シャトー・ジュン
〜グッドデザイン賞〜
外観

勝沼町営の施設でワイン好きにもっとも有名といえば、「ぶどうの丘」で異論はないでしょう。
勝沼町中心通りからその葡萄の丘へと坂を登っていくと、左手に古い醸造タンクが。その隣にある木製の看板には「シャトージュン 蔵元直売」と書いてあるのが見えます。

敷地内には白い壁に赤い屋根の販売所、ワイナリーの前には椅子や机。そして目を引くのはガラス張りの正面入り口で、扉だけが木製という非凡な玄関です。
全体にデザインを重視した外観のワイナリーという印象は、細部を見ていくほどに強くなるでしょう。
歴史
親会社はアパレルメーカーにして、日本初のディスコ経営やフィットネスジム運営に乗り出したことでも知られる株式会社ジュン。ジュングループには数々の会社が傘下に存在していますが、唯一つ食品会社として参画しているのがシャトージュンです。
創業は1979年で、食品関連会社でない異業種資本によってワイン醸造を開始したワイナリーの第一号となりました。
もともとは服飾だけでなく、生活全体をデザインするという企業戦略の先鞭となるのがこのワイナリーでしたが、後続に造られる予定であったパンなどの事業は他会社で同じようなことを行う会社が現れたため中止となり、壮大な戦略は頓挫。シャトージュンだけがジュングループの中で異彩を放つ会社として残ったのです。

生産本数は約2万8千本と多くはありません。親会社の資本のわりには・・・と思えますが、これは一般に広く販路を狙っているわけではなく、グループ内での贈答品などが主な販売先となっているため。例えワイナリーであろうとジュングループの名を冠するのだから、いうことかラベルのデザインは全てジュングループのデザイナーが行っているところはこの会社ならではです。
ワインは、ファッションなどに興味がある人やジュンの顧客に向けて造ることもあって飲みやすさを重視。ヴィンテージ記載をしている銘柄は少なく、輸入ワインのブレンドを含め安定した味わいのワイン生産に比重を置いています。ただ、将来的には個性あるワインも平行して生産していくために自社畑などでヨーロッパ品種を栽培しており、ワイナリーの存在感を品質で示すことに不熱心というわけではありません。
しかし最もユニークなところはラベルやボトルデザインはどこにも負けないものを造るというのが企業目標の一つとなっている点で、これに沿った形で販売経路などを組み立てていることでしょう。ワインの展示方法を指定できない(※)問屋・酒販店への卸しはなく、あくまで独自の販売ルートの確立にこだわるところなどはその一端といえます。

(※)この発想を実際の販売経路の選定に持ち込むあたり、アパレルメーカーである親会社の影響を色濃く継いでいます。
施設の概略
販売所内では自社製ワインなどの販売、また軽食も出しています。


葡萄畑
ワイナリー近くの菱山地区に葡萄畑があり、広さは30アールほど。見学を希望するならワイナリーの方に場所をたずねてみてください。
この畑は栽培が始ったのが2001年からと新しく、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、セミヨンが植えられています。現在、この畑からヴィンテージを刻印した個性あるワインを造るべく研鑚が続けられており、地域的にも中央葡萄酒のキュヴェ三澤の白(シャルドネ)を産みだしている場所なので期待大。
いくつかの銘柄が既にリリースされはじめ、その内容も徐々にレベルアップしており今後の進展が期待されます。
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直営レストラン
カレーなどの軽食をワイナリー内で販売しています。
※まだ食べていないので、いずれ詳細を記述します。

テイスティング
販売所にいる社員の方に頼めば販売所内で無料でテイスティング可能です。ほとんどのワインは試飲することができます。

シャトージュン セレクト 白:1260円。甲州のワインで、香りは少なめで心なしか金属的なところも。甲州としても苦味が強いので、単独での飲用でなく食事と一緒の方がよいかも。

EXTRA SELECTION 白:2100円。甲州のワインで、華やかな香りと軽めの親しみやすい味わい。ドライで、コクはあまりないものの酸味のしっかりしたワインとなっていました。

シャルドネ2004:価格は2625円。明瞭な樽の香り、その中にレモンなどの柑橘系の香りがあります。アタックは少し刺激的で含み香にも樽香がしっかりついています。味わい的にはやや辛口ぐらいの内容ですが酸味があるので、バランスは良好。

EXTRA SELECTION 赤:2100円。カベルネ・ソーヴィニヨンとベリーAのワイン。ししとうやピーマンのような青くさい香りと、軽いゴム臭。酸味は穏やかでタンニンもおとなしめの繊細な赤ワインでした。カベルネは輸入ワインを使用。

低〜中価格帯の赤ワインに海外ワインがブレンドされているものがあるので、純国産にこだわる場合は原料ラベルを見てからの購入がよいでしょう。
外観  歴史  施設の概略  葡萄畑   直営レストラン  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
初めて訪れた時から現在までラベルのセンスは秀逸。あるものは心なごませるものであったり、前衛的であったり、または絵画であったりとバリエーションは広く、かつ記憶に残るものも多々あります。アパレルメーカーのジュングループの名をおとしめないだけのもので、ともすると垢抜けない国産ワイン(大手を含む)のラベルの中で平均値では群を抜いて優れたデザインを誇っています。
画家ミレーの代表作を写した「アートラベルシリーズ」などは主要な販売先が美術館!!
私のようにワインの中身が好みかどうかを考えているだけの愛好家の想像を越えたところに活路を見出すその手法には驚きを隠せません。

購入方法
 

ワインの販売はワイナリー内の販売店と、公式ホームページからの通販がメイン。前述のように一般流通にはあまり乗っていないため、現地以外では直接の入手は難しいかと。「ぶどうの丘」では販売されています。

ワイナリーアクセス
アクセスに関してはシャトージュンの公式ホームページに詳しく説明されているのでそちらを御参照下さい。

総論
母体であるジュングループの規模や広さを考えると、かなりバックボーンのしっかりしたワイナリーの一つ。
見た目を最重要視していることもあって酒屋など自社で展示方法が管理できない場所では売らないという営業方針、ジュングループ唯一とはいえ食品部門でありながら服飾品と同じように贈答や展示会の販売商品の対象となることを前提にしているなど、基本からまったく独自のスタイルを確立しているワイナリーという点は見逃せません。滋賀県のヒトミワイナリーも親会社は服飾関連ですが、営業戦略にこれほど明白に親会社の色が出ているということはないので、その意味でジュンは異色の醸造所といえます。

テイスティングの項でも書きましたが、ラベルやボトルのデザインはさすが。ラベルの高級感とワイン自体の値段もある程度比例しており、低価格のものは比較的おとなしいものですが、高価格帯のラベルやボトルは一目見て記憶に残ります。
そのラベルの内容をそのまま反映して欲しいところですが、ワインの味わいはやや個性にとぼしく強く印象に残ったワインは少ない、または内容に比べて割高感があるという感想を持ったことを告白しなければなりません。ほとんどの白ワインがけっこう糖分を切ったドライな味わいなど特徴もあるのですが改善の余地がまだまだある気がします。


「ワインは飲んじゃえば外見なんか気にならないよ」というデザインへの敬意や造詣がかけらもない私のような人間はともかく、やはりラベルのデザインはボトルを飾るという点や他人に贈答するという点からみると重要な一事です。ワイン自体も私個人はあまりコストパフォーマンスに合うワインとは思わなかっただけで、低品質のワインというわけではありません。

外観の項で書いたように、勝沼のぶどうの丘に行くつもりならついでにいける立地なのは○。内容・外観ともにマニアックな醸造所ではまったくないのでワインにさほど詳しくない人などと気軽に行くのもよいでしょう。
初見でワインボトルと思う人はまずいない、
前衛的なデザインのボトル。販売終了のため入手困難な商品の一つ。
社名 シャトー・ジュン(株)
住所 山梨県甲州市勝沼町菱山字矢羽根3308
電話番号 0553-44-2501
取寄せ オンラインショッピング有り HP http://www.chateaujun.com/
自社畑あり 契約栽培畑あり ツアー等 訪問自由
テイスティング可(無料)
栽培品種 甲州、シャルドネ、ベリーA、メルロー、
カベルネ・ソーヴィニヨン、他
営業日 7月のみ水曜休業、他は不定休
営業時間: 9:00〜17:00
★  2004年9月8日、2007年2月25日
備考:ぶどうの丘ふもと、ジュン・グループ所属、ワイナリー内に軽食あり
シャトージュンのラベルデザインを称えるグッドデザイン賞の賞状。なかなか出会えない賞状の一つです。
銘柄: シャトージュン セミヨン 2005
生産元: シャトージュン
価格: 2100円
使用品種: セミヨン
備考 現在では珍しい辛口セミヨンのワイン。
まさにセミヨンというムスクの豊かな香り、またわずかに柑橘系の香りがあります。味わいに厚みがあり、含み香もなかなか豊か。しっかりとした酸味とかるい苦味のバランスもよく、食中酒として合格。品種ごとにみるならば日本でも最高クラスのセミヨンのワインで、そこらの同価格のシャルドネにも負けません。
海産物などとも合わせ易く、個人的にはジュンのシャルドネよりこちらのほうが好きです
飲んだ日: 2008年2月25日