21世紀時代の真空管 Nutube でヘッドホンアンプを作ってみた!
その2 特性改善しよう! (副題:ソースフォロアと Nutube と私)

前回までのあらすじ

Nutube を使用したヘッドホンアンプを作り、 馬鹿みたくその音に感動していた(笑)。

前回放置していたソースフォロアの歪みが気になっていました。 というか、気になってしまうともうどうしようもありません!!

そこで、ソースフォロアの誤差を検証することにしました。

(1) やっぱ、2SK30ATM のソースフォロアに無理があるんじゃ?

前回の回路は Nutube をソースフォロアによってサンドイッチしている様な構造となっています。


図 前回回路のブロック図

それでですね、前回( (5) 特性とか、Nutube の疑問など - (b) ひずみ率 20[%] オーバーの波形とは? )を参照してほしいのですが、Nutube 前段のソースフォロアの前後で振幅の減少を確認していました。 まあ、原因は十中八九 gm の低い FET を使用したためですが、 ”ヘッドホンにそこまで大きな信号は必要ない”と割り切ってたわけです。

そのときはそれで満足していたのですが、”本当に大丈夫なのか?”と気になりだしたわけです。

「もしかして、ソースフォロアの音を聞いてるだけなのかも?」
「だとしたら、Nutube の評価なんてできてないじゃないか・・・」

この様な自問自答は精神衛生上よろしくありません。そこで、ソースフォロアについて詳しく調べてはっきりさせます。

(a) ソースフォロを計算してみる

図 ソースフォロア

上図がソースフォロアです。まず、この回路について、 ”入力 Vi に対しての出力 Vo”の誤差を知るために解析的に解いてみます。

まずは、JFET の飽和領域での ”ゲート-ソース間電圧 \(v_{gs}\) と、ドレイン電流 \(i_{d}\) の関係式” から始めます。 まあ、有名な近似式ですね。

\[ i_{d} = I_{DSS} \left(1 - \frac{v_{gs}}{V_{P}} \right)^{2} \tag{1} \]

図 2SK30ATM Vgs - Id 特性

\(i_{d}\) : ドレイン電流です。ソース電圧でもありますね。
\(v_{gs}\) : ゲート-ソース間の電圧です。
\(I_{DSS}\) : \(v_{gs} = 0\) の時の \(i_{d}\) で、 基本的に最大で流せるドレイン電流と考えてください。
\(V_{P}\) : ピンチオフ電圧といわれるもので、\(i_{d} =0\) となる \(v_{vs}\) のことです。 ピンチオフ電圧以下に \(v_{gs}\) を下げても \(i_{d}\) は 0[A] のままとなります。 なぜかと申しますと、FET内部で空乏層と呼ばれる不導体部分が完全にドレイン電流をシャットアウトするためです。

<補足>

\(I_{DSS}\) と \(V_{P}\) は個々の素子によってばらつく値ですので、上図の特性図には 複数の曲線が引かれています。 ですから実際に使用する前に、\(I_{DSS}\) を測定しておくと、ある程度、 特性の把握ができます。今回使用している素子は、だいたい \(I_{DSS}\) = 4[mA] の素子を 使用しています。

とりあえず (1)式を \(v_{gs}\) について解きます。

\[ v_{gs} = \left(1 - \sqrt{ \frac{i_{d}}{I_{DSS}} } \; \right) V_{P} \tag{2} \]

出力 \(v_{o}\) は以下の様に書けます。

\[ v_{o} = v_{i} - v_{gs} \tag{3} \]

でもって、(3)式 へ (2)式を代入して・・・

\[ v_{o} = v_{i} - \left( 1 - \sqrt{ \frac{i_{d}}{I_{DSS}} } \; \right) V_{P} \tag{4} \]

さて、ドレイン電流 \(i_{d}\) は、出力 \(v_{o}\) と、ソース抵抗 \(R_{s}\) によって、

\[ i_{d} = \frac{v_{o}}{R_{s}} \tag{5} \]

となります。(5) 式を (4)式へ代入して、出力 \(v_{o}\) について整理します。

\[ v_{o} = v_{i} - \left( 1 - \sqrt{\frac{v_{o}}{R_{S} \cdot I_{DSS}} } \right) V_{P} \quad → \quad \quad v_{o} - \frac{V_{P}}{\sqrt{R_{S} \cdot I_{DSS}}} \sqrt{v_{o}} + \left( V_{P} - v_{i} \right) = 0 \]

さてさて、ちょいと細工を致しまして・・・

\[ \sqrt{v_{o}} = x \quad \quad , \quad \quad v_{o} = x^{2} \]

とおくと、

\[ x^{2} - \frac{V_{P}}{\sqrt{R_{S} \cdot I_{DSS}}} \cdot x + \left( V_{P} - v_{i} \right) = 0 \]

これで、解の公式で解けますね。あと、\(x\) の係数が若干ウザイので \(b\) と置き換えてあげると・・・

\[ b = - \frac{V_{P}}{\sqrt{R_{S} \cdot I_{DSS}}} \quad → \quad \quad x^{2}+ b x + \left( V_{P} - v_{i} \right) = 0 \]

かなりすっきりしましたね。で、以下の様になります。 また、素子や回路の都合を考慮し±記号を消しておきました。

\[ x = \frac{-b + \sqrt{b^{2} -4 (V_{P} - v_{i})}}{2} \tag{6} \]

求めた \(x\) について、\(v_{o} = x^{2}\) とすれば、ほしい \(v_{o}\) について求める事ができます。

<2016/11/21 追記>

結局、何が言いたかったと言えば (1)式 よりスタートしたことで、 (1)式の \(i_{d}\) と \(v_{gs}\) の関係が歪みの要因だと言いたかっただけです。 ただ、\(v_{o}\) はソース負荷 \(R_{S}\) も関係してくるので連立しなくてはならず、若干ややこしくなってます。 後述で、 「ソースフォロアがなぜ歪むのか? それは、前述通り Id の変化による Vgs の変動です。」 といっているのですが、ちょいと不親切と思い蛇足的ではありますが追記しました。

まあ、これを”gm の非直線性”と、 ひと言で言ってしまうこともできるのですが、 こうしてみた方が実感がわくと思います。

なんか間違ってないか心配ですが、久しぶりに算数ができて楽しかった!w
早速、検算がてら実際に計算してみましょう。

\[ V_{P} = -2[V] \\ R_{S} = 3.3[kΩ] \\ I_{DSS} = 4[mA] \\ v_{i} = 6[V] \] で計算してみますと・・・ \[ b = - \frac{V_{P}}{\sqrt{R_{S} \cdot I_{DSS}}} = - \frac{-2}{\sqrt{3.3\times10^{3} \cdot 4\times10^{-3}}} \simeq 0.55 \] \[ x = \frac{-b + \sqrt{b^{2} -4 (V_{P} - v_{i})}}{2} = \frac{-0.55 + \sqrt{0.55^{2} -4 (-2 - 6)}}{2} \simeq 2.57 \] \[ v_{o} = x^{2} \] と置いたので \[ v_{o} \simeq 2.57^{2} \simeq 6.60[V] \]

なるほど、0.6[V] 上昇するわけですね。実測とそうズレていませんしいい感じなんでは?

まあ、それは良いとして、問題は vi を振ったときですので、 Vi を変化させ Vo を調べててみると・・・


2SK30ATM ソースフォロアの入力-出力特性

正にソースフォロア!一直線です。さて、一見問題がない様に見えますが、 若干のずれがあるようです。この ”直線からのずれ””歪みとなる”ので、 上図を直線近似したものを理想的な Vo とし、それとの差を調べてみますと・・・

<UP当日に追記w>

わざわざ近似しなくとも、もうちょっと頑張れば求められそうですが、この時点じゃ気付かなかった・・・ (見直して気付いたのですが、そういうことってありますよね? ね??w)

まあ、展開に差異はないので、恥を承知で放置です。


2SK30ATM ソースフォロアの非直線性

Vi が 0[V] 以下は使わないとして、おおよそ±0.1[V] 程度歪むわけですね。


2SK170 ソースフォロアの非直線性

上図は2SK170 の場合ですが、さすがは 2SK170 さんパネェッす。 2SK30ATM と比較して明らかに歪みが少ない。 やっぱ 2SK30ATM は失敗だったかなぁ・・・

(b) Spice でシミュレーションしてみる

じゃ、LTSpice でシミュレーションしてみましょ!
「Spice あるなら、初めから使えよ!」 というツッコミがありそうですが、 結果だけ見るのと、自分で導出するのとは理解に差が出ますからムダではないと思います。


図 LTspice 回路図


図 LTspice 過渡解析結果


図 LTspice 歪み率

歪み率 0.17[%] とは・・・。まあ、これが大きいと考えるか、妥当と考えるか? 解析した結果から、 ”回路的には妥当”。だけどヘッドホンアンプという ”用途には大きい”ですね・・・

初めから計算しろよ・・・という声が聞こえてきますが、 バッファだしと割り切っていたのであんまし気にしていなかったんです・・・

次に、FET を 2SK30 から 2SK170 へ変更すると、どうなるかをシミュレーションしますと・・・


図 2SK170(GR) を使用した場合の歪み率

なんと、0.029[%]! この結果だけ見ると、2SK30 はないは・・・と思えますな。

(c) まとめ

では、まとめです

・2SK30 使用の歪みは無視できるものではない

ご覧になった様にちょっときついものがあります。

・2SK170 使用には意味があった

メーカーサンプル回路では 2SK170 を使用しています。 シミュレーション結果からわかりますが、 2SK170 か相当の JFET の使用が望ましいです。

では、どうするのか?

・2SK170 に変更すればいいんじゃね?

もってないですし、今更変えるのもなんか癪ですw あと、2SK170 はディスコンなんですよ。 高めで取引されているようですが、 なんか転売屋から買うみたいでイヤです。

ちなみに、2SK30 もディスコンなんですが、 こちらはチップ部品ではありますが 代替品である 2SK208 が秋月で 10ヶ250円 にて販売されています。

・OPアンプ先生に頼む?

あり得ません。さんざんOPアンプを使わない宣言しているのですから、 矜持に関わります。 というか、今更先生にお願いできませんよねぇ?w

2SK170 さんは gm 高めでグイグイ来るタイプなんでしょうが、 2SK30 さんは gm 控えめの奥ゆかしい古風なタイプの女性なんです。 捨てるなんて可愛そうです。 (なんか急に脳内で 2SK30 が擬人化され、いとおしくなってきましたw)

2SK30 さんを救える方法ないのか?・・・手はある!!

(2) 「一人じゃダメでも二人なら!」作戦

ソースフォロアがなぜ歪むのか? それは、前述通り Id の変化による Vgs の変動です。 これは、抵抗負荷である以上避けることができません。 どうすれば・・・

「逆に考えるんだ、『抵抗を使わなければいいのさ』と考えるんだ。」

「ありがとうジョースター卿! その手があったか!!」

(これ言いたかっただけだろ・・・ ジョジョ好きなんですよw)

さて、抵抗じゃない負荷といえば・・・そう、”定電流”です! 実は、定電流は 2SK30 さんが得意とする分野なんです。 そこで、ソースフォロアの定電流駆動です。 まさに『一人じゃダメでも二人なら!』作戦です。

Id が変化しなければ、Vgs は変化しない。これは近似式 \(i_{d} = I_{DSS} \left(1 - \frac{v_{gs}}{V_{P}} \right)^{2}\) から明らかです。


図 2SK30ATM Vds - Id 特性

上図は、ドレイン―ソース間電圧とドレイン電流の関係図です。 例えば、Vgs = -0.6[V] とすると、Vds = 2.0[V] 以上を確保できれば、 Id = 1.2[mA] で一定となり優れた定電流性を示すとわかります。 つまり、水平部分が多いほど定電流性に優れるということですね。

<補足>
ちなみにこの”水平部分”を Id が飽和している様子から ”飽和領域”といいます。 また、水平部分は Vgs と Id が一定。つまり gm = Id / Vgs が一定になる領域ですので、 基本的に増幅器として使用するのはこの範囲となります。

懸念事項は、Vds が低下してくると Id が減少し始めることですが、 Nutube のアノード電圧は 8[V] 程度となりますので、 後段のプッシュプルのバイアス 1.5[V] 程度を考えても Vds の確保は容易です。

<補足>
ちなみに Vds が低下して Id が斜めになっている部分を”線形領域”といいます。 Vds / Id が ドレイン―ソース間の抵抗 Rds となりますので、抵抗のようにふるまうことがわかります。

図 2SK170 Vds - Id 特性

これは、2SK170 のドレイン―ソース間電圧とドレイン電流の関係図です。 水平部分が少ないので、2SK30ATM と比較して定電流性は優れないとわかります。 その代わり gm が高く増幅回路で使用する分には優れます。まさに適材適所ですなぁ。

まあ、素直に 2SK170 使っておけば、ここまでソースフォロアで苦しむことはないのかもしれませんが、 乗りかかった船とでも言いましょうか、 意地でも 2SK30 を使用したくなってきますw

では、定電流負荷をシミュレーションしてみます。


図 定電流負荷


図 歪み率

シミュレーション結果はなんとも素晴らしい歪み率の改善です。 まさに、2SK30 姉妹が手に手を取り合って頑張る姿が目に浮かびます・・・ さて、キモイ擬人化ネタはここら辺で終了しないといかんねw

まあ、シミュレーションも理論式を使用しているんでしょうし、 どこまで実際に当てにはまるかは甚だ疑問ではありますが、 考え方は間違っていないようですので採用します。

<補足>
定電流は後段のドライブ段のバイアスも安定させます。 また、MOS-FET を選択したのは定電流駆動された 2SK30 のソースフォロアへ影響を与えない点で好都合でした。 トランジスタでは、ソースフォロア部分からベース電流を横取りしますので、 ソースフォロアの定電流性が確保できません。
<2016/11/21 追記>

他の追記を書いているときに思ったのですが、 最終的に定電流化。つまり、ソース抵抗 \(R_{S} = \infty\) となるわけなんですが、 (6)式 を見て「あーなるほど、うまくできてるもんだなぁ」と思いました。 (まあ、こんなことは最初に気付くべきなんですが、頭が悪いですな・・・)

(3) 改善した回路


図 今回製作するアンプの回路図( ”ここ” をクリックで全体をDL)

基本的には、前回のスタイルを踏襲していますが、前述の問題点を改善しています。

(a) 入力をそのまま nutube へ

Ntube の入力抵抗は前回の調べで 200[kΩ](下記、追記を参照ください) ほどありますので、 そのまま入力してもOKどころか、 ソースフォロアの誤差からも開放されるはずです。

<2016/11/21 追記>

うーん、見直して気付いたのですが、これって入力インピーダンスではありませんね。 私が、単なるグリッドの漏れ電流を入力抵抗と勘違いしたに過ぎないのかもしれません。

そうなると、データシートにある ”Insulation Resistance(Grid-Other)” って項目 ”20[MΩ]” が入力インピーダンスと思って良いのでしょうか? (Grid-Other って”グリッドとその他との絶縁抵抗”って意味で良いのかなぁ・・・英語苦手ですw)

とりあえず、前回参考にしたホームページには、 ”真空管の入力インピーダンスは無限大” と書かれていましたので、実際にも大きな抵抗値なんだと思います。 そう考えると、グリッドへ接続された R1 = 33[kΩ] よりも十分大きいのでしょうから、 入力インピーダンスは 33[kΩ] 程度と考えて良いでしょう。

まあ、そうであったとしても、この回路の入力ボリュームは 10[kΩ] と大きくはないので 特性への影響はほとんどありません。 数百[kΩ] とかの高いインピーダンスで受けたい場合に考慮する値となります。

(b) ソースフォロアの定電流駆動

前段ソースフォロアを省略した FET が残りますので、 その FET で定電流回路を組みました。 使用した FET は Idss を測定して 4[mA] でしたので、 330[Ω] でおおよそ 2[mA] となるはずです。

(c) グリッド、カソードをきちんと分離

前回の回路、電源は分離しているクセして、なんでグリッド、カソードの3.3[V] が共通なのか? 当時の私を小一時間問い詰めたいところでありますが、 素直に分離しときましょう。

(4) できたよ!

今回は Nutube 用の変換基板を使用しましたよ! これ良いですね、Nutube の下に低背部品を仕込めますので、 部品配置にゆとりができました。


図 変換基板

実は変換基板に換装しようと思い、前回まで使用していた Nutube を取り外そうとしたんですが、 ちょいと強引に作業したため壊してしまいました・・・(´;ω;`)  会社の先輩へ作ってあげる約束をしていたため、 もう一個 Nutube があったのでそれを下ろしましたが、 また購入しなきゃいけないし無駄な出費だなぁ・・・。 Nutube はガラス製なので脆いです。皆さんは取り扱いには十分注意してくださいね。 (あーもう・・・たまにやっちゃうんだよな、こういうぽかミス・・・猛暑致します)


図 壊れた様子(ピントがアレですが白くなってる部分が割れています)

さて、気を取り直して、今回は気合い入ってるので低背コンデンサを新たに購入しました。 あと、電源関係はOSコンを使用しましたよ! 前回に比べるとだいぶシックになりました。 まあ、秋月で買えばさほど高くないですし、気分的に盛り上がるのでおすすめですw


図 実際に製作したアンプ


図 Nutube 変換基板を外したところ

あ、三端子が倒れてる・・・後で直しておきましたw

グリッド、バイアスの調整を行い、早速試聴してみた感想ですが、

「前よりよくなってね??」
「いや、明らかに良い!!」
「低音が改善されている様な・・・」

前回と同じアホな感想ですが、やっぱプラシーボ効果ってすげぇは・・・w

(5) さあ、お楽しみの特性評価の時間だ!

(a) ひずみ率

図 前回のひずみ率


図 今回のひずみ率

  • X軸は 1[Vrms](1.41[V]) を 0[dB] として正規化しておきました。
  • 測定には、「WaveGene」、「WaveSpectra」を使用させていただきました。

おお? 改善されていますね、0.1[%] 切ってきましたよ!(歓喜の舞w) 比較しやすい様に、前回と今回を一緒にプロットしたものが下図となります (1[kHz] を比較しています)。


図 前回・今回のひずみ率を比較

高振幅時は Nutube が飽和するためどうしようもありませんが、 見事に改善されています。 回路的な修正はソースフォロア部分のみですので、 これが Nutube の素の特性に近い特性だと言えます。 今回の作戦は”大成功”として良いのではと思います。

しっかし、前回の回路は Nutube というより、 ソースフォロアの歪みを聴いていたわけなんですねぇ・・・ いやー我ながらくそ耳ですな!w

あと、低振幅時はノイズが支配的ですので、ケースに入れるなどの対策を行わないと改善しないでしょうね。 (-30[dB] 以下ってのは数十[mV]レベルの値です。)


図 メーカーサンプル回路のひずみ率

引用・参考文献
「Switch Scienc」 さんのホームページの
「【必読】データシート・注意事項 《PDF》」

こちらがサンプル回路のひずみ率となりますが、

勝ちました!⊂(`・ω・)彡ガッ

この結果に 2SK30 姉妹もさぞかし喜んでいることでしょう・・・(そのネタはもう良いってw)

KORG さん調子に乗ってすいませんでした・・・ 本気出されたら消し炭になってしまいます(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

2SK170 のソースフォロアだけでこの性能ですから、 いかに KORG さんが優れているかというのを 逆に示した結果でもありますね。

今回は、負荷を接続した場合も評価しました。


図 ひずみ率(30Ω負荷)

負荷を接続したからといって特に変な挙動はありません。 左にシフトする感じです。30Ωと出力インピーダンスで、 出力が無負荷と比較して相対的に低下するためと思われます。 また、若干の歪み率の悪化はドライブ段のプッシュプルの歪みと思われます。

(b) 定電流の具合は?

いい感じに定電流が動いているのを確認しました


図 定電流性の確認

出力 1[kHz], ±1[V] 時の定電流部分の抵抗 330[Ω] の電圧が赤色の波形ですが、 ピーク間で 5.81[mV] です。 ドレイン電流の変動 ΔId は・・・

ΔId = 5.81[mV] / 330[Ω] ≒ 17.6[uA]

ノイズが少しあるので実際にはさらに小さな値と思いますが、 これでもかなりいい感じです。前述の展開が正しいとすれば、 Q1 のソースフォロアは Q2 による定電流回路により、 Vgs の変動を強力に押さえ込まれています。

(c) 周波数特性

図 周波数特性 (無負荷)

出力 ±0.5[V] での値で、前回と同様にハイレゾです。今回は、30[Ω]負荷も評価しました。


図 周波数特性 (30[Ω]負荷)

今回は出力のコンデンサをちょっと盛っておきましたが、低音も問題ないと思います。

(d) クロストーク

図 クロストーク (無負荷)

前回と比較して、3.3[V] をきちんと分離したため改善していますが、 Lch Rch で結構違うんだけどなんでなんでしょうか? 謎だ・・・


図 クロストーク (30Ω負荷)

うーん、こんなに悪化するもんかねぇ・・・GND の取り方が悪いのかなぁ?と思い、 GND の位置を修正するも、あんまり変わらないですね。 単電源かつ L、R で GNDを共有しますので、GND の共通インピーダンスが問題なのかもしれません。 改善できるかはちょっと考えてみますが、このままでも特に問題は感じません。

(6) 2016/11/26 追記 OPアンプの使用もやむを得ないかな?

気になって調べたのですが、2SK213、2SK76 って全然市場にないのですね。 こんなディスコン素子使って参考にならん記事だったなぁ・・・反省。 代替品がないかなーと調べたもののほとんどないです。

しかし、安直に FET がないからといって安直にトランジスタへ置き換えてしまうのは、 前述の説明通りソースフォロアでの歪みが増加するのでおすすめではありません (問題なく動作しますが歪みの増加が明かなのでおすすめしない)。 よって、ディスクリート部品への拘りがさほどないのならば、 JFET入力のOPアンプ 例えば OPA2134 などの使用をおすすめしたいと思います。

OPアンプを使用する場合は、ゲイン×1の非反転回路にして Nutube のアノードへ直接接続すればいけると思います。 JFETのソースフォロアとMOS=FETのプッシュプル部分を まるっと OPアンプへ置き換えてしまうわけです。 この構成は、入手しにくい JFET が一切必要なく回路的にシンプルです。

懸念事項としては、OPA2134 のクリップ(出力波形の頭打ち)が気になります。 データシートでは Vcc - 2.5[V] が入力範囲なので、 Nutube より先にクリップしてしまうと思われます。 まあ、ヘッドホンアンプとしての出力は十分と思われます。

次回予告

今のところノイズ以外不満は感じませんので回路いじりは今回で終了ですが、 次は Nutube のノイズ対策が急務ですね。 なんせ、アンプを置く位置を変えてもノイズが変わる始末です。 (ハムはもちろんですが、周辺のノイズもバンバン拾っているようです・・・)

そこで、次回はケースに収めて再評価したいと思いますが、 ケースの加工悩んでるんですよね・・・

Nutube を見える様にした方がいいか?ノイズ対策のため完全にシールドした方がいいか? なやむ・・・