(53)―「夕張市が財政再建団体に」

◎友情、支援に甘えるな

 夕張市は来週早々にも財政再建団体となる。
 石炭から石油への転換という避けられないエネルギー変革があったのは事実だが、疲弊する地域経済の活性化策として夕張市が選択した道は、あまりにも安易で場当たり的だった。  そのつけが明らかでありながら抜本的な解決策を求めなかった地元の責任もさることながら、道や国の対応にも問題はあった。
これまで全国で三百弱の自治体が財政再建団体となっているが、近年では一九九二年二月の福岡県赤池町(現在の福智町)以来のことだ。
 再建団体になると、国の監視下で財政赤字の解消を目指す計画づくりをすることになり、福祉や住民サービスなど独自の事業は大きく制約を受ける。つまり、国という保護者なしには、政策面では独り歩きができない自治体と言っていい。
 夕張市が返済しなければならない負債は約三百五十億円だ。この借金を二〇〇七年度から十八年間で解消する予定だが、実際の負債額はおおよそ六百三十億円にも上る。
 再建計画を進めるために市税や各種手数料の引き上げ、人件費の大幅削減、小中学校の統廃合など住民生活を直撃する合理化策がとられる。
 夕張市の財政破綻状態が明らかになったのは昨年夏だ。それが全国の耳目を集めたのは、今年一月の成人式を若者たちが自主開催してからだ。それ以来、各地からの同情が寄せられただけでなく、かつて人気映画の撮影場所となった縁で「応援映画祭」が開催されたり、植樹祭や音楽祭の開催が予定されるなど支援の輪が広がった。
 地元の再興と活性化を狙った観光・娯楽施設の運営には、「再建請負人」と呼ばれる企業が条件付ながら参加することが決まった。
 地方行革で自治体経営に厳しい対応を求めていた政府が「救済」に乗り出したのも、こうした世論の動向と無縁ではない。
顕在化する一方の「格差」是正は、統一地方選、参院選を控えた安倍内閣にとっても見過ごせない。菅義偉総務相が、高齢者と子どもに配慮した「情と義の間のぎりぎりの再建計画」と言ったことでも明らかだ。
 ただ、忘れてならないのは、これで夕張市の再建計画がどうにか動きだすということで、過去が免罪符を得たわけではない。
 市が当初まとめた再建計画は、ひいき目に見ても夕張市の再建を目指したものとは言いにくかった。行政の不作為、責任が不明なまま市の帳簿上のつじつま合わせで、市民を逆に追い詰めていたのである。それが、全国からの支援、国や道のバックアップで、どうにか再建計画がまとまった。
 加えて市議会の責任も問われなければならない。共同通信社の夕張市議会議員を対象にしたアンケート調査で、市議会が行政のチェック機能を果たしていないことが浮き彫りになった。
 夕張市は友情、支援に甘えないで、自らの責任の重さを自覚しなければならない。(07年3月3日付)


第二論説