メディアとつきあうツール  更新:2003-07-03
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脱「ダメ日本」宣言

脱「ダメ日本」宣言(田中康夫・田原総一朗著)

著者●田中康夫・田原総一朗
発行●アスキー 2001年11月
定価●税別 1500円

≪参考リンク≫

≪松本希世彦による書評≫
2001年秋に突如、長野県知事選に立候補し圧勝をおさめて知事に就任。その後「脱ダム」宣言、「脱・記者クラブ」宣言をはじめ、車座集会、ガラス張り知事室、どこでも知事室など、過激かつユニークな県政を推進する田中康夫を、「朝生の猛獣使い」こと田原総一朗が直撃した対談集。

知事就任からほぼ1年の動きをおさえ、従来の県政や国政のダメさ加減、脱ダムや脱記者クラブ宣言の本質、21世紀の田中角栄とも思える田中の長野おこし施策、田中流の民主主義論、長野から国政を買えていく道筋などについて、田原が容赦なく突っ込み、田中が事細かに答えていく。

歯に衣着せぬ発言や挑発的な行動で、とかく過激な側面だけが強調されがちな田中康夫だが、その語りはとても論理的で、説得力がある。

新聞やテレビがストレートに報じず、記者クラブ問題のように隠蔽《いんぺい》したり、知事室でワインを開けた一件のように茶化してきたことも、本当のところはこうだと暴露されており、きわめて刺激的だ。マスコミ関係者には必読の一冊である。

いま、日本は暗くて深い閉塞状況の真っ直中にあるが、この国を変えていく突破口は、住民と密着した地方にこそある。そして、その突破口は、停滞する私たち一人ひとりが変わるための突破口でもある。そのことが、ハッキリ自覚できる本ともいえるだろう。

なお、難しい言葉にはルビが振られ、カタカナ語の注釈や脚注、図版も充実。中高校生にも読める仕上がりなのがよい。この正月におススメの一冊である。(松本希世彦)

●坂本は、アスキーとともに企画・プロデュースし、構成も担当。何度も長野へ行き、関連取材を重ねたほか、各地の「どこでも知事室」「車座集会」などに同行(何度も行き過ぎて印税とコスト計算が合わない!)。台風だかなんだかで軽井沢で新幹線が止まり、日本海を見ながら帰ってきたことも。田中康夫はヘッポコ作家としてのこだわりだろう、どうしても手を入れたいというので、長野のホテルで2日間、康夫と編集者2人と坂本で缶詰になって直した。直しすぎだけどね。初版はなんと3万部!!

●原稿をまとめた人間がいうのもなんだが、田中康夫はほんとうにおもしろい、いいことをいっている。田中康夫への好き嫌いは別にして、「長野モデル」に学ぶべきことは、中央も地方も実にたくさんあると思う。実際、ここ1年半ほどで中央や地方が新しく掲げはじめた政策の多くは、田中が長野で準備したり、実施したりしていることである。何度も長野へ足を運んだが、中央マスコミで報じられることと、地元の声の違いにも驚かされた。