『歴史評論』2025年12月号(第908)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON)  December 2025 vol.908

特集/台湾植民地130年―連続と断絶の視点から― “130 Years of Colonial Rule in Taiwan ”

定価 1,045円  


 明治維新を経て近代国家となった日本は、アジアでの覇権をめざし勢力拡大を企図しました。一八九四年に朝鮮半島の支配権をめぐって起きた日清戦争で日本は清国に勝利し、その講和条約である下関条約によって台湾を獲得しました。これにより一八九五年には台湾総督府が設置され、以後、五〇年にわたる台湾での植民地統治が行われました。台湾での経験は、その後新たに植民地となった朝鮮、中国各地や東南アジアの占領地に影響を与えました。
 植民地台湾では、台湾総督府による「開発」が行われる一方、日本の植民地支配に対する地域エリートや民衆の抵抗が起き、それらを統制する目的で地方統治体制が変化しました。台湾の住民は漢人と先住民族で構成されており、先住民族は植民地支配に加え、台湾総督府から「掃討」と「統制」の対象とみなされました。このように台湾では複雑な社会構造のもと、植民地統治が行われていました。
 本特集ではこのような問題意識のもと、台湾「開発」を鉄道敷設の視点、台湾の植民地化と抵抗を植民地戦争の視点、先住民族政策をジェンダーの視点それぞれからみつめ、植民地後の台湾と中国大 陸との関係、台湾人としてのアイデンティティが確立されていく過程にも目を向けます。さらに「歴史の眼」では台湾の貧困問題にも踏み込んでいきます。本特集を通じて台湾植民地支配の歴史の連続 と断絶を可視化し、植民地支配開始から一三〇年を経たいま、台湾と日本との関係を再考していきたいと思います。(編集委員会)

  *  特集にあたって 編集委員会
論  文 帝国日本の鉄道敷設と台湾統治
Railway Development and Colonial Rule in Taiwan under Imperial Japan
老川慶喜
OIKAWA Yoshinobu
論  文 日本の台湾植民地化と植民地戦争
The Japanese Colonization of Taiwan and the Colonial War
新田龍希
NITTA Ryuki
論  文 植民地統治と台湾原住民の「母系制」
Colonial Rule and the Matrilineal System of the Taiwanese Indigenous Peoples
松田京子
MATSUDA Kyoko
論  文 戦後台湾の民主化と歴史認識の変容
Democratization and the Transformation of Historical Consciousness in Taiwan after WWII
何義麟
I-Lin Ho
歴史の眼 台湾におけるホームレス支援
Homeless Assistance in Taiwan
橋本恭子
HASHIMOTO Kyoko
書  評 榎本淳一著『隋唐朝貢体制と古代日本』
篠崎敦史
書  評 手嶋大侑著『平安時代の年官と地方社会』
告井幸男
書  評 吉田ゆり子著『周縁化された芸能者と近世社会』
村上紀夫
書  評 北浦貴士著『ビジネスリーダーの会計史』
三科仁伸
追  想 芝原拓自先生を偲ぶ
能川泰治
  * 加盟組織の活動報告

  * 加盟組織の機関紙案内

 

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