シャトレーゼ勝沼ワイナリー
〜勝沼に超新星現る〜
外観

メルシャンやシャンモリといったワイナリーのすぐ向かい側の通りにある赤い屋根の綺麗な建物がシャトレーゼ勝沼ワイナリーです。鉢植えや敷地で観賞用の葡萄が栽培され、醸造所らしさをかもし出しています。
名前でわかるとおり、経営の母体となる会社は全国あちこちにある、お菓子やパンの販売会社のシャトレーゼ。やはり建物も本家のシャトレーゼと似たところがあります。
工場が同じ建物内にあるので、建物はやや大型ですが、販売所内はむしろ狭い部類に入るかもしれません。
歴史

醸造開始が2000年と非常に新しいワイナリーで、全国に数多くの支店を持つお菓子のシャトレーゼが資本です。
母体であるシャトレーゼ(設立当初の社名は「甘太郎」で、今川焼きの会社でした)は山梨県から起った会社であり、社長の斉藤寛氏も地元の方です。斎藤氏は「常識を否定することが私の仕事です」とまで言い切る辣腕の経営者で、一代で全国に500以上の店舗を抱えるシャトレーゼを育て上げた立志伝中の人物です。
そのシャトレーゼも順調に成長し、今度は地元の産業の育成のために本格的なワイン作りを行うワイナリーを建設したというのが主な設立目的のようです。他に社長自身がワイン好きであるというのも無関係ではなかったでしょう。そのあたりの設立の動機などは静岡県の伊豆ワイナリーに似ている気もします。
ワイナリーの工場長は同じく勝沼の丸藤葡萄酒工業で1年間修行した戸澤一幸氏で、技術的にしっかりとした基礎を持つ若き醸造家です。
自社畑は厳密にはシャトレーゼではなく農業法人カネゲンファームによって運営されており、有機農法などによる安全で高品質のワイン用葡萄が作られています。
その設立経緯の関係からシャトレーゼで使用する葡萄は自社畑・契約栽培で作られた山梨県産のものを100%使用しており、輸入ワインはいっさい使用されていません。また醸造に関しても葡萄のポテンシャルや品種特性を重視、「葡萄果汁は畑で濃くするもの」という基本方針に基づき果汁凍結などの濃縮処理はごく一部の実験的な銘柄を除き行われていません。
ただ、こういった方針であるためにどうしても原料不足により生産量が足りず、全銘柄あわせても年産で1万5千から2万本程度しか生産できないという問題も抱えています。
2004年には日本国内で発売されたワイン(輸入ワイン含む)の品質を競う『Japan wine challenge』で「メルロー樽熟成 2001」が見事に銀賞を獲得するなど、その品質は年をおうごとに向上しています。


施設の概略
販売所内には数多くの自社製ワインがおいてあり、もちろん購入できます。また、カウンターの社員の方に言えばほぼ全種類のワインの試飲が可能です。
販売所のすぐ隣の部屋が醸造所もありますが、こちらは扉越しに見ることはできますが中に入って見学することはできません。
ちなみに親会社が親会社だけに中でも洋菓子類の販売を行っているのかと思っていましたが、ワイナリーではそういった本業以外の商品はほとんど販売していません。あくまで「ワイナリー」として営業を行ってます。


葡萄畑
勝沼の鳥井平地区やその他の地区の何箇所かにあり見学に行くことはできますが、ワイナリーからかなり離れた所にあるうえに、ツアー等もないため自力で行くしかありません。そもそも一般客の見学を想定していないため、ワイナリー内には地図なども置いていないので場所はカウンターにいる社員の方に伺うしかありません。私たちはそのあたりの畑をさまよっていたらたまたま見つけただけなのですが、そのことを社員の方に申したところ取り立てて何も言われなかったので見学自体は問題ないようです。
鳥居平にある畑は主に小ロット用の葡萄が多く、甲斐ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、カベルネ・ソーヴィニヨンといった品種を栽培。日当たりのよい山の中腹にあり、傾斜もゆるやかなのでもっとも見学しやすい畑でおすすめです。午後からは常に風が吹くので、特に暑い時の見学には最適でしょう。畑の看板には栽培方針が書かれており、化学肥料の廃止、低農薬栽培による有機栽培を行っている旨も書かれています。

その近くにあるのがメインの畑である菱山の自社畑。この畑はもともとはある農家のものでしたが1995年後半に起きた雪害で大被害を受け、所有者の高齢化もあってシャトレーゼに売却されたという経緯があります。大きな斜面一面が自社畑で、下部は短梢棚栽培のメルロー、上部は垣根栽培のシャルドネなのですが、なぜか斜面の中腹部には棚栽培のデラウェアが。自社畑にデラウェアなどのラブレスカがあるというのはまれなことですが、もともとの所有者が植えていた葡萄のうちこの部分だけが無事だったのでそのまま残しているのです。もちろんかつては生食用であったであろうこの葡萄も、今では種ありで栽培されシャトレーゼのワイン原料として使用されているのはいうまでもありません。ただ、自社畑で手をかけて育てているのにデラウェアのワインは値段を高くできないので全然割に合わないそうですが。
菱山の畑は、大変に傾斜がきつく見学に適するとは間違えてもいえません。その勾配は足を踏み外すと、道路まで転がりそうなほど。そもそも勝手に見学できるかどうかすら不明なので、ここは下から見上げるに留めたほうがよいでしょう。しかしそれゆえに水はけもよく、さらに勝沼町内と比べると風があり気温も低いので素人の私でも良い畑であるのは一目瞭然。「ここのシャルドネ随分ポテンシャル高いなあ」と初めて飲んだ時に思ったものですが、それを裏付けるような立地でした。

なんにせよ、「お菓子屋さんが副業的に経営しているワイナリー」などという誤った認識はこの葡萄畑を見ると吹き飛ぶこと間違いなし!

※蛇足ですが、甲州はもっとも良い甲州葡萄の栽培地といわれる鳥井平地区の契約栽培により原料を確保しています。
銘柄: 2001年 シャルドネ樽貯蔵
生産元: シャトレーゼ勝沼ワイナリー
価格: 2500円
使用品種: シャルドネ
備考 日本初の国内ワインコンクールのJapan Wine Competition「欧州系品種白ワイン」部門において見事に銀賞を獲得しています。
色は山吹色。香りはパイナップルやバター、樽の木香。辛口でも柔らかでしっかりとした酸味とふくらみのあるクリーミーな味わいがあります。余韻にはバター香と、樽の香りが残ります。樽香の付け方もよく、上品なワインです。
値段は少々はりますが品質からみても、個人的にはかなりお奨め。銀賞受賞は伊達ではないので、シャトレーゼに行ったなら購入を一考する価値のある一本です。
飲んだ日: 2004年2月1日
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テイスティング
販売所にいる社員の方に頼めば販売所内で無料でテイスティング可能です。ほとんどのワインは試飲することができます。
以下に試飲させて頂いたワインのメモを記述します。なお、下記のワインは国内ワインコンクールの甲州部門、赤ワイン部門、白ワイン部門でそれぞれ銅賞を取っています(他に白ワイン部門銀賞も受賞、管理人のワイン記録参照)。まだ出来たてのワイナリーであることを考えると、この実績はかなり将来を期待させてくれるものであるといえるでしょう。

2004 甲州シュール・リー:多くのユーザーの要望に答えてこのヴィンテージは辛口のシュール=リーとなりました。糖度が少ない分軽やかになったものの、華やかな洋梨、少し生パン粉の香りなどシュール・リーとしての特徴はしっかりあります。辛口になってもコクは健在なので完成度は食中酒として高いレベル。値段は1890円とわずかに他社シュール=リーより高めなのが唯一のケチのつけどころでしょうか。

2004 甲斐ノワール:価格は2100円。青臭さと杉の香りが目立つ傾向があった甲斐ノワールもこのヴィンテージから熟したベリー系の果実の香りが全面にでるようになりました。タンニンは少なめながらもしっかりした酸、この品種にしてはエレガントな飲み口はこのワイナリーの特徴でしょうか。

2002年 シャルドネ樽貯蔵:色はほのかな黄色で、少し樽香の香りがありますが以前のヴィンテージほどではありません。リンゴの香りのほか、開封したては硫黄臭があるので注意。グッドヴィンテージだけあってなかなかボディがあり、酸や酒質・コクともに申し分なく、また含み香のパインなどの果実香もよくでています。葡萄の力を感じるしっかりとした辛口白ワイン。

2000年 甲州樽発酵:辛口と書いてありますが、実際にはやや辛口〜中口の糖度が残っています。ワインは樽発酵を行うと樽香が穏やかにつくため、樽熟成ほど樽香が支配的にならない傾向があります。樽香と甲州の果実香の上立香はまとまりがあり、味は糖度と酸味、樽のヴァニラ香のバランスがよくとれています。原料の甲州にも力を感じるので薄っぺらいところはありません。甲州としてはクリーミーな印象のあるワインです。
ツアー
ツアーは無料ですが要予約。工場見学を希望するなら前日までに予約する必要があります。
ツアーは自社畑の概要についての説明がまずあり、販売所裏においてあるバスラン(圧搾機)や破砕機といった醸造器具を見ながら、ワインの製造の工程について説明があります。頼めば、醸造機具の内部なども見せてもらえるかもしれません。
行っている醸造方法の簡単な説明などもあり、その中で白ワインは破砕と除梗の処理はせずに圧搾するなど、葡萄のクリアな味わいを追求するような醸造を行っているという話も聞くことができました。
シャトレーゼでは自社畑のヨーロッパ品種で高品質を目指すのはもちろんのこと、甲州も契約栽培による葡萄を使用しており、醸造だけでなく葡萄の品質の確保に心を砕いていることも説明してもらえます。
余談ですが、シャトレーゼ勝沼ワイナリーは我々が思う以上に手で行う作業が多いようです。瓶詰め、打栓、ラベル貼りなどの作業は全て社員の手で行われているとのことですから、1万本以上も生産する社員の方々の努力がうかがいしれます。
外観  歴史  施設の概略  葡萄畑   直営レストラン  ツアー  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
自社畑にある甲斐ノワール。最晩熟なので、かなり遅くまでなっています。丁寧な剪定にも注目。
001年 ソーヴィニヨン・ヴラン:色はほのかな黄色。この品種特有の「猫のおしっこ(ピピド・シャー)」の香りが明確にあり、わずかに枯れた草の香りもあります。辛口ですが、穏やかな酸味で含み香にも上記の香りがあり、ブラインド・テイスティングでもあてられるほどに品種特性がよくでています。ただ、青い葉や茎のような香りはあまり強くありません。
値段は3000円と安くはありませんし生産本数も300本に満たない銘柄ですが、これほどソーヴィニヨン・ヴランらしいソーヴィニヨン・ヴランはもしかしたら日本国内では初めて商品として出されたかもしれません。好き嫌いがわかれる銘柄ですが、特にワイン通を自認する方ならば購入を考えてみる価値は充分にあります。

メルロー 樽熟成 2001:詳細は管理人のワイン記録にて。歴史の項でも説明したように、Japan Wine Challengeでみごと銀賞を獲得したワインです(その時、銀賞を取っていた国産ワインはもう一銘柄だけ)。醸造長自らが果汁の状態ですでに違った、というポテンシャルの高さが遺憾なく発揮されています。

他、甲州の新酒もありますがこちらは甘口。他の銘柄にボリュームがあるだけに、やはり物足りなさを感じます。値段は新酒が最も安い(1000円前半)のですが、もう少し金額を上乗せしてシャトレーゼの誇る瓶熟成・樽熟成の行われたワインを味わうことをおすすめします。
また、上図にもありますが、とにかく生産量が少なく在庫カウントも下一桁まで数えた黒板が販売所内にあります。残り在庫数が少ないワインで欲しいものがあるならば迷わず買うべきでしょう。


注意:同じくシャトレーゼの経営で「シャトレーゼベルフォーレワイナリー」というワイナリーがあり、ここの商品も勝沼ワイナリーにおいてありますがこちらはやや量を重視したまったくコンセプトの異なる商品なので間違えて買うことのないようにご注意を。


購入方法
 

ワインの販売はワイナリー内の販売店と、公式ホームページからの通販、シャトレーゼの一部店舗で取り扱われています。ごく一部の酒屋とレストランにも卸されていますが微々たる数なので、購入するならばやはり通販か直接ワイナリーにいくのがよいでしょう。。

ワイナリーアクセス
アクセスに関してはシャトレーゼ勝沼ワイナリーの公式ホームページに詳しく説明されているのでそちらを御参照下さい。

総論
新興ワイナリーですが、これぞダークホースという実力派です。勝沼産の原料にこだわりながら値段も中価格帯まででかなり良いものをだしており、数ある勝沼のワイナリーの中でも5本の指に入っていいほどのワインを醸造しています。特に「勝沼産葡萄のワイン」というジャンルでくくった場合には、シャトレーゼに匹敵するヨーロッパ品種のワインを生産できているのは3社あるかどうかでしょう。

甲州とシャルドネは、醸造開始から数年であるというのに早くも日本全国のトップランクのワイナリーに匹敵するものが作り出されています。赤ワインも、メルローはヴィンテージを問わず秀逸で、かの長野県の桔梗が原のメルローにも勝るとも劣らない数少ない山梨のメルローです。これと比べてしまうとカベルネはややインパクトと味わいに欠けるところがありますが、カベルネを親に持つ甲斐ノワールは、他社の同品種のワインと比べてもかなり洗練された味わいのあるものに仕上がっています。
強いていうと生産規模が小さいこともあってワイナリーの知名度が低いのが欠点といえば欠点でしょうか。同じシャトレーゼの名前を冠する(しかもややこしいことに山梨県にある!)シャトレーゼベルフォーレワイナリーと混同されてしまうことが多いそうですが、両社の造るワインは明白にコンセプトが異なることを知る者としては残念な限り。お菓子のシャトレーゼの販売店では、両方とも同じように並べられて売られているので混同される理由は非常に納得はいくのですが・・・(^_^;

流通が特殊でさらに生産本数が非常に少ないワイナリーなので、一般流通でその銘柄を見る日は遠いでしょうが、今後の進展が非常に楽しみなワイナリーです。
勝沼を訪問したならば必ずシャトレーゼに行き、何か一本買うことをおすすめします。同じ値段の海外輸入ワインと比較しても一歩も譲らない個性をもっており、失望させられることはないはずです。
販売所には国内コンクールの受賞の賞状が飾られています。なかなか壮観な光景です。
直営レストラン
※シャトレーゼ本社の営業していたシャトー・フリアンは全店舗閉店となりました。
独自に開発した葡萄の箱の洗浄機。以前は手で箱を洗っていたそうです
銘柄: 2002 鳥井平 甲州シュール・リー
生産元: シャトレーゼ勝沼ワイナリー
価格: 1500円
使用品種: 甲州(鳥井平産100%使用)
備考 日本初の国内ワインコンクールのJapan Wine Competition「甲州ワイン」部門において見事に銅賞を獲得しています。勝沼でも最上の甲州葡萄の産地といわれる鳥井平地区の甲州のみを使用して醸造されたワインです。
少し黄色で、穏やかでクリーミーな青リンゴや白い花の香り。糖度はやや辛口でシュール・リーの独特の味わいも良く出ています。青リンゴに似た余韻が少しあります。
シュール・リーのワインとしては糖度がやや高いほうに入るためか、刺激的な酸の感じはなく、全体がバランスよくまとまっています。

飲んだ日: 2004年1月25日
販売されているワインは黒板にカウントされています。カウントが減っているワインは売り切れ注意。
銘柄: 2002 甲斐ノアール
生産元: シャトレーゼ勝沼ワイナリー
価格: 2000円
使用品種: 甲斐ノアール(鳥井平産100%使用)
備考 日本初の国内ワインコンクールのJapan Wine Competitionにおいて見事に銅賞を獲得しています。
黒や紫の色を感じる、暗い赤色。穏やかなブラックベリー香りと、酸味を感じさせる香り、少しコショウのようなスパイシーな香りがあります。ファーストアタックは中程度の刺激ですが、しっかりと口にするとかなり強い酸味を感じます。含み香にはインクのような香りがあり、余韻はやや長めで杉の葉のような香りが残ります。
若い時に試飲した際には杉の葉や木の根のようなかなり刺激的な香りが明白にありました。飲んだワインは熟成によるものか保存環境によるものなのかスパイシーな香りが減っていたようですが、ワインとしてのバランスはやはり年代を経たものが上です。
飲んだ日: 2004年10月4日
社名 (株)シャトレーゼ勝沼ワイナリー
住所 山梨県甲州市勝沼町勝沼字三輪窪2830-3
電話番号 0553-20-4700
取寄せ オンラインショッピング・直売のみ HP http://www.chateraise.co.jp/winery_index.html
自社畑あり ツアー等 あり(無料、要予約)
テイスティング可(無料)
栽培品種 セミヨン、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、甲斐ノワール、メルロー、他 営業日 年始以外の午前9時〜午後5時まで
★訪問日 2003年10月12日、、2003年11月22日、2005年4月22、2006年8月31日  
備考:山梨県産ブドウのみ使用、生産数少
銘柄: 2001 メルロー 樽貯蔵
生産元: シャトレーゼ勝沼ワイナリー
価格: 3500円
使用品種: メルロー(鳥井平産100%使用)
備考 ワインコンクールのJapan Wine Challengeおいて見事に銀賞を獲得しています。
黒みがかった深い赤。穏やかながら樽由来のチョコレートやコーヒー豆の香りと、ブラックベリーの香りがあります。ファーストアタックはやさしく、しっかりとした果実香とエレガントな味わいで上級ワインの風格があります。特筆ものなのは後半にかけて口の中で旨味がぐぐっと膨らんでくるところ。余韻は中程度で樽由来の香りが主体になります。
パワーとエレガントさを備えているレベルの高いワインで、この値段分の価値は充分にあります。国産、それも山梨県産の中では屈指のメルローのワインといっていいでしょう。
惜しむらくはパワーがありすぎて飲んだ日づけではまだ完全には飲み頃がきていなかったこと。最初はまったく味わいに統制がとれておらず、2回デキャンタージュをしましたが、それでもまだ完全には開花していませんでした。
飲んだ日: 2005年6月18日
恐るべき急勾配と素晴らしい景色。数あるワイン用自社畑でもトップクラスの傾斜です。
デラウェアの畑の中。未熟な青デラは使わず、完熟近くまで待つので、病気にかかりやすいのも頭痛の種です。