メディアとつきあうツール  更新:2004-08-10
すべてを疑え!! MAMO's Site(テレビ放送や地上デジタル・BSデジタル・CSデジタルなど)/サイトのタイトル
<ジャーナリスト坂本 衛のサイト>

[検証ポケモン事件]
ピカチュウからの
警告

≪リード≫
テレビ東京系の人気アニメ
「ポケットモンスター」を見た子どもたちが、
バタバタと倒れた。
この前代未聞の出来事の本質は何だったのか?
テレビ局は今後どんな方策をとるべきなのか?
テレビの、そして人間の抱える未知の領域は広い。
ピカチュウからの警告を真摯《しんし》に受け止めよう。
(「GALAC」1998年04月号)

≪参考リンク≫へのショートカット

12月16日、ピカチュウたちは電脳世界へ

 1997年12月16日夕方――。全国を震撼《しんかん》させた事件は、こんな物語から始まった。

 ポケットモンスターを探し、育てる旅を続けるサトシ、カスミ、タケシの3人は、マッチャ・シティにやってきた。連れているポケモンのピカチュウが、とても疲れた様子。一行は町のポケモンセンターを訪ねることにした。

 センターには、各地からモンスターボールに入ったポケモンが転送されてくる。ところが、転送装置にトラブル発生。送ったはずのポケモンが、届かなかったり、すり替えられたりして、苦情が殺到しはじめた。何が起こっているのか。サトシたちは転送装置を発明した天才・秋葉原博士の研究所を訪ねる。

 研究所で、一行は秋葉原に人間転送装置の中へと誘導された。博士がいうには、何者かがCGポケモン「ポリゴン」0号機を奪い、コンピュータの内部、つまり電脳世界に入り込んで、悪さをしている。お前たちもコンピュータの中に入って、かれらをつかまえてこい、というわけだ。一行は、盗まれたのとは別のポリゴン初号機とともに、電脳世界へと転送されてしまう。

 情報ハイウェイをせき止めて悪事を働いているのは、毎回サトシたちの邪魔ばかりするロケット団の連中(ムサシ、コジロー、ばけねこポケモンのニャースの3人?組)だった。いつものように、モンスターボールを投げて、ポケモン対決が始まる。ついで、ポリゴン同士が対決。ひとまずロケット団をやっつけた。

 そこへ、秋葉原博士が大慌てで連絡してくる。ポケモンセンターから、コンピュータウイルスを破壊するワクチンソフトを打ち込んだというのだ。ワクチンは、コンピュータの中に入り込んだ人間も、ウイルスと見なして攻撃してくる。

 電脳世界では、ワクチンは救急車ロボットの形をしていた。一行はポリゴンの背中に乗り、転送ポイントからの脱出を試みる。ワクチンは、戦闘機に変型して追ってくる。ワクチンが発射したミサイルをいったんは逃れた。

 しかし、ロケット団がバグの穴に落ち込んでしまう。悪さばかりする連中だが、助けないわけにいかない。かれらを連れ転送ポイントへ急ぐ。背後にはワクチンソフトが迫る。

 ミサイルが4本発射され、絶体絶命!! と、ピカチュウが電撃攻撃をして、2本を誘爆させる。だが、残り2本がさらに迫る。命中寸前、脱出成功。研究所は大爆発を起こしたが、サトシたちもロケット団も、無事だった。

質はいまいちでも、子どもには大人気

 以上が、テレビ東京系列で毎週火曜日夜6時30分から放映されていたアニメーション「ポケットモンスター」第38話「でんのうせんしポリゴン」のストーリーである。

 ストーリー自体は、どうということはない。ミクロの電子世界に人間が入り込む設定は、ディズニー映画の失敗作「トロン」(82年アメリカ)のパクリだ。この回はSF仕立てになっていて、人間転送装置は「スタートレック」、ワクチンソフトの目は「2001年宇宙の旅」で暴走するコンピュータHAL、ワクチンソフトが変型する戦闘機は「スターウォーズ」に登場する共和軍のX翼機、強力コマンドによる攻撃は「宇宙戦艦ヤマト」の波動砲というように、いたるところ映画のパクリが散りばめてある。

 またロケット団は、セリフも格好もB級名作アニメ「ヤッターマン」の主人公のパロディで、悪だくみのパターンも同じアニメのドロンボー一味とそっくり。「アンパンマン」に出てくるバイキンマンとドキンちゃんのように、毎回性懲《しょうこ》りもなく悪さして、必ず負ける(すっとんでいって、星と消える)連中だが、憎めない。

 実際、ロケット団一味のニャースが月を見上げながら「この世のどんなものより丸いニャ」と歌うエンディングは、なかなかいい味を出している。

 安易なパクリが多いことといい、絵が荒っぼく、登場人物の表情に乏しすぎること(ひどいのはタケシの顔)といい、アニメとしての完成度が高いとはいえない。テレビ東京のアニメは、系列局の少ないこともあってか、制作費が他局アニメの8割程度といわれるが、そのことはポケモンの作り込みの甘さからもうなずける。

 しかし、幼稚園年長組、小学校低〜中学年を中心に、子どもたちの支持は絶大である。

 もともとは、任天堂のゲームボーイ(手帳サイズの携帯型ゲーム)ソフトとして人気が出た。サイズが似ているせいか「子どもの文芸春秋」の異名をとる小学館の漫画本「コロコロコミック」にも連載中。

 いわゆる「ガチャポン」(「ガチャガチャ」とも。100円入れてカプセル入りのおもちゃを出す)や、カード、シール集めも流行《はや》っている。指人形入りラムネ菓子「ポケモンキッズ」や永谷園「ポケモンカレー」「ポケモンふりかけ」もある。とりわけピカチュウはかわいいキャラクターで、縫いぐるみやフィギュア(人形)の人気も高い。任天堂ゲームボーイ――コロコロコミック――テレビ東京アニメという流れは、田宮模型ミニ四駆の2匹めのドジョウと見ることもできる。

 子どもたちに、何よりウケているのは、さまざまな属性をもつポケモンたちの魅力だ。さらに、それを集めたり育てたり、得意技を駆使してゲームボーイやカードで対戦させたりというおもしろさだろう。

 ポケモンには、恐竜を小さくしたようなのや、蛇みたいのや、鳥みたいのや、蝶みたいのなどいろいろあって、どれも、ウルトラマンだの手塚治虫だのゲームソフトだの映画だのにかつて登場したキャラクターに、どこか似ている、つまり、たいしてオリジナリティがあるとは思えない。

 まあ、それは大人の感想であって、子どもたちはウルトラマンも手塚治虫も(むろん「スタートレック」も「2001年」も)知らないわけだから、150種類だか200種類だかあるポケモンのどれもが新鮮に映るのだろう。

700人が救急車で病院へ

 しかし、誰もが予想もしなかったことが起こった。大好きだったポケモンアニメの、冒頭のストーリーを見ていた子どもたちが、番組の終わりころから気分が悪くなり続々と倒れたのだ。症状には、けいれん、ひきつけ、失神(意識混濁)、めまい、はきけ、不快感、頭痛などがあり、救急車で病院に運ばれる子どもが続出した。

 自治省消防庁の集計によると、ポケモンを見たためと思われる症状によって、救急車で病院に搬送されたのは、翌12月17日午後5時現在で、685人となった。9割近くは小中学生だった。大部分は医者に診てもらった後に帰宅したが、200人の入院患者(一時入院を含む)も出た。うち何人かは重症と伝えられた。

 かつて、テレビのプロレスを見ていた老人が心臓マヒか何かでショック死した、という話があった。また、海外ではテレビゲームで死者が出たというケースがあったとも記憶する。催眠術の実演番組を見て術にかかってしまい、医者を呼んだという事件もあった。

 しかし、テレビを見ていた700人近くが倒れ、病院に運ばれたというのは、世界中を見渡してもテレビ始まって以来の出来事だった。

 そして、被害者は700人にとどまらなかった。事件発生の夜、病院に搬送された子どもが150人とテレビニュースが報じた時点で、実際の患者数は1000人規模、また病院に行かないまでも何らかの影響を受けた子どもは数千人規模に達すると思われた。

 集計は途中経過にすぎないし、患者が必ず救急車で病院に行くとは限らない。しかも、気分が悪く横になったがしばらくして回復し、通院せずにすんだという子どもが、救急車による搬送数の2倍や3倍ですむはずがない、と考えるのが自然だからだ。

 翌朝、子どもの通う小学校に電話してみると、校長が朝礼のときに話をして、気分が悪くなった子どもの手を上げさせたという。3人ほど手を上げたが、救急車で運ばれた子どもはいなかった。親でなく子どもに聞いた情報をもとに断定はできない(そんなとき、何となく手を上げてしまう子も確かにいる)が、児童数が二百数十人の学校で2〜3人。話半分としても、新宿区だけで数十人の子どもが、何らかの体調不良を訴えた計算になる。東京都だけでも軽く1000人以上に達してしまう。

 実際、後日ある新聞社が教育委員会のデータ(朝礼で手を上げさせた類《たぐい》の大雑把な数と思われる)を集計したところ、1万3000人に影響があったという。話半分としても、数千人の子どもたちに影響が出たのだ。恐ろしい事件である。

 ある教員の話では、3年生の学級で「昨日のポケモンをみた人は」とたずねたところ、なんと8〜9割の子どもが手を上げたそうだ。ポケモンは、最近の平均視聴率が17〜18%だが、視聴率調査に表われない特定層の支持率が非常に高いことがわかる。

ポケモンビデオを徹底検証

 では、ポケモンのアニメの、何が問題だったのか。放映されたアニメのビデオテープを繰り返し視聴した印象から報告することにしよう。

 赤と青の光が交互に点滅するシーン(フリッカー。アニメ現場でいう「パカパカ」)が、新聞報道などでは番組終了直前に3〜4秒間あったと伝えられているが、それだけではない。

 実際は、戦闘機型のワクチンソフトから発射されたミサイルが爆発する場面に4シーン(うち1シーンは背景など部分的)。ポケモンセンターでワクチンソフトの強力コマンドが入力されてから、バグの穴がふさがるまでに5シーン(うち部分的が2)。ロケット団を助けて脱出するまでに3シーン(うち部分的が1)。以上合計12シーンで、それぞれ赤と青の光がチカチカと入れ替わり、点滅しているように見える。

 コマ送りしてみると、「赤→青→赤→青」のように1コマごとに入れ替わる場合と、「赤→赤→青」のように2コマ連続のあと入れ替わる場合があることがわかる。もちろん人の目には、どちらも赤と青の急速なチカチカにしか見えない。点滅周期が短いため、ピンク色が点滅しているような感じにも見える。

 もっとも長い時間点滅するのは、ピカチュウが電撃攻撃してミサイル2本が誘爆するシーンで、4秒ほどチカチカが続く。テレビのコマ数(1秒30画面)からすると、1秒間に20回から30回弱の点滅が起こっているものと考えられる。

 これ以外に、光の刺激が強そうな場面を探すと、ポリゴン同士の戦闘場面でポリゴンが、白色光がにじみ出すように光るのが6シーン、ワクチンからの波動砲攻撃で光の玉が出る(同じく光がにじみ出すように、沸き立つように見える)のが3シーンある。このほか、救急車の背後から光の帯が出るシーン、電脳世界への転送場面で同心円パターンが出るシーン、ポリゴンからの落下場面で回路パターンが回転するシーンも、刺激的といえるだろう。

 ストーリーと合わせてまとめると、一行が電脳世界に入った時点から、格子状に張り巡らされた電子回路、その回路を行き来する光など、いつもと違った刺激的な背景が登場する。そして、ロボット団との戦い、ワクチンソフトとの戦いと、一難去ってまた一難の展開が進む過程で、随所に赤青のフリッカーや光のにじみなど、強い刺激が出る。そしてクライマックスで、ダメ押しの長いフリッカーが出るように作られている。

医師たちが指摘する”赤や青の光”

 次に医師の見解を聞こう。

 事件発生の直後、インターネットのホームページ「3Dヒューマンファクターズ」(※注 現在このページは存在しない)に掲載された北里大学医学部長、医学博士石川哲へのインタビューを紹介すると、次のようになる。

 「コンピュータ内部の複雑な幾何学模様の背景のなか、主人公がポリゴンに乗って動いていくのが、一つのキーポイント。これが、通常では起こらない眼球運動を誘発し、船酔いのような症状を引き起こしたと思われる(視性眼振抑制)。その後も、各方向に背景が動く異常な動きに、視聴者が視点を固定してがまんして見るという映像がたくさん出てくる。これが症状を誘発する第一の要因と思われる。次に色の問題。赤と青が閃光《せんこう》のように交互に刺激する場面が多い。(中略)最後にピカチュウが発光するシーンで、青と赤の刺激状態がクライマックスのようなかたちで数秒間出る。網膜の周辺と中心部という異なる部位を交替刺激する特殊な光。これが、もう一つの大きな要因といえる」(要約)

 同じインタビューで、実際に北里病院に担ぎ込まれた子ども3人を診察した砂押渉講師は、次のように語る。

 「診察した3人はけいれんを起こしており、もともと素質があるところに今回の強い刺激があって表面化したと思う。ただ、報道によればたくさんの人に症状が出たようで、すべてにてんかんが起こっていることはなく、みんな同じとは限らない。複合的な要因があるので、光過敏性以外の要素で症状が起こってもおかしくない」(要約)

 同じホームページから、国立小児病院神経料医長の二瓶健次のコメントはこうだ。

 「患者のうち、すべてが『光過敏性てんかん』や『てんかん』ではないと考える。原因は映像中の光の点滅にあると思うが、それだけともいいきれない。点滅、色、子どもの置かれている状況・環境、集中度・没入感が相互作用したと考えるべきだ。けいれん、単なる不快感、めまい、乗り物酔いのような症状、頭痛など、症状もさまざま。診断した子どもは、番組の中頃から気分が悪くなり横になって見ていたら、後半の赤や青の閃光のところで意識を失ったという」 (要約)

 こうした医師たちの見解は、およそ次のように整理できる。

(1)12月16日夕方に放映されたポケモンアニメで多用された、赤と青のフリッカーなどを含む光の刺激が、子どもたちの体の異常を引き起こした。

(2)「光過敏性てんかん」(注「光過敏性発作」「光感受性発作」も同じ意味)の患者もいるが、そうではない患者もいると思われる。

(3)光の刺激に加え、テレビの視聴環境や子どもの集中度などによって、症状が左右された可能性がある。

 新聞報道によると、精神科医の香山リカは、光過敏性てんかんに加え集団ヒステリーの可能性を指摘している。

 だが、集団ヒステリーは同じ場所にいる複数の人間の中で発生するのがふつう。ゲーム機を介して対戦できるポケモンに、いくらコミュニケーション性があるといっても、電卓に毛の生えた程度の液晶画面の戦いを子どもたちが心で共有し、絶体絶命シーンが刺激になって集団ヒステリーを引き起こしたとは考えにくい。

 光刺激を除けば、今回主人公が遭遇した危機など、何ということはない。この程度の「絶体絶命」はアニメなら日常茶飯事、毎度のことだ。自分の子どもを見ていてもわかるが、かれらはアニメに没頭しているときは、脇から何を話しかけても聞こえないほど、その世界に浸っている。

 それでも、アニメが集団ヒステリーを引き起こした例は聞かないのだ。集団ヒステリー説はとりあえず除外できるのではないか。

光過敏性てんかんとはなにか?

 ここで、光過敏性てんかんについて解説しておく。

 欧米では1950年代からテレビ視聴中に発作を起こす患者が発生していたようだが、当時はあまり問題にされなかった。70年ころから患者の増加が伝えられ、81年以降、テレビゲームが引き金となった可能性のある症例が英米の医学誌に報告されるようになった。日本では87年に、てんかん学会で発作症例が報告されている。

 閃光や光の点滅などで発作が起こるもので、発作を誘因するのは、画面のちらつきや光の形の変化など、光の感受性の異常である。光の刺激を受けて脳の中で反射伝達する神経経路や発作に関連する経路(の一部)に問題があるとされる。

 日常生活に差し支えることは少ないようだが、ディスコのストロボライト、音に反応して変調するライト、光り輝く水面、ヘリコプターの羽根でちらつく日光、トンネル内の間欠的な照明なども、発作の引き金になりうる。

 4000人に1人(複数の文献をあたったところ、5000人に1人、1万人に1人という記述もあった)程度の割合でそういう人がおり、女性に多く、幼児や学童期に症状が出る場合が多い。診断には脳波検査が必要で、閃光刺激を与えて脳波の異常(光感受性発作波)をとらえる。発作を繰り返す場合は、抗てんかん薬を服用するが、発作が起こってもその後の経過は良好なことが多い。発作で死に至ることはないとされている。

 今回約700人が病院に搬送されたわけだが、そのほとんどが光過敏性てんかんだったと仮定すると、4000人に1人なら300万人近く、1万人に1人なら700万人が、番組を見ていた計算になる。後に触れるように、この番組を見ていた子どもの正確な数は、あまりはっきりしないが、この計算に大きな矛盾はない。

 しかし、少しでも気分が悪いと感じた数千〜1万人の子どもが光過敏性てんかんだと仮定すると、2000〜3000万人から数千万人以上が番組を見ていた計算となり、明らかに矛盾をきたす。

 もっともありそうなことは、けいれんなど重い症状が出た子どもの多くは光過敏性てんかんであり、気分が悪い程度の軽い症状が出た子どもの多くは光過敏性てんかんではなかった、ということである。

 実は、これはやっかいな結論ではある。というのは、気分が悪い程度の軽い症状が出た子どもと、何の症状も出なかった子どもの差が「よくわからない」ことになるからだ。その差は脳波を検査してもわからないだろう。光過敏性とは別に、5〜10%程度光に敏感な子どもがいるという調査結果もあるようだが、さらに研究が必要だ。

 ただし、テレビの視聴中に、残酷なシーンとか、大嫌いな気持ち悪いものを見て気分が悪くなるということは、日常的にあるだろうから、その原因やメカニズムがよくわからなくても問題はない、ともいえるが。

NHKの事件隠しも露呈

 さて、前代未聞のポケモン事件は、各方面に大きな衝撃を与えた。放送局や行政の対応はどうだったのか。

 問題のアニメを放映したテレビ東京では、12月16日夜、子どもを診察した医師から視聴者センターにかかってきた電話が第一報となった。

 すでに帰宅していた首脳陣はじめ関係社員が呼び戻され、マスコミが玄関ロビーを埋め冬くす混乱の中、善後策が協議された。広報部長・浦本絃によれば、「何かが起こっている。われわれの知らない何かが」というのが、事件発生直後の思いだったという。

 テレビ東京は翌17日、ポケモン第38話の番組販売を中止すること、金沢龍一郎・制作専任局長を座長とする社内調査チームを設置すること、ポケモンの第39話以降と年末年始特番の放映を調査チームの結論が出るまで見合わせること、などを決めた。その後、放映中止期間は、民放連で原因究明とガイドラインの策定がなされるまでに延長された。後日、アニメ制作全社に対する暫定的なガイドラインも示している。これは後述する英ITCのガイダンスにならったものである。

 また、系列各社を動員して、確認できたすべての患者を見舞い、詫びを入れている。

 なお、テレビ東京には当日夜に愛宕署、翌17日には警視庁捜査一課が訪れ、事情聴取した。業務上過失など刑事事件の可能性を念頭に置いてのことだが、作為もなければ事故の予見もできなかったことから、聴取だけに終わった。民事で訴えるという被害者も現在までのところ出ていない。

 テレビ東京に関連して、CATVによる区域外同時再送信についても触れておこう。問題のポケモン第38話は視聴率16.5%。これはTX系列において、全国で400万世帯以上が見たことになる数字だ。だが、数字はハッキリしないが、これ以外にCATVを通して見た世帯が相当数あった。

 CATV普及を図る郵政省の圧力もあり、テレビ東京はこれを黙認してきたのだが、昨年認めないという方針を打ち出した。今回の事件は、その矢先の出来事だった。CATVを見ていて倒れた子の親が局に文句をいい、テレビ東京とCATVの係争に発展する可能性もありえたわけである。

 一方、日本民間放送連盟は、事件発生の12月16日に会長文書を発表。24日には、閃光や点滅・変化する光の映像などを使う番組の放送は、とくに慎重にあつかう旨を申し合わせている。

 さらに、アニメーション番組の映像表現に関する特別部会と医師らによる顧問会議で調査検討を進め、3月末までにガイドラインの具体案づくりを目指す。このガイドライン策定では、NHKも民放連と共同歩調を取ることになった。

 ところで、ポケモン事件を契機に、NHKでも97年3月、教育テレビで放映した「YAT安心!宇笛旅行」で子どもたちが倒れる事件が十数件発生していたことが明らかになった。

 NHKは、民間放送局とは異なり、放送法で直接的に規定される公共放送である。それが、3月の事件を社内問題と判断し隠しておいたのは、公共放送の使命をまったく自覚していないことを意味する。

 口先だけで「皆様のNHK」を連呼する前に、、身内の恥であっても情報公開しなければならないことを、全職員に対して徹底すべきである。

 NHKが問題提起をしていれば、700人の子どもの病院行きは未然に防げたかもしれないのだから。

厳格な英国ITCのガイタンス

 政治家も動いた。衆議院では、12月24日に、参議院では25日にそれぞれ逓信委員会を開き、テレビ東京、NHK、民放連関係者などを参考人招致した。相変わらずの懲罰的儀礼が繰り返されたわけだ。

 行政では、放送を所管する郵政省がテレビ東京を呼び事情を聞いたほか、担当官を英米に派遣し、調査結果を持ち帰った。郵政省の出した「ITCコードに関する調査結果」には、ITCガイダンスに違反した場合、最終的には放送免許の取り上げもある、というような脅し文句まで書かれている。

 話が出たついでにガイダンスの要旨を紹介しておこう。

 英ITC(独立テレビ委員会)のガイダンスは、光過敏性てんかんの人びとにけいれんをもたらす危険を軽減する、という明確な立場から書かれている。素案をつくつたのは、光過敏性てんかんを研究するアストン大学教授ハーディングで、作成にあたり700人以上の光過敏性てんかん発症者を検査している。ガイダンスの要旨は、次のとおりである。フリッカーは「点滅」と訳したが、「チカチカ」「ちらつき」のほうがしっくりくるかもしれない。

(1)点滅や断続する光、ある反復パターンが光過敏性てんかんの視聴者に問題を起こすことがありうる。

(2)テレビは本来点滅するメディアであり、光過敏性てんかんの視聴者が発作を起こす危険を完全に排除できないが、危険を軽減することはできる。以下の映像手法は使うべきでない。

(3)閃光や急速に変化・点滅する画像が3Hz(1秒間3回)以上の速さで変化することは避けるべき。この限度内でも、画像が画面中心にある、全体の10%以上の面積を占める、輝度が大きく変化する場合は同様。色の変化だけなら問題ない。

(4)画面の大部分を際立った規則的パターンが占めることも避けるべき。とくに縞、渦巻き、同心円。動いたり点滅する規則的パターンはとくに有害。

(5)コンピュータ画像は、高精細な場合、テレビ画面に25Hz(1秒間25回)の境界線のちらつき(※注 インターライン・フリッカーのこと。受像機の飛びこし走査によるもので、上下方向の模様や境界線、輪郭緑がちらつく)を起こすことがあるので注意。

 念のため書いておくと、今回のポケモンの赤青フリッカーは1秒20〜30回弱で、ガイダンス(3)と1ケタ違う。また、先に指摘した同心円のパターンや、回転する回路パターンは、(4)に該当する。

 また、ハーディングによると、フラッシュの点滅周期が問題で、15〜20Hz(1秒間15〜20回)が光過敏性てんかんの反応のピークだという。ポケモンの赤青の点滅は、光過敏性てんかんの多くが反応を示す、ピークに近い周期だったのである。

 遅いほうは5Hz以下、速いほうは60Hz以上で、反応は目立って少なくなる。なお、日米のテレビはフレーム周波数30Hz(1秒30画面)、ヨーロッパのテレビはフレーム周波数25Hz(1秒25画面)で、これがテレビによる点滅周期の上限である。

 ガイダンスにある3Hzは、ほとんど反応がなくなる安全ライン。というより、秒3回の点滅(チカチカ)は、ふつうの感覚では点滅(チカチカ)には見えない。非常に厳しい基準であり、SFものやバトルものアニメに与える影響は極めて甚大だ。過去につくられた多くの名作アニメも、この基準を到底クリアできないだろう。

 郵政省はその後、放送行政局長の懇談会として「放送と視聴覚機能に開する検討会」なるものを設置した。これについても触れなければならない。

 検討会は98年6月まで月1回程度の懇談を重ねるそうだが、その「検討事項の整理」という文書を見ると、「番組ソフトの表示・表現方法の動向」だの「映像の生体影響」だの「通信・放送融合下における映像表現の未来像」だの、とてつもない検討事項が並ぶ。

 たとえば、98年2月の第3回「映像の生体影響(1)」では、視覚機能との関係、生体信号(心柏、呼吸、誘発脳波等)との関係、心理効果(快感、不安感、疲労感等)との関係といった項目を検討する予定だ。

 郵政省は「ズレてる!」というのが、ため息とともに出る感想だ。「こんな映像を見ると胸がドキドキする」とか「快感を感じる」と、何の因果で役所と懇談しなくちゃならんのか。快感には性的快感なんかも含むのだろうか。

 郵政省は「アニメが多くの子どもに不快感を与えたから、この際、皆で考えてみよう」と短絡したわけだが、行政改革の世に、まったく無駄で、お節介な話である。

 郵政省は、テレビのアニメーション番組が原因で、二度と何百人もの子どもが倒れないように、テレビ局を監督すればよい。だが、それには表現の自由なども考慮に入れ、テレビ局側に自主的なガイダンスを作らせるべきである。映像の生体影響など、学者に委託して研究させればよいので、放送行政局が立ち入る問題ではない。イギリスで何を調査してきたのか。

 少なくとも、郵政省の今回の検討会は、何を誰にむかっていう報告書をつくろうとしているのか、まったく見えない。委員の皆さんもご苦労なことである。

 それに比べると、厚生省のやりたいことは、はっきりしている。97年12月18日に厚生科学特別研究「光感受性発作に関する臨床研究班」を発足させ、今年度内に報告書を作成するというのである。

 ただし、厚生省は研究班の医師に、テレビ局など民間の同種の研究グループに参加しないように要靖し、自らの縄張りに囲い込むという時代錯誤を演じた。まったく馬鹿げた話である。

テレビ自身による映像研究を!

 テレビ東京やNHKをはじめとするテレビ局、民放連、国会、郵政省、厚生省など、それぞれが一斉に動いたポケモン騒動だが、現時点での私なりのまとめを、最後に書いておく。

 第1に、テレビを見ていた何百という子どもが(もちろん大人も)、けいれん発作を起こすなどということが、二度と起こってはならないことは、はっきりしている。そのために、テレビ局を中心として、医師など専門家の意見を取り入れながら、アニメーションに関わる制作上のガイダンスを早急に策定すべきである。

 イギリスITCの実施しているガイダンスを厳格に守れば、光過敏性てんかんの発症はほとんど抑えられると思うし、現にテレビ局では過渡的な措置として、ITC基準に沿ったアニメ制作をプロダクションに要求している。だが、それを参考にするのはよいが、猿真似ではいけない。明確な科学的根拠を示して、日本独自の基準を作る必要がある。

 アニメ以外の映像(とくにCMやタイトルCGなど)でも同様の問題が発生する可能性がある。このことも視野に入れておくべきだろう。

 懸念されるのは、民放連・NHK、郵政省、厚生省とそれぞれが独自に専門家を集めて研究を進めていることだ。それぞれの立場で結論を出してみるのはよいが、テレビ制作のガイダンスは唯一でなければならない。一本化調整の必要なども生じるかもしれないが、そのときの主導権はあくまでテレビ局側が握るべきだ。

 第2に、今回の事件はアニメーションの制作手法上の問題によって発生したものである。二度と同じような事件が起こらないと確信がもてた投階で、テレビ東京はすみやかにアニメ 「ポケットモンスター」の放送を再開すべきである。

 ITC基準を厳格に守るというならば、社内検証番組を1本作ってお詫びかたがた放送した後、明日にも再開してよい。テレビ東京は、民放連・NHKのガイダンスを待つつもりらしいが、ITCより厳しい基準が作られるとは考えにくいし、御上の御墨付きをもらってからという姿勢は、かえって視聴者に対して不誠実だ。

 第3に、郵政省が設置したような場当たり的懇談会ではなく、テレビ映像の影響力に関する研究を、テレビは自力で進めるべきである。

 テレビにはまだまだ未知の部分がある。同時に人間にもまだまだわからない部分がある。ピカチュウは、そのことを警告していると解すべきだ。その両方の研究を重ねなければ、テレビは何を引き起こすかわからないという気がしてならない。新社屋やCS、BSもよいが、そういう研究にテレビはもっとカネを出すべきだと思う。

 第4に、映像の受け手(視聴者)の側も、反省すべきことが多い。今回の事件で、子どもへのテレビの見せ方を考え直した家庭も少なくないだろう。画面の大きさ、画面からの距離、画面の明るさやコントラスト、部屋の明るさ、視聴時間など、家庭で注意して変更できる要素によって、子どもへの影響に差が出た可能性が大きい。これも、ピカチュウが電撃のように発した警告である。

 第5に、とりわけ家庭や学校で、子どもたちに映像の見方・見せ方についての指導を行うべきだと思う。テレビ局は、番組づくりを通じてその素材を提供すべきだ。

 学校では国語の授業で、文章の行間まで読むことを、「ここで、○○ちゃんはどう思ったでしょうね」と、それこそ小学1年生から教える。テレビについては、「画像がちょっとおかしいと思ったら、顔を背けるか眼を細めるかせよ」とすら、誰も教えたことがない。

 二十世紀も終わろうという映像の時代に、とても奇妙なことである。

≪参考リンク≫
ITC(英・独立テレビ委員会)
ITC Guidance Note for Licensees on Flashing Images and Regular Patterns in Television(PDFでダウンロードできる)
↑修正のうえ2001年7月に公表されたもの。文中で要約しているガイダンスは1998年当時のもので、これとは違っている。それにしても、かつて手本にしたガイダンスが変わっているのに、日本側(局や役所)にはそれを翻訳のうえ再検討しようという気配が見えない(どこのホームページにも、そんな話は載っていない)。

Photosensitive Epilepsy
↑英epilepsy action内のページ。

PHOTOSENSITIVE EPILEPSY
↑カナダEpilepsy Toronto内のページ。ざっと調べたところでは、日本の「てんかん協会」などのページで「光過敏性てんかん」についてわかりやすく解説しているものは見つからなかった。

アニメ映像ガイドライン
↑正式には「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」。NHKと民放連が1998年4月8日に公表。

「アニメ映像ガイドライン」解説資料(PDF)
↑民放連・番組基準審議会が1998年6月に公表。「はじめに」で、「ガイドラインはあらゆるテレビ番組・CMを対象としている」と注意喚起している。

アニメ等映像手法に関するガイドラインと参考計測機
↑「NHK技研だより」(1998年10月)から。この計測器ではなく別の器械の話かもしれないが、当時、民放関係者は「チェックシステムは、まったく刺激的とは見えない雪が舞うシーンでも警告を出してしまう。結局は人が判断するしかない」と語っていた。このページでも「警報が出なければ万事問題ないというわけではない。あくまで最終的には人が判断することが大切である」と指摘している。

視聴者のみなさまへ――TVを見る時の注意(民放連)
↑光感受性のおそれのある人は、不快を感じはじめたら片方の掌《てのひら》で片目を覆《おお》うとよいが、両目を閉じるとかえって危険だそうだ。だが、それを子どもに徹底するのは容易ではない。テレビの見方というのは、実に難しい。

郵政省「英国事情調査報告(ITC番組コードについて)」

郵政省「放送と視聴覚機能に関する検討会」議事録 第1回第2回第3回第4回第5回中間報告中間報告(本文)報告(委員名簿はこちら)最終報告書
↑中間報告以後、検討会を開かずに、いきなり最終報告を出すとは、郵政もいい根性してる。それにしても整理の悪いホームページだ。

厚生省「光感受性発作に関する臨床研究班」会議議事録 第1回第1回資料第2回第3回
↑郵政と厚生が第1回会合を同じ99年12月26日に開いていることに注目。ホントにくだらんガキのような縄張り争いに血道をあげる非効率な連中だということが、ハッキリおわかりだろう。

≪厚生省実態調査の珍妙なる結果について≫

 厚生省「光感受性発作に関する臨床研究班」会議の第2回と第3回に、1月中旬から2月初旬にかけて4都府県で1万人規模の子どもたち(小中高生)を対象におこなった実態調査の分析が出てくる。それによると有効回答は9209票で、問題のポケモン番組を見たのは4026人(43.7%)。このうちなんと417人(10.4%)に健康被害が発生し、もっとも多い症状は「目が痛くなった」(40.5%)だった。

 この調査に信頼がおけるならば、日本全国で健康被害を受けた子どもは数十万という規模(数百万人の1割)だったはずだ。しかし、それは実態に合わない。医師たちの中にはちょっとヘンだと思っている者もいる(でも厚生省の会議で、諸先輩方が真剣にギロンしているなか、とてもじゃないが疑義をはさめない)様子だが、早い話が悪ガキどもにかつがれたのだ。むろん中学生や高校生の多くはデタラメを記入したのである。

 「まわりのことがわからなくなった」「手や足が震えたり、 引きつけたり、けいれんした」の2項目は18歳で最多だが、実際に救急車で運ばれた700人の9割近くが小中学生だったのだから、アンケート結果は嘘《ウソ》である。その他の症状で「疲れた」「小便をもらした」「目の玉が飛び出してきそうだった」なども、いかにも連中の記入しそうな冗談だ。そういうことがわからない小児科医というのも困りものである。子どもの「身体」《からだ》についてはわかっても、子どもの「心」についてまるでわかっていないからだ。

 そもそも光感受性発作では、「目が痛くなった」という症状はあまり出ないという。だから、なぜ、そういう質問項目があるのだと疑義を呈した医師もいた。選択肢の先頭にあったから一番になったのかもと、白昼堂々厚生省の会議室で話し合いをしているのだ(笑)。こんなくだらない(結果的にまったく使いものにならない)実態調査でも、1万人にアンケート用紙を配れば、100万円単位で予算(もちろん私たちの税金)を食う。まったくお役所仕事というのは、どうしようもないものである。

 なお、インターネット上では、この実態調査の最終報告書を見つけることができなかった。そのような文書がまとめられたのかどうかも不明である。あまりに非科学的な調査だから没《ボツ》にしたのかもしれない。忘れてならない問題は、厚生省はエイズその他の薬害問題などでも同じように非科学的な調査を繰り返し、研究班や委員会を構成する医師たちが同じように疑義をはさめないできたという可能性を、まったく排除できないことである。

ポケモン事件とはなんだったのか。
↑このページはすごい。知らない話がバンバン出てくる。必見!!

ポケモン騒動を検証する
『ポケットモンスター』第38話を検証する
恐怖のポケモンチェック
『YAT安心!宇宙旅行』第25話を検証する
↑「TVアニメ資料館」のページ。「GALAC」記事執筆時にはまだなく、99年12月に開設されたサイトだが、たいへん丹念にデータを集めている。

JAPANIMATION
↑米more.abcnews.go.com内のページ

私家版・精神医学用語辞典「ポケモン事件」
↑精神科医・風野春樹のサイト「サイコドクターあばれ旅」から。このサイトの「黄色い救急車」研究はたいへん興味深い。

ポケモン事件と報道ポケモンとアニメ雑誌
↑大学生(当時)中島健による分析。「(アニメ雑誌の)表紙に涙を浮かべながら『ごめんなさい』をするピカチュウの絵を掲載」はいいね。

ポケモン事件シミュレーター
↑いたずらに試しては絶対にいけません。体質と設定によっては発作が起こります。必ず「小」の設定から始め、遠くから見る、視野の周辺部で見る(じっと見つめない)、片目で目を細めて見るなど、入ってくる刺激を小さくしてください。

アイテレビ工房
↑テレビに近づくと、警告してテレビを切る「テレビ接近防止センサー」を製造販売。

高橋剛夫著「テレビ映像と光感受性発作 その脳波診断と防止策」

発作性疾患(メルクマニュアル医学情報[家庭版])

≪追加の情報≫
 2004年7月23日付けでZAKZAKが伝えた共同配信記事によると、「1997年に人気アニメ番組『ポケモン』を見てけいれんなどの発作を起こした子供たちの大半には、発作の再発はみられなかったとする調査結果を名古屋大の奥村彰久助手(小児神経学)らがまとめ、22日付の米医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に発表した」という。

 同記事によると、名古屋大の調査は、愛知県などで発作の治療を受けた子供たちなど計91人について、2002年末まで5年間の経過を追跡したものである。

 「その結果、この5年の期間中に25人(27%)が2度目の発作を起こしたが、うち12人は番組以前からてんかんの症状があった。残り13人も番組後にてんかんと診断され『仮に番組を見なくても、いずれ発作を起こした可能性が高い』(奥村助手)という。この25人を除く子どもたちには2度目の発作は起きなかった」

 「奥村助手は『本来なら発作とは無縁に過ごせたはずの子たちが、異常に強い画面の刺激で症状を起こしたとみられる』と分析している」

 この調査結果は、問題の映像を見て発作の治療を受けた(ということは、比較的症状が重く医者に行った)子どもたちのうち、およそ4分の1〜3分の1(30%以下)がいわゆる「再発性発作(てんかん)」の子どもであることを示している。ただし、残りの3分の2以上が「光過敏性てんかん」の子どもなのか、または「てんかんではないが、たまたま発作が起こった」子どもなのか、またはそのいずれをも含むのかは、記事からは判然としない。【2004年8月10日記】