メディアとつきあうツール  更新:2003-09-09
すべてを疑え!! MAMO's Site(テレビ放送や地上デジタル・BSデジタル・CSデジタルなど)/サイトのタイトル
<ジャーナリスト坂本 衛のサイト>

「青少年社会環境対策基本法」に
断固反対する
テレビ・キャスターの
声明発表(記者会見)

2001年1月15日 東京・スクワール麹町

≪このページの目次≫
2001年1月15日、民放キャスター6人が集まり、「青少年社会環境対策基本法」に断固反対する声明発表(記者会見)をおこないました。坂本はその事務局を務めました。

≪参考≫

声明:「青少年社会環境対策基本法」に
私たちは断固反対します。 ――PRESS RELEASE 2001年1月15日

 いま、参議院自民党を中心に「青少年社会環境対策基本法案」が準備され、2001年2月にも国会に上程されようとしています。

 この法案は、まず「急激な情報化の進展、過度の商業主義的風潮のまん延」が「青少年有害社会環境の弊害を深刻化・増大」させていると決めつけます。そして、あらゆる「商品やサービス」について、それが青少年の性的・暴力的な逸脱行為や不良行為を誘発・助長するおそれがある場合、内閣総理大臣や都道府県知事は、その商品やサービスを提供する事業者に対して必要な措置をとるべきことを勧告でき、従わなかった場合はその旨を公表できると定めるものです。

 法案を検討する政治家たちからは、「ターゲットは週刊誌とテレビだ」「この法律で警察庁がメディアを取り締まれるようにできないか」という声すらあがっています。

 テレビにかかわる私たちは、いじめ、不登校、非行など社会が抱える青少年問題が極めて深刻であり、この問題にテレビが大きな責任を課せられていることを、私たち自身の問題として真摯に受け止めています。テレビ局は、テレビに対する視聴者の批判や要望に真剣に耳を傾けて、よりよい番組づくりに一層努力しなければならないと考えています。

 しかし、テレビ番組に対して、青少年にとって有害かどうかを総理大臣や都道府県知事が認定し、指導、助言、勧告、公表まですることは、法律に基づく公権力の放送番組への介入を制度化することといえます。

 公権力の放送番組への介入は、テレビの自律を損ない、民主主義社会においてテレビに課せられた大きな使命――「表現の自由」「報道の自由」を担って公権力を監視するという使命を危うくするものと、深刻に憂慮せざるをえません。

 したがって、テレビにかかわる私たちは、この法律を到底容認することはできません。

 ここに、私たちキャスター有志一同は「青少年社会環境対策基本法」の制定に断固として反対することを表明します。

 同時に、視聴者や国民のみなさんにも、いま準備されている法律が、民主主義社会の基本原則であり国民の知る権利に奉仕する「表現の自由」「報道の自由」を侵す極めて危険なものであることを、強く訴えます。どうか私たちの主張に耳を傾け、法案の成立を阻止するために力をお貸しください。

2001年1月15日

キャスター:真山勇一 (日本テレビ「ニュースプラス1」)
筑紫哲也 (TBS「ニュース23」)
安藤優子 (フジテレビ「スーパーニュース」)
蟹瀬誠一 (テレビ朝日「スーパーモーニング」)
田原総一朗 (テレビ朝日「サンデープロジェクト」)
斉藤一也 (テレビ東京「ニュースアイ」)

※この声明は、2001年1月15日午後2時、東京・スクワール麹町において発表したものです。

出席者のプロフィール ――PRESS RELEASE 2001年1月15日

真山勇一/まやま・ゆういち
1944年東京生まれ。東京教育大学文学部卒業。68年日本テレビ入社、報道局報道部に配属。83〜87年ニューヨーク特派員。87年「ライブオンネットワーク」キャスター、88年「NNNきょうの出来事」キャスターなどをへて、92年から「NNNニュースプラス1」キャスター。

筑紫哲也/ちくし・てつや
1935年大分県日田生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。59年朝日新聞社に入社。68〜70年米軍統治下の沖縄特派員。71年ワシントン特派員。84年「朝日ジャーナル」編集長。89年朝日新聞社を退社し、以後現在までTBS「筑紫哲也NEWS23」メインキャスター。

安藤優子/あんどう・ゆうこ
1980年「今、世界は」、82〜85年「TVスクープ」、85〜86年「ニュースステーション」、87年「CNNディウォッチ」(以上テレビ朝日系)、87〜94年「スーパータイム」、94〜2000年「ニュースJAPAN 」をへて、現在「スーパーニュース」キャスター(以上フジテレビ系)。

蟹瀬誠一/かにせ・せいいち
AP、AFP通信社記者、TIME誌特派員をへて、1991年に日本のテレビ報道界に転身。日米経済摩擦、政治と暴力団、東欧の公害、ロシア・カンボジア情勢などの海外取材を行う。現在は、テレビ朝日のモーニングショー「スーパーモーニング」メインキャスター。

田原総一朗/たはら・そういちろう
1934年滋賀県彦根生まれ。早稲田大学文学部卒業。岩波映画、東京12チャンネルをへて独立。ドキュメンタリー作家。テレビ朝日「サンデープロジェクト」キャスターを務めるほか、「朝まで生テレビ」司会でもお馴染み。近著に「日本の戦争」「IT革命のカラクリ」など。

斉藤一也/さいとう・かずや
32歳。1992年テレビ東京入社。2歳になる男の子1児の父。99年10月から、現在のテレビ東京系夕方ニュース「TXNニュースアイ」のキャスターを務める。

ご参考:「青少年社会環境対策基本法案」
問題点メモ ――PRESS RELEASE 2001年1月15日

事務局:ジャーナリスト 坂本 衛

(1)そもそも法案を議員立法する「動機が不純」である。

●法案に関わる参院自民党議員らの「狙いはテレビと週刊誌」(と記者に対し「新聞は心配ない」というニュアンスで語る)「マスコミを団結させないようにしなければ」「警察が取り締まれるようにできないか」「文言が曖昧だから抑止力になる」といった発言から、テレビと週刊誌を狙い撃ちにするメディア統制の意図は明らか。

●夏の参院選挙をにらみ、「会員1200万人」を謳《うた》う日本PTA(PTA最上部組織)の圧力を過大視した「選挙対策」の意味合いが強い。市民の意見を聞いた形跡もない。

(2)青少年問題を、急激な情報化や過度の商業主義によって有害社会環境(たとえばメディア)の弊害が深刻化・増大したためとする前提が、間違っている。(第3条)

●青少年の凶悪犯罪や校内暴力の件数は、80年代よりも明らかに減っている。

●青少年問題の第一義的な原因が家庭や親にあることは、教育関係者、心理学者、小児科医、精神科医などの間では常識。少なくとも、メディアが最大の原因であるという科学的な証拠は皆無で、そのような社会的な合意もなされていない。

●テレビが自殺を繰り返し報道すれば自殺は増えるかもしれないが、年3万人の大人が自殺する要因はテレビ以外にある。同様に、テレビドラマを見てバタフライナイフを入手する少年がいたとしても、それを使って人を刺す要因はテレビ以外にある。

●現実にはテレビは、青少年に共通の話題や体験を与え、その連帯や協調を強化し、社会のルールや生き方を教え、性的・暴力的表現すらも未知の情報やカタルシス効果をもたらして、全体としては大きくプラスに作用している。

(3)法案の中身に、多くの問題点がある。

●「青少年有害社会環境」の定義が曖昧すぎる。(第2条)

●まず国や地方公共団体に青少年社会環境対策の責務を定め、事業者や国民はこれに協力する責務があるとする「官優位、民軽視」の色彩が強すぎる。(第4〜8条)

●「協定又は規約」「指導及び助言」「勧告及び公表」の規定は、憲法の保障する言論・表現の自由(報道の自由を含む)や検閲の禁止に抵触する。(第14、15、16条)

●「商品又は役務」「誘発し、もしくは助長するおそれ」「供給方法等」など、文言が曖昧《あいまい》かつ広範囲で、厳密な構成要件を欠くため、法律の恣意的な運用を許す。(同)

●「内閣総理大臣又は都道府県知事」を認定者とするが、審議会方式の採用も異議申し立ての機会もないため適正手続きが保障されず、法律の恣意的な運用を許す。(同)

●国の影響力が極めて強い全国単一の青少年有害環境対策センター(社団法人青少年育成国民会議を想定)に、有害環境の苦情処理など広範な権限を与え、言論・表現の自由に抵触する。(第17条)

●放送法との二重規制になる。

(4)別途検討されている人権救済機関の設置、個人情報保護法の適用との三点セットで、公権力によるメディア統制がますます強化される恐れがある。

※以上はあくまで坂本の個人的な見解です。記事その他への引用はご随意にどうぞ。

青少年社会環境対策基本法」に
断固反対するテレビ・キャスターの声明発表
(記者会見)のお知らせ ――PRESS RELEASE 2001年1月15日

日時:2001年1月15日(月曜日)午後2時〜3時
場所:スクワール麹町 3階「華」 電話03-3234-8739
※電源が足りないので、テレビクルーは各自必ずご用意ください。

出席予定のテレビ・キャスター:
  真山勇一(日本テレビ「ニュースプラス1」)
  筑紫哲也(TBS「ニュース23」)
  安藤優子(フジテレビ「スーパーニュース」)
  蟹瀬誠一(テレビ朝日「スーパーモーニング」)
  田原総一朗(テレビ朝日「サンデープロジェクト」)
  斉藤一也(テレビ東京「ニュースアイ」)
※上記以外の参加者については調整中。
事務局:坂本 衛(放送専門誌「GALAC 」編集長)

 いま、参議院自民党を中心に「青少年社会環境対策基本法案」が準備され、2001年2月にも国会に上程されようとしています。

 テレビへの公権力の介入を許すこの法案は、テレビの自律を損ない、民主主義社会においてテレビに課せられた大きな責務――憲法が保障する「表現の自由」「報道の自由」を担って公権力をチェックするという使命を大きく損なうものと、深刻に憂慮せざるをえません。法案はあらゆる「商品や役務(サービス)」を対象としており、その悪しき影響はテレビに限らず、ラジオ、新聞、週刊誌や月刊誌、書籍、映画、ビデオ、広告など、マスコミのすべての領域に及びかねないのです。

 しかしながら、この法案についてのマスコミ報道はまだまだ不十分であり、国民の関心もほとんど呼んでいません。

 そこで、私たちテレビに関わるキャスター有志は、この法案が民主主義社会の基本原則である「表現の自由」「報道の自由」を侵しかねない危険なものであることを強く訴え、この法案に断固として反対することを表明するため、上記のように記者会見を開きます。

 通信社、新聞社、出版社、放送局のみなさんには、ぜひこの記者会見をご取材くださいますようお願いしてご案内申し上げます。

テレビ・キャスター有志一同