メディアとつきあうツール  更新:2008-03-08
すべてを疑え!! MAMO's Site(テレビ放送や地上デジタル・BSデジタル・CSデジタルなど)/サイトのタイトル
<ジャーナリスト坂本 衛のサイト>

NHKはどこへ行く?
〜放送メディア・公共放送の危機〜

≪リード≫
経営委員長の番組への介入発言、経営委員会と執行部の対立、新会長選出のゴタゴタ、職員のインサイダー取引疑惑と、NHKが揺れています。そんななか、2008年2月8日にNHKの組合である日放労の中国支部から招かれ、NHKをめぐる諸問題について話しました。参考のため、当日のレジュメを掲げ、坂本の見解(※印の小さい文字の箇所)を付け加えます。おおよそこのようなことを発言しましたが、録音していたわけではないので、多少の異同はあるかもしれません。なお、2008年3月1日には東京で日放労フォーラムが開催されました。その内容も順次upする予定です。

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NHKはどこへ行く?
〜放送メディア・公共放送の危機〜 レジュメ

2008年2月8日
NIPPOROフォーラム2008 日放労 中国支部・広島第3分会
ジャーナリスト 坂本 衛
「すべてを疑え!! MAMO's Site」http://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/

1.NHKをめぐり起こっていること(その1)

●海老沢辞任に至る一連の不祥事。傲岸不遜な態度が仇に。

●政治との距離の問題が浮上。「襟を正す」以上の具体策は、いまだに皆無。

●受信料の支払い拒否・保留の急増。「法的手段」の脅しが奏功、沈静化?

※3年半前の不祥事発覚以降に出てきた問題は、大きく次の三つに整理してよいだろう。

(1)NHK職員の不祥事をめぐる問題……規律の乱れと経営陣の傲慢、聞く耳持たず空気も読めない態度。前会長らNHK首脳は自ら墓穴を掘った、自分で自分の首を絞めた印象。

(2)政治(政府与党)との距離が近すぎる問題……海老沢時代の放送総局長は「(自民党への)事前説明は当然」とまで公言していた。海老沢退陣後のNHKの視聴者に対する約束でも、「ちゃんと自律していく」と抽象的に宣言するだけで、具体的な改善策は一切なし。

(3)受信料問題……NHKが出してくる数字の概念がハッキリしない。契約者に不払い者を含んだり、パーセンテージをいうのに母数が曖昧だったり、事業所についても実態とかけ離れていたり。いまだにわからない部分、一種のゴマカシが含まれていると思う。ただし、一連の問題での落ち込みは、坂本の予想よりも低かった。それは以下のような理由によるだろう。

 いずれにせよ、「対価」の考え方(見るなら払う。見ないから払わない)、「あまねく」の達成(東京で支払う受信料で故郷でもテレビが映るようになるという昔=高度成長期にあった感覚が、いまはもうない)、少子高齢化などによって、受信料がより取りにくくなっていることは確か。

※受信料については、質疑応答の時間に会場から「総務省には資料を出している」と反論あり。坂本「それは知っているが、視聴者に出さず総務省に出すというやり方そのものが問題。事業所の見積もりなど、まだ不十分では」。質疑応答欄を参照のこと。

2.NHKをめぐり起こっていること(その2)

●総務省・与党の改革圧力

  1. 経営委員会の抜本的改革……「経営委員会と理事会の関係を一般の株式会社の取締役会と執行役会の関係に近づけ」
  2. NHKのチャンネルの削減……衛星1ch、FMラジオ、2011年衛星H停波で8ch→5ch
  3. NHK本体と子会社の見直し……娯楽スポーツ制作の子会社化、伝送部門の子会社化、全子会社の整理・統合
  4. 番組アーカイブのブロードバンドでの提供……子会社で有料配信
  5. 国際放送の強化……子会社化、民間も出資
  6. 受信料制度の改革……徴収コスト削減、受信料大幅引き下げ、受信料支払い義務化、その後に罰則化も検討

※竹中平蔵という人は、根っからの規制緩和論者。自由と自己責任の原則を盛んにいう。こと「経営」という観点だけからすれば、それほど大きく間違ったことをいっているわけではない。ただし、「IP放送(インターネット放送)が鍵」というが、IP放送で万事解決すると考えているらしい点が、どうもよくわからない。
 地方に根づいた報道その他の情報提供(それを前提とする免許)を、どうするのか。インターネットのアクセスのしにくさ(そもそも月額数千円取られるから、多くの人はテレビをインターネット回線につないでいない)、使い勝手の悪さ(2〜3歳の幼児は一人でテレビのリモコンを操作し「おかあさんといっしょ」を見ることができる。2〜3歳の幼児がいるほぼ全家庭で、その子にパソコンを触らせていないはず)、多数が同時に一つのコンテンツを見ることの限界(同時に1000万単位の人が高画質動画を何時間も視聴し続けることができるインターネットのシステムが、世界のどこにある?)、災害に対する脆弱性(阪神・淡路大震災のとき生きていたメディアはテレビとラジオだけ。テレビ放送をIP放送にすれば、生き残るのはラジオだけ)などをどう考えているのかも不明。
 最近、月に1度は会っているので、そのうちじっくり聞いてみるつもり。

※竹中懇談会の報告は、総務省内部や与党(たとえば片山虎之助)からも反論や抵抗があり、すり合わせが行われて、2006年6月の「政府与党合意」となった。政府与党は基本的にこの方向を推進する。何もしなければ、NHKはこの方向でジリジリ追い込まれることになるだろう。もっと危機感を抱いたほうがよい。

●総務省・与党の意を受けた経営委員会の「暴走」

※政府与党合意から、1年間様子見が続いた後、新経営委員長の就任で合意の実行が始まった。そもそも経営委員長の人事が、首相の「おともだち」で決まるという一件からして、放送法の精神にもとる話。そして、新経営委員長の一連の強引な手法は、放送法の精神に明らかに反している。「歴史問題を扱う番組の放映に注意を」などという2007年9月の発言は、許し難い番組への介入で、明らかに放送法違反。NHKの制作者は内部から声を上げるべきだ。

※NHK会長人事について。富士フイルムの古森重隆という人は財界では傍流で、鉄・電機・銀行などとは格下とされる新興勢力。人脈もなく、経営者としては軽い(だから安倍晋三に近づいたともいえる)ので、格下の者に指名されるのはいかがかということで、会長人事はたいへん難航した。背後には菅義偉・前総務大臣がおり、会長人事も副会長人事も前総務大臣との二人三脚。私は副会長の名前を12月に聞いたが、その通りになった。放送法上、経営委員会は政府によるNHKの直接支配を許さないために設置してある。それが政府与党とつるんで人事を左右するのは、放送法の精神に真っ向から反する。NHK側が黙っているのが不思議だ。

●またぞろ新手の不祥事

※新聞がNHKのインサイダー取引疑惑の報道にあまり熱心でなく、民放テレビに至ってはまったくといってよいほど報道していないのは、民放社員一人ひとりがこの件で追及されたら、ちょっと困るからだろう。増田寛也・総務大臣は「NHKの他の者もやっているのでは」といったが、比率は民放のほうが多いのではないかと思う。

3.古い問題と新しい問題

●古い問題

※ここに、日本放送労働組合/技術系列が1974年7月にまとめた「10年の歩み」(1963年度〜1972年度)という資料を持ってきた。これ、読んだことがありますか? 941ページもあって(厚さ5cm)、表紙には[部内討議資料](取扱注意)とある。今日、新幹線の中で読んできたが、よいことが書いてある。「NHKをめぐり起こっていること」のうち最初の三つは、すべてこの資料に出てきて、あれこれ論じられている。この意味で古い問題であり、三十数年前と何ら変わっていない。それが今日も問題なのは、NHKが問題を先送りにしてきたからだ。この責任は重い。あなた方、日放労の責任もだ。

※いくつか引用しよう。「10年の歩み」29pから。
「巨大な独占体となった放送企業は、……放送の一方的伝達機能から自己規制と情報管理の集中化によって自己権力化を生み、受け手との断絶を決定的にして行く」
「国会や政府による直接的間接的介入によって、政府権力の意向を『自己規制』という形で反映することと、情報の独占とその管理の集中化とによって、国民に背を向け、国民を疎外していく危険性を有している」
「たて前は現実には、内(NHK自身の権力化)と外(政府権力)からくずされつつある」

※次は「10年の歩み」57pから。
「現場職制は、その中間的立場の不安定性のために、非常にしばしば過度の警戒・過剰チェックを行なう。これが職場内に隠微に反応して、担当者の自己規制にもつながって来るのである」
「官僚的組織の常として、職場内のベクトルは下意上達であるよりは上意下達である。そして、経営の判断也、外部からの反響なり伝わる時に、下部へ行けば行くほど、加速度的に拡大誇張されるのである。はじめは軽い疑問程度であったものが、現場には絶対的禁止として伝わって来ることは珍しくない」
 以上は、私がここ数年書いていることと、ほとんど同じ。みなさんの職場の、現在の話ではないのか。受信料についても、政治との距離の問題も、この資料にすべて出ている。書かれたのは今から34〜35年前だけれども。

●新しい問題(少なく、小さい)

※通信・放送の在り方に関する政府与党合意がNHKに突きつけた問題のうち、ほとんどは古い問題だ。新しい問題は少なく、しかも小さい。NHKアーカイブをIP放送で流すか流さないかなど、ようするに大した問題ではない。アーカイブは契約者が支払った受信料で蓄積した視聴者大衆国民の財産なのだから、誰でもが利用できるように公開するのは当然(NHKに都合の悪いものは出さないというようなゴマカシは、くれぐれもしないように)。さっさとやればよいとうだけの話。こんなことは通信と放送の融合でもなんでもない。

※だから、NHKが何を解決しなければならないかは、ハッキリしている。いうまでもなく、古く、大きい、多岐にわたる問題を解決すべきだ。

●総務省・与党の改革圧力に含まれる「政治的圧力・思惑」の峻別・排除が必要

●総務省・与党の改革圧力は、経営の観点が強く、公共放送・報道の観点が弱すぎる

※「週刊文春」に載った菅・前総務大臣のインタビューをここに持ってきた。うなずけることが多いといわなければならない。総務省・与党のいっていることに、一から十まで反対しても仕方ない。改めるべき点、受け入れるべき点は、改め、受け入れる必要がある。
 ただし、政治家や政府官僚は、つねにNHKを自らの都合のよいようにコントロールしたがっている。自分たちに都合のよい意見をNHKを使って流布したいし、NHKを自己宣伝にも使いたい。そのような彼らの思惑からNHKに対して要求していることは、峻別し、排除しなければ。改革圧力と政治的圧力が一緒くたになっているから、ハッキリ分けて、後者はけっ飛ばさなければならない。

※公共放送NHKは、民主主義に質する言論報道機関でなければならない(もちろん民間放送も。放送法第1条にそう書いてある)。だから、あらゆる圧力から自由に報道し、論評し、批判すべきは批判しなければならない。とりわけ権力を監視するウォッチ・ドッグの役割を果たさなければならない。(立て前とはいえ)全国民からカネを取るのだから、特定の政治権力だけに奉仕しないことは、当たり前の第一歩である。「番組について自民党だけに事前説明するのは当然」などと番組制作の責任者が公の席で口にすることなど、許されるはずがない。それでは北朝鮮中央テレビと一緒だからだ。どうしても与党だけに事前説明し、彼らが文句を言わない放送を流したいなら、「受信料を与党支持者だけから取れ」というほかはない。公共の福祉のため、人びとの安全や豊かさのため、人びとの人権のために、NHKは存在している。それをまっとうできているか、不断の検証と反省を。

●歴史に学び、原点(これも古い問題)に帰れ

※「放送法」を、自分たちを規制する怖い法律と思っていないか。ところが、放送法は規制の道具ではなく、言論報道の自由を貫くための武器なのだ。私のサイトに、放送法制定の経緯を載せておいた。ぜひ、参考にしてほしい。

※現在のように先行き不透明で、さまざまな事柄が錯綜しているときは、歴史に学び、それをよすがとする姿勢が必要だろう。放送にとってのそれは、放送法であり、ハンナーメモであり、放送委員会だ。ハンナーは昭和20年の暮れに「主トシテ政府当局ノ其ノ機能ニ対スル極度ノ統制ニ依リ日本放送協会ノ運営ハ弱化サレ、此ノ統制ノ結果輿論ヲ表現スル重要ナル機関ノ管理及運営ニ関シ日本国民ハ過去ノ或ル期間及今日ニ於テ発言権ヲ有シヲラズ」といった。これは60年以上をへた今日でも変わらない。NHKはこのままではダメだと思う。

※NHKが変わるためには、従業員8000人を擁する日放労こそが変わる必要があると思う。時間がなくなったので終わりにし、詳しくは触れないが、以下の日放労への提言を参考にしていただければありがたい。

4.日放労への提言

●何のための組合か、存在意義の再確認を

●a)賃上げその他と、b)表現の自由その他を峻別し、後者を高く掲げよ

●さんざんやっているはずだが、やはり中間管理職との共闘がカギ

●日放労が何をしているか、外から見えない(NHK経営側が見えないように、見えない)

●視聴者、受信契約者に役立つ情報提供をすべき

5.質疑応答

以 上

NHK問題についての参考資料(経営委員会、経営委員長、NHK会長人事など)

一連のNHK経営委員会の暴走(日録メモ08-02-04から)

02-04
GALAC3月号は2月6日発売。表紙は松山ケンイチ。なかなか渋い表紙。放懇の中島好登によると最近のイチオシらしい
●同号は「ぎゃらく式 NHK経営委員会構造改革案」を掲載。小田桐誠・砂川浩慶による「NHK新会長誕生にいたる経営委員会の暴走」と題した論文では、いわゆる竹中懇談会(通信・放送の在り方に関する懇談会)に基づく2006年6月の「政府与党合意」が、有料ネット配信、国際放送強化、経営委員会の監督権限強化、一部委員の常勤化などNHKに対する一連のガバナンス(統治)強化の基調をなすとし、その合意に沿って経営委員長に就任(2007年7月)した古森重隆率いる経営委員会とNHK側の攻防をレポート。中期経営計画案の拒否・白紙差し戻し(10月9日まで)、外部からのNHK会長起用決定(12月13日の経営委まで)、福地茂雄・新会長の決定(12月25日)の三ラウンドでいずれもNHK側がしてやられたと、NHK幹部の証言を引いて解説。なお私は、中期経営計画案の拒否・白紙差し戻しの段階で、橋本会長に経営計画案の任期内再提出を求めなかったことをもって、事実上の会長クビ宣告だと見ていました(当欄既出)
●「経営委員会の暴走」論文が提示するNHK経営委員会改革案は次の四つ。【1】経営委員に求められる資質と選任理由の透明化を。【2】公募制あるいは第三者機関による推薦制度の確立を。【3】説明責任と情報公開を徹底せよ。【4】経営委が暴走した場合の歯止め策を設ける。
●賛成ですが、以下に補足を少々。【1】NHK経営委員会は、NHKという言論報道機関の独立性、とりわけ政府からの独立性を持たせるためにこそ存在しているわけです。しかし、現行経営委は、委員長の古森重隆が首相・自民党総裁だった安倍晋三を囲む経済人がつくる「四季の会」メンバー、委員の小林英明が安倍晋三のスキャンダルを掲載した『噂の真相』に対する損害賠償訴訟の原告(安倍晋三)代理人というように、政府与党と露骨に直結した人選となっている。これでは、放送法第一条第二項に書かれた放送法の目的「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」を達成できない懸念が大きい。官邸によるお友だち人事や、総務省による自らに都合のよい人物の推薦(いずれも密室で行われる)だけで経営委員会の構成員が決まることが、放送法の精神にまったく合致しないことは明らかです。放送法を使い捨てのボロ雑巾にしてもいいのかという話です
【2】BBCトラストの委員選考システム、イギリスの公職任命の際のノーラン・ルール(1994年)などが参考になります。同じ特集の須藤春夫「英国BBCのガバナンス」もご参照
【3】最近のNHK経営委員会の議事録は、議事の内容を十分反映していないという声が強くあります。NHKの番組内容に介入する発言をした経営委員長は、その後の説明をしていません。もっともこれは「NHKの番組内容に介入する発言につながるのでは。なぜならば……」と質問しない放送記者も悪い。説明責任を全うさせるための記者責任を果たしていませんから
【4】最大の歯止めは、国会であり、NHKを取り巻くマスメディアであり、それらの背後にいる国民です。とりわけ国会やメディアが機能していないことが最大の問題。メディアは、NHKだけブッ叩けば、あとはどうでもいいんだ、という考えを改めてもらいたい。そうでないと、あとでしっぺ返しを食うハメになる。なお、GALAC誌には、経営委員は一度任命されると解任の手立てが皆無と誤解されかねない一節があるが、これは「国会の少数派、視聴者、NHK役職員などには、直接には解任の手立てがない」という意味。内閣総理大臣には両議院の同意を得たうえでの任免権があるから、国会の多数派や首相を動かせれば、解任できます。委員の任命には両議院の同意が必要なので、参議院で野党が過半数を握るここ数年は、首相のオトモダチや顧問弁護士の類はNHK経営委員にはなれないでしょう

直近のNHKへの政治介入(日録メモ08-01-25、24、23から)

01-25
●昨日記事の続き。橋本元一NHK前・会長(24日付けで引責辞任)が23日に出た民主党総務部門会議では、民主党議員から日曜午前中のNHKの政治討論番組『日曜討論』について注文がつけられたそうです。つまり、民主党からも政治的な圧力を受けたわけです
●民主党には単純純粋真っ直ぐな「正義」を語る人物が多く、青少年とテレビの問題でも盛んにテレビに圧力をかけていた。「子どもによかれと思うんだから、圧力をかけて何が悪い」と思っているらしく、「自分の信条と異なるんだから、圧力をかけて何が悪い」という前・首相安倍晋三の考え方によく似ている。たとえば、民主党系の横浜市長は青少年の深夜外出禁止を禁じる条例を作ろうとした。たけしの出た深作欣二監督の映画『バトル・ロワイアル』にもっともイチャモンをつけていたのは民主党の故・石井紘喜議員だった。青少年が夜徘徊しなければ青少年の不良行為は減る、暴力を描く映画を作らなければ青少年の暴力は減るという単純でわかりやすい主張(ただし、まったくの誤り)を振り回すので、かえって始末に悪いです
●あと、妙だなと思ったのは、朝日新聞が報じた古森重隆NHK経営委員長の発言。「経営委自体の責任について古森氏は『執行機関で起きたことに直接的な責任は持ち得ない』と語」ったそうだけど、執行機関の長を任命した経営委員会に直接的な責任がないはずがない。こんなバカな発言がまかり通るなら、たとえば福田康夫首相は、日本国政府の行政機関(中央官庁の長は首相が任命する)で起きたことに直接的な責任がないことになる。んな、アホな。社会保険庁で起こっていることに、直接的に責任がないなんて、福田康夫本人すら絶対に言わないと思いますけど。無責任な話ですね

01-24
●自民党参院議員の山本一太が自身のブログで、1月22日午前8時から自民党本部で開かれた電気通信調査会のことを書いています。それによると、最初に山本が挙手して次のように発言した。「NHKというメディアの影響力や社会的責任を考えると、今回の事件は誠に残念。橋本会長が本当に引責辞任するなら、この際、現体制のすべての役員を一新するべきだ。担当の理事2名だけを処分するなどという中途半端なやり方はダメだ。NHKの本気を示して欲しい!」。続く「活発な議論」のなかでは、出席議員から「役員を一新することに賛成する。加えて、最近のNHKの番組の内容は偏向している。もっと中立性が必要だ」という発言があったことも、明記しています。さらに、「会議では『橋本執行部の人心一新を求める意見』がほとんどだった。 真面目な橋本会長が『与党の意見』を全く無視した判断をするはずがないと信じている。」とも書いています。(以上「」内は原文ママ)
●まとめると、橋本元一NHK会長が出席した自民党の恣意的な(法律に基づかないという意味)会合で、国会議員による「NHKの番組内容は偏向している。中立性が必要」との発言を含む活発な議論があり、その結果、自民党のある議員(山本一太)は、橋本会長はNHK執行部の進退に関して与党・自民党の意見を受け入れるだろうと判断しているわけです
ここは旧ソ連圏か、中国か、北朝鮮か、という話です。あなた方の掲げる自由民主主義は、最近のNHK番組を偏向と決めつけるほど、ケツの穴の小さい不自由なものなのか、という話です。現執行部の全員の辞任を求める意見が大勢を占めた会合での「最近のNHKの番組の内容は偏向している。もっと中立性が必要だ」という発言は、自民党議員がNHKに対して、経営陣の総退陣を迫りながら、番組内容にイチャモンをつけているのだから、典型的なNHK番組に対する「政治的な圧力」です。しかも、その場にいた自民党の国会議員の少なくとも一人は、NHKは自分たちの圧力・恫喝を受け入れるだろうと信じている。NHKは、日本最大の放送局にして言論報道機関。ここまで言われて、ただ謝罪を繰り返すだけの言論報道機関が、どこの先進民主主義国にあるか。これは、インサイダー疑惑の職員が3人いたことより、もっと恥ずかしいことだと思います
●自民党電気通信調査会における議員の「最近のNHKの番組内容は偏向している。もっと中立性が必要」という発言は、視聴者が「NHKの番組はつまらん」「NHKの番組は左より(または右より)すぎてけしからん」と批判するのとはレベルがまったく違う「政治的な恫喝」と認識しなければならない。なぜかといえば、私たちは、そのような政治的な圧力や恫喝によって、放送・新聞・雑誌といったメディアが時の政治権力のもとにひれ伏し、報道すべきことを報道してこなかった長い負の歴史を持っているからです。この意味で、他のメディアはNHKだけブッ叩いてりゃいいというものではない。政治的恫喝や介入は自分たちの問題でもあるのだから
●NHKは、自民党の使いっ走りでも奉仕者でも道具でも何でもない。自民党を支持しない者も含めて、日本国内でテレビを見る者(建前としては全員)が受信料を負担して支えている、政治権力から自由で独立していなければならない放送局です。インサイダー疑惑という不祥事は不祥事として、徹底的に腐敗防止策を取り組織の膿を出し切らなければならないことは当然。しかし、不祥事を起こしたからといって、番組内容への政治的な介入を黙認する必要などありません
●NHKの組合「日放労」は、さっさと声明を出して、身内の不祥事を詫び、腐敗一掃に立ち上がる決意を示すとともに、番組介入を許さない姿勢を打ち出すべき。それをやらずに、何のための組合なんだ? 何のために「日本放送労働組合」なんてご大層な名前を名乗っている? 日本の放送の自主自由独立のために何もする必要がないと思うなら、「NHK労働組合」か「NHK職員の賃金と福祉をよくする組合」に、名称変更したほうがいい
●なお、毎年1月末か2月頭に開かれる自民党の総務部会・電気通信調査会合同会議は、NHK会長が出席し、番組内容を見直せとの発言が繰り返されることが慣例になっています。NHK側は「ガス抜き」の通過行事くらいに考え、その場だけ頭を下げていればよいと思っているようだが、たいへんよくない慣行。受信契約者が誰でも参加できる公開討論会を開くほうが先でしょう

01-23
●NHKの緩んだ箍《たが》というのは、どうやって締めればいいのか。視聴者や受信契約者から「報道によって知った事前情報を使って、勤務時間中に株取り引きにいそしむ連中が作るNHKニュースなど、見たくない」「それで日に何万円も儲けていたとは。もう年2万数千円の受信料など払いたくない」と思われても、NHKはなすすべがない
●22日に開かれた自民党電気通信調査会に出席した橋本元一NHK会長は、政治家に「理事全員が辞表を出すべき」と吊し上げられた。23日朝開かれた民主党総務部門会議に出席した多賀谷一照NHK経営委員長代行は、政治家たちに「古森重隆経営委員長は引責辞任すべき」と求められ、同じく出席した橋本元一NHK会長は不祥事を陳謝した。──関連のGoogleニュースはこちら
もう、最低ですね。日本最大の放送局という言論報道機関のトップが、法律に基づくわけでもない政党の会合に出席し、会長以下首脳部の出処進退についてあれこれ言われ、米つきバッタのように謝罪するしかない。こんなことで、自民党議員や民主党議員の腐敗その他の問題を、まともに報道し、追及できるのか? 上の二つの会合については、どんな内容であったか報道されている。しかし、政党側が会議を非公開とし、今回のような不祥事にかこつけて、理事その他の進退に関わる圧力や、報道番組の中身に対する圧力が加えられないという保証は、どこにあるのだ?
●NHK会長は「予算を通していただく議員先生方から呼ばれたから、欠席もできず、とにかく頭を下げ続けた」わけですが、根本的に物事の順序が間違っています。会長と理事二人の記者会見(17日)、総務大臣への謝罪(18日)、政党への謝罪(22日、23日)とやった橋本元一NHK会長は、日本最大の放送局のトップとして、なぜ特別番組で国民、視聴者、受信契約者に対し直接、謝罪と説明をしないのか? それは最初の記者会見で済んだとでも? まさか、レギュラー広報番組『三つのたまご』(20日昼前)でアナウンサーが謝罪したから済んでいるとでも? 発覚からもう6日もたっている。時間がないという言い訳は通用しない。視聴者をバカにしているとしか、評しようがありません
●NHKの組合「日放労」中央執行委員のうち1人や2人は、当欄を読んでいるのでは。発覚から6日もたって、日放労がなぜ何もしないのかも、私は本当に不思議です

今回のNHK会長人事(日録メモ07-12-24、21、20から)

12-24
●昼頃、音好宏から電話。要旨「デジタル時代のNHK懇談会の有志が、次期会長選考過程の透明化を求める要望書をNHK経営委員会に提出する。この件で長谷部恭男、吉岡忍、音が1時から記者会見を開く予定。明日の朝刊に田原総一朗さんのコメントを掲載したいという記者がいるが、つかまらないようなんだけど」と。田原に連絡し、午後3時以降に記者に会えるか聞いたら、「今日はもう無理。もっと早く言ってくれなきゃあ。そっちでコメントまとめといてよ」と、次のようなことを話していました。関心ある方は田原事務所に電話すればよいでしょう
●以下ご参考。田原総一朗のコメント:「【1】財界から企業経営の経営者を連れてきさえすればNHK改革は成功するが、財界出身者でなければ失敗するという古森重隆・NHK経営委員長の発想は、根拠がなく、おかしな考え方だ。【2】古森委員長は『選挙期間中は歴史番組の放送に配慮を』と表現の自由に抵触するような発言、『NHKの番組は忙しいから見ていない』と番組にまるで愛着がないような発言を平然と重ね、テレビ番組やNHKを愛している者、つまりNHK部内の者を次期NHK会長の候補にするのは危ないと、考えているように見える。この考え方こそ、私は危険だと思う。【3】NHK経営委員は、放送法上も、職業・地域・政党などの偏りを排するように選ぶことになっている。国民全体への広い目配り、適度のバランス感覚が必要だからで、経営委員会の議論には公開性や透明性が不可欠だ。ところが今回は、経営委員長が自らの考えをごり押ししている。これは非常によくない。このようなやり方でNHK会長が決められていくことには私は反対だ。NHKの将来を強く危惧している」
●【坂本の見解追加】今回のNHK会長人事は、古森重隆・NHK経営委員長の人事というよりは、前総務大臣・菅義偉(現・自民党選挙対策副委員長)による人事です。人選が難航した背景には、国会に呼ばれ議員から注文をつけられる面倒な仕事が敬遠されたことに加え、財界人の序列という問題があった(財界では傍系の現・経営委員長が先輩で格上の財界人を指名する形になるのが、どうもという感じがあった)ようです。一部報道に出ているように、新会長は、就任要請を3回断り4回目にOKしています。NHK側の抵抗も強かったといわれていますが、外部に全然出てこない抵抗では、どうしようもない。経営委員2人の"造反"も、推薦した相手にヤル気がないうえ、放送法の欠格事由に抵触するというのでは、あまりにもお粗末。新聞各紙は「ジャーナリズムに理解があるかどうかが懸念」といった論調ですが、まあ、ジャーナリストにもロクでもない人物はいるから、財界人がダメでジャーナリストならいいというものではない(同様に、ジャーナリストやテレビ関係者がダメで企業経営者OBならいいというものでもない)。また、現場の理解なしに、会長一人が何を言っても、NHKが簡単に変わるはずもない(トップが変われば何でもできるなら、厚生労働省や社会保険庁が、あんなバカなことにはならない)。当面は、新会長が何をどうするつもりかを見守り、政治との距離その他をチェックしていくしかないでしょう

12-21
●昨日、田原総一朗と電話で話したら、NHK問題に関心がある様子であれこれ聞いていた。日放労は、またシンポジウムでもやったらどうですか。私がNHK経営委員長・古森重隆という人物について田原にいったのは、「民間の経営感覚を入れるとの発想はいいが、問題は、テレビや放送の社会的・文化的な役割に対する見識があるとは見えず、テレビ番組への愛着もなければ、番組を作って送り出すNHKの現場に対する敬意や配慮も感じられないこと。記者会見を開いた委員二人は、委員として委員会の中で問題解決ができなかった点でどうかと思うが、そのような行動に至らせてしまった委員長もお粗末」と
●放送法は、第16条「委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。この場合において、その選任については、教育、文化、科学、産業その他の各分野が公平に代表されることを考慮しなければならない。」同2「前項の任命に当つては、委員のうち八人については、別表に定める地区に住所を有する者のうちから各一人を、その他の委員については、これらの地区を通じて四人を任命しなければならない。」同4「次の各号のいずれかに該当する者は、委員となることができない。四 政党の役員(任命の日以前一年間においてこれに該当した者を含む。)」同5「委員の任命については、五人以上が同一の政党に属する者となることとなつてはならない。」など、NHK経営委員の職種・地域・政治性(政治的な立場や信条など)についての多様性を求めている。ところで、富士フイルムホールディングス社長の古森重隆は前首相(自民党総裁)安倍晋三を囲む「四季の会」メンバーで、政治的には自民党に非常に近い人物。もちろん自民党員でも共産党員でも、政党役員でなければ(同一党員4人まで)NHK経営委員に就任できる規定だから、前首相のおともだちが経営委員長であっても構わない。しかし、放送法がこれだけ委員の多様性を求めているのは、経営委員会の決定が、たとえば特定の政党よりにならないなど、できる限り社会的なバランスを考慮したうえでなされるべきだから。したがって、経営委員長は経営委員全員の意見をよく聞き、なるべく多数の委員の合意を求めるべきであって、「経営委員長のオレが決めるんだ。文句あるか」というような態度を取るべきではない。放送法上の精神からして、そうなのです。今回の経営委員長の発想や手法は、放送法上の規定になじまないと、私は考えています
●で、後任のNHK会長候補を伝えるGoogleニュースはこちら。福地茂雄って誰?
●前回の民間出身NHK会長は、住友銀行の磯田一郎が連れてきた三井物産の池田芳蔵。私は、池田が国会で突然英語でしゃべり出した頃(1988年末〜89年)、文藝春秋本誌でこの問題を取材し、原稿も書きました。磯田もろとも池田芳蔵が辞任したので記事はお蔵入りとなったが、我ながら実におもしろい内容(機会があれば当サイトにupするが、手書き原稿なんで手間がたいへん)。磯田は旧制一高以来のおともだちで、国策「イラン石油化学」で国家的な大損害を招いた池田芳蔵に、最後の花道を用意してやった。当時、物産はNHKに対し「秘書と専用車を提供する」と申し出たが、NHKはそんな前例はないと断った。ところが新会長が来て、秘書や公用車の使い方があまりに無茶苦茶だったので、NHK側はなぜ物産があんなことを申し出たか得心したのです。なにしろ池田は、NHK会長に就任していきなり会長室の机(何百万かする代物)を取り替えさせた。ゴルフ大好きで公用車も使い放題。NHK会長として渡米したとき、わけのわからん企業とNHKのエージェント契約を結んでしまい、違約金を払うのもたいへんだった(この話は当時の副会長・島桂次、在米支局長ほかごく限られた人しか知らないはず)。つまりは、ボケ老人がNHK会長だったわけです。今回は、そんなことにならないように願いたいものです

12-20
NHK経営委員長暴走中。NHK会長人事は経営委員9人以上の多数による議決とされている(放送法第27条)ので、12人中4人が反対すれば流れてしまう。そんな委員会で、委員2名が委員長の手法が強引すぎるとわざわざ記者会見を開くのは余程のことで、委員会運営に問題があったのは確かでしょう。番組介入につながりかねない発言を一向に反省していないことからも、経営委員長としては不適格で、本人の再任はもうありません(民主党が多数を占める参議院の同意が得られないため)。だから任期中にNHK会長を強引に意中の人にしようとしているのでしょう。産経記事「『古森委員長はこう言った』 会見のNHK経営委員が備忘録を公表」によると、「私自身も最初は経営委員長として、マスメディアから大いにバッシングされたが、今ではメディアからも大いに尊敬されている」だって(笑)。どのメディアのことですかね。思い当たる人います?

NHK経営委員長の番組介入発言(2007年9月11日、日録メモ07-10-10から)

10-10
●NHK経営委員会の古森重隆・委員長(富士フイルムホールディングス社長)が9月11日の経営委で「選挙期間中の放送については、歴史ものなど微妙な政治的問題に結びつく可能性もあるため、いつも以上にご注意願いたい」と異例の要望。NHKの橋本元一・会長は10月4日の定例会見で「心外だ。経営委も同じNHKであり、公共放送としての主体性を分かった組織であってほしい」と不快感を表明。昨9日の定例会見でNHK経営委員長は、「十分注意してほしいという一般論」「NHKの番組は見ていない。朝も昼も忙しい」などと発言。読売新聞は4日の段階で記事に。今日10日は、東京新聞朝日新聞ほか各紙が報道。今回はNHK側の言い分が正しい。NHK経営委員長発言の問題点は、私にいわせれば次の三つです
●【1】露骨な政治的発言・政治的な圧力と受け取られかねず、近年、政治との距離が近すぎることが問題となったNHKの経営委員長として配慮を欠く、極めて不適切な発言である。
NHK経営委員長は、歴史番組について「太平洋戦争など史実が定まっていないデリケートな問題もある」と述べ、「そのような問題を扱う番組は、政治的問題に結びつく可能性があるから、選挙期間中はとくに注意してほしい」と発言した。同時に9日会見で「放送法第3条の2 放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。2 政治的に公平であること。」(1、3、4は略)を持ち出し、「(公共放送は)これが規範だ」と述べている。以上ことから、「微妙な歴史問題を扱う番組は、なるべく事実誤認なんかないように丁寧に作ってね」などと要望したのでなく、「微妙な歴史問題を扱う番組は、選挙期間中は、選挙がない時期より特別に、政治的公平に注意を払ってほしい」という趣旨で発言したことは明らかだ。「選挙期間中の歴史番組は、『与党より』とか『野党より』にならないよう、特別にバランスを取ってもらいたい」と要望したと言い換えてもよい。NHK経営委員長は、そんなこと当たり前じゃないかといいたいだろうが、全然、当たり前ではない。たとえば、いま「沖縄への核持ち込みに関する日米密約」を扱う歴史番組を作れば、それは当時の日本政府(自民党政権。首相は佐藤栄作で、安倍晋三の大叔父)が国民を騙していた(その証拠が最近アメリカで出てきた)ことを伝える内容になる。それを選挙期間中に放送すれば、野党よりは与党にダメージを与えることは明らかだ。「沖縄では戦時中、日本軍が県民に手榴弾を配り、集団自決をうながした」と結論づける歴史番組も、現行政府(総責任者は首相=自民党総裁)がチェックした教科書の内容と食い違うから、選挙期間中に放送すれば、野党よりは与党にダメージを与える。「沖縄で県民集会が開かれた」というニュースも同様だ。以上の例では、どう注意したって、与党にダメージを与えるに決まっている(むろん、どう注意したって、野党にダメージを与える番組もある)。だから、NHKがそうならないように最大限注意を払えば、「番組を制作しない」か「放送しない」以外に手はない。ようするにNHK経営委員長は、NHKに対して、NHKが政治的なバランスに最大限注意を払えば特定の番組を放送できなくなってしまうような事柄について、「注意してくれ」と言ったことになる。その自覚はなかったとしても、だ。だから、この発言はダメである。それは、NHK会長の任免権を持つ者による「選挙期間中は特定政党に不利に働く番組を流さないように注意してくれ」という政治的な圧力と紙一重だから、ダメなのだ。NHKの受信料不払いには、NHKの政治との距離に疑念を抱く者によるものがある。そんな時期に、露骨な政治的発言と受け取られかねない不用意な発言をしたNHK経営委員長のセンスを疑う
●【2】「NHKの番組は見ていない。朝も昼も忙しい」などと、NHKを愛しても、NHKに対して敬意を払ってもおらず、NHKの番組に興味がないかのような暴言をする人物は、NHK経営委員長の資格に欠ける。NHK経営委員長は記者会見を開き、このNHKを軽んじた発言部分については、謝罪・訂正すべきである。
NHK経営委員長の報酬はいくらでしたっけ? このNHK経営委員長は、先日NHKが出した次期経営計画が不十分だと、突っ返したんじゃなかった? 何、NHKの番組を見てないのに、あんなエラそうなことを言ってたのか? NHKは、テレビ受信セットを買った(設置した)者に、番組を見ようが見まいが月千数百円以上の受信料を払ってくれと頼む公共放送。その経営に関わる責任者が「忙しいから見てない」と言い放って許されるなら、NHKの経営なんて興味がないうえに、日々の生活に忙しくNHKの番組を見てない多くの視聴者国民大衆が、「NHKの受信料は払っていない。朝も昼も忙しい」と言い放って当然ではないか。しかも、NHKの現場、テレビ制作者を傷つけ、志気を著しく低下させる、あまりにもデリカシーに欠けたバカな発言。NHKで働く現場は全員、「ふざけんな!!」とNHK経営委員長の更迭を求めても不思議はない問題発言だと思う。参議院の過半数は野党が握っている。NHK経営委員長の任命には両議院の同意が必要だから、今期限りの退任は決まったも同然(途中で辞めさせることは難しいが)。年明けの総務委員会でも、ただではすまないでしょう
●【3】NHK経営委員長も、テレビのことをわかっておらず、「放送の政治的な公平」は個別番組ごとに確保されなければならないと思っているらしい。過去数十年来、政治家その他が同じ過ちを繰り返しているから、その考え方は間違いですよと、誰か教えてやったほうがよい。
朝日記事によれば、NHK経営委員長は「制作現場への圧力と受け取られるのではとの質問には、『特別にそれが響くのなら、後ろめたいことがあるのでは。何の問題もない話だ』とも述べた」という。自分は正しいこと、当たり前のことをいっていると思い込んでいるのは、NHK戦時性暴力番組のときの安倍晋三、TBS年金問題のときの舛添要一と同じ。しかし、別に制作者に後ろめたい点がなくても、番組は、特定の問題をキリキリ追求していくと、結果的に政治的なバランスが取れなくなる場合が珍しくない(鋭く追及する優れた番組ほど、そうなる)。だからといって、個別番組について政治的公平の観点から問題だと主張するのは、誤り。そんなことをいえば、「サンプロ」は成立しない(ある政党の政治家だけが田原に怒鳴られたから)し、「総理と語る」も成立しない(野党党首が不在だから)。そのような主張は、放送のあり方をまるで理解しない非現実的で愚劣な考え方なのだと、NHK経営委員長の考え違いを誰か指摘したほうがよい。新聞記者が質問の中で教えてもいいし、NHKが「政治的公平の考え方について」という文書を出し、その中で説明してもよいと思う

経営委が次期経営計画案を突っ返し(日録メモ07-09-29、26から)

09-29
●東京新聞朝刊に「経営委との対立鮮明に NHK次期経営計画案」の記事。NHK次期経営計画(2008-2012)の考え方はこちら。5ヵ年経営計画(執行部案)についての経営委員会の見解はこちら。たとえばNHK改革を小手先の値下げという読売新聞社説はこちら
●2007年2月22日の衆議院総務委員会で菅義偉総務大臣が語った要旨は、以下の通りです。◆訴訟手続によらずNHKが自力で受信料債権の回収を行う「強制徴収制度の導入」は検討していない。自分が検討しているのは受信料支払い義務化だ。今の受信料体制で本当にいいのか、現状では国民になかなか理解されないんじゃないかと思っている。◆現状では、5000万世帯が受信料支払い(の対象)世帯で、うち4600万世帯の7割に料金を納めていただいている。この5000万という世帯そのものも母数として疑問がある数字じゃないかなと思っている。住宅戸数は5400万戸、そのほかに事業所やホテルなどいろいろあるから、これも改めて見直ししてもらう必要があると思う。いずれにしろ国民から見て不平等にならないような形が大事だ。◆多くの国民の皆さんに受信料の現状をわかってもらう必要がある。今の数字で3割の人が払っていない現状は、支払者に負担がかかり過ぎている。そうしたことを各方面から指摘されている。そのなかで支払い義務化を導入するには料金値下げとセットでなければならないし、NHKそのものの改革をしっかり示さない限り国民から理解されない。◆仮に、受信料支払いが一連の不祥事以前の80%水準まで回復し、これに受信料義務化に伴う効果が加われば、現在の70%は85%ぐらいまで高まり、年間約1200億の増収効果が見込まれる。これにNHK自身による経費削減(たとえば6000億円の料金徴収コストは12〜14%だが、海外は4%ぐらい)努力もNHKに求めたいと思う。◆以上のことから、2割の引き下げは問題のある数字じゃないと思っている。必要であれば資料も提出したい【前総務大臣の考え、ここまで】
●この前総務相のもと6月に就任した現NHK経営委員長は、当然以上に近い考えです。ところがNHKは、菅(スガ)総務相を「シギ」「市議上がり」と陰口を叩きつつ、安倍改造内閣で交代必至と見て値下げ案の検討を遅らせるなどした挙げ句、総務相の疑問に応えない経営計画案を提出。却下されてしまったわけです
●押さえておくべき最近の状況変化は、(1)自民党では田中派系の大物逓信ボスが野中広務を最後に姿を消し、構造改革派が全面に出てきた。(2)総務大臣も竹中平蔵以後、主として構造改革派が就任している。(3)そこで総務大臣=総務省ではなく、総務官僚が大臣に振り回されている。(4)最後に残った典型的な逓信族議員、NHKに理解ある片山虎之助(元総務相)が先の参院選で落選し、自民党とNHKの仲介役がいなくなった。(5)NHKでは、自民党・田中派系の大物逓信ボスれに対応する実力会長が海老沢勝二を最後に姿を消した。(6)海老沢手下の政治担当も退場し、NHKの政治との距離が問題化したこともあって、NHKの政治力が低下した、などです。ようするに「自民党─NHK経営委員長─NHK会長」の連携(玉突きシステム)は、かつてとまったく様変わりした。このことをNHKは甘く見すぎているように思える。自民党には、例によって、自分たちが参院選で負けたのはNHKが年金・政治とカネ問題をガンガン報道しすぎたからだという逆恨みの声があり、NHK批判が強まっています
●NHK経営委員会は、NHK本体(執行部)の業務について微に入り細をうがって口を挟むべきではないとしても、NHK会長の任命権を持つ。その経営委が、橋本元一・現NHK会長の任期が2008年1月24日で終わることを見越して、次期経営計画案(本来は2008-2012)白紙撤回・1年後の再提出を求めたことは、当然、現NHK会長のクビのすげ替えを想定しています。現会長に何か求めることがあれば、年内に出せというはずでしょう
●私のNHK受信料のあり方についての考え方は、1998年に書いた「NHKはだれのもの 50年目の曲がり角 曖昧・受信料をどうする?」と基本的に同じ。むろん総務大臣の国会答弁レベルの論点は、98年段階ですべて書いています。そして、NHKや総務相のいう現状の支払者率(放送法上、NHK受信料を支払うべき者のうち、実際支払っている者の割合。受信契約率、受信料収納率などとは異なる)7割についても、98年段階で「受信契約率は7割どころか、5割を切っている可能性すら否定できない」と書いた通り
●話はそう難しくありません。日本にはおそらく1億2000万〜3000万台のテレビがあり、5000万世帯の99%以上が平均ほぼ2台のテレビを所有しているから、家庭分で5000万契約が必要になる(生活保護世帯その他の免除分は、誤差の範囲)。一方、事業所数は650万で、ここが2000万〜3000万台以上のテレビを所有していると思われる。事業所のテレビは部屋ごと・自動車ごとの契約で、1部屋にテレビが2台置かれることは少ないから事業所分で2000万〜3000万契約が必要になる。家庭分と事業所分を加えれば最大7000〜8000万契約が必要。事業所では広いワンフロアにテレビが10台あっても1契約というような場合がありうるから、大マケして事業所分を1500万契約と数えても、日本全体で6500万契約という話になる。実は、私が1億2000万〜3000万台と計算したときには数えなかったが、これ以外に、PC内蔵・外付けチューナーによってNHKの放送を受信できるPCが1000万台以上、テレビチューナー付きカーナビも数百万台以上の規模で存在します(ちゃんと調べてないが、どちらも1000万以上かも。これは地上アナログ用だから、2011年の停波時に全部ゴミにするのかと問題になる)。それは数えずに6500万契約。一方、現時点でNHK受信料が支払われている契約数は3300万以下だから、NHK受信料を支払うべき者のうち、実際支払っている者の割合(支払者率)が7割などということは断じてありえず、私はせいぜい5割前後だと思います。この点、総務省の試算は前提が間違っています
●ところで私は、公共放送NHKが、ときの政権与党の思惑や都合で右に左に振り回される状況は、まったくもって望ましくないと思います。しかし、政権与党の思惑や都合に正当な主張が含まれている場合は、NHKは受け入れざるをえない。NHKは、経営委員会が求める項目ごとに、ここはその通りだから改善する、ここは違うから受け入れないと、ハッキリ主張すべきです。その際「受信料2割値下げは絶対に無理だ」と主張するためには、「現在7割取れている」という前提を引っ込めざるをえないように、私には思えます

09-26
●昨夜、東京新聞からNHK経営委員会がNHK経営計画案を却下した件につき電話取材があり、30分ほど話しました。今日の朝刊15面に『経営委、異例の判断』の記事があり、坂本コメントも載っています(WEB記事では服部孝章、坂本衛のコメントが省かれています)。十何行かの短いコメントですが、私の見解は、およそ次の通り◆50円とか100円という受信料値下げ案一つとっても、まったく中途半端で不十分。私は、総務省が言い出す前からNHK受信料は大幅に値下げ可能と主張しているが、それはNHKの受信契約数に比べて、受信料を払うべき世帯数・事業所(の部屋)数がかなり多いから。日本には5000万世帯があり(テレビ普及率は99%以上)、それ以外に事業所が650万あり、ホテル・旅館の部屋数だけ数えても百数十万ある(事業所のテレビは部屋ごとに契約が必要)にもかかわらず、受信契約数は約3750万。事業所がNHKと結ぶべき受信契約が仮に2000万なら、現在の受信契約率は54%(=3750÷6930×100)。これを70%や80%まで引き上げれば、大幅に値下げできる(値下げするから払ってくれと頼むべきだ)というのが私の主張。しかし、事業所と本来結ぶべき契約数すら不明、しかも取りやすい一般家庭からしか受信料を取らないかのような姿勢で、値下げ額だけが50〜100円と具体的なのはおかしい。◆前会長が辞任に追い込まれた理由の一つ、政治との距離の問題も、何ら解決していない。「ちゃんとやる」と宣言だけはしているが、たとえば放送前に特定の政治家に番組内容を詳細に(少なくとも政治家が偏向と判断できる程度に)説明することは、絶対にやめたのかどうか不明。ようするに抽象的で具体性に欠ける。◆以上二点に限っても、私は今回のNHK経営計画案は不十分だと思う。これを不十分として却下したNHK経営委員会の判断は、私の考えと同じであり、まともであると思う。◆これまでのNHK経営委員会は、もっぱらNHK会長を指名するための組織で、NHK会長やNHK本体の意向に対して強く異議を唱えることはしない形式的な存在だった。経営委員会は「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命」(放送法第16条)し、「会長は、経営委員会が任命する」(第27条)から、NHK会長には事実上、首相や自民党(とりわけ旧逓信族)の意向に沿った人物が就任してきた。古森重隆・現委員長は安倍晋三を囲む経済人の集まり「四季の会」のメンバーで前首相に近く、前首相のもとで菅義偉・前総務大臣が示したNHKに対する強行姿勢(国際放送についての命令、NHK受信料義務化・値下げ圧力)などに一定の理解がある人物。(記者:こういう政権交代の混乱の中でも、主張は以前と同じなのか?)当然、変わらない。任命者の意向に沿っている。NHKを何とかせよという考え方は、竹中平蔵・総務相のときからだ。◆経営委員会とNHK本体が緊張関係にあることは、なれ合っているよりは、よいことだ。ただし、なんでもかんでも経営委員会の言う通りにすればよいというものではない。NHKの最大の客、最大の目付役は、受信料を支払っている国民だ。経営委より何より、国民がNHKに何を求めているかを真剣に考え、国民に了解してもらうことのできる経営計画案を打ち出すべきだと思う
●事業所の契約について、NHKは、正確なテレビの台数(部屋ごとや自動車ごと)を申告し、全部支払ってくれれば、2契約以降は半額程度までに値引きする方針のようです(事業所の受信料体系の見直しについて)。これは一般家庭と比較してものすごい割引。たとえば、1000室にテレビが1000台あるホテルからは、「1契約のみ正規料金+999契約は半額」を取ると言っているから、全体でほぼ半値にするとの同じ。なぜ一般世帯が50〜100円の値引きで、企業はほぼ半額という大幅値引きなのか、NHKは国民に対して納得できる説明をすべきです。マスコミがこの問題をほとんど報じていないのは、どうかしています
NHK受信料問題とは? 曖昧・受信料をどうする? NHK不祥事と「受信料不払い」(支払い拒否)拡大の経緯を、ご参考まで。「NHK受信料を値下げする」「事業所には割引を導入する」というNHKの方向性は、私が何年も前から主張していることと同じで、間違ってはいません。しかし、方向性は合っているが、内容が、なってません。「世帯の値下げは50〜100円が限界」で「企業は、ほぼ5割引でオーケー」なのはどうしてか、誰か理解できますか? 私には相変わらず国民をナメている、一般庶民という取りやすいところから取ろうとしているとしか見えません。納得できる根拠を示さなければ、たいへん具合が悪いと思います