おとぎばなしを尊敬します。千夜一夜がどうかこのまま、ずっと続けられますように。
2008/06/06/fri/ Ysasa
▼第1話耳のとおいノロバが、朝の庭先でこうくちごもった。
「来る日もくる日もくる日も!ぼくはどうして
重い荷物せなかにのせて、坂道を行ったり来たり…
…いったい、何してるんだろう…。」
目のとおいニワトリが、屋根の上でそれを聞いていて
空に向かい、声高らかにこう鳴いた。
「ロバさんのまじめさ、力持ち、コケッカッコイ〜!
コケッカッコイ〜ッ、コケッコッコ〜!」
耳のとおいノロバは感謝して泣いていた。
「あぁ、今日も丘の上は澄みわたって、キラキラだ。
……とてもきれいだブキッ。
ニワトリさんに、ステキな一日でありますように…」
ふたりは元気に、今日もはたらきだした。
このページの最初へ戻る ▲2008/06/11/wed/ Ysasa
▼第2話むこうからオオカミ。
「あ〜あ〜、お腹すいたよ〜。」顔が、げっそり。
「もう何日、食事してないんだぁ…」肩を、おとして、
トボ・ふらり、トボ・ふらり……。
そこへシマヘビ。
「あ〜ぁ食ったくった〜ぁ。」お腹、ぽんぽこりん。
「もういけません、いけませんよ、ま・ん・ぷ・く。」
のら〜り・ズルッ、くら〜り・ズルッ。
村のつじのまんまん中。
バチバチーッ、目と目があったふたり……風がピタッ。
空気がぴーん。ドクッ、ドキッ、ドクッ、ドキッ、
心ぞうが、口からとび出るぅ。お〜神さま仏さま〜
勇気を、おもいっきりふりしぼったふたり。
「こ、こ、こんちわー・・・へへっ」
いつものように、ふたりはあいさつできたのだった。
2008/06/14/sat/ Ysasa
▼第3話はじめまして、Ysasaです。
ページの作りなどなかなか落ちつかず、今日になってしまいました。
まずは帆を揚げるまではたどり着けた、というところ。
おはなしばかり食べていると、おへそから芽がでます。絵ばかり食べていると、あたまに羽が生えます。
夢ばかり食べているから、ウソップになったようです。
ホームページはまだまだですが、クロヤギさんのようにほのぼのと、続けたいと。
……仕〜方がな〜いのでお〜はなし書〜いた……
シロヤギさんへ。
いつもおいしいてがみをありがとう。
君の目ききは、そうとうのものだね。すばらしい。
それでお礼に、このてがみなんてどうかと思ってね。
君のには足もとにもおよばないかもしれないけれど、
すかしのあたりなんて、さいこうだよ。
ぜひ、召し上がってくれたまえ。
愛をこめて。クロヤギより。
PS:さっきのてがみの、ごようじ、な〜に?
このページの最初へ戻る ▲2008/06/18/wed/ Ysasa
▼第4話トラはいつも、にんげんからねらわれていた。トラの尾はひふ病に、トラの目はてんかん病に、トラの骨はしびれ病に、それはそれはよく効くという、大昔からの言い伝えがあるからだ。とらえて皮をはげば、あのみごとなシマもよう。だれもがその美しさに目をうばわれ、王様気分になれるのだ。
その日もまた、にんげんさまが林に入りこんだ。上から見ておられた神さまが、声をかけた。「おいおまえ。私にトラを、生きたままささげろ。でないとトラに食わせるぞ。」空からふってきた声にこしをぬかしたにんげんは、「わ、わ、わかりました。だからどうか、いのちだけは・・・」
にんげんは死にものぐるいで、トラを一頭生けどりそしてつれて神さまの下にひれふした。バリバリバリッ!神さまはあらしのように言いはなった。「いいかにんげん。よ〜く覚えておけ。おまえたちはいつも、私にねらわれていることを。」
にんげんは、ブルブルふるえあがった。大木の上に自分をじーっと見すえる、まっ白なトラがただ一頭。ささげのトラは、神さまの化身だったのだ。
このページの最初へ戻る ▲2008/06/21/sat/ Ysasa
▼第5話カラスはあそびがだいすき。きょうもひとりでおもちゃとあそんでいた。
公園の、ポプラのねもとに、おきわすれられていた、
もち手が「あお」で、すくうところが「きいろ」の、
きれいでかわいい、子どもスコップ。
いろには目のない、おしゃれなカラス。
くわえたり、のっかったり、ぴょんぴょん大はしゃぎ。
そこへ「ここ、ここらへん。あっ!カラス!」
影が近づきおどろいたカラスは、思わずポプラのえだへ、バサバサーッ。
子どもが、ねもとにころがったスコップと、えだの上のカラスを、くびを下に上にしながら、くりかえし見くらべていた。
「せっかくあそんでたのに…」カラスは思った。
「ボクのスコップ・・・。」子どもは思った。
「カー、クァー!」カラスが上でさわぐやいなや、
子どもはスコップひろって、びゅーん!「ボクのだぞ〜!」カラスめがけておもいっきり、ほうりなげた。
「あぶない!」パシッ!
スコップを受け止めたのはなんと、ポプラの木。
「ならば、おもちゃは、わしがあずかる。」ポプラがくちを、きいた。
カー、カー、とんでくカラスはしらんぷり。
うぇ〜ん、うぇ〜ん、子どもがないても、ぽっかりあとのまつり。
2008/06/26/thu/ Ysasa
▼第6話おせっかいなカモメがクジラに言った。「クジラくん。きみそんなにからだが大きくちゃ、気分もなにかとすぐれないだろうねえ?」
クジラは答えて言った、「いえいえカモメさん。からだが大きいのは、私のこころが決してこわれないよう、ゆったり包んでくれているからなのです。」
カモメは負けずに続けた。「クジラくん、クジラくん。そんなにからだが重くちゃ、敵に見つかっても、すぐにげられないよねえ?」
クジラは答えて言った、「いえいえカモメさん。私のからだが重いのは、だれにも負けない勇気を、いくつもいくつも備えてくれているからなのです。」
カモメはやけになって、「クジラくん、クジラくん。きみ、人目につかない海の中なんかに住んでるから、にんげんたちにごかいされるんだろ?」
クジラは、ゆっくりと答えた。「いえいえカモメさん。海の中だからこそ、世界はつながるのです。つながればいつかきっと、気づきあえるはずです。」
カモメは、はずかしくなったのか、だまってスーッと、とびたって行ってしまった。へだたりのない、世界につながる、大空たかく。
このページの最初へ戻る ▲2008/07/01/tue/ Ysasa
▼第7話夏の昼さがり、アシのおい茂った川辺。ヤゴとホタルが、たがいの未来にむねはずませていた。
ホタル:「いよいよだね、ヤゴさん。おおぞらへ旅立つ日は。」
ヤゴ:「この日のために4年間も、トレーニングしたんだよ、ホタルさん。」
ホタル:「がんばったねえ、ヤゴさん。おめでとう。」
ヤゴ:「ありがとう、ホタルさん。キミもいよいよだね?」
ホタル:「ええ、私は2年待ちました。おかげでおしりがムズムズします。」
ふたりはじかんをわすれて、はなしこんだ。
つぎの朝はやく、太陽がかおを出すが早いか、
ヤゴは川辺のアシの先から、シャシャシャーッ!トンボになって、おおぞらの光りのなかへ、はばたいた。
30日のあいだ、トンボは楽しくて楽しくて、大ぼうけんを楽しんだ。
そして死んでいった。
ある夜、空に満月がのぼった。
アシが風にゆれて、川辺にかげがうごいていた。どこからともなく、ツーッツーッ、ホタルがとんだ。
おしりをピカン、ピカン、ピカン、光らせて。「あー、なんてすてきなんだ空をとぶって。ねえヤゴさん。」
ホタルは3日のあいだじゅう、楽しくて楽しくて、大ぼうけんを楽しんだ。
そして死んでいった。
2008/07/07/mon/ Ysasa
▼第8話ある村の森に、赤毛のキツネが住んでいました。キツネは、森の入口にあるアカシアの木のえだに、『なやみごと(ねがいごと)ききます。赤キツネ』と、赤いしるしのついた板をつるしました。「アカシアのキツネは、よくきくぞ。」やがて、うわさはアっというまに、広がりました。
ある雨の日の夜明け。アカシアの赤キツネのもとに、赤目のウサギがたずねてきました。
キツネ:「こんな天気にウサギさん。さあ中へ」
ウサギ:「だれにもけっして言わないで……」
キツネ:「もちろんです。ウサギさんとの約束は、まもります。」
ウサギはモジモジしながら、自分がどんなふうにいじめられてきたかを、その日の雨のように、とめどなく、目をまっ赤にして、うちあけました。
赤キツネはただだまって、聞いてはうなづいています。どれほど話したでしょう、ウサギはキツネを見てギョッとして言いました!
ウサギ:「キツネさん、キツネさん。そのからだ、もえているように赤くなっているじゃないですか!」
キツネ:「大丈夫です、ウサギさん。これはしっかりと聞いたぞ、というしるしです。」
ウサギ:「ありがとうキツネさん。しっかりと私のはなしを聞いてくれて。」
ウサギはスッキリしたのか、足どりかるく雨のなかへ帰っていきました。
陽がしずむと、赤キツネはだれにもさとられないよう、ひとりかならず森へ入ります。
森の中ほどの、年老いた大きなおおきなオオグスのうろ(虚洞)へ向かうのです。
素いなわが結ばれたうろの中で、赤キツネは来る日も来る日も、運んできたみんなのなやみを、まっ赤にもえながらオオグスにはなして聞かせるのです。口のないオオグスは、だまって聞いてかなしむと、流れる涙でなやみを洗い、あたらしい希望へとかえるのです。そうです、なやみは、ねがいの、ウラ返しだったのです。
「今日は七夕…。いつになったら、かんばんを下ろせるだろう……」アカシアの下で、今日もなやみを聞いていた、赤キツネです。
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▼第9話ひらひら、ひらひら。
ひらひら、ひらひら。
庭さきを、一羽のチョウがひらひら、ひらひら。
屋根の上から、スズメの子がじっとながめていました。
夏の朝はやく、まだお陽さまがかおをだしたばかりのことです。
チョウは、マサキ、イヌツゲ、サツキと舞ってそれから、カイズカ、エノキ、サルスベリ。
流れるように、ひらひら、ひらひら。
風につつまれて、うかんでいるようでした。
「きれいだなあ、たのしそうだなあ。」そう思ったスズメの子は、
「そうだ!ボクも。それっ!」
マサキ、イヌツゲ、バサバサーッ、バサバサーッ。
サツキ、カイズカ、バサバサーッ、バサバサーッ。
「う〜ん、なんかちがうなあ、ひらひらじゃないなあ・・・」
サルスベリのてっぺんで、考えこんでしまいました。
あさの光が、スズメの子を、サルスベリのももいろにつつみます。
ひらひら、ひらひら、チョウがはなしかけました。
「風の川をおよぐんだよ。」
「風の川?」
「そう、風の川。みどりはみんな、土の川と水の川、光の川と風の川、その中にいるんだよ。」
「どうやればそこへいけるの?」
「目をとじて、耳をすませて、そして、とぶ!」
「あれ?きみの羽に何か、描いてある?ひらひらさん」
「これ?いいでしょ。わたしだけのしるし。それより、さあ!」
スズメの子は、サルスベリのてっぺんで、チョウのいうとおり、ゆっくり、目を閉じました。
目の中がももいろになって、きれいでした。
ひゅーうひゅーう、風のおとがきこえます。そして、
飛んだ!!!
ガツ! 「イテェ、テッ、テッテッ・・・」
電しんばしらにぶつかって、頭にコブができました。
電線の上で、スズメのなかまが、おおわらい。
「おまえ、スズメだろ。チョウになったら、10日といのちはもたないぞ。
オレたちはチョウの500倍も生きるんだぞ。」
スズメの子はしかられても、チョウのあのひらひらが、
自由なあのひらひらが、忘れられないのでした。
それから何日かたった、すずしい夕ぐれのこと。
いつもの庭にいつものスズメ。なにもかわらない風景。
とつぜん、ガラーッ!ダダダダダッ!
家から子どもが、はだしでとびだしてきて、そらをゆびさし、さけんだ!
「シータだ、シータだ!おとうさん!シータだよ!」
スズメの子も、急いでエノキのてっぺんへかけあがり、そらを見上げました。
「あっ!ひらひら、あのひらひらだ。あ〜、なんてきれいなんだ・・・」
そらを、数えきれないほどのチョウが、南へ、南へ、ゆっくりと、ながれてゆきます。
ひらひら、ひらひら。風の川を舞うようです。
きらきら、きらきら。光の川を舞うようです。
スズメの子は、ゆっくりと、目をとじ、
耳をすまして、ひらひらのことを思いました。
2008/08/14/thu/ Ysasa
▼第10話ミーンミンミンミ〜ン。ミ〜ンミンミンミ〜ン。
ある晴れた暑い夏の朝、セミの男たちは、お嫁さんさがしに大わらわです。ゆっくり、じっくり、土の中で描いてきた、未来のせっけい図、自分たちの夢と希望の種を、しっかりと手わたすためです。
そこへ、年中しごとばかりで疲れはて、フラフラで、今にもたおれそうになったアリが通りがかりました。アリは、セミに泣いてこうたのみました。「ほんの少しでいいのです、元気を分けてください。夢の種でいいのです、分けてくれませんか?」
セミたちは頭をさげて「ごめんなさい。あなたの夢を知らないのです。夢はさしあげられないのです。ご自分の家にいるとき、ひとりになるとき、未来を夢見るだけ、それだけでいいんですよ。」
アリは答えた。「ヒマがなかったんだよ。来る日も来る日も、ご主人様のお世話でいそがしかったからね。」
するとセミたちは、きのどくそうに言った。
「ご自分のされたことを、ご主人のせいだとおっしゃるなら、いったい誰があなたご自身のことを、ご自身のためにするというのでしょう?」
ミーンミンミンミ〜ン。
夢でお腹はいっぱいにならないけれど。
ミ〜ンミンミンミ〜ン。
こころは希望でいっぱいになります。
ミーンミンミンミ〜ン。
これは、希望の鳴き声です。
ミ〜ンミンミンミ〜ン。
自分のため、未来のなかまのために、とどけるのです。