■ はじめに
漢方薬を使用する上で障害となるのは、効能・効果の理解です。
漢方薬の効能書きを見ても、いろいろな症状や条件が記載されており、はたして自分の症状にこの漢方薬が当てはまるのかよくわからない、というご意見をよく耳にします。そこで当コラムでは、個別に漢方薬の使用・活用ポイントをお伝えすることにしました。ぜひ、ご参考にして下さい。
■ 「藿香正気散(かっこうしょうきさん)」の効能
体力中等度以下のものの次の諸症:
感冒、暑さによる食欲不振、急性胃腸炎、下痢、全身倦怠
■ 効能のポイント
効能の意味・解釈/ことばの説明 (一般消費者向け)
1、体力中等度以下とは → 症状が気になって元気に動けない状態
2、感冒とは → 悪寒(さむけ)を伴う腹痛・下痢・軟便
※ 「腸感冒」「胃腸風邪」と呼ばれるものを指す。また、これらの症状は「夏かぜ」に多いため、効能に「夏かぜ」と記載されるものもある。
3、暑さによる食欲不振とは → そのままの意味
4、急性胃腸炎とは → みぞおち付近の腹痛や突然の下痢や嘔吐など
5、下痢とは → 「食あたり」以外の下痢
6、全身倦怠とは → 水分のとりすぎ・梅雨の影響がある場合
の体のだるさ
※ 特に漢方薬の効能の解釈で多い間違いが、「すべての効能」が自分に当てはまらないと飲んではいけないのではないか?というもの。
上記処方でいうと、「下痢はあるけど風邪はひいていない」「みぞおち付近の腹痛はあるけど下痢はしていない」・・・など。実はこれらで「藿香正気散」を使うことも可能です。迷ったら、はじめに漢方専門店で使い分けを確認するのがベストです。
■ 適応について
効能のはじめだけを見ると、感冒や急性胃腸炎のように、短期的で急性の症状に使うお薬との印象がありますが、実は違います。
効能の中にある「下痢」は慢性的で持病や体質として下痢・軟便ぎみの人を含みます。また、「全身倦怠」との効能にある通り、慢性的に余分な水分が体にたまり、体のだるさが取れない方にも適応します。
要は、このような体質改善の目的で「藿香正気散」を服用することも可能であり、実際にそのような方も結構おられるということです。
また、「藿香正気散」の処方の中には、胃腸を整える「平胃散」という処方が含まれるため、ただ単に「胃腸が弱い方」にもおすすめの漢方薬です。
■ 当店の「藿香正気散」について
当店では現在、「藿香正気散」のエキス散剤として
「イスクラ勝湿顆粒(しょうしつかりゅう)」を取り扱っております。
イスクラ勝湿顆粒(商品名)の説明書きに、この製品が「藿香正気散」である旨の記載がないため、ここでご紹介します。
■ 「藿香正気散」=「勝湿顆粒」 の 構成生薬
藿香(カッコウ)、白芷(ビャクシ)、大腹皮(ダイフクヒ)、半夏(ハンゲ)、茯苓(ブクリョウ)
蘇葉(ソヨウ)、桔梗(キキョウ)、白朮(ビャクジュツ)、厚朴(コウボク)、橘皮(キッピ)=陳皮(チンピ)、大棗(タイソウ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)
出典 ≪和剤局方≫
以上13種類の生薬より精製した製剤