住民税の新年度は6月から

個人の確定申告シーズンを終えると、
あっという間に初夏になり、労務の季節がやってきます。

労務は毎月のことですが、”先月と同じ”が通用しない月は少し緊張します。
その一つが6月です。

「新年度」といえば4月のイメージがありますが、
事業主の方が従業員さんの給与から毎月天引き(特別徴収)する住民税は
6月分から新年度分が始まります。

大抵はB4~A3サイズの通知書が市町村ごとに郵送されまして、
そこで事業主さんは従業員さんから毎月いくら天引きして納付すれば良いのかを知ります。
従業員さんにも月々の天引額を知らせるために、各人ごとの通知書も同封されています。

通知書が発送されるのは、5月くらいなので、思いのほかタイトスケジュールです。
給与計算ソフトも住民税の欄は手入力のことがほとんどですので、
忘れないうちに情報の更新をお願いいたします。


住民税の通知で
もう一つ注意しなければならないのが
5月頃に送付される通知書はその後変更されるかもしれない、ということです。

その原因の代表格が個人の確定申告、特に還付申告です。

5月中にスムーズに通知される住民税の税額は、
その大半が給与支払報告書の内容に従って「給与」のみを反映させたものです。
あとは、通常の確定申告期限3月15日までに提出を終えた方も反映されています。
つまり、「所得が給与のみ」または「確定申告を3月半ばまでに無事終えた」方の住民税は変更の可能性が少ないといえます。

ただし、還付申告は5年間の猶予があるため、
直近の3月15日までに提出しているとは限りません。
そもそも年度末はサラリーマンの方も繁忙期ですから、どうせ還付だからまとまった休みにやる!という方もいるでしょう。

仮に、従業員の方が、5月のゴールデンウィーク以降などに
医療費控除、セルフメディケーション税制、ふるさと納税その他の寄付金控除、住宅ローン控除などをゆったり行い、所得税の還付申告を終えたとしましょう。
税務署と市町村の役所はお互いにデータをやり取りしているものの、
住民税の新年度の「6月」に最新データを反映させるのには時間が足りません。

 

そこで、6月分として給与から天引きする税額はそのままに、
7月あるいは8月以降の住民税分から、最新データを反映させて徴収が進むように各市町村が計算をしなおします。

計算を終えた最新の通知を、
毎月給与計算をしている事業主さんにいち早く届けるべく、
市町村の方は毎度猛スピードで計算とチェックをしているはずです。
それも市町村ごとに各担当部署が行っているのですから、
ある程度自動化されているとはいえ、想像しただけで大変そうだな、と勝手に思っております。

事業主さん側も、各々の従業員さんが還付申告をしたかどうか、などは事前に知る由もないですから、
家族経営で全員の確定申告状況がツーカーな場合を除いて、
いきなり変更通知書が到着して、翌月給与に反映させなければならないわけです。
どちらも大変です。

余談ですが、市町村からの通知もたまに誤っていることがありますので、
あれ?と思ったら
従業員さんは事業主さんに、
事業主さんは各市町村の担当課または担当税理士に遠慮なく問い合わせてください。

 

いち早く通知したいなら、郵送じゃなくて、電子で届ければさらに良いんじゃない?
と、役所側も思っておりまして
令和6年度分の通知から、一定の要件を満たすと電子データで通知されるそうです。

通知書には個人情報が満載ですので、取扱いに注意するのはもちろん、
電子帳簿保存法の影響もあり、現行法では保存方法は電子のみに縛られると見込まれます。

一人一人の従業員さんへの通知は、
マイナポータルと連携されそうな予感がしますが、
事業主さんが何のシステムを利用して、どう通知するのか具体的な操作手順は不明です。
さて、どこまで浸透するでしょうか。

 

実はすでに、5月頃に送付される特別徴収の通知書は
電子データで受け取る方法があります。
デフォルト設定では書面(郵送)なので、ご希望の場合はeLTAXで変更しておきましょう。
正式なものは書面で、副本をデータで、という選択も可能です。

ただ、残念なことに「変更通知書」は未だに郵送のみです。
むしろ変更通知書こそ早く知りたい・届けたい情報であると思われるので、
変更通知書は令和6年度を待たずに電子化するのでは、と期待しております。

2022年06月11日