おとぎばなしを尊敬します——静かに語り、花を咲かせて、不思議いっぱいの種をまく……。
ことばは耳と、絵が目や指と踊りだして、こころがウキドキ響えるのです——
おとぎの国のともだちに、ほんの少しでも加えてくれたらうれしいな。
千夜一夜がどうか続きますように。
院長ヤブター:「今日は、どうしました?オーカミさん。」
患者オーカミ:「おなかの調子、ぐるぐるごろごろで仕事も手につきゃぁしない。院長先生、診てくれよ。」
院長ヤブター:「昨日、何をたべました?オーカミさん。」
患者オーカミ:「何だっけ何だっけ、
えーっと、ほぇ~っとね、『わらブヒィもち?』・・・それからぁ、う~ん、あ~っと、『きのこブータの里?いや山』だ!新発売の、トンコツ味のね・・・」
院長ヤブター:「・・・そうですか(ウソつけ!生ブタ臭プンプンさせて、バレバレだ)・・・他に何か、生モノは?」
患者オーカミ:「森へピクニックにでかけてよぉ、そうそう、食べたんだわぉ・・・だから生はちょーっと、ムリだろ・・・天気もほら、風強かったし、ピープーとさぁ。」
院長ヤブター:「そりゃぁいい。ピクニックは健康にいい。」
患者オーカミ:「んじゃぁこのぐるぐる、あわててガバっと食っちまったイヤ、食べたからか~?なんだかちっとも腹もち好くない・・・」
院長ヤブター:「食い合わせ、その『わらブー』やらと『きのこブー』やらとの・・・下剤でバーっと、一気に出すよ」
患者オーカミ:「そ、そりゃぁいかん!院長。せっかくのオレの血肉、イヤまーだまだ働かにゃならん。頼むからそりゃぁ止してくれ・・・」
それならと、大きなおーきな💉注射器を手にもって、ギラリと光る銀ぶちメガネの奥で片目を閉じながら、白いマスク(口元に薄ら笑いを浮かべているんだ、きっと)がモゴモゴ動く。
院長ヤブター:「オーカミさん、ちょ~っとジクーってするよ~」
患者オーカミ:「オーマイ、止めろ院長、ウォーマイ、ガァ〜、ギャァァァ!」
シーーーーン(診察室)・・・窓のむこうに、夕陽がしずんでく。
院長ヤブター:「兄さんブタがなまけもので、姉さんブタがめんどくさがりやで、弟ブタがおくびょう者だって?兄姉弟チカラ合わせて暮らしているのに、よくもまぁ根も葉もないウソのはなしを、SNSは。
オーカミが悪者だって?み~んな親も子もいるのに。
食べなきゃ死ぬよ、だれだって。
病院は、助けなきゃならないんだ。いつかは死ぬというのに。」
おしりをさすりさすり、オーカミは病院をあとに、森へ帰って行った。ふたりの子どもの手をひいて。
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▼ 第27話人に会うなと人が言う。 人と話すな、人と人、離れてろと人が言う。
目に見えないものがやってきて、人から人へ巣くっては命をうばう、恐ろしいやつ。
人の顔? わからない。人の声? わからない。顔と声、マスクが衛兵みたいに仁王だち。
目に見えないものがやってきて、人から人へ巣くっては命をうばう、とんでもないやつ。
たった1年ちょっと、地球上の人間は180万人もそれで死んでしまった。
誰とも会えず、誰とも話せず、あの世行きさ。
まだまだふえるぞ、死にゆく人が。右も左もしらず、あの世でも、たった一人ぼっちで。
Covid19 おまえは誰だ?
2019/05/20/mon/ Ysasa
▼ 第26話ある日、道がわかれた。行先は知れない。
立ち止まったまま、道を選べず固まってしまった。
右はどこへ行くのだろう。左はどこへ行くのだろう。
右か左か、どちらかを選べと言ってはいない。右も左も、どちらも選べるぞ、そう言っているのに。
ある日、道がわかれると人は立ち止まってしまう。
どっちでもいいじゃないか、歩いていけるのだから。
このページの最初へ戻る ▲2019/05/20/mon/ Ysasa
▼ 第25話そこにずっと立っている。どこにも行けず、ずっと。
子どものころ、登って祖父にしかられた。危ないからか、枝がかわいそうだからか。
今も立っている、そこに。どこにも行けず、ずっと。枯れもせず、枝を伸ばしては切られ、伸びては切られ。
偉いなぁ木は。たったひとりで、何もいわず。
どこにそんな力があるのだろう。どこにどんな夢があるのだろう。
たったひとりで、何も言わず、だまって。みんなに見あげられながら。
そこにずっと立っている。ずっと、ずっと、どこにも行かず。
このページの最初へ戻る ▲2016/03/22/tue/ Ysasa
▼ 第24話おじぞうさんいつもひとり。さみしくないのかなぁ。
お家はやねだけ、いつも風ぴゅうーぴゅう。寒くてかぜ、ひかないのかなぁ
赤いよだれかけかけて、あかちゃん?あっ、つえついてる……おじいちゃん?
ぼくの両の手のいぼ、とってくれたね。おじぞうさん、まほう使いみたいだったよ。
お母さん、泣いてた。なすのへたとおじぞうさん、ありがとうって。
おばあちゃんのはなし相手、いつもありがとね。同じことばかり、ぼくにも言うんだ。
みんななかよく暮らせますようにって。みんないつも、なかよしだけど……なんでかなぁ……
おじぞうさんいつもひとり。友だちいないの? 毎日だれかれやって来て、いそがしいの?
黙ってるから、ぼく一人でしゃべってるよ。
おじぞうさんやっぱり、笑ってるみたい。ありがとね。
2014/12/11/Thu/ Ysasa
▼ 第23話こども:おねしょ!おねしょしちゃったんだよぉ!
ねる前、ちゃんとトイレ行ったのに…オレンジジュースのゆめ見たんだ…何でなんで?ねえ、何で?ねえ神さま、このままじゃ、こわくてねむれないよぅ。
イエス(神さま代理):ゆめは、人工えい星みたいなもので、きみのまわりをぐるぐる回っている。きみがヨコになり目をとじると、全自動でスイッチが入る、そういう設計なのだ。それに、ときどき神さまの乗り物にもなる。きみがねむっているほうが、神さまも出て行きやすいからね。
で、おたずねの「ねている子にジュースのゆめ、ひどい!」ですが、おっしゃる通り、いじわる!です。ひどい!です。いくら神さまでも、あんまり!です。このアクマ!です。わたしイエスでもきっともらしちゃいます!そのあとは家ぞくにしかられます!おしりペンペンです!ふとんを外にさらされます!むち打ちされるより、はずかしい!神も仏も…
こども:イエスさん…、なにか心配ごとでも、あるのですか?
イエス(神さま代理):はっ…、い、いえ、イエスはその、みなさんの代表ですからその…、不安があるなどと、口がさけても言いません。神さまは全のう、すべてをごぞんじなのです。ですからねた子にジュースは、おねしょだと、知っておられるのです。ですから神さまは、ええかげんにせんかい!…しっけい、いたずらもほどほどにしていただきたいと、あやまるのは、代理のイエスなので、このヤロウめ!
ゆめが、神さまとイエスのがまんくらべなどと、 だれが知っているだろうか。
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▼ 第22話きのう、絵本をよんだ。
胸がバクバクするような、ドキドキするような、どうしてだろう。
よみおわると、きゅ〜んとして、動けなくなった。
きのう、手紙をもらった。なつかしいような、ついこないだのような、どうしてだろう。
思いだして、きゅ〜んとして、動けなくなった。
きのう、ラジオをきいた。ハッとしたような、くちずさんだような、どうしてだろう。
耳をすませて、きゅ〜んとして、動けなくなった。
思わず、うなだれて、ことばを失うとき。きゅ〜んとして、動けなくなって、ドキドキするとき。
どうしていつも、きのうばかりなんだろう。
いいことは、見えないんだよ、神さまの、ごほうびなんだから。
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▼ 第21話ケンカしたんだ……ケンカしたんだ、友だちと。
ケンカするとイヤ〜な気分になる、なりたくないのに。
ケンカしてイヤ〜な気分なのに、友だちのことばっかり考えるんだ。
考えるのもイヤ〜なのに、なんでだろう?
ひとりでブツブツ言って、話しもしたくないのに、
ひとりでイヤ〜な気分になって、会いたくもないのに、
友だちのことばっかり、考えるんだ。
ケンカしたんだケンカ……ケンカしたんだ友だちと。
なんでこんなに、イヤ〜な気分になるんだろう? なんでこんなに、つらいんだろう?
イヤ〜な気分になるって、イヤだなあ。
わるくないのに……わるくないのに……わかんない。
あ〜あ、イヤだイヤだ……ケンカなんて。
ケンカじゃないこと、考えようっと。
なにしてあそぶ? どこであそぶ? ねえ、ねえ、あしたもあそぶ?
ねえねえ、だれと……あそぶ?
……やっぱり、友だち……友だち。
友だちもイヤ〜な気分なんだろうなあ……きっと。
くやしいけど、イヤ〜な気分は、もうイヤだよ。
……ごめん……ケンカなんて、しなきゃよかった。
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