50 名建築を訪ねるー14  谷口吉生(たにぐちよしお)氏の作品


・令和2年8月20日(木)  葛西臨海水族園 平成元年建築   葛西臨海公園展望広場レストハウス 平成7年建築(東京都)


葛西臨海水族園


 建築家・谷口吉生氏の作品は、これまでに土門拳記念館目次1、平成23年10月8日参照)と法隆寺宝物館目次2、平成23年11月13日参照)を訪ねた。その後、機会があるたびに谷口氏の作品を鑑賞している。
 谷口氏の作品はいずれも端正で気品があり、静寂を感じさせる。奇抜なものはない。作品は池を配置していることが多いが、池の水面が建物の姿を映し、建物の美しさを一層引き立てている。

 東京ディズニーリゾートの最寄りの駅である「舞浜駅」の一つ手前の「葛西臨海公園駅」で電車を降りる。駅前から東京湾に向かってまっすぐに延びる道を200m程歩く。左手に水族園の門がある。
 入り口を入って進むと、高さ21mのガラスのドームが建っている。47の水槽に約650種の生物を飼育している
葛西臨海水族園の入り口である。

 建物の三方に池を配している。人工の池だけれども東京湾に近く、間を遮るものが見えないから、人工の池は海だと思ってしまう。そのため、ガラスのドームは東京湾上に浮かんでいるように見える。
 展示場は地下に設けられている。圧巻は、2200トンのドーナツ型の水槽内を大量のクロマグロが猛烈なスピードで回遊している光景である。
 帰りは遠回りしながら、自然を利用して飼育している淡水魚を見学する。

 水族園を出て左へ曲がる。正面に、空と海を背景にして、ガラスの葛西臨海公園展望広場レストハウスが建っている。
 幅75m、奥行き7m、高さ11m、地下1階、地上2階の建物である。水平線と垂直線の幾何学的造形の明るく美しい建物である。


葛西臨海公園展望広場レストハウス


 東京都江戸川区臨海町6-2-3
 JR京葉線葛西臨海公園駅下車


・同年9月12日(土)  豊田市美術館 平成7年建築(愛知県豊田市)


豊田市美術館


 東京駅6時発新幹線「のぞみ1号」に乗る。7時34分、名古屋駅に着く。名鉄名古屋本線豊橋行きの電車に乗り「知立駅」で乗り換える。名鉄三河線猿投行きに乗り「豊田市駅」で下車する。

 駅員に、バスの便は悪いですよ、と言われたので、タクシーに乗る。タクシーの運転手さんにバスのことを話したら、豊田市はトヨタの関係で車社会が徹底してますからバスの本数は少ないですよ、と言われた。

 車は10分程走って美術館の裏に着いた。建物は段丘を利用して建てられている。ここはかつて挙母城(ころもじょう)があった高台である。建物の右側から坂を上がる。建物を回り込み、整備されて森林公園の趣で造られた所を通って建物の外階段を下りる。豊田市美術館を右斜め前から眺める位置に着いた。

 地下2階、地上3階、美しいガラスの直方体の建物である。不要なものを削ぎ落し凛として建っているが、冷え冷えとしたものはない。

 敷地内の端にある坂を上がる。人工の池を挟んで、建物を左斜め前から眺められる場所に出る。ここからは建物の2階から上を見ることになる。
 水平に長く伸びるファサードと垂直線が美しい。建物が池の水に浮いているように見えて、ここでも水が建物と一体となって建物の美しさを際立たせている。



 愛知県豊田市小坂本町8-5-1
 名鉄名古屋本線豊橋行き「知立駅」乗り換え、名鉄三河線猿投行き「豊田市駅」下車


・同年12月24日(木) 平成知新館 平成25年建築(京都市東山区)

 東京駅6時発新幹線「のぞみ1号」に乗る。8時8分、京都駅に着く。駅前からバスに乗る。約20分で停留所「博物館三十三間堂前」に着く。

 左手に京都国立博物館が在り、煉瓦造の表門が建っている。現在、この表門は出口のみに使用されている。この表門と、元は博物館の本館であって、現在は明治古都館と名付けられている建物は明治29年(1895年)に建てられた。いずれも昭和44年(1969年)、国重要文化財に指定された。


京都国立博物館 表門


 バスが走って行った方向へ歩く。通りを隔てた反対側は三十三間堂を囲む長い筋塀が続く。
 100m程歩く。左手に立つ東門を入る。右手に明治古都館、正面に平成知新館(へいせいちしんかん)が建っている。明治古都館は閉館中だった。始めに平成知新館を見学する。


明治古都館


 平成知新館は、地下2階、地上4階。平成25年に建てられた京都国立博物館の新しい展示館である。
 深く張り出す薄い庇、細い柱、半透明の障子のようなガラス窓、縦長の細い窓割は連子格子(れんじこうし)に見える。半透明なガラス窓の下段の透明なガラス張りは雪見障子を彷彿させる。


平成知新館



 水を湛えて、建物を映し、建物の美しさを一層引き立てている。



 紙と木でできていた昔の日本家屋の直線の美しさと軽やかさを思い出す。

 池に沿ったグランドロビーは、3階吹き抜けになっている。博物館にありがちな暗く、陰鬱な雰囲気はない。内部も明るく軽快である。


グランドロビー


 門から一直線上に、煉瓦造の明治古都館が建っている。設計は、宮廷建築家と呼ばれた片山東熊(かたやまとうくま)(1854~1917)である。
 片山東熊は、
旧東宮御所(現・迎賓館)他の作品がある。鹿鳴館を設計したイギリス人建築家・ジョサイア・コンドル(1852~1920)の弟子であった(片山東熊の作品である表慶館について、目次2、平成23年11月13日参照)。

 明治古都館は、ネオ・ルネッサンス様式、左右対称の重厚な建物である。


明治古都館


 正面中央上部のペディメント(三角破風)に彫られているのは、右側が器楽の技芸に優れた天女の伎芸天(ぎげいてん)で、左側が細工物や建築を司る神の毘首羯磨(びしゅかつま)である。


ペディメント


 京都市東山区茶屋町527
 JR京都駅前からバスに乗り、停留所「博物館三十三間堂前」下車





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