■ はじめに
「竜胆瀉肝湯」は「葛根湯」などと比べると、セルフメデュケーションの一環として、患者さんが自身で選んで服用するのが難しい漢方処方との印象が個人的にあります。ですが、何かの折に知ることがあれば参考になるのではないかと思い、記載することにしました。
■ 「竜胆瀉肝湯」の効能
体力中等度以上で下腹部に熱感や痛みがあるものの次の諸症:
排尿痛、残尿感、尿のにごり、こしけ(おりもの)、頻尿
■ 効能のポイント
1、体力中等度以上とは → 症状があり、悩んではいるが、日常それが
もとで動けないわけではない状態。
2、下腹部に熱感や痛みがあるもの
→ 実際には違和感であったり、鈍感の人は
わからない場合もある。
3、排尿痛、尿のにごり → 現代でいうところの膀胱炎や泌尿器系の炎症
が伺われるので、即適用としても可。
4、こしけ(おりもの)、頻尿
→ これらは炎症性のもののみ適用となる。
■ 経験則に基づく漢方の応用
上記では現代エキス製剤で一般的に表記される効能を記載しました。しかし、漢方では、その他の症状に応用として使われることがあるので、その一例を追記したいと思います。
湿疹、皮膚炎、じんましん、高血圧症、自律神経失調症、中耳炎、結膜炎、
その他の炎症・・・など
■ 「竜胆瀉肝湯」は、作りの違うものが複数ある!
漢方のややこしい所のひとつに、同名異処方があります。
エキス剤のメーカーの違いや煎じ薬によって、入っている生薬の数や種類が若干違います。ですので、名前が同じだから使ってみようと考えても、そもそも前回とは違う「竜胆瀉肝湯」であることがおこり得るのです。
★ 竜胆瀉肝湯の構成生薬の例
<メーカー名> ・・・ <構成生薬>
@ ツムラ・・・リュウタン、オウゴン、サンシシ、タクシャ、、モクツウ、シャゼンシ、
ジオウ、トウキ、カンゾウ
A 小太郎・・・ジオウ、トウキ、シャクヤク、センキュウ、オウゴン、オウレン、
オウバク、サンシシ、リュウタン、タクシャ、モクツウ、シャゼンシ、
ボウフウ、ハッカ、レンギョウ、カンゾウ
古典・原典からみると、ツムラさんは「薬局製剤品目」に準じて作ったと考えられ、小太郎さんは「一貫堂」漢方をもとに作られたと考えられます。
ただし、煎じ薬については、たとえ原典が「一貫堂」と書かれていたとしても、収載された書物にによって構成生薬が若干違うため、「一貫堂」というだけでは厳密には構成生薬を特定できないのが現状です。ややこしい限りです。