21世紀時代の真空管 Nutube でヘッドホンアンプを作ってみた!
その3 ケースに入れてみた!

前回までのあらすじ

ソースフォロアの誤差を改善し、劇的な歪み率の改善を実現した。

前回予告通り、ケースを作ってみましたが、一定のノイズ低減効果はあったものの、 特性改善的に見ると微妙な結果となりました。

(1) やっぱり、見える方がいいよね!

(a) これが作ったケース

せっかく Nutube 使ってるんだし、ディスクリートで頑張ったし、 そこんとこアピールしていきたいですよね? というわけで、秋月の「B基板用アクリルパネル(アクリル板) 2mm厚(透明) ¥250円」を使用して”基板見せ仕様”で作ってみました。


図 こんな感じ

四角穴開け苦労した割には、なんか貧相に見えます・・・w(現在、つや消し黒でケース内を塗装したら良くなるかな?と思ってます)

(b) まずは聴いた感想
・ノイズには強くなった

ケースへ収納する前にノイズが聞こえる様な場所へ置いた場合のノイズは明らかに減少しました。 一定のシールド効果はある模様です。

・が、完全にシールドできない模様

逆に言うと、ケースに入れなくともノイズがない場所では、効果はほとんど感じられません。 Nutube へ手をかざしたり、スイッチング電源などのノイズ源に対して近づけると相変わらずノイズがでます。 まあ、こんな大穴あいてるのですから当然かな。 しかし、例え穴がなくてもこんなぺらぺらなアルミ板でのシールド効果は限定的とも予想します。

<補足>

ノイズ源には”電界・磁界・電磁波”の3つがあるんですが、 アルミ板でシールドできるのは”電界・高周波の電磁波”に由来するノイズです。

(2) じゃ、特性評価と行きましょう


図 THD+N (無負荷) 特性

あんまり変わりませんね。


図 THD+N (30Ω負荷) 特性

これもあんまり変わりません。


図 THD+N (無負荷) 特性比較

前回ケースに入れる前との比較ですが、若干悪化しています・・・なぜ?


図 THD+N (30Ω負荷) 特性比較

こちらは、若干の変化があるもののほぼ一緒でした。

(3) まとめ

ではまとめです。

(a) ノイズ低減効果はある

特性に大きな変化はないが、前述の通り一定のノイズ低減効果はあると思います。 また、実際に使用する上でケースには入れなきゃいけませんしね。

ですが、”ノイズに弱い”というのは同じですので、 他機器の電源の傍であったり、スピーカーの直近であるなど、 明かなノイズ源からは遠ざけた方が良いです。

(b) でも、ケースに入れたからといってそんなに変わらない

-30[dB] 程度の小出力時のノイズ削減効果も狙っていたのですが、 今回ケースに入れたからといってさほど変化は見られないことにより、 小出力時のノイズは電源・測定環境のノイズが支配的であると考えられます

というわけで、電源を検証してみました。


図 電源ノイズ

上図は、アダプター(秋月 GF12-US1210)使用時の出力のノイズです。 ±12[mV]程度のスパイク状のノイズと、±3[mV]程度の小さなノイズが見られます。 ですが、これらのノイズは周波数が高いため、 測定結果としての歪み率への影響は小さいです。

<補足>

もちろん影響は 0 ではないですし、聴いてどう感じるかは置いておいてです。 また、これまでの特性測定時には上記の電源を使用しています。


図 電源ノイズ

ちなみに、こちらは違うアダプターのノイズです。小ネタで作ったアダプター分配器を使用した場合なんですが、 TDKラムダ CC1R5-1212Sx-E の出力となってます。 さすが TDK さんの DC-DC、秋月のアダプタにある様なスパイク状のノイズはありません。 しかし、依然として小さな方のノイズは残っています。こちらは環境由来のノイズなんだと思います。

電源についてのまとめですが、TDKラムダ の電源を使用したとしても、測定される歪み率への影響は、 それこそ誤差と言うほどの変化しかありませんでした。 この結果を見た以上は、ノイズの少ない TDKラムダ の方を私は使用しますが(精神衛生上しょうが無いですw)、 特性上はノイズの大きな秋月のアダプターでもほとんど変わらないため、 結局この程度は妥協の方向で良いのかなと思います。

(c) 穴が開いてるからといって、思ったより違いはない

穴部分をアルミ板で覆ったときも比較してみたのですが、 歪み率に違いはありませんでした。

これについては前述の通り、アルミ板のシールド効果がさほど大きくないためと思われます。 まあ、”シールドよりもアンプを置く位置に気を使え”ってことですね。 ただ、今思うと Nutube を見せるだけなら、ここまで開口部を広くする必要は無いなと思ったのと、 本気でシールドするなら鉄製のシャーシがおすすめと思います。

<補足>

鉄製にすれば磁気シールドの効果も得られます。特に電源へトランスを使用したい方は、 トランスと Nutube の距離を離すとか、磁気シールドを行うなどの対策が必要と思います。

(d) 若干の特性悪化が見られた

ご覧になった様に歪み率については、 ケースに入れる前と比較して、 0.1[%] 程度ではありますが悪化してしまいました。 なんでかな? と考えてみますと。 ”測定環境の影響””素子のエージング”、 などが考えられます。

前者については、所詮 PC のサウンドカードを使用しての測定なので、 ”この程度の誤差はある”という推測なのですが、 正直検証が面倒です。

<補足>

Sound Blaster X-Fi Titanium HD を使用しているのですが、 Windows 10 にしてから、WaveSpectra というか、ASIO の録音がおかしな仕様になってしまい、 測定環境に若干不安を感じてはいます。 (なぜか、録音のチャンネルが、再生リダイレクトになってしまうんで使えないんです。)

後者については、前回測定時とほぼ1週間の時間差があるのですが、 エージングを目的として通電したまま放置していました。 で、その1週間で”部品がこなれたため”というわけです。 Nutube はアナログ感満載ですし、このエージング説もそう的外れな考えでもないと思っています。

どちらにしても推測の域を出ませんが、 気にするほどの差ではないので許容かなぁ・・・(妥協w)

(4) 今後の予定は未定

とりあえず、Nutube でのヘッドホンアンプ製作は今回で一区切りと思っています。 この回路構成でこれ以上引っ張るネタが無いですし・・・。 あとは、Nutube で差動アンプとか作っても面白いかなと思っていますが、 シンプル構成から離れてしまうのが難点だなぁと感じます。

例えば、Nutube でまともな差動増幅器を作ろうとすると、 Nutube のみではゲインが稼げないので、半導体による増幅回路と組み合わせる必要があります。 そうすると、大部分の増幅作用は半導体が担うことになります。 これでは、Nutube というデバイスを使用することの”見た目以外のメリットが失われる”様に感じます。

かといって増幅率を低めにすれば差動増幅器としてのメリットを捨てることになり、 下手をすれば”余計な回路を付加しているだけ”になってしまいます。 まあ、逆に言えば”そのバランスが妙なんだよ”とも言え、 うーん・・・オーディオというのは面白いですね。

いずれにしても、Nutube で趣向を凝らしたアンプを作るという”技術的な面白さ” を否定するつもりはありません。 この様な記事以外に良いアイデアが沸かないのは、端に私自身が未熟ってことです。 そのうち、頭のいい人があっと驚く回路を考えてくれることでしょう。

まあ、いろいろ書いたけど、”現状の音に満足してる” というのが本音です。 そのうち、多分不満を感じるでしょうから、そうしたら違うアンプを作ると思います。

と、この様な締めで終了です。

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