メディアとつきあうツール  更新:2003-07-03
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変革するは我にあり
――独立分権宣言!

変革するは我にあり(月尾嘉男著)

  著者●月尾嘉男
  発行●日本実業出版社
     2001年11月
  定価●税別 1500円

≪参考リンク≫

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という。

「失われた10年」の間、日本の政治家、官僚たち、あるいは金融機関や事業会社の経営者たちは、無為無策のまま右往左往するばかりだった。彼らは、過去の経験から導き出せる範囲での対応策しか打ち出せなかったからだ。それはほとんど効果がなく、100兆円単位で投じたカネは多くが死にガネになってしまった。愚者が経験だけを至上の手本とした、当然の帰結である。

しかし、月尾嘉男が歴史に学ぶ姿勢は終始一貫している。月尾は、「失われた10年」に噴出した問題は、日本が近代国家として打ち出したさまざまな政策や制度が、巨大な壁に突き当たったことに起因すると見る。日本ではいま、明治以来形成されてきた政治・経済・社会構造を覆《くつがえ》す「100年単位での大転換」が進んでいると主張する。

それは、右肩上がりの時代の終焉、中央集権の終焉、生産から生活へ、拡大から縮小へ、開発から回復へ、官から民へ、普遍から固有へといった大転換である。だが、現在の日本は、こうした変化に対応できる構造をいまだ持ち得ず、閉塞状況に陥っている。どうするか。

月尾は、やはり歴史に解を求める。世界史、アメリカ史、日本史などに学び、変革はつねに「辺境」から起こったことを示し、日本が復活するためには、「地域」からの「独立分権革命」を起こす必要があると結論する。

以上が前半部分で、後半は地方から改革ののろしを上げ、中央政府と戦っている元気な首長たちのケーススタディとなっている。石原慎太郎と北川正恭については特別インタビューを付す。あらゆる政治家や役人、そしてジャーナリストに一読を勧めたい本である。

なお、この本は、月に2度ほどのペースで、月尾嘉男・東大教授(現・総務省総務審議官)が坂本と編集者の前で語りおろし、坂本が適宜《てきぎ》補遺をほどこしてまとめたものである。「口述筆記」がもとになっているわけだが、月尾教授がメモも何も一切見ずに、1章分くらいをよどみなく話すのには驚いた。それで、話が前後しないどころか、詳細なデータまでスラスラ出てくるのだ。いやほんと、感心しました。