【地方分権改革委員会の第1次勧告】

◎首相のやる気が試される 


 
 地方分権改革推進委員会の第一次勧告が福田康夫首相に提出された。国道や一級河川、農業分野で国の権限の一部を地方に移譲するほか、都道府県から市町村に宅地開発など三百五十九事務権限を下ろすことを明記した。ただ、国道、河川では制度改革を先送りしたことも否定できない。
 一次勧告は、分権改革第二ラウンドの出発点である。二次、三次勧告を経て来年秋の新分権一括法で分権の実が結ぶかどうかは、首相の認識と指導力にかかっていることを忘れてはならない。
 一次勧告のキーワードは、生活者の視点に立つ「地方政府」の確立だ。分権委が発足してからの一年余りの審議は、全国画一行政を打破して地域主権を確立する道筋をどう描くかの道のりだった。
 確かに保育所や老人福祉施設などの施設設置基準を地方が決められるよう権限移譲を盛り込み、まちづくり分野でも都市計画で国と都道府県、市町村の関係を抜本的に見直す方向を示した。
 ところが、最大の焦点の国道、河川では事情が違った。分権委は直轄国道全線の維持・修繕などの管理権限を都道府県に移譲することを要求していた。出先機関の人と財源を地方に移す方向付けができると考えたからだ。だが、これに対する国土交通省の回答は、直轄国道の一部について管理権に加えて、強硬に反対していた整備権も移譲する、だった。
 最終的に勧告は、同省が示した直轄国道(約二万千五百キロ)の15%程度、河川は一級水系(一都道府県内の五十三水系と複数県にまたがる十二水系)の40%程度という地方への権限移譲を、さらに上積みするよう求める内容になった。
 分権委が上積みを求めるのは当然だが、大臣折衝で譲った形を取った国交省の権限維持にかけた意志が分権委を寄り切ったということだ。
 国道、河川とは別の意味で注目されるのは、農地転用の許可権限の移譲などを明確に求めたことだ。ゼロ回答を続けた農林水産省に対する、急務の食料問題、定まらない農政への厳しい注文である。
 勧告はまた「道路特定財源の一般財源化」「消費者行政の一元化」について異例の緊急提言をした。いずれも今の政治状況をにらんで地方の自主・裁量権を求めた提言だ。
 勧告が示した都道府県から市町村への移譲のうち、町村分は二十八事務だけで残りは市だった。市と町村に移譲の格差を付けた形だが、町村の現状を考え「事務を義務付ける」移譲に慎重だったということだ。
 国の権限や事業の移譲は、秋の第二次勧告に決着を持ち越した案件も多い。勧告の趣旨が「骨太の方針」にどう盛り込まれるか。勧告に反発する自民党内の動きも要注意だ。首相の本気度が試される。

(08年5月31日付)