メディアとつきあうツール  更新:2003-07-10
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<ジャーナリスト坂本 衛のサイト>

都民テレビ局で
何が起こっているのか?
蝕まれてゆくMXテレビ
(東京メトロポリタンテレビジョン)

≪おことわり≫
※筆者は龍桃介氏ですが、発表の場がないため、
ご本人の許可を得て、このサイトに掲載しています。

※関係者にしか知られていなかったMXTVの大問題を、
日本で初めてマスコミに提起した論考です。
発表当時、筆者の身の安全を懸念する声すら囁《ささや》かれましたが、
龍桃介氏は大丈夫、元気でいます。

(「放送批評」1996年12月号)

番組審議会「決起」の前代未聞
社長責任を追及、大量辞任へ

 放送局の番組審議会は、「放送番組審議機関」として、一部専門局などを除くすべての放送事業者に、設置することが義務づけられている(「放送法」第三条の四、五)。

 もっとも、ほとんどの番組審議会は、局が配る番組のVTR二、三本を視聴し、それについて月一回集まり意見を述べるといった、おざなりな運営がされている。社長のおともだちとか、著名というだけで放送についてなんの定見もない人物ばかりが名を連ねる「お飾り番審」「形式的番審」が少なくないのだ。

 しかし、わが放送史上初めて、番組審議会が局の番組づくりを公然と批判し、これを無視した局に対して審議会委員のほとんどが辞表を叩きつける、という事態が生じた。

 その放送局とは、東京メトロポリタンテレビ(MXTV)。一九九五年十一月一日に開局した最後の東京ローカル局である。

 既存の在京民放はキー局なる全国波の元締めを指向したが、MXTVは「アナザーウェイ」を選び、あくまで東京にこだわる「都民テレビ」を目指した。また、デジタル化、二十四時間放送、斬新な編成、ビデオ・ジャーナリストの採用などで、二十一世紀を視野に入れた合理的な未来型テレビ局になるというふれこみだった。

 そんなMXTVの番組審議会の局批判は、たしかに既存局とは違う「アナザーウェイ」だ。いったい何が起こっているのか。

 ある番審委員によると、MXTVの番組異変が問題になりはじめたのは、開局後三〜四か月たち、四月番組改編の準備が始まるころである。

 「四月の改編計画で、MXならではの『ASIA都市物語』はじめドキュメンタリー枠が縮小・撤廃され、代わりにアニメなど娯楽番組が増えることがわかった。映画枠も新設され、二十四時間生きた情報を流す当初の方針が一変してしまった。番組審議会はこれに疑義を唱えたが、藤森鐵雄社長は、まったく的外れな銀行時代の自慢話だの経営が苦しい言い訳だのをダラダラと話すばかりで、われわれの発言を一切無視。さらに十一月改編にむけて、ギャラクシー賞奨励賞を取った『テレビ東京人』や好評な『Log in TOKYO』の縮小まで検討する始末。経営のためならどんな番組を流してもよいのか、というのが番組審議会の局に対する根本的な批判です」(ある番組審議会委員)

 こうして九月十九日の番組審議会の席上、委員十一人のうち委員長・粕谷一希、副委員長・小玉美意子はじめ六人のメンバーが、MXTVあてに有志所見を提出。局側は九月三十日付で回答書を出したが、これまた木で鼻をくくった空疎な内容の文書だったため、委員側はさらに硬化した。

 委員の任期は二年で、十月下旬に終わる。というのは、MXTVの番組審議会は開局一年前にでき、番組基準づくりにまで関与した「やる気ある」番審だったからだ。そこで任期満了前に、少なくとも八〜九人の番組審議会委員が辞表を提出するものと見られる。

水面下では、さらなる異常事態が
蝕まれていく「都民のテレビ」

 番組審議会委員のほとんどが、放送局の方針に反対して辞表を叩きつけるというのは、放送史に残る異常事態である。

 だが、実はこれは、東京メトロポリタンテレビで起こっていることの、氷山の一角にすぎない。

 氷山が、巨大な塊のほとんどを水面下に隠しているように、MXTVで進行している事態は、ごく限られた関係者にしか知られていない。しかもそれは、二十一世紀まであと何年という世の中に、なぜこんな馬鹿げたことがまかり通るかと呆れるばかりの、とんでもない事態なのだ。

 「東京メトロポリタンテレビ社内には『三人組』と呼ばれる人物がいる。営業部長の福田博幸氏を中心とする三人です。拓大出身の福田氏は、かつてラジオ関東に労働組合つぶし要員として入社し、遠山景久社長の用心棒となって頭角を現わした。のちに福田氏は、日航の伊藤淳二会長のことを本に書き、遠山社長とひと悶着あっって、ラジオ関東を去った。この人物が手下の二人とともに、どういうわけか開局前のMXTVに入り込み、営業幹部となって会社を食い物にしはじめた。ところが、社長以下役員は誰一人彼らをコントロールできず、彼らのやりたい放題が続いている。この三人組が、MXTVの最大のガンなのです」

 あるMXTV関係者は、眉をひそめてこう語り、取材に応じたことを絶対に漏らさないでくれと何度も念押しした。

 別の関係者によると、彼らが入社してきたのは九四年春。彼らの動きがどうもおかしいと気づいたのは、夏ごろのことだという。それも、最初は営業がハイヤーや料理屋を使い放題といった類いの、よくある話だったが、次第に経費の青天井どころではない、深刻な問題が浮上してきた。

 まず、開局記念番組がまったく売れない。のちに売る努力すらしていないことが判明した。そして、制作サイドの意向とまったく無関係に、営業が「こんな番組が作れないか」という話を持ち込み始めた。九五年夏には、二十近い番組が売れず、開局直後の編成に大穴が開く危機的状況となった。この大穴は、あわてて民放の番組を買い込んで埋めたのである。

 「三人組の営業は、スポンサー企業の宣伝部に番組を売りに行く正規の営業ではない。宣伝部ではなく総務部、あるいは社長や役員に直接出向き、番組でこんな便宜を図るからカネを出してくれと頼む。つまり、総会屋と同じなんです」(MXTV関係者)

 MXTVの中核番組の一つ「東京NEWS」でも、視聴者のためのニュースではない「ヒモつき」ニュースが急増している。「このネタを紹介してやるからカネを出せ」式の、報道ともニュースともいえない怪しい番組である。UHFのアンテナを購入して見ている視聴者は、詐欺にあったようなものではないか。

広告費の流れが不透明
放送の「不偏不党」はどこへ

 ある関係者は、さらに驚くべき事実を口にした。それによると、

 「彼ら三人組は、自分の息のかかった広告会社をスポンサーとMXTVの間にかませたり、制作会社として使ったりしている。そのため制作や広告に関わるカネの流れが極めて不透明。スポンサーから広告会社へ流れるカネのうち、何がしかが消え失せてMXTVが本来得るべき収入を得られなかったとしても、容易にわからない仕組みになっている」

 電通や博報堂は、危ないからMXTVには決して近づかない。そこでMXTVの営業が、どこからか代理店を連れてくるのだが、これが初めて名前を聞くような財団法人や広告会社なのだ。

 「これら中間業者は、特定の政治団体と密接なつながりがある」との証言も得られた。

 「特定スポンサーの広告費が、MXTVに入る前の段階でかすめ取られ、特定の政党の政治資金に回るというシステムが構築されている。関わっている政党は二つだ」(事情通)

 放送局という社会的な公器、それも「都民のテレビ」を舞台に起こっていることとは、にわかに信じがたい話である。しかし、事実とすれば由々しき事態だ。

 取材を進めるうちに、福田ら三人組を東京メトロポリタンテレビに送り込んだある人物の存在に行きついた。この人物は、公明党の都議出身で、かねてから放送に関心があり、議員時代に東京第六局(後のMXTV)について質問したりしている。

 事情通が解説する。
 「この人物は議員を辞めた後、役員としてMXTVに入りたかったが、都が議員の就職斡旋はできないと難色を示した。そこで、自分の事務所にいた福田らを送り込んだ。福田はこの人物を通じて創価学会人脈とつながり、旧公明党――創価学会は福田を通じて都民のテレビを有効活用できることになった。MXTVは、都議会中継を売り物のひとつにしていますからね。だから、MXTVで起こっていることは、営業が総会屋的どころの話ではない。特定の政治勢力、宗教勢力によって、東京唯一のローカルテレビ局が侵蝕されかねない事態が進行しているんです」

 実際、この九月十四日に放送されたある番組(番組自体はどうということはなかった)のスポンサーは創価学会で、MXTVに学会のコマーシャルが流れた。これは番組審議会でも問題となり、委員からは「MXTVの広告基準第四十一条に違反し、放送倫理に反する」「選挙を間近の時期に、一宗教団体の広告を放送するなど自殺行為だ」との声があがった。

 ところが、MXTVの経営陣は「放送の不偏不党」など、考えたこともないド素人ばかりと見える。次に放送を検討しているのは、創価学会をスポンサーにつけた「池田大作氏原作」のアニメ(!!)なのだという。

 筆者は、創価学会にも池田大作にも何の偏見もないが、社会的な公器である放送局には、やってよいことと悪いことがある。そしてどう考えても、これはやってはいけないことである。MXTVは、局を挙げて、度し難い異常な領域に入り込もうとしている。

 問題をいっそう複雑にしているのは、「東京映像アーカイブ」という会社の存在である。これは、MXTVが最大の株主で、国や民間企業が共同出資してつくった映像ライブラリー会社。先に紹介した都議出身の人物は、アーカイブの顧問格で、この会社が三人組の拠点となっているのだ。

 始末に悪いのは、アーカイブには放送法によるしばりがなく、完全な密室状態であることだ。内部で何が行われているか推測する人は多いが、誰も実態は知らず、口出しもできない。はっきりしているのは、近い将来、この会社の経営難が露呈するだろうということだけである。

「放送を知る」強力助っ人も
社長によって事実上のクビ

 さて、なんとも不可解なのは、ここまで書いたような異常な出来事が、なぜ開局一年を迎えようという今日まで、いっこうに改められないのかだ。

 闇市が軒を並べた戦後のドサクサならいざ知らず、戦後半世紀もたった今日、総会屋風情が肩で風切る会社が存続していようとは。その会社が入居するのは、未来都市・東京臨海副都心の象徴「テレコムセンタービル」。なんという皮肉な光景だろう。

 結論からいうと、福田博幸ら三人組がMXTVに在籍していられるのは、ひとえに第一勧業銀行から送り込まれた社長・藤森鐵雄の優柔不断によるものと断定せざるをえない。

 実はMXTVが、三人組を問題視し、その影響力を削ごうとした時期がないわけではない。TBSを副社長を最後に去り、西友副会長(というよりセゾングループ電波・メディア担当)を務めていた絹村和夫を、MXTVの代表取締役副社長に迎えた開局直前の九五年九月から、絹村が実質的に解任された九六年 月までの間が、その時期である。

 ゼネラルプロデューサーとしてMXTV開局前後のコンセプトづくりを担当したのは民放(TBS、テレビマンユニオン)出身の村木良彦だが、村木には経営権はない。この放送局には、絹村和夫を迎えるまで「放送がわかる経営者」は一人もいなかった。それらしい人物は、絹村が最初で最後である。

 そして、ほんの一年前、MXTV社長の藤森鐵雄は、絹村和夫を強力な助っ人として三顧の礼で迎え、開局に臨もうとしていた。ところが、絹村がMXTVの営業改革に着手すると、風向きが変わってくる。

 絹村は、まず営業部を官公庁営業と民間営業に分け、福田博幸を官公庁担当の部長とし、日本テレビ出身の宮田光昌を民間担当の営業局長とした。また、番組販売を見直し、いくつかの怪しげな番組の営業を正常に戻した。

 しかし、三人組は猛然と反撃を開始。西友が始めたUHFアンテナ普及キャンペーンに目をつけ、「副社長の絹村は、出身会社に利益誘導を図っている」と攻撃した。反撃は手が込んでおり、写真週刊誌に絹村攻撃の記事を書かせるなどしている。同時に三人組は、「局がセゾンに乗っ取られてもよいのか」と社長を抱き込みにかかり、それが成功してしまう。

 結局、絹村和夫は 月  日付でMXTVを退任したが、これは「自ら辞任しなければ、解任されてしまう」(絹村)という事実上の首切りだった。民間営業をテコ入れした宮田光昌も、絹村とともにMXTVを去った。

 絹村和夫を知る人物はいう。
 「従業員一万人以上の大企業から、百人ちょっとの小さなテレビ局へ、誰が喜んで行きますか。藤森社長がセゾンの堤清二氏に泣きついてもらい受け、絹村も堤さんの話ならばと『放送人としての最後のご奉公』に行ったのです。そして絹村は、福田ら三人組が『火中の最大の栗』と思い定め、福田解任を副社長就任の条件としていた。ところがMXTV社長の藤森は、あろうことか部長の福田らを残し、代表取締役副社長の絹村を切り捨てる道を選んだのですよ。常軌を逸した老耄ぶりと書いた月刊誌があったが、耄碌したというより、三人組に何か弱みを握られているのじゃないか。絹村解任はほかに説明のしようがない」

 実際、MX社内や第一勧業銀行内では、藤森社長はある一件(ここには書かない)で脅されているという噂が流れている。

 番組審議会委員によると、有志による所見を出す直前に藤森社長と話し合う機会があった。その席で委員が、実名は出さずに「問題の人物がいるようだが」と水をむけると、誰と知っている口振りで「私は銀行時代、ある行員が共産党員だったのをやめさせ、その男は立派に更生した。今回も自分がいるから大丈夫」などと、まくし立てたという。ズレてることだけは確かなようだ。

郵政、都、東商の責任は甚大
見過ごすことは許されない

 MXTVこと東京メトロポリタンテレビは、九五年度の赤字が二十六億六千万円という巨額に達した。九六年度も巨大な赤字が上積みされ、単年度黒字がいつ達成されるのか、見通しはまったく立っていない。

 なにしろ、メインのスポンサーは東京都と大井競馬場だけで、これ以外には、まともなスポンサーがつかない。現在の経営を続けるなら、仮に黒字になったとしても公共の福祉を大きく損なうから、放送局としては失敗で、一刻も早くつぶしたほうがよい。

 最後に指摘すべき問題は、誰がこんな放送局にしてしまったか、そしてMXTVに再生の道はあるのか、である。

 社長の藤森鐵雄は、絹村退任が決まる直前、絹村、東京商工会議所名誉会頭の石川六郎、セゾンの堤清二と会い、「郵政省、東京都、東商が連携していけば大丈夫」といった。いみじくも藤森が名前を挙げた「郵政省」「東京都」「東京商工会議所」の三者が、東京メトロポリタンテレビを今日の哀れな姿にした「A級戦犯」というべきである。

 まず郵政省。郵政省は最近、MXTVについて「コメントをする立場にない」などと逃げの一手であるが、冗談ではない。

 小野沢放送行政局長の時代、東京第六局について、役員は何人、うち非常勤は何人、社員は何人、資本金はいくら、マスコミの出資比率は何%と、こと細かに定めた文書を出したのは、ほかならぬ郵政省である。

 郵政省が、MXTVを天下り先の一つ、巨大な利権の一つとしてとらえ、コントロールしようとしていたことは、右の経緯からも明らかだ。実際、鴨光一郎を代表取締役専務として送り込んでいる。開局時に代表権を持っていた二人のうち一人が郵政省OBなのだから、郵政省にMXTV問題について責任がないはずがない。

 しかも、テレビ朝日の椿発言には放送行政局長が「電波停止もありうる」などと口走りながら、MXTVの現状に目をつぶる鈍感さはなぜか。郵政省は三人組に重大な「借り」があるのではないか。

 これについては稿を改めるが、放送法によって設置が義務づけられた番組審議会の委員長を含む過半数の委員が、有志所見の中で、「MXTVは放送法に違反している」と公然と主張している以上、郵政省は関係者を呼んで事情を聞くなど、何らかの行動を取らざるをえないだろう。

 厚生省のエイズ薬害によって、官僚はするべきことをしないというだけで、過去にさかのぼって責任を問われることがわかった。放送では死者は出ないが、過去にさかのぼって郵政官僚の責任が問われても、何の不思議もない。

 次に東京都。都は、MXTVにあまりに無能な人材を送り込み、しかも、カネだけはいわれるままに出しすぎた。都もまた、自治体官僚の集合である。完成されたシステムに従って物事を処理することはできるが、百戦錬磨の総会屋的人物と渡り合うなどもっとも不得手なサラリーマン。どこにもない放送局をゼロから作ることも、官僚にはできない。

 しかし、税金という「打ち出の小槌」をもっているから、カネだけはある。それも、年度ごとに使い切れば誰も文句はいわず、何に使っても倒産の心配がない「予算」という無責任なカネだ。だが、MXTVに対する都民の税金のタレ流しが、今後も許されるとは、とても思えない。千二百万都民から、何たる税金の無駄づかいかという批判が巻き起こるのは、時間の問題だろう。

 そもそも、テレビに身を置いたことがある現東京都知事・青島幸男は、「都民のテレビ」の異常事態をどこまで把握しているのだろうか。放送にかかわったことのある人物ならば、ここまで書いたことが話半分としても(もちろん話全部本当だが)、これは捨てておけないと思って当然だ。一刻も早く事実関係の調査に乗り出すことを進言しておく。

 そして、東京商工会議所である。

 そもそも藤森鐵雄は、東商副会頭だったから社長になったのだ。MXTV社長はソニーの大賀典雄(現会長、当時は社長)にほぼ内定していたのだが、放送機器を扱うメーカー出身はまずかろうと、藤森に決まった経緯がある。社長を送り込んだ東商には、大きな責任がある。

 だが、情けないことに東商にも、ことなかれ主義、無責任体質がはびこっている。絹村退任直前の四者会談に、東商名誉会頭の石川六郎が入っていたことを先に書いたが、石川は藤森に辞任を迫ることができない。鹿島建設の大番頭の石川は、建設談合の当事者の一人。東商名誉会頭というポストにしがみついていること自体、どうかしている人物だからだ。

 しかし、郵政省、東京都、東商のうち、どこにMXTVを正常化する能力があるかといえば、東商である。東商だけが「カネが続かなければ、ビジネスは続かない」ことを理解している。

 このままいけば、MXTVは赤字を累積するばかりで、やがて手のつけられない火ダルマとなる。出資し社長や役員を送り込んだ以上、儲からないからやめるでは筋が通らない。火ダルマとなる前に郵政や都を説得し、社長の首をすげ替え、問題人物を辞めさせるには、財界や東商会員企業が動くしかないのではないか。

 終りに、東京メトロポリタンテレビの社員について、書いておこう。いまや社内の雰囲気は最悪で、社員たちはどうしようもない閉塞状況に陥っている。

 MXTVには、ローカル局を辞めて中途入社した社員が多く、ここ以外に後がないという者が少なくない。力ある者にすり寄り、カネのためならどんな番組でも流す編成スタッフ。やる気を失ったビデオ・ジャーナリスト。ここまで来たからには、どうなるか最後まで見てやろうと開き直る社員たち。彼らに罪はないが、目を覆うばかりの荒廃ぶりである。

 以前、民放労連にMXTVの社員有志から「なんとか組合を作れないだろうか」という相談があった。だが、代表権を持つ取締役副社長を追い出すほどの、組合つぶしのプロがいるのだ。迂闊《うかつ》に動いてはケガの元である。もっとも、唯唯諾諾《いいだくだく》として、おかしな上司の命令通りに動くだけというのも、あまりに能がない。いざというときのために準備し、証拠固めをしておくべきである。

 明けない夜はない、春の来ない冬はないのだ。

 東京メトロポリタンテレビも、正常化されないはずがないと信じよう。