1.問題

   コマネチ大学数学科を観ていたら、なんと冒頭から私が敬愛するラマヌジャンの名前が
   出てきて嬉しいやら驚くやらで、問題も当然数論に関係するものでした。

   「家に1、2、3、と番号が付けられていて、両側に並ぶ番号を全て足した数が同じになる
    家の番号は?、家の数は10軒以上50軒以下。 1 2 3・・・・・?・・・・50」                                     」

   マス北野は正解で東大組は不正解でした。
   番組ではラマヌジャンの連分数を使った方法で説明をしていましたが、ここでは
   問題をペル方程式(2次不定方程式)に帰着させて解いていきたいと思います。
   若干連分数にも触れます。


   ラマヌジャンのプロフィール

   インドの天才数学者(1887年−1920年)。
   1913年にG.H.ハーディー(英国人、当時の数論の世界的権威)に驚くべき手紙を送る。
   「彼はこのような定理をこれまでに見たことも想像したこともなかった。
   ラマヌジャンこそガウスやオイラーに匹敵する生まれながらの数学の天才だ」と見抜いた
   ハーディーの勧めにより、1914年に渡英する。
   その後ハーディーと共同研究を行う。
   ある時ラマヌジャンが病院に入院して、ハーディーがタクシーに乗って見舞いに行った時
   ハーディーが「タクシーのナンバーは1729だったが、つまらない数字だね」と言うと
   ラマヌジャンが「とっても興味深い数字です。2つの立方和として2通りに表せる最小の
   数字ではありませんか!1729=10^3+9^3=12^3+1^3」と言ったとか。


2.解説

   例題

   1 2 3 4 5 6 7 8

      家の数が8軒の場合は、1+2+3+4+5=15,7+8=15 で家の番号は6となります。

  
   一般的には次のように考えます。

   1 2 3 .....n-1 n n+1 ......n+m
 
      上記の様にn番目の家が答えだとすると、次の様な式が成り立ちます。

   1+2+3+...+n-1=n+1+n+2+.....+n+m

      n(n-1)/2=m(2n+m+1)/2

      n2-2mn-m2-n-m=0...................................................(1)

      この2元2次不定方程式の整数解を求めればいいわけです。
   (1)式を標準形に変換しましょう。
   即ち、m=M-1/2,n=N を(1)式に代入して整理すると

   4N2-8MN-4M2+1=0 となります。

      x=2(N-M),y=2M とすれば

   x2-2y2=-1 となります。............................................(2)
   一般に,x2-dy2=±1 の方程式をペル方程式と呼んでいます。
   ペル方程式の解を求める方法は、次のように2通りの方法が知られています。

       @.基本解による方法
       A.連分数による方法

   @.基本解による方法で解を求める

     「x2-dy2=±1の」全ての解は、基本解(最小解)を(x1,y1) とした時
     xk+dyk=(x1+y1sqrt(d))^k,k=1,2,3....として求める事ができる」
     という事実が知られています。

     そこで、x2-2y2=-1 の基本解は(x1,y1)=(1,1)であることがすぐ分かるでしょう。
     また、今回の場合kが奇数の時に解になる事も分かっているので
     xk+sqrt(2)yk=(1+sqrt(2))k,k=1,3,5....として解が求まる。

          k=3 の場合

           (1+sqrt(2))3=7+5sqrt(2)

             x=7,y=5だから連立方程式{2(N-M)=7,2M=5} からN,M を求めると

             N=6,M=5/2 となってn=N=6,m=M-1/2=5/2-1/2=2 となる。
        これは例題でとりあげた答えになっています。

     k=5 の場合

                (1+sqrt(2))5=41+29sqrt(2)
     
             x=41,y=29だから連立方程式{2(N-M)=41,2M=29} からN,M を求めると

             N=35,M=29/2 となってn=N=35,m=M-1/2=29/2-1/2=14 となる。

                これが番組での答えn=35 となります。


   A.連分数による方法で解を求める

     まず連分数は実数(有理数、無理数)を有理数で最良に近似する方法として考えられた。
     古くはアルキメデスあたりも知っていた様でsqrt(3)の近似値として265/153,1351/780等
     を得ています。
    
     実数xの連分数を求める手順

         
                N=x 

                i=0,1,2,3,... と以下を繰り返す

                q(i)=[N]:Nを超えない最大の整数

              N=1/(N-q(i))


     例題:sqrt(3)の連分数を求める

                N=sqrt(3)=1.732050808
                q(0)=1
                N=1/(sqrt(3)-q(0))=(sqrt(3)+1)/2
                q(1)=[(sqrt(3)+1)/2]=[1+(sqrt(3)-1)/2]=1
                N=1/((sqrt(3)+1)/2-q(1))=sqrt(3)+1
                q(2)=[sqrt(3)+1]=2
                N=1/(sqrt(3)+1-q(2))=(sqrt(3)+1)/2
                          .
                          .
                          .
                          .
               結局,sqrt(3)=(q(0),q(1),q(2),....)=(1,1,2,1,2,1,2,....) となる。
       これを有理数の形に表せば、次のようになる。

                               1
                        1+1/1=        2
                  1+1/(1+1/2)=      5/3   =1.666666667
              1+1/(1+1/(2+1))=      7/4   =1.750000000
                         .   =    19/11   =1.727272727
                         .   =    26/15   =1.733333333
                         .   =    71/41   =1.731707317                       
                         .   =    97/56   =1.732142857                                          
                         .   = 265/153   =1.732026144
                         .   =  362/209   =1.732057416                       
                         .   =  989/571   =1.732049037
                         .   =1351/780   =1.732051282 
                         .   =3691/2131   =1.732050680 

            アルキメデスの近似値265/153,1351/780が現れている、流石 アルキメデス!
 

      さて、今回の問題のはsqrt(2)の連分数を求めれば良いので、次のようになる。

      sqrt(2)=1.414213562
 

            1=           1
                  3/2=  1.500000000
                  7/5=  1.400000000
                17/12=  1.416666667
               41/29=  1.413793103
                99/70=  1.414285714
              239/169=  1.414201183
              577/408=  1.414215686
             1393/985=  1.414213198
            3363/2378=  1.414213625
 
          基本解による方法と同様に、x=41,y=29 からn=35 となる。
           上記連分数は奇数番目がx2-2y2=-1に、偶数番目がx2-2y2=1に対応しています。
     この様に振動しながら真の値sqrt(2)に収束していきます。 



     ラマヌジャンの数論に関する仕事を、こちらで以前に採りあげています。


           3. x3+y3+z3=w3のパラメータ解(2005.4.26)

           7. インド人もビックリ!?(2005.6.16)

          15.  タクシーナンバーと楕円曲線   (2005.9.25)



 


HOME