『歴史評論』2026年3月号(第911号)/ Historical Journal(REKISHI HYŌRON)  March 2026 vol.911

特集/歴史資料の保全と継承 “Preservation and Transmission of Historical Materials”

定価 1,045円  


 近年、大きな自然災害に伴い、地域の歴史資料が被害を受け、多くの人々がその保全に関心を寄せています。『歴史評論』でも二〇二一年七月号より「二一世紀の災害と歴史資料・文化遺産」と題するリレー連載(全一三回)を掲載しました。こうした自然災害に加え、引き受け先がなく、処分や散逸、死蔵等の危機に直面する歴史資料について、聞き及ぶことも多くなりました。
 一方で歴史研究では、文字資料だけでなく、視聴覚資料やオーラルヒストリー等、多様な歴史資料の意義が見出されています。歴史学が対象とする資料の多様化は、とりわけ現代史研究で顕著であり、公的機関が推進する公文書の電子的管理も、歴史資料の保存や継承を複雑化させるでしょう。このように歴史資料の形態や、管理のあり方が変化する中、歴史資料を次世代に継承する基盤が、現代社会に十分整っているでしょうか。当面の課題に向き合いつつ、将来的に目指すべきことについて、考える機会を持つことが重要だと考えます。
 本特集は、その第一歩として、歴史資料をめぐる諸課題に実践的に取り組む諸氏の論稿を収録しました。これらの論稿では、日本における「コミュニティ・アーカイブズ」の模索、研究者・民間企業・社会運動が残した歴史資料の整理・継承等が議論されるほか、市民が発行した「ミニコミ」群や、海外で「発見」された歴史資料の保全・公開の軌跡が共有されています。本特集が、この難題に向き合う礎石の一つとなることを願います。(編集委員会)

 *  特集にあたって 編集委員会
論  文 コミュニティ・アーカイブズの模索 ―記憶のかたちをめぐって―
Preserving and Passing on the Shape of Our Memories through Community Archives
下重直樹
SHIMOJU Naoki
論  文 歴史学研究者アーカイブズの特質と意義 ―「啓静文庫」の保全活動を事例に―
Significance and Characteristics of the Archives of Historians  
工藤航平
KUDO Kohei
論  文 社会運動資料の保全と継承 ―三里塚闘争関係資料の整理を例として―
Preservation and Inheritance of Social Movement Materials
森脇孝広 
MORIWAKI Takahiro
論  文 アーカイブズを創り、育てる市民運動 ―「市民アーカイブ多摩」の系譜―
A Citizen Movement Creating and Nourishing Archives
杉山弘
SUGIYAMA Hiroshi
論  文 「カシュガル文書」との二〇余年 ―発見から画像データベースの公開まで―
Over Two Decades with the "Kashgar Documents"
菅原純
SUGAWARA Jun
歴史の眼 資料館紹介:兵士・庶民の戦争資料館
About the War Museum of Soldiers and Common People 
小野美里
ONO Misato 
歴史の眼 地域に残る戦後史資料の保存運動 ―大井医院・大島慶一郎関係資料をめぐって―
A Local Campaign to Preserve Postwar Historical Materials
鬼嶋淳
KIJIMA Atsushi
科学運動通信 二〇二五年度陵墓懇談会(東京・宮内庁書陵部)参加記
森田喜久男
書  評 成清弘和著『律令家族法の研究』
里舘翔大
書  評 木村茂光著『歴史と文学の王朝時代史』
今正秀
書  評 古川祐貴著『近世日本の対朝鮮外交』
木村拓
書  評 石田千尋著『日蘭貿易の歴史的展開』
阿曽歩
 * 二〇二六年度 歴史科学協議会総会報告

 

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