その3-2 現行のデュアルトランジスタの評価
今回は、現在でも買えるデュアルトランジスタを評価してみます。
昔から使われてきたデュアルトランジスタは残念ながら絶滅危惧種です。 また、JFETのデュアルFETともなると完全にディスコン(ディス・コンテンツ=生産中止)で在庫が高額で取引されているのが現状です。 (東芝 JFET 2SK389、2SJ109 とかが有名です。)
「現行品はないのか?」といいますと、あることにはあります。
・ アナログデバイセズの NPNトランジスタ-SSM2212、PNPトランジスタ-SSM2220
こいつらは、パッケージが DIP、SOIC だったりして比較的扱いやすそうな感じですね。
また、JFETに拘らないならば MOS-FET 入力のデュアルMOS-FETがあります。
・ NXP の ALD1101
こいつはgm が 10[mS] と案外低く耐圧が 12[V] と低めなのがいまいちかな?
まあ、最大の弱点は秋月、マルツといった普通の通販で売ってないことすねw
秋葉原などの電気街が近い人はいいとしても私のような地方の方は
「DIGI-KEY」、「RSコンポネンツ」とか利用するのが手っ取り早いです。
(割高ですがw)
Degi-Key は結構簡単に取引できます。こちらの記事「初めてのDegi-Kye(笑)」を参考にしてください。
「DIGI-KEY」、「RSコンポネンツ」は割高なので、国内でどっか通販ないかな・・・あ、あった・・・ 「イーエレ」というお店で、NPN、PNP それぞれのデュアルトランジスタを売ってました!
NEC の μPA74HA、μPA75HAというデュアルトランジスタです。
お値段も200円で安い!
データシートの使用用途にも「ペア性がよく、熱バランスにも優れますので差動増幅に最適です。」とあります。
ちなみにμPA74HA、μPA75HAともディスコンですが、個人で使用するぶんにはいいでしょう。
今回、手に入れたデュアルトランジスタを評価しますよー。エントリーは以下の素子です。
評価方法ですが、図2の差動増幅回路の Q1、Q2 に各素子を組み込んだときのオフセット誤差にて評価します。
原理ですが、差動増幅回路ですので入力電圧を等しくすれば当然 R1、R2間の電圧は 0[V] なります。 しかし、素子特性にばらつきがあれば左右の電流比のバランスが崩れ 0[V] になりません。 というわけで、抵抗R1、R2の電圧差で評価してみようと思います。
<誤差の見積もり>
抵抗 R1、R2 の誤差がありますからこれを最初に見積もっておきます。 この回路の R1、R2 の抵抗値の差は実測で 3[Ω] でした。 左右のトランジスタが同一特性だと仮定して差動回路が均衡すれば、電流源 1[mA] の半分 0.5[mA] がそれぞれの抵抗に流れます。 よって、抵抗の誤差 3[Ω] で生じる誤差電圧は、
オフセット電圧を 1.5[mV] の精度で評価できます。 その他のテスト条件によってこの評価が絶対とは言えませんが、各素子の相対的な評価は与えてくれるとは思います。
No. | uPA74FA | uPA75FA |
---|---|---|
1 | 3.2 | 0.0 |
2 | 1.8 | 8.5 |
3 | 5.7 | 16.0 |
4 | 3.8 | 3.8 |
5 | 0.4 | 2.9 |
No. | ssm2212 | ssm2202 |
---|---|---|
1 | 0.0 | 22.4 |
2 | 0.1 | 12.9 |
3 | 0.1 | 20.8 |
4 | - | 4.6 |
5 | - | 17.0 |
No. | ALD1101 |
---|---|
1 | 0.5 |
2 | 0.4 |
3 | 2.8 |
4 | 0.3 |
* 単位は全て [mV] です。
さて、結果ですが・・・ssm2202 がほかと比較すると悪いですね・・・。 あとは、uPA75FA - No.3 のような外れが混じっているのが気になりますね・・・w。 MOS-FET ALD1101 もなかなかいけそうです。JFET にこだわりがないならば、これを使用してもおもしろそうです。
あとはだいたい 5[mV] 程度、悪くても 10[mV] には収まっている感じでしょうか? まあ、この程度であれば許容するという方向で行きましょう。
次回からは、この中で一番お安い NEC製 μPA74HA、μPA75HA を使用したヘッドホンアンプを設計していきます。
(現行品でもいいのですが高いんですよ・・・w。 現行品に拘るならば ssm2212、ssm2202 あたりがいいと思います。)