このページは、OCRで読み取った後、
一回だけ校正しました。

第一書・第七章

原罪の汚れなきマリアの聖き御誕生とその御名

 聖母の至聖なる御心における神への愛は、創造の瞬間に母胎の中で始まり、決して中断されず、光栄の永遠にわたり続けられております。今、聖母は御子の右に座し、その光栄にあずかっております。

 最も幸いなる母、聖アンナは、聖霊の御加護に満たされた妊娠の日々を送りましたが、御摂理は困難の重荷をも与えました。この重荷なしには恩寵は獲得されません。これを理解するために、サタンと一族が天から地獄の拷問の中に投げ落とされた後も、古い律法の間、地上を徘徊し、優れた聖性の女性全員を密かに覗き見していました。「女」の印を満たし、「女」の踵が自分の頭を傷つけ、砕くことになっている(創世3・15)のを知っていたからです。ルシフェルは人間に対し怒り狂っていたので、この探索を自分自身でし、徳を積み恩寵を頂く点で傑出した女性全員の身辺を一生懸命、見回りました。

 悪意とずるさで一杯になったルシフェルは、優秀な聖アンナの非常な聖性と生涯の全てに眼をつけました。聖アンナの胎内の「宝」の素晴らしさに気づきませんでしたが(他の多くの神の秘密も見ることができなかったのですが)、聖アンナから発せられる強大な影響力を感じたのです。この力の源が判らなかったので、ますます怒り狂いました。この妊娠も普通の妊娠に違いないと自分に言い聞かせて気を静める時もあったのですが、心配はなくなりませんでした。大勢の天使たちが聖アンナの周りにかしずいているのを見て、何とかして探り出したいと焦ったのに阻止され、これは聖アンナの力だけではないと感づいたのです。聖アンナの命を奪いたいが、できなければ妊娠中に問題を起こしてやりたいと決心したルシフェルは、受肉された御言葉の御母や、世界の救世主の命を狙う身の程知らずでした。彼の傲慢さは、天使として人間よりも高い地位と能力があることから由来しています。そして、天使としての自分が神のお陰で存在したことに気づかないのです。そこで彼は、様々な疑いを聖アンナの心に起こさせようとしました。年を取り過ぎているから、実は妊娠していないのだと思い込ませようとしました。しかし、この不屈の女性は、謙遜な堅忍不抜の精神で主に祈り続けました。この信仰のお陰で彼女はより一層の恩寵を頂きました。大天使たちが彼女を襲ってくる悪魔たちを追い払いました。自力を過信している悪魔は聖ヨアキムと聖アンナの家を壊そうとしましたが、聖天使たちにより敗退しました。今度は、一人の女にさんざんの悪口を聖アンナに言わせましたが、聖アンナは優しく応対できるほど確固たる謙遜を保ち続けたのです。彼女がもっと大きな恩寵を頂けば頂くほど敵たちはもっと激怒し、彼女の女性としての弱さにつけ込もうとしましたが、全く手出しできませんでした。

 次の攻撃目標は彼女と夫の家に仕えていた召し使いになりました。この召し使い女は強情で危険なことこの上もなく、この一家を混乱させましたが、またもや聖アンナの勝利となりました。イスラエルの守衛は眠らないで警護したのです(詩篇121・4)。聖アンナ一家の歩哨に立った天使たちは最も強力な天使たちの中から選抜されたので、ルシフェルと部下たちに恥をかかせ、追い払いました。これ以上の妨害をルシフェルたちはできませんでした。天の至聖なる王女の誕生が近づいていたからです。

 この世にとって最も幸せな日となった誕生日は九月八日でした。聖アンナは出産の時間を前もって主より聞かされ、主の御前に平伏し、御助けと御保護を願いました。至聖なる赤子マリアは大きな喜びに包まれ、お産の時、通常は感じるべき感覚を一切感じないでこの世に産まれました。聖マリアは産まれた時から純粋で汚点がなく、美しく、恩寵に満ち、律法と罪とから全く離れていました。同夜十二時に神の光が照らし、昔の律法とその暗さを、夜明けに近づいた恩寵の新しい日から分離しました。聖マリアは他の赤ちゃんと同じように産着を着せられ、世話してもらいましたが、彼女の霊魂は神の中に住んでいました。新生児として面倒を見てもらいましたが、あらゆる人間やあらゆる天使たちよりももっと知恵がありました。聖アンナは自分一人で聖マリアの面倒を見ました。他の家事をする必要がありませんでした。

 全宇宙の中で最も美しい宝物、あらゆる被造物よりも高位にある娘を腕に抱き、娘を主に捧げ、心の中で祈りました、「無限の知恵と力のある主よ、万物の創造主よ、御身の富の中から産まれた我が子を御身に捧げ、永久の感謝をいたします。私の功徳なしにこの子を私に下さいました。母と子を御身の御旨に委ねます。私たちの低さを玉座から御身は眺めて下さいました。この子を永遠なる御言葉の住居と聖櫃として下さいました。御身が救いの誓いを私の聖なる祖先や聖なる預言者たちに、そして彼らを通して全人類に与えられたことを感謝いたします。御身は契約の櫃である娘を私に与えて下さいましたが、私は娘の召し使いになる資格もありません。どうぞ宜しくお願い申し上げます。」

 主は、この聖なる婦人に、天からの授かりものである娘を普通の娘のように育て、愛情と気遣いを示し、それと同時に娘に対する畏敬の念を心の中に持つように教えました。

 我らの王女マリアの生誕に当たって、いと高き御方は大天使聖ガブリエルを古聖所にいる聖なる祖父たちにメッセンジャーとして送りました。天の大使が降って行き、深い穴を照らし、そこにいる義人たちにこの喜ばしい知らせを告げました。聖なる王たちが待ち望み、預言者たちが予告した人類の救いが始まったこと、すなわち、救世主の御母となるべき方が産まれたこと、人々が救いと神の光栄を近いうちに見ることを教えたのです。

 この偉大な元后の誕生後八日目に、祝福された母アンナの前に現われた天使たちは、アンナの娘はマリアと名付けられること、この名前が天から運ばれてアンナと夫のヨアキムに与えられることを神がお望みになったことを話しました。アンナは夫を呼びにやり、夫と話し合いました。夫ヨアキムは大喜びしてこの名前を拝領しました。夫婦は親戚や祭司を招いて厳かに命名式を執り行いました。

元后の御言葉

 「汝の弱さと貧しさにも関わらず、私の弟子と伴侶として私が採用したのは、汝が全力を尽くして聖務を行なうにあたり、私を模倣すべきであるからです。私は誕生の瞬間から全生涯を一日でも怠ることなく堅忍不抜に聖務を実行しました。毎日明け方、いと高き御方の御前に平伏し、主の不変、無限の完全さと、私を無から創造したことに感謝しました。自分自身を御手がお造りになったものとして認めながら主を祝福し、崇めました。崇高な主として、私と全ての創造主として讃えました。謙遜と自己放棄の意志をもって私自身を捧げ、今日も死ぬまでの毎日も私を御旨のままに使って下さるように、御旨を教えて下さるようにお願いしました。この祈りを声に表し、心の中で話し、何度も繰り返しました。神に相談し、助言、許可と祝福を私の全ての行為のためにお願いしました。

 私の最も甘美なる名前に対し献身しなさい。全能者が私の名前に大いなる特権を与えました。私の名前が呼ばれるたびに私は深く動かされ、ふさわしい応答をすることになりました。まず神に感謝し、主に仕える決心を新たにします。汝、アグレダのマリアは私と同じ名前です。この名前が汝の心の中に同じ効果を現し、この章で学んだことを毎日怠らないように。もし弱さのために失敗するなら、主と私の前で非を認め、悲しみ、告白するように。心を尽くしてこの聖務を何回も繰り返しなさい。不完全さは許され、御旨に適う完徳に邁進するようになるでしょう。主の下さる光に従い、あらゆることに於て主の御言葉を拝聴するようになるでしょう。」

ページに直接に入った方はこちらをクリックして下さい→ フレームページのトップへ