メディアとつきあうツール  更新:2003-07-02
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<ジャーナリスト坂本 衛のサイト>

青少年社会環境対策基本法
廃案以外の選択肢はない。

≪リード≫
ここにリードが入る。

(「GALAC」200?年0?月号)

KSD小山も法案検討に関与

 「青少年社会環境対策基本法案」はもともと「青少年有害環境対策法案」として、2000年4月から5月にかけて素案がまとめられた。

 検討の中心メンバーは参議院自民党の文教族で、中曾根弘文(森喜朗内閣で文部大臣)、大島慶久、石井道子ら。なお、同年秋にできた自民党「青少年を取り巻く有害な環境対策の推進に関する小委員会」(委員長は田中直紀)には、KSD事件の小山孝雄もしっかり入っていた。

 法案の趣旨を一言でいえば、青少年に有害となりそうなものはなんでも規制すべし、ということである。

 第一のポイントは、法案が「事業者の供給する商品又は役務」、つまり世の中で売られるありとあらゆる商品やサービスを対象とすること。

 第二のポイントは、すべての商品やサービスが、(1)青少年の性的な感情を著しく刺激し、又は性的な逸脱行為を誘発、若しくは助長するおそれ、(2)青少年に粗暴な又は残虐な性向を植え付け、又は暴力的な逸脱行為若しくは残虐な行為を誘発し、若しくは助長するおそれ、(3)その他青少年の不良行為を誘発し、又は助長する等の青少年の健全な育成を著しく阻害するおそれ、のどれか――早い話エロか暴力か不良か、とにかく「青少年を悪くするかもしれない」というだけで、法案の規定が発動されてしまうこと。

 第三のポイントは、商品やサービスが青少年を悪くするかもしれないと判定する権限が、総理大臣または都道府県知事にあること。

 第四のポイントは、青少年有害環境をタレ流していると判定された事業者へのペナルティだが、まず勧告が行われ、従わなければ事業者名が公表されること。なお、これとは別に、総理大臣や知事はいつでも青少年の保護に関して事業者に指導と助言ができる。

 以上まとめると、商行為に関わるすべての事業者や団体は、総理大臣や知事によって「青少年に有害のおそれ」と認定されただけで、まず改善勧告、従わなければ会社名の公表という処分を受けることになる。

法案をめぐるメディアの動き

 素案の公表から一か月後の2000年6月には、メディア総合研究所が法案に反対する緊急アピールを出した。これに関していくつかの新聞が報じたほか、夏までに小誌や出版関係誌、法律関係誌などが法案の問題点を指摘。10月以降、出版倫理協議会、雑誌協会、書籍出版協会、出版労連、民放連、書店商業組合連合会、映演総連、ペンクラブなどが相次いで反対声明を出した。

 2001年1月には、真山勇一、筑紫哲也、安藤優子、蟹瀬誠一、田原総一朗、斉藤一也の民放キャスター6名が反対声明を発表。テレビ各局はこれをニュースとして報じ、さらにワイドショーその他で解説。多くの新聞もこの動きを報じた。

 これ以降、2月の民放連による公開シンポジウムはじめ、法案に反対するイベントが各地が開かれ、一般雑誌や地方紙などもこの問題を取り上げて今日に至っている。

話にならないおバカな法案

 最後に法案の欠陥を列挙しよう。

 前提の誤り=青少年の凶悪犯罪や校内暴力件数は減少している。青少年問題の原因はメディアではない。青少年問題の解決につながらない。

 法案の欠陥=有害社会環境の定義が曖昧すぎる。官優位・民間軽視・国民蔑視の時代錯誤。言論・表現の自由や検閲禁止に抵触し憲法違反。すべての文言が曖昧かつ広範囲で、厳密な構成要件を欠き、恣意的運用を許す。審議会方式も異議申し立ての機会もなく適正手続きが保障されない。放送法との二重規制。

 議論の余地のない悪法で、メディアに廃案以外の選択肢はない。