それから数時間後
「何度いったらわかるんだぁ!!!」
突然大きな声が聞こえてきた。
「な、なんだ?」
「おまえの顔はみたくないと何度もいっているだろう!さっさとでていけ!」
安田がまた吠えている
「すいません、おとうさん」
「お・と・う・さ・ん・・・」
「ぷちっ」
安田の血管が切れた。
「いいかげんにしろ!おまえにおとうさんなどとよばれる筋合いはない!!!!!」
「静香!おまえもそいつとは早く縁を切れ!もう二度とここにくるんじゃない!!」
安田は病院内に響く声で怒鳴り散らしている。
「ま〜たはじまったか・・・」
英一は室内を見渡した。部屋には安田とその娘の静香、忠志しかいない。
「どうしてあんな綺麗な女性が安田の娘なのか不思議でしょうがない」
英一は静香の顔を眺めていた。
「行きましょう、忠志さん」
静香は忠志の腕を引っ張って病室から出ていった。
「おとうさん、また来ます」
「二度とくるな!」
「看護婦さん!塩!塩!」
近くには看護婦はいなかった。
「安田さんどうしたんですか?」
英一は安田に問いかける。
「ふんっ、またやつが来やがった」
「彼ですか?」
「そうだ、思い出すだけでも腹が立つ!」
「そんな悪そうに見えませんけどねぇ」
「いいや、極悪人だ。くそっ、あいつはワシが早く死ぬのを待っているんだ」
「死ぬ?」
「そうじゃ、保険金が狙いなんだ、絶対そうに決まっている」
「保険金?」
「だからうちの娘と結婚したがっているんだ」
「ホントの話ですか?」
「あくまでも推測だが、絶対そうだ!」
「ドラマみたいな話ですね」
「くそ〜、何とかしなければ静も危ない」
「あら〜、どんどんエスカレートしていくな、このおやじ…」
「ん、なんか言ったか?」
「いや〜何でもないっすよ、ははは…」
と、その時看護婦が入って来た。
「また、やってるんですか?」
看護婦の由美子だった。
「え〜い、ほっといてくれ」
安田は腕を組んで外を見ている。
「はぁ〜、静かにして下さいね。ここは病院なんですから」
「ふん」
由美子はあきれている。
「看護婦さ〜ん、毎日こうなんですか?」
英一は静かに看護婦に話しかける。
「そうよ、まいっちゃうわ」
「げ、っていうことは明日も明後日もこんなことおこるんですか」
「たぶんね」
「へんな部屋きちゃったな〜」
「樋山さん体温はかりますから体温計お願いします」
「かくっ、わかりました」
英一の気力はなくなった。
それから数時間後…
「あー、暇だ、暇でしょうがない」
英一は外を見た。
「ミーン、ミン、ミン、ミーン…」
「ここはクーラーが聞いているから気づかなかったけど、外はものすごく熱そうだな」
「今ごろ、やつらはまた懲りずにナンパでもしてんだろうな…」
「…樋山さーん」
誰かが英一呼んでいる。
「はーい」
「樋山さんにお客様です。」
看護婦が英一に伝えにきた。
「はい。ま、まさか、やつらまたからかいにきたのか?」
「よう、英一。まだ寝てんのか?とかいって…。ははは…」
「どーぞこちらです」
「あ、もう来たんですか」
「失礼します」
「女性…」
英一の前に女性が現れた。
「はじめまして、英一さんですね」
「あ、あなたは誰ですか?」
「私は手術科の濱田 佳子です」
「手術科?俺になにか?」
「私はあなたに、伝言を伝えにきました」
「伝言ってまさか、手術ですか?」
「いいえ、違います」
「あなたに伝えなければならないことです」
「それって、かなり重要なことですか?」
「はい、あなたにとって、とても重要なことです」
「こころの準備は必要かな?」
「ええ、聞いててください」
「あやしいな」
「よろしいですか」
「ど、どうぞ」
「あなたは、ここを2日後に退院します。そして退院後ある一人の老人に出会います」
「そして、その老人の言うことに"YES"と答えてください」
「それから数日たった後、また老人と出会います」
「そして、その老人はまたメッセージを残して息を引き取りますが、そのメッセージだけはしっかり覚えておいてください」
「えっ?その話って・・・」
「時が立てばわかります、でわ」
「あっ、ちょっとまて!」
濱田は言葉を伝えた後、病室から姿を消した。
「何だよ、それ・・・?」
ちょうどその時廊下を歩いている看護婦がいたので話しかけた。
「看護婦さん、今出ていった女の先生を呼んでください」
「先生?」
「濱田先生です!手術科の!今案内してくれたじゃにですか!」
「???」
「え!そんなはずはない。廊下にいませんか!」
「ええ、誰も」
「本当に消えちまったのか?なんでおぼえてないの?」
「大丈夫ですか」
「あ、すいません。勘違いかも・・・」
(それはこっちの台詞だよ)
英一はすばやく切り返した
「静かにして下さいね」
「はい、気をつけます」
英一はベットに横になった。
「うそだろ。今のは夢なのか?」
「まあ、三日後にすべてわかるだろう」
そのころ先程の看護婦は・・・。
「落合さん手術科の濱田先生ってご存知ですか?」
「えっ、手術科の濱田・・・」
「どうしたんですか?」
「いいえ、濱田という先生はこの病院にはいないわ」
「202号室の患者さんがその方の名前をおっしゃっていたんで・・・」
「そ、そう」
「夢でも見ていたんですかね」
「そうかもしれないわね」
数時間後・・・
「今日は変な1日だったな・・・」
英一は 天井を見上げた。
「さっきのはいったい・・・。何物なんだろう?」
「ピコピコ」
「やった〜!逆転ホームラン!」
「さすが、イヂロー!」
「うるせー!もう夜だぞ静かにしやがれ!」
「・・・・」
「・・・・」
「キュッキュッ・・・」
ナースシューズの音がこちらに近づいてきた。
「どうしました?」
「なんでもありません」
「静かにしてくださいね」
「はははははは」
康輔は突然笑い出した。
「うるせーっていってんだろ!大声出すな!」
「はっはっはっはっ・・・」
康輔はまだ笑っている。
「康輔君、静かにしてね」
康輔は看護婦のことを無視している。
「すべては俺の計画どおりだ・・・」
「はぁ?なんだって?」
「ついに頭がおかしくなったか?」
「今にみていろ!あと2日だ・・・」
「何があと2日なんだ?」
「康輔君、静かにしてちょうだい」
「ははははは・・・」
「看護婦さん、こいつ、ついに頭おかしくなったみたいですよ」
「ははははは・・・」
康輔はまだ笑っている。
「もう、いいかげんにしなさい!」
「ん?そういえば、後2日とかいってたな」
「ははははは・・・」
「おい康輔!今、後2日といったな?」
「ああそうさ、あと2日だ。楽しみだな」
「何が起こるんだ?」
「それは、2日後にわかるよ」
「くそー、教えないつもりか」
「ゲーム開始だね」
英一はベットから降りようとした・・・。
「ゴーーーーーーーーーーーーン」
「うおーーーーーーーーーー!」(吉田(古い)栄作調で)
英一はまたもベットに足をぶつけた。
「英一さん大丈夫ですか?」
「いっ・・・・・・・・」
「ちょっと待っていてくださいね」
看護婦は急いでナースステーションに戻った。
「さらば」
「えっ、おい、どこ行くんだ!そっちは外だぞ!」
「ははははは・・・・」
康輔は笑いながら窓の外に飛び降りた。
「本気かよ・・・」
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