日本近世史は、女性史やジェンダー史の成果に刺激を受けるかたちで、さまざまな身分の女性の存在に光を当ててきました。そうした取り組みの結果、百姓あるいは商人の家における女性の生き方や、性売買を成り立たせる社会構造の解明が進められました。また、幕藩領主の交際と次世代の再生産を担った武家社会の「奥」の重要性も認識されるようになっています。本誌も、2012年7月号では「「奥」からみる近世武家社会」という特集を組みました。
他方で近年では、近世朝廷社会のジェンダーに関する研究成果も蓄積されつつあります。従来の近世朝廷史研究では、政治史的な観点から、男性が作成した諸記録をもとに、江戸幕府との関係性や朝廷機構の解明に重点が置かれる傾向にありました。しかし、基礎的な事実の解明が進展したことに加え、女性史・ジェンダー史の視座を史料読解に組み込むことで、朝廷社会を生きた女性の存在に目が向けられるようになり、朝廷社会独自の「奥」の構造や公武間交際の具体像、朝廷文化の展開などが明らかになっています。
そこで本特集では、朝廷社会の女性を政治・宗教・文化の諸側面から見ていきます。具体的には、未婚の皇女の処遇や、公家の家相続で女性が果たした役割、大名家に嫁いだ公家女性の生き方、朝廷社会における比丘尼御所の位置づけ、女性天皇や女房歌人たちの文化活動を取り上げます。本特集が、近世朝廷社会に生まれた女性について考えるきっかけとなれば幸いです(編集委員会)
| * | 特集にあたって | 編集委員会 |
| 論 文 | 近世の皇女たち ―未婚(独身)の皇女を中心に― Princesses in the Early Modern Period |
久保貴子 KUBO Takako |
| 論 文 | 近世公家社会の再生産 Reproduction in the Early Modern Noble Society |
林大樹 HAYASHI Daiki |
| 論 文 | 近世後期の公武婚と妻の役割 ― 溝口直侯室宗徳院を中心に― A Study on Nobility and Military Marriages and the Role of Wives in the Late Edo period |
石田俊 ISHIDA Shun |
| 論 文 | 近世比丘尼御所と公家社会 ―総持院触留帳の検討を中心に― Bikuni-Gosho and the Noble Society in the Early Modern Period |
岸本香織 KISHIMOTO Kaori |
| 論 文 | 宮廷女性歌人の文化的活動とその役割
Cultural Activities and Roles of Female Court Poets |
盛田帝子 MORITA Teiko |
| 第59回大会準備号 戦争と平和の人類史 |
大会テーマの設定にあたって |
全国委員会
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| 《第1日目》「「戦争と平和」研究の立脚点 叛乱と事変の一九三〇年代 |
加藤陽子
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| 《第1日目》「「戦争と平和」研究の立脚点 ガザのジェノサイドと歴史の破壊 |
岡真理
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| 《第2日目》「戦争と平和」研究の歴史的諸相 虚像の統一王朝・漢 |
阿部幸信
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| 《第2日目》「戦争と平和」研究の歴史的諸相 古代日本の戦争と「人民」 |
田中聡
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| 《第2日目》「戦争と平和」研究の歴史的諸相 戦国期土豪の戦争参加と地域の平和 |
長谷川裕子
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| 書 評 | 勝浦令子著『日本古代の穢れ観と外来信仰』 |
片岡耕平 |
| 書 評 | 愼蒼宇著『朝鮮植民地戦争』 |
荒川章二 |
| 書 評 | 歴史学研究会編『ロシア・ウクライナ戦争と歴史学』 |
麻田雅文 |
| 紹 介 | 石上英一・加藤友康・田島公・山口英男著『読み解き古代史料』 |
志村佳名子 |
| 紹 介 | 荻野富士夫・歴史教育者協議会編『治安維持法一〇〇年』 |
森田喜久男 |
紹 介 | タデウシュ・パンキェヴィチ著/田村和子訳『クラクフ・ゲットーの薬局』 |
田中直 |
| * | 〈会告〉会費口座振替に関するお知らせ |