『歴史評論』2025年6月号(第902)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) June 2025 vol.902

第58回大会報告特集/歴史認識のポリティクス―地域・国家・市場―V  “The Politics of Collective Memories and Historical PerceptionsV”

定価 1,045円  



 第58回総会及び大会は、2024年11月30日、12月1日の両日に、関西大学千里山キャンパスにおいて、前年度から引き続きオンラインを併用したハイブリッド形式で開催されました。全体テーマは2022年から議論を行ってきた「歴史認識のポリティクス―地域・国家・市場―」の最終年度です。本号はその報告特集です。
 第一日目は、「歴史認識を共有するとはどういうことか」をテーマとして、地域社会における歴史認識と編纂物を含む歴史資料との関係を、京都における「西京神人」と近世多摩地域における村役人層という二つを事例に、長期にわたって見通す報告がなされました。また、歴史研究者が史料所蔵者や地域社会の人々とどのように向き合うべきかなど、前年の大会テーマであったパブリック・ヒストリーにつながる議論も深められました。
 第二日目は、「偽文書・偽史にどのように向き合うか」をテーマに、近年の歴史学で話題となった偽書や偽文書、歴史修正主義と法的ガバナンスの問題をとりあげました。日本史における椿井文書やアメリカのルーン碑文を事例に偽史と学問との関係が検討されるとともに、そのような偽史を受け入れる社会や歴史認識との関係や、記憶をめぐる現代的課題などが議論の対象となりました。
 学問の問題としてだけではなく、現代社会が抱える課題とも関連した報告と議論を是非お読みください。(編集委員会)

  *  特集にあたって
【第1日目テーマ 歴史認識を共有するとはどういうことか】
 What Does It Mean to Share a Historical Understanding?
論  文 「歴史」の共有と継承 ―京都 西京神人を例として―
Sharing and Passing along “History”
三枝暁子
MIEDA Akiko
論  文 近世後期における歴史認識の生成・展開とその特質
Generation and Development of Historical Understanding in the Late Edo Period
岩橋清美
IWAHASHI Kiyomi
コメント 歴史認識の共有(共創)とは
河野未央
  大会第1日目 討論要旨 小野塚航一
   
  【第2日目テーマ 偽文書・偽史にどのように向き合うか】
 Forged Documents and Forged History
論  文 椿井文書の史学史 ―一井文書・笠川文書との比較を踏まえて―
Historiography of the Tsubai Documents
馬部隆弘
BABE Takahiro
論  文 歴史の〈法的ガバナンス〉の行方
Legal Governance of History: Denialism and Memory Laws
武井彩佳
TAKEI Ayaka
論  文 アメリカのルーン碑文 ―移民・偽史・想像力―
American Runes: Immigrants, Fake History, and Imagination
小澤実
OZAWA Minoru
  大会第2日目 討論要旨 田中聡
   《第58回大会報告を聞いて》「歴史認識を共有するとはどういうことか」を考え直す 白井哲哉
   《第58回大会報告を聞いて》〈真〉と〈偽〉の境界線 オリオン クラウタウ
   第58回大会参加記 古畑侑亮
佐藤一希
星優也

紹  介 吉田豊子著『中国民族政策の歴史的研究』 島田美和
紹  介 家永真幸著『台湾のアンデンティティ』 森巧
声  明 国文学研究資料館アーカイブズ学研究分野の廃絶の危機に警鐘を鳴らし、 機能充実・強化を訴える声明
声  明 ガザ危機の深刻化を憂慮し、即時停戦、国際法遵守、占領終結を求める声明
 

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