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おとぎノバナシ その2

おとぎばなしを尊敬します。千夜一夜がどうかこのまま、ずっとずーっと続けられますように。

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第11話▶ ネズミと友だち 第12話▶ サルルン・カムイの村 第13話▶ キリンと女の子とみどりの公園 第14話▶ スズメと、カエル 第15話▶ はなのなまえ 第16話▶ 町のパン屋 第17話▶ ニワトリとカラス 第18話▶ お父さんのトラック 第19話▶ フクトミ肉店 第20話▶ なにも・・・言えねえ

2008/09/03/wed/ Ysasa

▼第11話

  「ネズミと友だち」

ネズミには、たくさんの友だちがいました。それでも、友だちが少なくなるのがこわくて、ごちそうを見つけると、必ずみんなにも配って歩いていました。

ある日のこと、庭先の花だんで、キャンディをひとつぶ見つけました。みんなには配れないので、ネズミの親子でなめ合っていると、後ろからネコが、そーっと、せまってきたではありませんか。ネズミの親子は大あわて。手をつないですっとんで、ピュ〜ン。逃げても、逃げても、そのネコは追いかけてきます。

困ったネズミは、助けてもらおうとイヌのところへ出かけました。
「イヌさん、ネコにひとえやって、追い払ってくれないかなぁ。」
するとイヌは「これからボク、ご主人と散歩なんだワン。カラスに頼(たの)めワン」

それでネズミは、カラスにたのみに行った。
「カラスくん、ネコをちょこっとつついて、追い払ってくれないかなぁ。」
するとカラスは「ネコは食えねえなァ。ウシにたのまんカァ〜」

それでネズミは、ウシのところへたのみに行った。
「ウシさん、ネコをひとけりして、追い払ってくれないかなぁ。」
するとウシは「ンモ〜〜。お乳しぼるのいそがしいの。カエルにたのめンモ〜」

それでネズミは、カエルのところへ行ってたのんだ。
「カエルくん、ネコの鼻をぺろっとなめて、追い払ってくれないかなぁ。」
するとカエルは「ムリムリ、ひっかかれちゃうピョン。イヌにたのめピョン」

ネズミは疲れきって、「はぁ〜…」とためいきをつくと、「みんな、自分のことで、いそがしいんだチュゥ…」
と、後ろをふりかえるや、ネコが身をかがめて「ウニャ〜〜ッ!!」飛びかかってきた!!前足でおさえこまれ、これまでか〜、目をとじたネズミ。

「おいネズミ!!オマエ、おなかは、おなかは何ともないニャ?!痛くないニャ?!あのキャンディー、オレが捨てたんだニャ、古くて…。オレが悪かったニャ。おなか痛くなっていないか、心配で、心配で…。本当にだいじょうぶニャ!?!?」

チュ、チュ〜…。ここにいたのかチュ〜…。
君こそ、友だちだチュ…。ネコさん、ありがチュウ。

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2008/09/21/sun/ Ysasa

▼第12話 tsuru

  「サルルン・カムイの村」

むかしむかし、ある北の村に、サルルン・カムイという鳥が住んでいました。雪のようにうつくしく、風のように凛々りりしく、舞姫のように優雅ゆうがな鳥でした。村の人々は、清らかなその鳥を愛しました。太陽のように輝くあかいかんむりを、神の使いの印だと信じていたからです。

ピー、ピーピー。ピー、ピーピー。夏も終わり、秋の走りの湿原(しつげんに、よちよち歩く、ひなの声がひびきます。母鳥と、父鳥の、いのちを受けつぐ一羽です。親子で過ごす、しあわせの村。里の風にあしがそよぎ、おだやかな時が流れます。

いわし雲があかねにまりかけた、夕暮れ。ズダァーンァーンァーン……。猟銃りょうじゅうらしい音が、村中の沼、畑、家々にとどろきました。
ズダァーン、ズダァーン、ズダァーンァーンァーン……。
……どうしたぁ……、やったかぁ……しとめたかぁ……。男たちの声が騒がしく、むなしくひびきました。

バサ、バサ、バサバサバサーッ。いっせいにけのぼる白い群が、しゅいろの空を埋めつくしました。
クァー、クァー、クァー、クァー……。鳴きながら、村の上をめぐるサルルン・カムイでしたが、やがて夕日の向こうへ、あかくにじんで消えました。
次の日から、里にサルルン・カムイの姿はありません。畑にも、沼にも、ありません。
来る日も来る日も、ただただ冷たい風が、吹き抜けるだけの村でした。

いくつもいくつも年が過ぎ、いくつもいくつも人が変わりました。
雪が吹きなぐる、きびしい真冬の朝のことでした。村に、三羽の親子鳥が、降り立ちました。
白くて、ふところ羽が黒い、頭に赤いかんむりをかぶった、美しい鳥。
……私たちはきっと、試されているのでしょう。

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2008/10/03/fri/ Ysasa

▼第13話 kirin-signal

  「キリンと女の子とみどりの公園」

今日は秋晴れのいい天気。あお〜い空。ひろ〜い空。
ドーナツみたいな雲ひとつ、ぽわ〜ん。みどりの公園は、みんながくるのをこころまちにしています。

公園のまわりにぐるっと道があって、おばあちゃんや小さな子どもをのせた車が、つぎつぎとパーキングにすいこまれていきます。まん中の入り口も、はしの入り口も、信号のあるおうだん歩道のむこうです。

小さな女の子が、あかいボールかかえて、おうだん歩道のすみっこ。
こ〜やって、こ〜やって、手をたか〜くあげて。信号の押しボタン、押そうとしてたんだね。よいしょ、もうちょっと。
もーっ!なんで高いのさ、ボタンのばか!もうちょっとが、とどかなかい……泣きたくなっちゃった……。

そこへ、なぜかキリン。なが〜い首。なが〜い足。キリンは、ひょいっと女の子を背中にのせました。
お〜きくおじぎして、プシュ。はなさきでボタンを押すキリン。チカ、チカ、チカ。赤から青へ、信号のいろがかわります。
みぎ〜、ひだり〜、車は止まってくれたか、たしかめて、だいじょうぶ、ゆっくりと、おうだん歩道をわたるふたり。
キリンのゆれる背中からみる公園は、いつもより、木のにおいがしました。

お礼に女の子は、入り口のケヤキの葉っぱを一枚、キリンにあげました。キリンもお礼に、女の子をあたまの上へおまねきしました。
そこはまるで、空の上のようでした。手をのばせば、ドーナツの雲がつかめそう。
よいしょ、もうちょっと。もーちょ……あっ!

……目が覚めた……空の雲がわらってた。
みどりの公園の芝の上。きもちいい風がふきぬけます。

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2008/10/25/sat/ Ysasa

▼第14話 sky and pond

  「スズメと、カエル」

すいこまれそうに、青い、空の下。
しいのき原の池のほとり、なかよしスズメとカエルが、おしゃべりしています。
カエルが、スズメにききました。「ねえ、空って、どこから空?」
「そりゃあ、とべるところからだろ。」と、スズメ。
「じゃ、この池のすぐ上も?」ききかえす、カエル。
「うん。カモくんだって、ほら。」池のなかすのあし原で、カモたちがじゃれて、とんでいます。
「じゃあ、アレは?」カエルは、遠〜くの、雲の上を見上げて、ゆびをさしました。
「ん〜・・・。あれは、空のお母さんだよ。」と、ちょっと困ったけれど、でも満足げに答えた、スズメ。
「お母さん?」
「そうさ、雨や、光や、雪や、風や、み〜んなつくってくれるだろ?」
ますます、満足げな、スズメです。
「そうだ、お母さんだね。」カエルはうなずきました。

こんどはスズメが、「ねえねえ、カエルくん。池はどうして、空のいろ、してるのかなあ?」
「ん〜…空の、お父さんだからだよ」…カエル。
「え〜〜〜っ?お、お、お父さんだって!?」
「そんなに、おどろかなくたって・・・スズメさん。」
「だって空のほうが、何百倍も大きいよ」と、スズメ。
「大きさじゃないよ、おとうさんは。雨がふっても、雪がふぶいても、日が暑くても風がふきっさらしても、
じっと、土と草と虫のそばにいてくれるからだよ。」
「なるほど。カエルくんの、言うとおりだ。」

ふたりは並んで、上を、空のお母さんを、見上げました。広い、広い、空です。
そして目の前の、池を、空のお父さんを、見つめました。きらきらと、水が光ります。
しいのき原の池のほとり、なかよしスズメとカエルが、おしゃべりしています。

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2008/11/24/mon/ Ysasa

▼第15話 hana

「はなのなまえ」

ある寒い秋の日のこと。おひさまポーちゃんはお父さんと、としょかんまでおさんぽ。
ゆっくり歩いて1じかんのみちすがら、うすむらさきの、きれいなねじり花を見つけるとお父さんに
「ねえねえ、このお花、なんていうお花?」
ひとめ見ても、ふため見ても、わからないお父さん「う〜ん……しらべてみようか?」
「そうだね。うん。そうしよう。」

にぎやかな商店しょうてんがいをぬけて、ふみきりをわたって、
さかみちをヨッコラショっとのぼって、さくらなみきのトンネルをぬけて、
くろぐろと木々にかこまれた、しろやまのおどうまできました。

しーんとしたけいだい。かわいいピンクの、楽しそうにいっぱいあつまったお花をみつけました。
ポーちゃんはお父さんに「ねえねえ、このお花、なんていうお花?」
ひとめ見ても、ふため見ても、わからないお父さん「う〜ん……これも、しらべてみようか?」
「そうだね。うん。そうしよう。」

お堂にむかって、だまって手をあわせるふたり。
じゃあねって、お堂におれいをいうとあとはすべり台のような、さかみちをくだります。
目の前に、たくさんのちっちゃな家と、みどりの丘と、あおい空が、ひろがっています。
 としょかんは、もうすぐ。
なんていう花かなあ、見つかるといいね、花のなまえ。

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2009/01/20/tue/ Ysasa

▼第16話 bread

  「町のパン屋」

町に人気のパン屋さんがありました。安くておいしいパンがじまんです。
人気があるので、パンはすぐに売り切れてしまいます。いつでかけても、パンは並んでいません。
 困ったパン屋の主人は知恵をしぼり、予約できるパン屋にしました。
するとみんなは言いました「みんなのパン屋じゃなくて、予約した人のパン屋だね」。
少しずつ、少しずつ、町のみんなはパン屋から、はなれていきました。

パン屋の主人はまた考えました、「同じに、公平がいいと思ったんだがなあ……。ふ〜む。
よし、やはり予約はやめよう。おいしいパンを焼くことだけに私はいっしょうけんめいになろう。」
パン屋に、また活気がもどってきました。それでもおいしいパンは、やっぱりすぐに売り切れてしまいます。
ところが、ちょっと今までとちがうのです。最後のひとつになるパン、それだけがちがうのです。

みんながくちぐちに言うのです「このパン屋で、最後のパンを買った人は、しあわせになれる。」って。
うわさはうわさを呼び、町中に広がりました。とうとう、最後のパンを買う人見たさに人が集まるようになりました。
そして、その人が買い上げると、拍手、拍手、拍手、パチパチパチ。みんなで祝うのです。
パン屋の主人も、買った人も、見とどけただけの人も、なんだかうれしくなるのでした。

どんな店になって欲しいかな? どんな店になりたいのかな? 町のパン屋さん。

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2009/10/27/tue/ Ysasa

▼第17話 kumade-torinoichi

  「ニワトリとカラス」

ニワトリがカラスに「どっちが朝、早起きか、競争しよう」と、勝負をもちかけた。
「負けたら、毎朝『あんたが一番だーっ』て、大声でほめるんだ、どうだい?」
カラスはだまってうなずいた。
「おひさまと起きる、わたしに勝てるものか。
しめしめ、これでやっとあさねぼうができるわい」と、ニワトリはこころで笑った。

つぎの日のあかつき、ニワトリはやねの上にすでに立っていた。
「カラスのやつ、やっぱりな」と、つぶやきながら、日の出をまちわびた。
山のむこうがうっすら、しろくなってきた。ニワトリはこころのなかで、かずをかぞえはじめる。
「10 9 8 」風がすこし、あたたかくなった。
「7 6 5」ニワトリは大きく、しんこきゅうをした、そして「4 3 2」
「コッ・・・・!」と、大きく鳴こうとして、思わずのみこんだ。

ひとすじの光のそのむこう、白くかがやく日のなかに、小さく黒く羽ばたく、一羽のカラスを見たのだ!
「な、な、なぜだ!どうしてあいつの方が早起きなのだ!」
ニワトリは知らなかったのだ、カラスがおひさまの使いだということを。
黒いのは、光のなかでもおひさまが見失わないよう、神さまがお決めになったということを。
「負けた……」ニワトリは、かたをおとした。

そのつぎの朝一番の、ニワトリの鳴き声がかわったことは、言うまでもない。「クロッケ コッコックゥ〜〜〜」
毎朝のしごとぶりにかんしんした神さまは、一年がおわろうとする11月、ニワトリをねぎらうことにした。
町中でニワトリをねぎらって、お礼をする日だ。ニワトリは、たいそううれしく思って、カラスにこう言った。
「早起きは、するもんだね、おたがいに。」

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2011/01/03/mon/ Ysasa

▼第18話 truck

  「お父さんのトラック」

お父さんのトラックにのって、遠くまでついて行った。どれくらい遠いか、忘れてしまったけれど、なぜか遠いのだ。トラックはほこりっぽくて、いつもギシギシ音がしていた。
 お父さんは、だまって座っている私に、何も話しかけなかった。ひとりでもくもくと運転していた。でもはな歌もちょっと歌ってた。お父さんなのに、何を話していいのか、わからない。しごとばかりしていたお父さん。だから家でもあまり話をしない。

お客さんのところに着いて、トラックからおりた私は、フラフラだ。まだ耳なりがして、トラックにのっているようだ。
伝票をうけとった人が「息子さん?」って、お父さんに言うと「ぐそく、ぐそく」ってわらいながら答えた。「ぐそく」って何だ?
私はその人にあんパンをもらった。お父さんは礼を言って、私の頭をなでながら、ぎゅーぎゅーおしつけた。

荷おろしの間、大きな暗い倉庫の前で、あおい空をひとり見上げていた。お父さんの会社と同じ、油のにおいがした。
「おーい、帰るぞお」。トラックのむこうから、お父さんの声がした。

お客さんにお礼を言って、またふたりで運転席にのりこむ。エンジンをかけて、出発!
またあのオイルのにおい。うなるようにギシギシいう音といっしょに、帰るのだ。
お父さんとふたり、もらったあんパンをほおばった。お父さんはニヤニヤして、運転していた。

お父さんのトラック、あれから一度ものっていない。

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2012/01/21/sat/ Ysasa

▼第19話 korokke

  「フクトミ肉店」

「コロッケ三つ、くださいな。」「は〜いまいど。」
ポーちゃんはここのコロッケが大好きです。「あれ?今日はひとり?」店のおばさんはいう。
「あのね、コロッケは三つ。でも今日はひとり。」
「あれっまあ〜、ひとりかい。それで何だっけ、コロッケを三つ?」

店のおくからゴソゴソっと、おじさん登場。「まいどまいど。あっれ〜?今日はひとりかい?」
「あのね、コロッケは三つ。でも今日はひとり。」
「あれっまあ〜、ひとりかい。それでえっと、コロッケをみっつ?」
おじさんは、えんぴつをなめなめ、チラシのうら紙に注文をとる。
「おじさんあのね、えっと、ハムカツも二つおねがい」
コロッケみっつに、ハムカツふたつと・・。おじさんはメモをとって、けいさんするかかりで、おばさんはニコニコ、コロッケをつくるかかり。
ジュ〜ッ、ジュワ〜ッ、ジュ〜ッ、ジュワ〜ッジュワ〜ッ。あげものをつくる音がきこえはじめると、おじさんのおしゃべりが始まる

「今日はさむいね。かぜひかないようにね。雪がふるって言ってたよ、天気よほうでね。
雪ふると道がすべるからね、気をつけてね。おじさんなんかホラ、ながぐつだよ。ながぐつね、便利だよ。
雨がふっても雪でも、ばしゃばしゃってね、へへへ」
おじさんのおしゃべりは、なかなか止まらない。

「ハイハイハイハイ、おまちどうさん。いつもありがとね」おばさんがニコニコわってはいって
「あったかいうちに、食べてね。」
ポーちゃんのおなかは「ク〜〜〜ッ」と、なりました。
「ありがとうございました」「どういたしまして。気をつけて帰るんだよ、ありがとね。」

コロッケのあったか〜い包み。
家でひろげると、ほかほかのコロッケ三つ、ハムカツが二つ、おじさんの書いたにょろにょろけいさんの紙と、
あらら、おいしそうなみかんもかおをだしました。
ごちそうさま、おばさん。雪ふったね、おじさん。

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2012/06/05/tue/ Ysasa

▼第20話 red-yellow-blue

  「なにも・・・言えねえ」

REDが、BLUEに言った「なんだか今日、うかない顔だね、どうかしたの?」
BLUEは答えず、下をむいたまま。
「そうだ、歌、うたおうよ、ね!」REDがさっそく歌いだした。でもまあ、そのヘタクソなことったら。
「ドはド〜ナツのド〜、レ〜はレモンのレ〜〜」
「へったくそ」BLUEは、ぼそっと言った。
「え〜、へたくそだって楽しいぞ〜、歌ってると」と、かまわないRED。
「うっそつけ」BLUEは言う。
「んじゃ、おどりもつけるからさあ、きっとおもしろいぞ〜」
REDはおしりフリフリダンスを始めながら、手足を上げたりおろしたり「ドはど〜ろぼ〜のド〜、レ〜はレッドのレ〜〜、ミ〜は・・」

あまりの騒がしさにBLUEは思わず言った、
「キミはこの三日間、ずっとボクに同じことをしているぞ!!何か悩み事でもあるのかなあああ」
歌うのを止めたRED、「だってBLUEの時ばっかり、通〜りゃんせ、通〜りゃんせって、歌ってんじゃん。
不公平じゃん。ね、ね、ね、そうだよね、ね?YELLOWったら」

そう言われても、どう答えていいかわからない、YELLOWだった。

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