会福祉を取材。NHKスペシャル「座間9人遺体事件」などの制作を担当。
★2021.10.27(No.724) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『事件でなければ動けません 困った警察官のトリセツ』
(幻冬舎新書/古野まほろ/2021.9)


困って相談しても、警察は人が死ぬような大きな被害が出るまで対応してくれないー市民のそのような警察不信は根強いが、警察は本当に「事件にならないと動いてくれない」のか? 警察の表も裏も知り尽くした元警察官が、被害者の訴えを無視し続けて悲劇を招いた桶川事件や最近の太宰府事件を検証しながら、その実情を分析する。110番・相談・被害届・告訴など警察を動かすツールの使い方から、不良【ゴンゾウ】警察官にあたってしまったときの対処法まで、被害に泣き寝入りせず身を守るための方法も徹底レクチャー。

著者・古野まほろ・・東京大学法学部卒業。リヨン第三大学法学部修士課程修了。学位授与機構より学士(文学)。警察庁I種警察官として警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務し、警察大学校主任教授にて退官。警察官僚として法学書等多数。作家として有栖川有栖・綾辻行人両氏に師事。小説多数。

関連ページ・・・桶川女子大生ストーカー殺人事件
★2021.10.20(No.723) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 『法廷調書』
(月曜社/単行本/永山則夫/2021.11)


1968年の「連続射殺事件」について、法廷で永山本人が事実関係をあきらかにした、唯一の、そして最後の証言。「犯行を犯した本人が一番自分の刑罰を知ってるんだよ。それも分かってほしい」(第18回公判、昭和61年12月12日より)。永山の裁判で事実関係が争われることはなく、永山自身が自分の軌跡を語ることはなかった。その数少ない例外が1審における石川義博による精神鑑定であり、もうひとつがこの高等裁判所における供述である。被告人質問:遠藤誠弁護士

著者・永山則夫・・1949年生まれ。連続射殺事件をおこし1969年逮捕。獄中手記「無知の涙」や新日本文学賞受賞作「木橋」等、文筆活動によっても注目されてきた。1997年8月死刑執行。

目次:

刊行にあたって

|永山裁判とは何だったのか(大谷恭子)
|二人の永山則夫(井口時男)
|法廷調書【第十六回公判:昭和六十一年十一月十二日、第十七回公判:昭和六十一年十一月二十六日、第十八回公判:昭和六十一年十二月十二日】
|永山則夫略年譜


関連ページ・・・永山則夫連続射殺魔事件
★2021.10.13(No.722) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『覚醒剤アンダーグラウンド 日本の覚醒剤流通の全てを知り尽くした男』
(彩図社/単行本/高木瑞穂/2021.10)


我が国の覚醒剤史を紐解くと、「第一次覚醒剤禍」「第二次覚醒剤禍」「第三次覚醒剤禍」の三つに大別されることが分かった。

「第一次覚醒剤禍」は、第二次世界大戦中に眠気を除去し集中力を高めるという理由で日本軍に重宝されたヒロポンの中毒者が終戦直後、混乱した社会情勢のなか多く生まれたことを指すが、以降の「第二次覚醒剤禍」の裏ではヤクザや韓国と日本の、時の両政府が、「第三次覚醒剤禍」の裏ではヤクザや警察や米軍が跋扈していた。

むろん、ヤクザが絡んでいることは誰もが想像できよう。だが、政府や警察や米軍までとは思いもしなかった――。
蔓延り続ける覚醒剤は、いったいどこから来て、どのように流通しているのか。日本のシャブ流通の闇に切り込む!

著者・高木瑞穂・・・ノンフィクションライター。風俗専門誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。著書に『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』 / 『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』ほか。
★2021.10.6(No.721) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』
(創元ライブラリー文庫/ヴィンセント・ディ・マイオ&ロン・フランセル/2021.1)


知られざる検死の世界を描く傑作ノンフィクション!
豊富な解剖経験を基に語る、衝撃の事件の数々。
解剖医だからこそわかった、その意外な真相とは。

男は黒人少年を射殺した犯罪者なのか、正当防衛で発砲した無実の市民なのか。それは死体の傷口から一目瞭然である――。オバマ大統領が声明を出すほどに全米を揺るがした大事件の真相とは?  男児3人は悪魔崇拝者に殺されたのか?  45年間、9000以上の事件を検証してきた練達の検死医が語る、知られざる検死の世界。法医学的に鮮やかに明かされる数々の事件の意外な真相から目が離せない、傑作ノンフィクションが文庫化!

著者・・・

ヴィンセント・ディ・マイオ:・・・1941年生まれのアメリカの法医学者、元検死医。銃創の権威として全米に広く知られる。医学生や法医学者向けの専門書の著書が複数ある。テキサス州サンアントニオの検死局長を長く務めたのち、2006年に法医学コンサルタントへ。全米で注目を集める多くの裁判で専門家として助言や証言を行なっている。

ロン・フランセル・・・ノンフィクション作家。著書に『THE DARKEST NIGHT』などがある。
★2021.9.29(No.720) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』
(講談社現代新書/池上彰&佐藤優/2021.6)

戦後復興期に、共産党や社会党が国民に支持された時代があったことは、今や忘れられようとしている。学生運動や過激化する新左翼の内ゲバは、左翼の危険性を歴史に刻印した。そしてソ連崩壊後、左翼の思考そのものが歴史の遺物として葬り去られようとしている。しかし、これだけ格差が深刻化している今、必ず左翼が論じてきた問題が再浮上してくる。今こそ、日本近現代史から忘れられた「左翼史」を検証しなければならない。

著者・・・

池上彰・・・1950年、長野県松本市生まれ。ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。報道記者として、さまざまな事件、災害、消費者問題、教育問題などを担当する。1989年、記者キャスターに起用され、1994年からは11年にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年よりフリーになり、執筆活動を続けながら、テレビ番組などでニュースをわかりやすく解説し、幅広い人気を得ている。また、九つの大学で教鞭をとる。著書に『相手に「伝わる」話し方』 / 『わかりやすく〈伝える〉技術』ほか著書多数。

佐藤優・・・1960年、東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在ロシア日本国大使館勤務などを経て、本省国際情報局分析第一課に配属。主任分析官として対ロシア外交の分野で活躍した。2005年に著した『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』で鮮烈なデビューを飾り、翌2006年の『自壊する帝国』で大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞を受賞。2020年、菊池寛賞を受賞、ほか著書多数。

【本書の目次】
序章 「左翼史」を学ぶ意義
第1章 戦後左派の巨人たち(1945~1946年)
第2章 左派の躍進を支持した占領統治下の日本(1946~1950年)
第3章 社会党の拡大・分裂と「スターリン批判」の衝撃(1951~1959年)
第4章 「新左翼」誕生への道程(1960年~)

【本書の構成】

◇日本共産党の本質は今も「革命政党」
◇社会党栄光と凋落の背景
◇アメリカで社会主義が支持を集める理由
◇野坂参三「愛される共産党」の意図
◇宮本顕治はなぜ非転向を貫けたか
◇テロが歴史を変えた「風流夢譚事件」
◇労農派・向坂逸郎の抵抗の方法論
◇「共産党的弁証法」という欺瞞
◇労働歌と軍歌の奇妙な共通点
◇共産党の分裂を招いた「所感派」と「国際派」
◇毛沢東を模倣した「山村工作隊」
◇知識人を驚愕させた「スターリン批判」」
◇天才兄弟と称された上田耕一郎と不破哲三
◇黒田寛一と「人間革命」の共通点
◇現在の社民党は「右翼社民」
……ほか
★2021.9.22(No.719) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『死体格差 異状死17万人の衝撃』
(新潮社/単行本/山田敏弘/2021.9)


高齢化が進む日本では、病院外で死ぬ「異状死」が急増しており、その数は年間17万人前後にも及ぶ。しかし、遺体を解剖し、死因究明を行っているのは一部にすぎず、死ぬ場所によってはその死因がきちんと究明されない「死体の地域格差」が生じている。この国では人は死してなお平等ではないのだ。その看過できない実態を、法医学者を中心とした当事者たちが証言する。コロナ禍の最中、知られざる死の現場を炙り出す告発ルポ。

著者・山田敏弘・・・国際ジャーナリスト。1974年生まれ。ロイター通信、ニューズウィーク日本+英語版を経て米MITフルブライト研究員として、国際情勢とサイバーセキュリティーの研究・取材活動に従事。テレビ・ラジオでも活躍。著書に『ハリウッド検視ファイル』 / 『CIAスパイ養成官』など。

【目次】
はじめに コロナ禍の死の現場から

第1章 地域で異なる死因究明

解剖の現場
テレビや映画とは違う
解剖率から見えてくるもの

第2章 捜査に都合よく使われる死因

事件のストーリーが作られる?
「ピンク歯」を疑え
法医学者が踏み越えてはならぬもの
トリカブト事件
中立で公正な立場に徹する

第3章 犯罪の見逃しと闘う孤高の法医学者

問題提起を続ける
「岩瀬なら断れない」
小野悦男事件でわかった法医学の問題点
地下鉄サリン事件
時津風部屋暴行事件と「後妻業」
政治が動いた
理想の法医学教室を

第4章 死因究明の日米格差

世界に通じた日本人法医学者
日米の死因究明制度の違い
各国の死因究明制度
国境なき法医学
死因究明と情報公開
一国一城の主人に

第5章 「死者の人権」を守るために

「死者の尊厳を守る医学」
忘れられない事件
作られた「殺人罪」
新たな薬物の問題

第6章 世界一の解剖数をこなす監察医

日本一多忙な監察医
解剖代は誰が払う?
「神奈川問題」
警察庁長官のお墨付き

第7章 「死後画像」先進県の現状

CTによる死亡時画像診断
「生きている人」への限界
死因と保険
裁判員裁判での大事な役割

第8章 孤独死の凄絶な現場

ゴミ屋敷の中で
「同居孤独死」の現場
孤独死を巡る諸問題

あとがき 一日も早く死因究明制度の確立を
★2021.9.15(No.718) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『9/11 2001年米国同時多発テロ調査委員会報告書』
(ころから/単行本/アメリカ合衆国に対するテロリスト攻撃に関する国家委員会/2021.9)


2001年9月11日、21世紀の世界を変容する大事件が起こった。ニューヨークのワールド・トレードセンター・ビルなどにハイジャックされた旅客機が突っ込んだ米国当時多発テロだ。この事件の真相を究明する国家委員会がアメリカ合衆国で結成され、2004年に最終報告書が米議会に提出された。この500ページにおよぶ報告書を日本人犠牲者の家族でもある住山一貞が心血注いで翻訳したのがこの本だ。9/11テロとも称される事件から20年。「テロの温床」と名指しされたアフガニスタンから米軍など外国軍が一斉に撤退し、ふたたびアフガンは混乱にある。いまこそ、事件の真相を知るための一冊。

住山一貞(すみやま・かずさだ) ・・・1937年生まれ。2001年の9/11同時多発テロで息子の杉山(住山)陽一を亡くした被害者家族。2004年にニューヨークで手にいれた『9/11レポート』の全訳に努めると同時に、テロの歴史、背景を調べあげた。また、9/11事件の風化を防ぐための展示会などを開催している。
★2021.9.8(No.717) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『娘の遺体は凍っていた 旭川女子中学生イジメ凍死事件』
(文藝春秋/単行本/文春オンライン特集班/2021.9)


わいせつ写真の要求、自慰行為の強要――中学校入学間もない凄惨なイジメ。だが学校はイジメを認めず、心に傷を負った少女はある日、忽然と消えた。そして38日後――。遺体は雪の中から発見された。
凄惨なイジメの実態、不可解な学校の対応。遺族・加害者・関係者に徹底取材した文春オンラインの報道は全国的な反響を呼び、ついに第三者委員会の再調査が決定した。北の大地を揺るがした同時進行ドキュメント。母の手記「爽彩へ」を収録。

目次より

遺体は凍っていた
凄惨なイジメの実態
少女は川へ飛び込んだ
加害者たちが語ったこと
中学校はどう対応したか
「イジメはなかった」当時の校長を直撃/第三者委員会による再調査が決定
爽彩さんがネットの友人たちに相談していたこと
大荒れとなった保護者説明会
拡散するデマ、逮捕者も出た迷惑ユーチューバー
第三者委員会のメンバー候補への疑問
市議会で相次いだ事件への質問
「死体検案所」は語る
隠蔽体質の教育委員会は解散せよ――尾木ママの直言
〔資料〕全文公開 Y中学臨時保護者会/母の手記「爽彩へ」
★2021.9.1(No.716) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『きみが死んだあとで』
(晶文社/単行本/代島治彦/2021.6)


1967年、10・8羽田闘争。同胞・山ア博昭の死を背負った14人は、その後の時代をどう生きたのか?
全共闘世代の証言と、遅れてきた世代の映画監督の個人史が交差する、口承ドキュメンタリー完全版。

1967年10月8日、佐藤栄作首相の南ベトナム訪問阻止を図る全学連が、羽田・弁天橋で機動隊と激突、当時18歳だった京大生・山ア博昭さんが死亡した10・8羽田闘争。この〈伝説の学生運動〉に関わった若者たちのその後を描いた長編ドキュメンタリー映画『きみが死んだあとで』を書籍化。山本義隆(元東大全共闘議長)、三田誠広(作家)、佐々木幹郎(詩人)をはじめ、当時の関係者への延べ90時間に及ぶ取材メモをもとにした、映画未収録インタビューを含む口承ドキュメンタリー完全版。「しらけ世代」の代島監督がいちばん憧れた「全共闘世代」のヒーロー、秋田明大(元日大全共闘議長)に迫る書き下し原稿も掲載! 若者は「10・8後」をどう生きたのか。あの時代の貴重な証言がここに。

著者・代島治彦・・・1958年、埼玉県生まれ。映画監督、映画プロデューサー。『三里塚のイカロス』(2017年/監督)で第72回毎日映画コンクール・ドキュメンタリー映画賞受賞。他の映画作品に『パイナップル ツアーズ』(1992年/製作/第42回ベルリン国際映画祭招待作品・第33回日本映画監督協会新人賞受賞)、『まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎』(2010年/監督/2011年度山形国際ドキュメンタリー映画祭クロージング上映作品)、『オロ』(2012年/製作)、『三里塚に生きる』(2014年/監督/2014年度台湾国際ドキュメンタリー映画祭オープニング作品)、『まるでいつもの夜みたいに~高田渡東京ラストライブ~』(2017年/監督)がある。1994年から2003年まで、映画館BOX東中野(2004年以降は「ポレポレ東中野」)の代表を務めた。テレビ番組『戦争へのまなざし 映画作家・黒木和雄の世界』(2006年/NHK・ETV特集)でギャラクシー賞奨励賞を受賞。著書は『ミニシアター巡礼』(2011年/大月書店)など。

【目次】
はじめに
「よく見比べてから判断したいので、いまは入りません」とお断りしました。──向千衣子さんの話
映画『きみが死んだあとで』を撮るにいたった動機
捕虜を撃ち殺す写真を見たのは大きかった。──北本修二さんの話
内ゲバは厭やね。だけど指令があれば、いや、わからないな……。──山ア建夫さんの話
ぼくの話 1
だから「襟裳岬」をふと耳にするだけで胸がジンとする。──三田誠広さんの話
もうちょっとで山アの一周忌やなあと思ったんですけど、その前にやめました。──岩脇正人さんの話
ぼくの話 2
何の役にも立たない老人に、何の意味があるんだと思うでしょうけど。──佐々木幹郎さんの話
49歳ではじめて没頭したんです、いまの仕事に。──赤松英一さんの話
ぼくの話 3
大学では剣道部。もともとは右翼ちっくな少年だったんですが。──島元健作さんの話
わが子に「命」が何なのかを教えてもらいました。──田谷幸雄さんの話
ぼくの話 4
高校時代は何にでもなれると思ってたけど、何にもなれなかったっていうような人生ですね。──黒瀬準さんの話
エイッて、機動隊に追われてホームから線路に飛び降りたんですよ。──島元恵子さんの話
ぼくの話 5
私の救援の原点は、じつは子どもたちなんですよね。──水戸喜世子さんの話
ぼくの話 6
護送車のバックミラーに映った顔を見たら憑かれた顔で「これがハタチの俺なんやなあ」って。──岡龍二さんの話
ぼくの話 7
俺いなくなったら、絶対集まらないから待ってるしかない。だから、ひとりで待っているんだよ。──山本義隆さんの話
ぼくの話 8 終章
あとがき
登場人物紹介
本書に登場する用語の簡易解説
参考・引用文献
関連年表
★2021.8.25(No.715) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『でっち上げ 群馬県警裏金告発者の記録』
(つむぎ書房/単行本/折原璋/2021.8)


警察学校の教官、故中曽根元総理大臣の要人警護、123便捜索無線の指揮など多くの成果を残した優秀な一人の警察官が、組織の裏金作りに抗議したことから、捜査員に尾行され、ありもしない傷害罪で、でっち上げ逮捕され、免職に追い込まれた。裁判所は警察と癒着、冤罪であるにもかかわらず県警側を擁護した。警察組織の裏金作り、黒歴史、国民監視システム、123便墜落事故の捜索の新事実――。これは日本国民が知るべき事実である。腐敗した警察組織を正常化させると誓った群馬県警元警部補大河原宗平の物語ここに解禁!

著者・折原璋(おりはらあきら)・・・群馬県出身。フリーランスにて雑誌記事執筆や出版関連業務に従事。マスコミの体質を批判する活動家の側面を持つ。「最初から捨てる地位を持ち合わせていない」と自負する異色のノンフィクションライター。本作品が処女作となる。
★2021.8.18(No.714) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『盗撮をやめられない男たち』
(扶桑社/単行本/斉藤章佳/2021.9)


「盗撮とは、相手に気づかれないように、日記を盗み見る行為なんです。その優越感は、日常生活では絶対に味わえないですから。そして画像や動画を保存することで、支配欲や所有欲が満たされるのです」(ある盗撮加害者の証言より)

検挙件数がこの10年で倍増している、痴漢と並ぶ日本の2大性犯罪“盗撮”。そんな盗撮が薬物やアルコールと同じく、やめたくてもやめられない「依存症」だと知ったら驚くだろうか。

アジア最大規模の依存症治療施設で、これまでに2000人以上の性犯罪加害者治療に携わってきた専門家である著者が、その手口や心理、治療方法を初めて解き明かす一冊。
盗撮加害者521人の大規模ヒアリング調査でわかった、「盗撮依存」の実態とは?

●四大卒・会社員・既婚の“普通の男性”が盗撮している
●犯行の7割がスマホ。うち9割が「無音アプリ」を使用
●犯行場所となる“盗撮多発エリア”は「電車」と「駅構内」
●加害者1人あたり推定1000回以上の余罪がある計算に!?
●再犯率は4割近く。刑罰と反省だけでは再犯を防げない
●性犯罪の多くは「性欲が原因」ではない!
●盗撮を直接取り締まる法律はないため、法制化が議論に
●東京五輪を機に女性アスリートの被害が社会問題化 etc.

深刻な盗撮被害の実態や、盗撮に依存していくメカニズム、加害当事者へのインタビューから、再発防止のためのプログラム、加害者家族の抱える苦悩、盗撮を軽視・容認する背景にある日本社会の男尊女卑的価値観まで、盗撮にまつわるあらゆるトピックを解説。 巻末には、『おとめ六法』(KADOKAWA)の著者・上谷さくら弁護士と、「盗撮罪」法制化がなぜ必要なのかについて語った対談も収録!

著者・斉藤章佳(あきよし)・・・精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模と言われる依存症回復施設の榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などさまざまな依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、現在までに2000人以上の性犯罪者の治療に関わる。主な著書に『男が痴漢になる理由』 / 『万引き依存症』などがある。
★2021.8.11(No.713) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『家族と刑法 家庭は犯罪の温床か?』
(有斐閣/単行本/深町晋也/2021.8)

従来「法は家庭に入らず」の典型であった刑法が、近時はDVや児童虐待など家庭で生じる様々な問題事象に介入している。「家族構成員を守る場」である家庭が「犯罪の温床」にもなるとの刑法研究者の問題提起を中心に、民法研究者のコメントが添えられる意欲作。

著者・深町晋也・・・立教大学大学院法務研究科教授。

〈目次〉
第1回・第2回 DVの被害者が加害者に反撃するとき(その1・その2)
第3回・第4回 児童が家庭の中で性的虐待に遭うとき(その1・その2)
第5回 家庭において児童ポルノが作り出されるとき
第6回 児童が家庭でタバコの煙に苛まれるとき
第7回 家族によって自分の大切なものが奪われるとき
第8回・第9回 両親が子どもを巡って互いに争うとき(その1・その2)
第10回 死者がその家族によって弔われないとき
第11回 子どもが親による保護を受けられないとき
第12回 子が親から「しつけ」を受けるとき
第13回 妊婦が妊娠中絶に関する情報に接するとき
第14回・第15回 親が子に予防接種を受けさせないとき(その1・その2)
《コメント執筆 石綿はる美》
★2021.8.4(No.712) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『令和ヤクザ解体新書 極道記者が忘れえぬ28人の証言』
(サイゾー/単行本/佐々木拓朗/2021.8)


暴対法、分裂抗争、暴力団排除、コロナ禍……
「これくらい世の中が変わってくれた方が、まだ食うていける。これがワシらの実情や」

新型コロナウイルス感染症は全世界に深刻な影響を与えた。東京五輪を延期した日本は国難に直面していると言っていいだろう。しかし、某二次団体幹部によれば、この国難はヤクザに生きる糧を与えてくれる一筋の光明となっている。逆説的に言えば、現代ヤクザは反社会的勢力と位置付けられ、国難が希望に映るほど追い込まれている。この30年間で暴対法が5度にわたって改正され、そのたびに規制が追加された。シノギ、抗争、組織運営、どの面においても司直の追及を受けることになった。そして、10年前に全国で施行された暴力団排除条例によって、一般社会との断絶が進み、いよいよヤクザは存亡の危機に瀕している。本書は2021年現在、令和ヤクザたちの実情を綴った記録である。(「序章」より抜粋)

著者・佐々木拓朗・・・10数年のわたってアウトロー取材をしてきた元編集者。現在はフリーライターとして、自身の経験や独自の人脈を生かした情報発信を行っている。本作が佐々木名義の初の著作となる。

■目次

第一章 現代ヤクザの処世術
第二章 加入と脱退に見る当世極道事情
第三章 ヤクザの家族
第四章 事件の裏で蠢くヤクザ
第五章 生き方としてのヤクザ
★2021.7.28(No.711) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ゲーム依存から子どもを取り戻す』
(扶桑社/単行本/佐野英誠/2021.8)


「引きこもりや不登校の9割近くがゲーム依存」と主張するフリースクールの塾長が、寮での共同生活を通して「ゲーム依存」の子どもの現状と依存状況からの脱却までを綴る、現代の親の必読書。

1章・子どもたちは何をしているのか~ゲームの実態~
子どもたちとゲームの現状/子どもたちはなぜゲームにはまるのか
2章・親と子のゲーム戦争
不登校、そして家庭内暴力へ/課金システムの罠にはまる子ども/親が子どもの奴隷になる日/食に興味がなくなる子ども/子どもを??れない親たち
3章・子どもたちをゲームから取り戻す
寮での生活で子どもは変わる/子どもを説得する方法/子どもを救う仕事についた理由/必要なのは、本気度と熱量、人間味
4章・ゲーム依存の子どもたちの更生
伊藤塾の寮生活とは/どうして子どもは寮で立ち直れるのか/親子関係の修復/ゲーム依存を乗り越えた先に/卒寮への道すじ
5章・子どもを救うために親ができること
ゲーム依存にならない環境をつくる/「我が家のスタンス」を決める/子どもにゲーム機を与える前に/子どもがゲーム依存気味になったら
★2021.7.21(No.710) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『実録 明治学院大学〈授業盗聴〉事件 盗聴される授業、検閲される教科書』
(社会評論社/ムック/寄川条路/2021.8)


大学当局が教授に無断で講義を録音し、告発した教授を解雇した明治学院大学授業盗聴事件。
「日本の大学界の病弊を象徴する大事件」と呼ばれたこの事件をきっかけに、編者は大学における学問・教育・表現の自由について関係者とともに問い続けてきた。
本書は、事件の発生から東京地裁による解雇無効判決を経て、和解にいたるまでの事件の全貌を明らかにする。日本の大学が直面する問題を取り上げる論集「学問の自由」シリーズ第五弾。

著者・寄川条路(よりかわ・じょうじ)・・・1961年生。ボーフム大学大学院を修了、哲学博士。愛知大学教授、明治学院大学教授などを歴任。専門は思想文化論。日本倫理学会和辻賞、日本随筆家協会賞などを受賞。編著に『表現の自由と学問の自由――日本学術会議問題の背景』 / 『大学の自治と学問の自由』など。

序 章 明治学院大学〈授業盗聴〉事件とは
第一章 授業の盗聴と教科書の検閲──教授側の主張
第二章 組織を守るための秘密録音──大学側の主張
第三章 無断録音を謝罪して和解へ──裁判所の判断
第四章 教員解雇事件と職員解雇事件──二つの明治学院大学事件
第五章 「学問の自由」の侵害──新聞報道から
第六章 明治学院大学の「犯罪」──論説記事から
第七章 大学の危機と人権侵害──学術書籍から
終 章 紛争終結ではなく真相究明を──裁判経験から
★2021.7.14(No.709) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『加害者よ、死者のために真実を語れ 名古屋・漫画喫茶女性従業員はなぜ死んだのか』
(潮出版社/文庫/藤井誠二/2021.7)


2013年、愛知県南知多町の山中で名古屋市の漫画喫茶女性従業員の遺体が発見された。傷害致死容疑で逮捕直後は犯行を認めていた経営者夫婦が「黙秘」に転じ、”死因不明” で不起訴となる。真実を求める被害者遺族らの闘いを追った『黙秘の壁 名古屋・漫画喫茶女性従業員はなぜ死んだのか』を加害者親族の手記や弁護士との対話などを加筆し文庫化。

著者・藤井誠二・・・1965年、愛知県生まれ。ノンフィクション作家。愛知淑徳大学非常勤講師。
★2021.7.7(No.708) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『55の再審裁判事例から誤判の原因を探る 有罪率99.9%に潜む冤罪の危険』
(現代人文社/単行本/丸山輝久/2021.7)


誤判(冤罪)はなぜ起きるのか。刑事事実認定のプロフェッションである裁判官が、なぜ判断を誤るのか。再審裁判事例55件について、その事実認定を実務的視点から分析し、誤判の原因を探る。そして、誤判防止のために何をすべきか、弁護活動の視点に留意して問題提起する。

著者・丸山輝久・・・1943年、長野県生まれ。1967年、中央大学法学部卒業。1973年、弁護士登録。第二東京弁護士会所属。日弁連法律相談運営委員会委員(1993年)、日弁連法律扶助改革推進本部事務局次長(1995年)、第二東京弁護士会仲裁センター仲裁人(1994年)、日弁連司法支援センター事務局次長(1996年)、大宮法科大学院教授(2011〜2015年)などを歴任。原発被災者救済弁護団長就任(2011年8月)、共同代表を経て、現在弁護団員。刑事事件では、日石・土田邸爆弾事件、東電女性社員殺人事件、リクルート事件などを担当し、現在森友学園詐欺事件の控訴審などを担当。主な著作に『隣近所のトラブルに負けない本』 / 『判例を基にした刑事事実認定の基礎知識』などがある。

目次

日弁連が支援した再審請求事件一覧
第一章 誤判の原因は事実認定の誤り
第二章 刑事訴訟手続が備えている誤判防護措置
第三章 再審裁判の趨勢と55再審裁判事例の検討
第四章 再審裁判事例から学ぶべきこと


●55の事例事件
 ・昭和巌窟王事件
 ・加藤事件第六次再審事件
 ・金森老事件第六次再審事件
 ・横浜事件第四次再審事件
 ・ロシア人銃刀法違反事件
 ・窃盗事件
 ・弘前大教授夫人殺人事件
 ・松山事件
 ・強盗等事件
 ・窃盗事件
 ・滝事件
 ・業務上過失致傷等事件
 ・業務上過失致死傷事件
 ・殺人未遂事件
 ・道交法違反事件
 ・暴力行為等処罰に関する法律違反事件
 ・特別背任等事件
 ・少女強姦致傷等事件
 ・米谷事件
 ・強姦致傷等事件
 ・諏訪放火事件
 ・免田事件第六次再審事件
 ・缶ビール詐取事件
 ・梅田事件
 ・榎井村事件
 ・覚せい剤密輸事件第三次再審事件
 ・国税徴収法違反事件
 ・松尾事件第十三次再審事件
 ・布川事件
 ・足利事件
 ・東住吉事件
 ・東電女性社員殺人事件
 ・湖東記念病院人工呼吸器事件
 ・財田川事件 
 ・島田事件
 ・貝塚事件
 ・松橋事件
 ・名張毒ぶどう酒事件第七次再審事件
 ・白鳥事件
 ・江津事件
 ・日産サニー事件
 ・福井女子中学生殺人事件
 ・狭山事件第二次再審事件
 ・鶴見事件
 ・マルヨ無線事件
 ・小石川事件
 ・姫路郵便局事件
 ・恵庭事件第二次再審事件
 ・日野町事件
 ・大崎事件第三次再審事件
 ・難波ビデオ店放火・殺人等事件
 ・豊川事件
 ・三鷹事件
 ・袴田事件第二次再審事件
★2021.6.30(No.707) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『長東日誌 在日韓国人政治犯・李哲の獄中記』
(東方出版/単行本/李哲/2021.6)


韓国の軍事独裁政権時代に、捏造された「在日同胞留学生スパイ団事件」で死刑判決を受けた著者が、13年におよぶ獄中生活を経て出所後、幼い娘、息子に父がどう生きたかを残そうと、獄中記を書き上げた。自白を強要する凄まじい当局の暴力、獄中で展開した人権闘争などが、今、40余年の封印を解いて明かされる。口絵カラー7ページ。「長東(チャンドン)」とは、朝鮮半島から見て長い東で、日本列島のことを指す。

著者・李哲・・・1948年、熊本県出生。1972年、中央大学商学部卒業。1975年12月、高麗大学大学院政治外交学科在学中に中央情報部に連行され、
「在日留学生捏造スパイ事件」で投獄。1、2、3審で死刑判決。1988年10月に13年間の獄中生活を経て出所、翌年帰日。1990年、在日韓国良心囚同友会結成、代表。2015年11月、再審無罪確定。2018年12月第3回「民主主義者金槿泰賞」受賞(在日韓国良心囚同友会)。2019年6月、文在寅大統領より謝罪の言葉を受ける。2020年から「ウリ民主連合」会長。大阪生野区在住。
★2021.6.23(No.706) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『戦前昭和の猟奇事件』
(文春新書/小池新/2021.6)


「哀切! 世に訴へる 肉親愛憎の極致篇」
ひと昔の週刊誌の煽りようですが、今では権威として知られる一流新聞に踊った見出しでした。

大正から昭和に入るころ、犯罪は現代と比べてひとつひとつが強烈な存在感を放っていました。新聞や雑誌が競い合って報道し、読者もこぞって読み漁る――。

そのような報道と受容の在り方が、昭和の時代とともにやってきました。本書では、その発端ともいえる、「鬼熊事件」(1926年)を皮切りにして、合わせて9つの事件とその報道の顛末を紹介します。

著者・小池 新(あたらし)・・・ジャーナリスト。共同通信元編集委員。1947年、千葉市生まれ。東京外語大卒。1972年、共同通信社入社。 社会部、長崎支局、名古屋支社編集部次長、社会部次長、 東京MXテレビ報道部長などを経て、1999〜20077年、編集委員。2008〜2018年、立教大学兼任講師。

◎鬼熊事件
激動の昭和に入る直前。千葉の農村で七人を死傷し、四十日間もの間逃走した事件があった。犯人の鬼熊は、一躍メディアのスターに。

◎岩の坂もらい子殺し(1930年)
東京板橋の貧しい人々の町で、赤ちゃんを育てられない親から「養育金」を貰い、殺していた事件。記者と警察の思惑が絡み合い「大事件」報道化。

◎天国に結ぶ恋(1932年)
華族家の大学生と旧家の令嬢の心中事件が、女性の遺体盗難という猟奇的展開と相まって話題に。「二人の恋は清かった」と空前のブームになった。

◎翠川秋子の心中(1935年)
日本初の女性アナウンサー翠川秋子。夫に先立たれながらも、働いて子どもを成人まで見届けた女性が選んだのは、家出と十数歳下の男性との入水自殺。彼女を追う記者たちの「働く女性への偏見」が炸裂。

◎日大生保険金殺人(1935年)
実父の院長とその妻、娘が共謀して、放蕩息子の日大生を殺害。狙いは、彼にかけられた現在の一億円相当の生命保険金。当時はめずらしかった「保険金殺人」だった。当時の警視庁刑事部長も「前代未聞の犯罪」と唸る。

ほか◎阿部定事件(1936年)◎津山三十人殺し(1938年)◎チフス菌饅頭事件(1939年)◎父島人肉食事件(1945年)など有名事件を紹介。
★2021.6.16(No.705) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ニセ札鑑定人の贋金事件ファイル』
(主婦と生活社/単行本/吉田公一/2021.7)


長年ニセ札鑑定に携わった著者しか知り得ない贋金づくりの巧妙な手口や犯人と捜査陣との知恵比べなど、事件のウラ話が満載。贋金の歴史をはじめ国内と海外の事例も豊富に紹介されていて、この一冊で全てがわかる本です。

著者・吉田 公一(よしだ・まさかず)・・1931年、群馬県生まれ、1953年、東京写真短期大学卒。国家地方警察本部科学捜査研究所に入り、科学警察研究所文書研究室室長、法科学研修所教授、科学警察研究所付属鑑定所長などを歴任。1975年から77年まで、警視庁化学検査所管理官文書鑑定科長。現在、吉田公一文書鑑定研究所代表。主な著書に『文書鑑定人の事件ファイル』 などがある。
★2021.6.9(No.704) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼』
(亜紀書房/単行本/モーリーン・キャラハン/2021.6)

はじまりは、極寒のアラスカの地。 コーヒースタンドでアルバイトをしていた高校生サマンサ・コーニグが姿を消したのは2012年2月2日のことだった。警察は最初、彼女が家出したものと考えた。だが、防犯ビデオの映像には、背の高い男が彼女を店内から誘拐する姿がはっきりと映っていた……。

彼は獲物をおびき寄せ、むさぼり喰う。 全米各地に隠された謎の殺人キット=A犯された数々の誘拐・強盗・暴行殺人、そして独房に残された12個の頭蓋骨の絵。2012年に逮捕され、唐突に獄中死した今世紀最大のシリアルキラーの実態を明らかにする、戦慄のノンフィクション!

著者・モーリーン・キャラハン(Maureen Callahan)・・・ジャーナリスト・ライター・コラムニスト。『ヴァニティ・フェア』『ニューヨーク・ポスト』などに寄稿。ポップカルチャーから政治問題まで、様々なジャンルに亘る執筆活動を行っている。
★2021.6.2(No.703) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『裏切り者』
(早川書房/単行本/アストリッド・ホーレーダー/2021.5)

グリコ・森永事件の犯人がモデルにしたと言われる「ハイネケンCEO誘拐事件」から20年――。実行犯の一人ウィレム・ホーレーダーは釈放後に裏社会をのし上がり、「オランダ史上最悪の犯罪者」と恐れられていた。本書は弁護士でありウィレムの妹のアストリッド・ホーレーダーが、暴力が渦巻くホーレーダー一家の因縁と、ウィレムの罪を告発し証言台に立つまでの一部始終をつづった手記である。正義のために実の兄を売る――究極の選択がもたらした結末とは? 父からウィレムへと受け継がれた恐怖による家族の支配を、断ち切ることはできるのか? オランダで55万部を記録したベストセラー。

著者・ アストリッド・ホーレーダー(Astrid Holleeder)・・・オランダの弁護士・作家。ハイネケン誘拐事件の実行犯でもある裏社会の大物ウィレム・ホーレーダーの実妹で、姉・ソーニャらとともに彼の裁判で最重要証人を務めた。自らの人生と証人になるまでの経緯を綴った回想記である本書は、2016年に刊行され、これまでに55万部を売り上げるベストセラーとなっている。本作に続いて『ある証人の日記(Dagboek van een getuige)』、『家族の秘密(Familie geheimen)』が上梓され、三部作が完結している。
★2021.5.26(No.702) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『18・19歳非行少年は、厳罰化で立ち直れるか』
(現代人文社/単行本/片山徒有ほか/2021.5)


少年法の改正案が提出された。法案には、18・19歳を「特定少年」として、罪を犯した18・19歳を原則検察官送致(逆送)する犯罪の範囲拡大(厳罰化)や起訴されれば実名報道を可能とすることなどが盛り込まれた。少年法は、5度目の改正でますます厳罰化へ向かうことになる。本書は、少年事件事例や少年院出院者の発言などを踏まえて、元家裁裁判官、元家裁調査官、元少年院院長、弁護士らが、法案の問題点を検討する。少年法における非行少年の立直りなど教育的機能を守るにはどうしたらよいかを考える。

目次
【巻頭座談会】厳罰化に大きく踏み出した少年法「改正」──18・19歳を「特定少年」とする改正案の問題点と今後の課題
第1部 18・19歳非行少年の現状と少年法改正
第2部 Q&A 18・19歳非行少年の立直りと少年法
第3部 18・19歳の少年事件事例集 立ち直った元少年たち
第4部 座談会/少年院出院者は語る 痛みを知る人こそ活躍できる社会に
第5部 一言メッセージ集 少年法はもっと生かせる!(各界56名の発言)
【資料篇】少年法改正に反対する声明等
★2021.5.19(No.701) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

『ポンジ詐欺物語 ポンジ マドフ ワード』
(NextPublishing Authors Press/単行本/工藤和久/2021.4)


アメリカではポンジ詐欺と呼ばれる詐欺事件が多発する。この本ではそのうち、3つを選び事件そのものと、その時代背景、犯人の人物等について解説する。3つとは、1920年のポンジ自身によるもの、まだ記憶に新しい B.マドフによるもの、米国元大統領グラントを巻き込んだ F.ワードによるものである。19世紀から21世紀にわたっており、それぞれの事件の時代背景、時代状況は著しく異なる。それが事件のあり方にも大きく関わっている。ポンジは当時差別されていたイタリアなどからの移民の応援を受けていたとされる。マドフはファンド全盛時代の詐欺であり、富裕層が対象であり、初めての国際的に展開したものであた。主に1990年代後半から2000年代はじめにかけての株式市場の好景気の時期に行われた。ワード事件は19世紀に起きたものであり、その時期米国は、銀景気や西部の急速な開発で沸いていた。このようなそれぞれの事件の時代状況についても解説する。個々の事件に立ち入る前に、詐欺事件一般とポンジ詐欺について、米国で出版された詐欺事件に関するベストセラー本などに基づいて解説する。

著者・工藤和久・・・東京都立大学経済学部助教授、筑波大学社会科学系教授、中央大学法学部教授。

目次

第1章 詐欺とポンジ詐欺
第2章 ポンジによる詐欺事件
第3章 マドフのポンジ詐欺
第4章 米国大統領を道連れにした男
第5章 ポンジとマドフのケースの比較

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