はじめに 〜西洋甲冑とは〜

日本では、映画やゲームで馴染み深い西洋甲冑ですが、その元は歴史の中で登場した身体の防具でした。日本では一般に「西洋甲冑」と呼ばれますが、言葉の意味としては「ヨーロッパの鎧」と理解して良いでしょう。「ヨーロッパ」の範囲もたいへん曖昧で、日本ではイギリス、フランス、ドイツ、イタリアの地域を大雑把に示し、それ以外にスペインや北欧、東欧などもしばしば含まれる漠然とした言葉です。それらの地域で使われていた鎧が、一言で「西洋甲冑」と呼ばれるものです。

西洋史は歴史が好きな人以外はなかなか難しいですが、、ヨーロッパの武具研究では、時代区分はだいたい以下ように大きく区分されています。

ざっとではありますが、このような時間の流れがあります。一般に西洋甲冑として知られるものは、ルネサンス時代の前期と後期です。前期は初期のゴシック式甲冑や剣が中心となり、ルネサンス時代後期になると半甲冑と長柄武器&銃砲が中心となります。

大変おおざっぱになりますが、イメージされる西洋甲冑のほとんどはこのルネサンス時代の150〜200年の間のものを指し示します。これ以前の十字軍時代では鎖鎧と一部の鉄板鎧が存在するだけで、近世前期になると、西洋甲冑の時代は終わって、戦争のスタイルも大きく変わりました。

西洋甲冑は、日本や中国の鎧とは構造が異なり、非常に合理的で堅牢な作りなため、研究の対象としてたいへん興味深いものです。研究対象が複雑で深いことから、銃や剣に比べて、世界中でも研究家は大変少ないものです。

西洋甲冑の学問分野が少しでも大衆に理解いただけたら幸いです。

西洋甲冑パーツ
マクシミリアン式とルネサンス式半甲冑。試着のため分解した状態。

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