『歴史評論』2024年4月号(第888)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) April 2024 vol.888

特集/近現代国家と国葬・公葬 “Modern State (Nation) and State/ Public Funerals”

定価 1,045円  


 安倍晋三元首相の「国葬儀」から、一年半あまりの年月が経ちました。「国葬儀」の発表から実施に至るまで、法制度上の問題や、国会での審議を経ずに国費で葬儀を行うことの妥当性、はたまた、国が特定個人への哀悼を国民へ要請することの是非など、政府や大手メディア、SNSで、様々な意見や議論が交わされたのは、多くの方の記憶に残っているところでしょう。その一方で、日本や諸外国で、国葬やそれに準ずる葬儀(公葬)が、いつから、どのような経緯によって実施されるようになり、また、なぜそれがいま中断・廃止・存続しているのかについての検証は、全体として不十分であった感は否めません。どのような人物が国葬・公葬になったのか、国葬・公葬となる基準は何だったのかさえ、あまり知られていないのが現状です。総じて、「国葬儀」をめぐる一連の騒動は、日本におけるこの方面の研究の低調を、はからずも浮かび上がらせたのではないでしょうか。
 本特集では、これまで日本および諸外国で実施されてきた国葬・公葬について、六名の方にご検討いただきます。各国の研究状況や、国葬・公葬が行われる場が持つ意味とその変化、栄典制度との関係、報道のされ方、ジェンダーの問題など、提示される論点は実に多様です。国葬・公葬の対象や基準が、国や時代によって違いがあることも、各論考からあきらかになるでしょう。本特集が、国葬・公葬に関する研究を活性化させると共に、いつかまた出てくるかもしれない国葬実施計画に向き合うための一助となることを願います。  (編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
論   文 近現代日本の国葬に関する研究の現状と課題
Current Issues in the Studies of State Funerals in Modern Japan
宮間純一
MIYAMA Junichi
論   文 戦後の国葬論議と栄典
Debates in Post-WW II Japan on the Institutionalization of State Funerals and Honors
前田修輔
MAEDA Shusuke
論   文 近代日本の国葬にみる「未亡人」像
Examining the Representation of "Widows" in State Funerals of Modern Japan
胡安美
HU Anmei
論   文 近現代イギリスにおける国葬
State Funerals in Modern Britain
中村武司
NAKAMURA Takeshi
論   文 フランス共和政のパンテオン葬
State Funerals and the Pantheon of the French Republic
長井伸仁
NAGAI Nobuhito
論   文 韓国の公葬とメディア言説
Public Funerals and Media Discourses in the Republic of Korea
森類臣
MORI Tomoomi
科学運動通信 第一八回教科書シンポジウム参加記
土肥有理
書   評 上村正裕著『日本古代王権と貴族社会』
鈴木琢郎
書   評 二星祐哉著『古代王権の正統性と国忌・荷前』 
佐藤亮介
書   評 井上正望著『日本古代天皇の変質』
海上貴彦
書   評 金子肇著『近代中国の国家と商人』
飯塚靖
書   評 平井和子著『占領下の女性たち』
金富子
紹   介 吉村武彦著『日本古代国家形成史の研究』
堀川徹
紹   介 倉本一宏・加藤友康・小倉慈司編著『「小右記」と王朝時代』
黒羽亮太
紹   介 『出雲国造北嶋家文書』
徳永健太郎
紹   介 山口みどり・弓削尚子・後藤絵美・長志珠絵・石川照子編著『論点・ジェンダー史学』 
大室恵美

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