『歴史評論』2025年7月号(第903)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON) July 2025 vol.903

特集/鎌倉時代史研究の現在 “Current Research on the History of the Kamakura Period”

定価 1,045円  


 一昔前の高等学校で使用されていた日本史の教科書を紐解くと、鎌倉時代に相当する章のタイトルには、「武家社会」「武士」という言葉が多く用いられていました。現在でも、「鎌倉時代とはどのような時代か」と問われた時、「武士の時代」「武家政権が初めて開かれた時代」などと答える人は多いのではないでしょうか。2009年に「鎌倉時代をどう捉えるか」(714号)という特集を組んだ本誌においても、一部で朝廷の中下級官人を扱う論考があるものの、やはり鎌倉幕府政治史、地頭・御家人制を扱う論考と、村落史や百姓の法的地位を扱う論考で構成されています。
 これに対し、近年の鎌倉時代史研究では、武士や鎌倉幕府の存在を、女院・貴族を含む王権や国家との関係から相対化する視点や、宗教勢力や在地勢力などから成る地域社会との関係で幕府や武士のあり方を見直す視点が成熟してきています。こうした流れを受けて近年使用が始まった日本史探究の教科書の中には、章や節の見出しに鎌倉幕府を用いないものや、用いる場合でも朝廷との関係を明示するものが登場しています。
 本特集は、そうした現状をふまえ、主に二つの視点から、鎌倉時代史像の再構築を試みます。一つは貴族社会・王権論からの視点、もう一つは地域社会論からの視点です。こうした視点を設けることで、武士が武力によって一方的な支配を確立した時代とするイメージが克服され、装いを新たにした鎌倉時代史像が定着することを願います。(編集委員会)

   *  特集にあたって 編集委員会
論   文 鎌倉期の王家・摂関家と貴族社会
The Imperial Family, The Fujiwara Regent Family, and Aristocratic Society of the Kamakura Period
海上貴彦
UNAKAMI Takahiko
論   文 鎌倉初期の公武関係と在京武士
Bushi in Kyoto and the Relationship between the Imperial Court and the Kamakura Shogunate in the Early Kamakura Period
長村祥知
NAGAMURA Yoshitomo
論   文 中世武士団の「地域」支配
The “Region” Rule of the Medieval Warrior Bands
田中大喜
TANAKA Hiroki
論   文 鎌倉幕府法の実践と地域社会
Practice of the Kamakura Shogunate Law in Local Communities
佐藤雄基
SATO Yuki
論   文 鎌倉期の荘園制研究と荘官論
Current Research on the Shoen System and Shokan in the Kamakura Period
永野弘明
NAGANO Hiroaki
論   文 門主幼年期における宮門跡の運営と里方 
―文化期の一乗院と伏見宮家を事例に―

The Involvement of the Head Priest’s Family in the Management of Monzeki Temple during His Childhood in Early Modern Japan
石津裕之
ISHIZU Hiroyuki
歴史の眼 ニューカレドニアの独立問題  ―その歴史と現在―
平野千果子
科学通信運動 東山本町陵墓参考地立会調査見学 参加記
阿部大誠
書   評 相原嘉之著『飛鳥・藤原京と古代国家形成』
古内絵里子
紹   介 安井三吉著『孫文 華僑 神戸』
村田省一
紹   介 森山茂徳著『日本近代史のなかの朝鮮』
長田彰文
紹   介 崔誠姫著『女性たちの韓国近現代史』
朝倉希実加
二・一一集会 ―各地の記録
相庭達也・柳原敏明・矢野暁
堀田慎一郎・北泊謙太郎・杉田義

〈声明〉日本学術会議第一九四回総会決定を支持し、国会での熟議を求めるとともに、
日本学術会議法案の大幅な修正または廃案を要求する


 

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