1.はじめに

昔、数学者ハーディーが病院に入院しているラマヌジャンを、見舞いに行く時に乗ったタクシーの
ナンバーが、1729であることをラマヌジャンに話したところ、それは2つの3乗数の和に表される数で
2通りに表現できる最小の整数である、と答えたところからタクシーナンバー問題として有名になりました。

1729=10^3+9^3=12^3+1^3

現在では6通りまで表現できる最小の整数がわかっているようです。([2]を参照)
最小の整数を求めるのは膨大な時間とテクニックが要るので、ここでは楕円曲線の理論を応用して
最小ではない解を簡単に求めてみたいと思います。



[1] J.h.silverman/J.Tate: 楕円曲線論入門
[2] http://euler.free.fr/taxicab.htm                  
       
2.理論

一般に、曲線x^3+y^3=m と 曲線v^2=u^2-432*m^2の間には次の様な関係式があります。
また、v^2=u^2-432*m^2の様な曲線を楕円曲線といいます。

(1). 曲線x^3+y^3=m =====> 曲線v^2=u^2-432*m^2
     u=(12*m)/(x+y)
     v=36*m*(x-y)/(x+y)

(2). 曲線x^3+y^3=m <===== 曲線v^2=u^2-432*m^2
     x=(36*m+v)/(6*u)
     y=(36*m-v)/(6*u)

楕円曲線の理論には加法定理があり、1つの有理点から次々と無数に有理点を得ることができます。
詳細は[1]を参照して下さい。
今回は加法定理を使って複数の有理点を求めて、x^3+y^3=mの複数解を求めてみようと思います。

すなわち、x^3+y^3=mの有理解をp1(a1/c1,b1/c1),p2(a2/c2,b2/c2),p3(a3/c3,b3/c3)とすると

(a1/c1)^3+(b1/c1)^3=(a2/c2)^3+(b2/c2)^3=(a3/c3)^3+(b3/c3)^3=m となります。

ここで(c1*c2*c3)^3を上式に掛ければ、x^3+y^3=m*(c1*c2*c3)^3の整数解が得られる事になります。

この様に、曲線v^2=u^2-432*m^2の有理解を求め、変換式でx^3+y^3=mの有理解を求めれば、最終的に
x^3+y^3=m*(c1*c2*c3)^3の整数解を求めることが出来るわけです。

尚、p2(u2,v2)はp1(u1,v1)の2倍点として求めます。
2倍点とはp1(u1,v1)における接線が、楕円曲線と交わる他の交点として求めます。
しかし、例えばp1(u1,v1)がx軸上にある時は接線はy軸と平行になって交点がなくなります。
射影平面では無限遠点(五十六億7千万光年?の彼方にあると私は信じている)で交わるのですが。

具体的な計算例を次に示します。


3.計算例

x^3+y^3=7の有理解から、異なる3通りの正の整数解を求めてみます。
まず、x^3+y^3=7の有理解の1つがp1(2,-1)である事はすぐ判ります。
変換式により,楕円曲線v^2=u^3-432*7^2に変換します。
最初の7つの有理点は次の通り。

   u1=84                   v1=756
   x1=2                    y1=-1

   u2=28                   v2=28
   x2=5/3                  y2=4/3

   u3=57                   v3=-405
   x3=-17/38               y3=73/38

   u4=1708                 v4=-70588
   x4=-1256/183            y4=1265/183

   u5=116004/841           v5=39350556/24389
   x5=90271/40049          y5=-65882/40049

   u6=27721/900            v6=2422981/27000
   x6=9226981/4989780      y6=4381019/4989780

   u7=114614724/2725801    v7=-1037753178084/4500297451
   x7=191114642/2252725111 y7=4309182809/2252725111

この中でx>0,y>0の点は(x2,y2),(x6,y6),(x7,y7)であるから

(5/3)^3+(4/3)^3=(9226981/4989780)^3+(4381019/4989780)^3
               =(191114642/2252725111)^3+(4309182809/2252725111)^3 
               =7
        
分母を払えば

18734337840609300^3+14987470272487440^3=20785851797419891^3+9869231513068109^3
                                       =953620018358760^3+21501874196692020^3


となります。

すなわち、2つの3乗数の和で、3通りに表されることが出来たわけです。
この例では、楕円曲線の有理点は無数にあるのでx^3+y^3=mの有理解も無数にあることになります。





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