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白山やまぶどうワイン
〜ヤマブドウ&交配品種専門の新鋭〜
外観
福井県の県庁所在地である福井市の東側に位置する大野市は、名水百選に選ばれる「御清水」のある良質の水の産地として有名です。

その大野市の中心地から外れてさらに東側、荒島岳のふもとにあるのが、白山やまぶどうワインです。

正面から見ると、整えられた花壇と休息の取れる椅子の置かれた、可愛いような威厳があるような外観の白い建物です。
が、横からこの建物をみると、正面は右写真のような建物なのにその後ろはまさに工場。まるで二つの別の建物がくっついたような外観は少なからず驚きを与えます
歴史

福井県唯一のワイナリーである白山やまぶどうワインは、2000年に設立された新しいワイナリーです。
しかし、福井県と聞いて、”葡萄”を連想する人はいないでしょう。なぜなら福井県全体がワインどころか葡萄栽培はほとんどされておらず、今までワイナリーが設立されなかったことに何の不思議もない県だからです。

そんな福井県で現社長の谷口一雄氏が大野市の北、勝山市で趣味でヤマブドウを栽培していたことがこのワイナリーの契機になります。
趣味での栽培だけでなく事業として発展させることを思い立った谷口氏は1997年に農業法人を設立して本格的にヤマブドウの栽培に着手、ついには醸造所を造り白山ワイナリーをオープンしました。
醸造長には福井県でも屈指の銘酒である「花垣」を造る南部酒造の代表取締役である南部隆保氏を迎え入れました。現役で日本酒蔵の醸造を兼業しているワインの醸造長は、有名なところでは長野県の小布施酒造があるとはいえ、かなり異例の人事です。

現在の生産量は3万〜3万5千本。もともと葡萄栽培が行われていない地域なので、多くの畑を4人の社員と有志の農家で管理しています。
完全にヤマブドウとその交配品種に徹底した栽培方針なので、技術的な部分では、島根の奥出雲葡萄園、岡山のひるぜんワイン、岩手の葛巻高原食品加工や北海道のワイナリーなどと交流しながら研究を行っています。現在、農家の高齢化により借りれる農地はたくさんあっても、栽培できる人員や有志の農家が少ないのが悩みの種。また、大野市は湿気が多い上に200〜300メートルの高度があるわりには昼夜の寒暖差が少ないと、葡萄栽培の好適地という気象条件ではないのでこちらも苦労が絶えないようです。
ワインは銘柄の一部に山梨の葡萄が使用されている他は、福井県産の葡萄を使用した、国産100%のワイン。
消費者の多くは主に県内や隣県の旅行者で、他に地元では贈答品としても購入されています。


施設の概略
一階の正面の外には、パラソルや椅子などが置いてあり2人ぐらいなら休憩ができるようになっています。
販売所は2階にあり、ワインが冷蔵ショーケースに並べられている光景を眼にします。試飲・販売の他、コーヒーやケーキなどを注文することも可能。でも、あまり広いわけではないので多い人数(私見では8人を越えるときつそうではないかと)でいくのは考えものです。

試飲販売所の隣部屋にある醸造施設は原則見学不可ですが、販売所の壁の一部がガラスになっているのでその一部を見ることができるようになっています。


外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  直営レストラン  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
葡萄畑
全体で約7ヘクタールの広い畑を所有しており、醸造所のすぐ隣にも畑があります。
葉が付いている時期に行くと、ヨーロッパ品種や生食用品種の葡萄を見慣れた目には異様に大きな葉がまず飛び込んできます。お面が作れてしまうほどの大きさは、葡萄としては異例といっていい大きさ。
大人の身長よりも高い垣根式栽培が行われており、こちらも栽培の知識がある人なら興味深いところでしょう。

ヤマブドウという品種に関してはひるぜんワインに詳細を記述していますが、一般的な印象と違ってかなりの難物で栽培家泣かせの葡萄です。雄樹と雌樹があるので優良品種の選抜が難しい(自家受粉が困難)、樹勢が非常に強い、病害虫への耐性は高いが無農薬で済むというほどではない、一本あたりの生産性がかなり低い、など少し列挙するだけでもおよそ”栽培適性は優良”とは言い難い品種です。
また、かなり山の中ということもあってうさぎやたぬきなどの獣害が多く、微量な電流の流れるネットなどを張って防除するといった工夫も行われています。

栽培品種は、ヤマブドウのほかにホワイトペガール、ブラックペガール、ワイングランドといったヤマブドウ交配品種、特にこの中でもヤマブドウ品種開発で有名な澤登氏が創り上げた小公子が栽培適性、品質共に有力視されています。

直営レストラン
レストランではありませんが、ケーキと飲み物をワイナリー内で注文できます。内容は季節で変わっていくようです。

※ 食べていないので詳細についてはコメントできないことをお詫びします。
テイスティング
2000円以下の銘柄は無料で試飲することができます。
以下に試飲した銘柄の簡単なテイスティングコメントを記述します。参孝程度に読んでください。


白山ブラン :ホワイトペガールと山梨県産の甲州を使用したワインで価格は1575円。洋梨と白い花、といった山梨の甲州によく見られる香り。酸味はやや強めで、全体的にフルーティーなワイン。ただ、あまりホワイトペガールを使用したという味わいが実感できず、甲州ワインそのもののような印象を受けます。実際、ホワイトペガールは香りに品種特性がそれほど発現されない葡萄のようです。

白山ルージュ :ワイングランドとマスカットベリーAを使用した赤ワインで価格は1575円。深い赤で香りは茎やピーマンといった青い香り。酸味も過剰ではなく、軽やかで飲みやすいタイプのワインです。

白山ロゼ :ブラックペガールを使用したワインで低価格帯で唯一、100%ヤマブドウ交配品種のみ価格は1575円。やや甘口ですがかなり酸味がしっかりしており、甘さをそれほど感じさせません。チェリーやキイチゴ、胡椒のようなスパイシーな香りもあり、個人的にはおすすめの一本。

山葡萄酒 :様々な品種の入ったワインで1995円。甘口の赤ワインで、聞くと「甘い赤ワイン」年配のお客様の要望により発売された銘柄だそうです。さすが色々な品種が入っているだけあり香りも味わいも複雑なのですが、飲んだ印象としてはややバランスに欠ける気も。

白山やまぶどうワイン:銘柄名は会社名そのものという、白山を代表する銘柄です。詳細は管理人のワイン記録に譲ります。価格は2625円とけして安くはありませんが、ヤマブドウワインとしてはけして高い方には入りません。ヤマブドウは面積あたりの収穫量が非常に少ない葡萄であるためで、そういった事情を考慮して購入の目安にするべきでしょう。

他、ユニークな商品して、ヤマブドウやブルーベリーなどの苗木も販売しています。

山葡萄交配品種のワインは、はつらつとした酸味があり、フレッシュ。「世の中には色々な葡萄やワインがある、カベルネとメルローとシャルドネだけではない」という認識が備わっている方なら、ぜひ飲みたいワインです。品質について統括すると、個人的にはとてもクリーンに醸造されているという印象を受けます。
・・・しかし、醸造長の本業は日本酒蔵の社長なのですから畑違いなはずなのに随分きちんとしたワインを造っています。確かにワインの醸造の時期は秋、日本酒は冬ですから醸造時期はさほど重複していないので作業に専念できるのはわかりますが、だからといって誰もが商品として通じるレベルのワインを醸造できるわけではないはず。素人なので、醸造の技術などはさっぱりですが、結構凄いことのように思えます(^_^)


購入方法 
ワインの販売はワイナリー内の販売店と、公式ホームページからの通販で行われています。ホームページではヤマブドウやベリーの苗木なども販売されています。また、公式ホームページは瓶のサイズは750mlにしている理由など、白山ワイナリーに関する事柄が細かく書かれているので一通りごらんになってみて下さい。

ワイナリーアクセス
アクセスに関しては白山やまぶどうワインの公式ホームページに詳しく説明されているのでそちらを御参照下さい。

総論
新潟を除く北陸地方はワイナリーが少なく、さらに少数派であるヤマブドウと交配品種を専門に栽培する珍しいワイナリーが白山ワイナリーです。

ヤマブドウとその交配品種のワインは品種特性として酸味が強く、また赤ワイン用品種は色素は濃いのですが渋みやタンニンが少ないというのも特徴です
本家であるヤマブドウのワインは、収穫量があまりに少ないこともあってやや高めの値段設定。とにかく強烈な酸味のある銘柄なので、好みの分かれるところなのですが、味わいなども個性的なのでとても面白いワインです。甲州とホワイトペガールをブレンドした白はやたらに酸味の強い甲州ワインのようでいまいち面白みにかけましたが、ワイングランデを使用したロゼはスパイシーな香りと果実味も充分にありなかなか楽しめるロゼワインのように思えます。そして期待のエースである「小公子」は、まだまだ発展途上のような気もしますがヤマブドウのような過剰に突出した部分のない、バランスの良いワインに仕上がっています。
個人的にはロゼと「小公子」を推奨していますが、せっかくヤマブドウワインを生産しているワイナリーなのですから余裕があればヤマブドウも買いたいところです。このヤマブドウのワインは他社製品と比べ品質・値段とも良い水準にあるので、とりあえずヤマブドウのワインを飲んでみたいという方ならば一考の価値があります。
ヨーロッパ品種はいっさい栽培していないので他のワイナリーと簡単に比較できないのですが、クリーンながらも個性的なワインを色々と醸造しているので、自分が気に入るかどうかを見定めるためにも一度は訪れてみることをお奨めします。

観光という点からみても大野市の中心の通りは、とても情緒ある街並みで日本文化を愛する人なら必見の景色が広がっています。あちこちから湧き出る名水の「御清水」を飲みながら街並みを散策すると、ビルだらけになってしまっている都会とは違う街の在り方などを感じとれるでしょう。
さらにその名水から造られる南部酒造の「花垣」は絶品の酒!蔵元で直接購入もできるので、日本酒党でなくてもぜひとも飲んで欲しい酒の一つです。

ワイナリーも、内装がとても上品でワイン好きな恋人と行っても違和感がない場所なので、福井県に行ったワインファンはぜひ寄ってみてください。ユニークなワインたちと出会えるはずです。
銘柄: 小公子
生産元: 白山やまぶどうワイン
価格: 1900円(税込)
使用品種: 小公子(福井県産100%使用)
備考 色は鮮やかで深みのある紅色。健全な果実味と新鮮なトマトのような香りがあります。ただ実際に飲むとタンニンや渋みは色から受けるほどではありません。酸味は強めでインパクトがありますが、ヤマブドウのように極端ではなく果実味とも相まってフルーティーなワインです。
上記のヤマブドウのワインと比べると、酸味などの要素が多少おとなしくなりよりバランスの取れたワインに仕上がっているといえます。
ヤマブドウ交配品種で最有力候補の葡萄がこの小公子ですが、未来がとても楽しみです。
飲んだ日: 2004年11月28日
試飲所の風景。写真のようにレストランの一室のような内装です。
ヤマブドウの葉。比較のタバコの箱と比べると、嘘っぽい合成写真のような大きさであることがわかります。
社名 梶@白山やまぶどうワイン
住所 福井県大野市落合2-24  電話番号 0779-67-7111
取寄せ オンラインショッピングあり HP http://www.yamabudou.co.jp/
自社畑あり ツアー等 訪問自由
テイスティング可(無料)
栽培品種 ヤマブドウ、ブラックペガール、ホワイトペガール、小公子 営業日 年中無休
1月1〜 3日のみ休業
営業時間: AM8:30〜PM5:00
★  2004年6月10日
備考:国産葡萄のみ使用、醸造長は日本酒造「南部酒造」代表取締役、苗木販売
銘柄: ヤマブドウ
生産元: 白山やまぶどうワイン
価格: 2625円(税込)
使用品種: ヤマブドウ(福井県産100%使用)
備考 まず「紫がかった黒」といっても過言ではない圧倒的な色素の濃さに目を奪われます。
香りはおとなしめながら、根菜類やブラックベリーの香りが感じ取れます。
口にいれるとアッタクから最後までかなり酸味が強烈で、油断して飲むと確実にむせてしまうほどの刺激的。含み香には土を彷彿とさせる根菜類、他に葉野菜のようなベジタブルな香りがあります。余韻はあまりありませんが、舌には強烈な酸味の感覚が残ります。

かなり味わいにおいて特殊なタイプのワインなうえ、値段も安価ではないので誰にでもすすめすることはできませんが、個性あるワインを好む方であれば充分楽しめるでしょう。

余談ですが若い赤ワインは一般的に紫色、といわれますがことヤマブドウに関しては年月を経てもこの紫があまり抜けないそうです。―――ということは色によるヴィンテージの判断は難しいはずですから、ワイン通の知人などにいたずらで出してみるのも一興かもしれません(^_^)
飲んだ日: 2004年10月14日