大木の大樹院、正月の雰囲気である。右に大般若転読会の看板あり。

                  は ん に ゃ さ ま
                                    1月第2日曜日(第1日曜日)

                                豊川 市大木町大樹院
                                        JR飯田線三河一宮駅下車徒歩10分


                                



豊川水系の祭から「付設写真館」  を見る。

 大般若転読式といふのは「『読めば邪を除き、悪を去り、開き見れば福や繁栄が来る』と言われる大般若経の転読式」(「春夏秋冬三 遠南信行事暦 2007」7頁)である。転読とは、お経をきちんと読むのではなく、「法会において、経の題名と初・中・終の数行を読み、経巻を繰って全 体を読んだことに する読み方。」(「大辞林」第2版)である。何しろ大般若経は全六百巻ある。これだけ大部のお経をきちんと読んでゐたらいつ終はるかしれ ない。そこでかう いふ読み方をしてその功徳に預からうとするのである。東三河でもいくつかの大般若転読が行はれてをり、例へば天狗と狐の出る火伏せの長松 寺どんき(豊川市 御津町下佐脇、旧宝飯郡御津町)も大般若転読に始まる。
 豊川市大木町(旧宝飯郡一宮町大木)大樹院の大般若転読式は「はんにゃさま」として知られてゐる。大木周辺の、篠田、西原、足山田、長 草、樽井の計六地 区の行事で、年頭1月7日に、各地区の僧侶、区長(庄屋)が大樹院に集まつて大般若経六百巻の転読式をして、その年の家内安全、豊作等を 祈願する。しか し、ここはそれだけ ではない。大樹院に各地区の急使の若者も集まるのである。

読み終わったお経の1冊を、それぞれの部落の青年が自分の部落に持ち帰り、各戸を廻って家内安全を祈り、お坊さん達が全部読み終わらない うちに大樹院まで 帰ってくるのです。(大木区作成の印刷物より)

現在は車を使ふし、各戸回りはしない。急使はそれほど大変な役ではなささうだが、急使がきちんとその役目を果たしてゐた頃はさぞかし大変 であつたらうと想 像する。現在は次のやうに行はれる。
 例へば長草では、急使がまづ長草の公会堂に着く。そこでは婦人会の総会が開かれてゐる。急使は用意されてゐたお賽銭を経本の木箱に入 れ、その木箱を婦人 達にかざす。その後、お賽銭を撒く。さうして大樹院にもどつて経本を返す。また西原では、地区内の成徳寺に急使は向かふ。経本を入れた箱 をかざしつつ本堂 に着く。本堂では住職夫人が急使を待つ。賽銭を急使に渡す。急使はそれを木箱に入れて撒く。さうして大樹院へもどる。小異はあるが、基本 は変はらないと思 はれる。各戸回りを省略して賽銭撒きになつてゐるのである。長草ではかつて、賽銭撒きは村境の念仏塚で行つた(「新編豊川市史」第九巻民 俗972頁)とい ふから、場所こそ違へ、これも昔から行はれてゐるのであつた。






急使、5人しかゐない!?

大般若経の一巻を受け取り、手に持つ木箱に入れる。

長草

西原


だいびきの陰陽の作り物、上前から、下後ろから。リアルな出来?
以下の写真は2016年の様子です。大木の使者を追ひました。

大樹院大般若経転読会

同左、大般若経は大木進雄神社蔵。

大木の使者の持つ箱、大般若経1巻入り。

ここだけは人がゐて手渡し、他は無人。

使者の集めてきた賽銭を撒く。大木大樹院前、既に大般若経転読は終はつてゐる。

 ちなみに、同日、大樹院隣接の大木会館で行はれる「だいびき」、これは野菜による作り物の陰陽で有名であるが、本来は大木地区のみで行ふ別 行事である。 はんにゃさまとだいびきが大木では一連の行事のやうになつてゐるだけである。大木の人々には、むしろこちらの方が楽しみであるのかもしれな い。はんにゃさ まの始まる頃、会館ではだいびきの準備が進んでゐるのである。
 以上、旧宝飯地方北部に伝はるちよつと変はつた大般若転読式であつた。(08.09.15)


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