45 準秘蹟
神父 
さあ、私達の講義も段々終りに近すきました。教会が七つの秘蹟の中に持っている宝に、あなたが非常に興味をお抱きになったのは、私も嬉しい事です。そこで今夜は「準秘蹟」についてお話します。この秘蹟はその言葉が示しているように、秘蹟と非常に似たところがあります。といいますと、そのわけは、この準秘蹟は、教会が私達のために祈りによりまして、天主から霊魂とこの世のための御恵みを頂くために用いる聖なる物とか聖なる行いを指していうからです。秘蹟はキリスト御自らお作りになったものですが、準秘蹟を作ったのは教会です。
青年 
何か違ったところがあるのですか。
神父 
そうです。秘蹟は成聖の聖寵を授けたり増したりしますが、準秘蹟にはそれがありません。
青年 
それでは、準秘蹟は何のためにあるのですか。
神父 
第一に、これを敬虔に用いますと、聖寵をいただこうという気分が高まります。
二つの違いをもっとわかり易くいいますと、次のようになります。秘蹟は、キリストが霊魂に成聖の聖寵をお与えになる方法として、御自らお作りになったものです。ですから、秘蹟は、私達がそれを戴くにふさわしい意向を有しているかどうかということとは無関係に、聖寵の原因になります。ふさわしい意向を持つことが不可能な場合などでも、たとえば赤ん坊が洗礼を授かる場合のように、秘蹟は聖寵を与えます。これに反し、準秘蹟は、聖寵の原因にはなりません。たとえば、聖水を以って自分を祝別しますと、教会がその水を祝別した時の祈りと、聖水を使う場合の私達の善良な気持のそれぞれによりまして、私達は現実に聖寵をいただきます。こういうふうに、準秘蹟を用います場合、教会の祈りは確実ではありますが、聖寵をいただこうという私達の善良な意向の如何にかかっています。
青年 
私達にいただけるその第一の御恵みは聖寵である、というお話でしたが、この外にも、この準秘蹟を用いることによっていただける御恵みがあるのですか?
神父 
ほかにこういうものがあります。小罪が赦され、罪の結果である有限の罰が除かれ、悪魔から守られ、健康、その他の物質的な御恵みが与えられます。
青年 
準秘蹟にはどういうものがありますか。
神父 
そうですね、主祷文や「十字架の記号(しるし)」のような教会の認めた或る祈りが真先に挙げられます。その次は、聖水、聖ローソク、聖棕梠、聖灰、十字架、キリスト、聖母、聖人の御像、メダイ、ロザリオ、スカプラリオのように、教会の祝別したものです。
青年 
そんなに沢山あるとは少しも思いませんでした。
神父 
ええ、沢山あります。新しい信者はこれを用いることを、とかく変に思うのですが、馴れて来ますと、そうでもありません。もちろん、あなたは好きなように準秘蹟を用いれば良いのです。
青年 
そういうものを用いますと、敬虔な気持が私達に、起って来て、それにより天主が聖寵を垂れて下さるのですか。
神父 
十字架の記号(しるし)をしますと、御託身と御復活の大きな御恵みを感謝し、聖三位を賛美する気持が高まります。聖水をいただきますと、もっと罪から浄められなければならないと思います。祝別された聖ローソクの火が点るのを見ますと、臨終の人は信仰を回復して思いを天国に向けます。準秘蹟に用いられる物を祝別する場合、教会は先ず第一にその物を浄めます。即ち、教会は被造物に対して悪魔が有すると聖書にも云われているカから、完全にその物が免れるように祈ります。次に、今度はその反対に、この祝別された物に悪魔とその誘惑に対戦する力が与えられるようにお祈りをします。ですから、準秘蹟は敬虔に用いますと、誘惑に対し抵抗するために役立ちます。
青年 
聖水などのような準秘蹟につきましては、何か聖書上の根拠があるのですか。
神父 
書簡にあります。キリストが「自分の来れるは律法を破らんがためにあらず、これを成就せんがためなり」と言われました。律法の時代におきましては、聖水、聖油、聖塩のような多くの祝別された物を使うことは、義務になっていました。民数紀略の第五章第七節、レビ記の第一四章第五一節、ヨブ記の第四二章第六節、ダニエル書の第九章第三節、出埃及記の第三〇章第三一・第三十五節、レビ記の第二章第一三節を見て下さい。聖パウロは「神の造り給いし物は皆・・神の御言葉と祈りとを以て潔めらる」(チモテオ前四ノ四〜五)と言っています。
青年 
聖水はどういうときに用いるのですか。
神父 
学校や教会、家庭を祝別する場合や、その他いろいろな物を祝別する場合に、用います。日曜日の大ミサの前に、司祭は聖堂の真中の通路のところに降りてきて、一切の世俗的な思いを捨てさせるしるしに、これを信者にふりかけます。信者は聖堂に入る時はいつでも、入口の近くにある容器の中の聖水で自分を祝別します。又、信者は聖水を自分の家に備えておいて、自分を祝別します。
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