1200MHZバンドのスリーブアンテナの製作


 同軸ケーブルを使い、網線を外側に折り返したスリーブアンテナの場合、外側になった網線部分のエレメントの外側は空気中に曝されている。しかし、内部には空気とは異なる誘電率を持つ誘電体が充填されている。となると、内側は誘電体あるから外側の空気中の電波の波長とは、同じなのだろうかとの素朴な疑問から製作したスリーブアンテナである。
 

 1295MHzの四分の1波長を計算したが、製作技術の不手際から下図のような寸法で製作し、数年を経て、ローカル局にSWRを測定してもらったところ、下図の測定値となった。

 そこで約6mmをスリーブ、先端エレメントを切断したが、若干切り過ぎた。

  
    作った状態での測定



測定値
 SWR=min   1.16GHz SWR 1.07    波長 258.4417741・ 1/4波長 64.61
 レピーター  1.29GHz SWR 1.6     波長 232.3972543・ 1/4波長 58.1 



 銅パイプ部分は、パイプの中に同軸ケーブルが通る内径=8・を使ってある。(フジクラの資料の5DーFBでは、仕上外径=7,6mm)となっている。大変なのは、同軸が、通るN型コネクタのナットの穴を10・に拡大する加工でであり、ボール盤を使い少しづつ気長に拡大した。ナットは、真鍮製なので少しづつ、少しづつでないとドリルに噛み込む。銅パイプの中には同軸ケーブルが、通っている。だから、この銅パイプは、単にスリーブアンテナの中央エレメントになっている。
 先端エレメントは、同じ銅パイプを使い、パイプの中心に同軸の芯線を貫通させその両端で半田付けをしている。スリーブ部分とは、同軸芯線のみとなるから、この部分の防水を兼ねて、インピーダンスの高い部分なら考えなければならないだろうが、2分の1波長の中心となり電流給電のローインピーダンスなのでスリーブの太さまでエポキシを充填して強度を確保した。
 銅パイプとスリーブパイプの接続は、強度を考えて銀ロウでロウ付けした。ハンダ付けでも良いとは思うが、ロウ付けが出来るのでこうした。



       試作したスリーブアンテナの概要
                         



    第1回目の改造後の測定                              この時のアンテナ
     



 第2回目の改造後の測定 SWR=1.05 を実現 (仮設グランドがある場合)
      
     グランドが、無い場合では、SWR=1.2 となっている
  コネクタの上5o位の位置に仮設のグランドを付けるとこの状態になるとの連絡を受けたので2段スリーブもアンテナと同じ構造のグランドを組み付ける事にしている。





    調子に乗って作ったいた2段スリーブ (調整中の画像)                  参考書より同軸を使った多段コーリニア
           



  
 グランド部分 ステンレスネジで調整可能とした



  
                                        調整後の特性 リピータ用に満足できるものになった



 この2段スリーブも測定してもらった結果からグランド部分を追加した。こちらは、総て真鍮パイプ製。
同軸を使った2段コーリニアは、作る気をまったく持っていなかった。

 これらの2つのスリーブアンテナは、作りっぱ無しでの特性のSWR=min は、120MHz位低い所にあって、目的のレピーター周波数付近ではSWR=2程を示していた。測定周波数範囲は、860MHz〜1550MHzを測定してもらったが、ほぼSWR=2の範囲にあった。このSWR=2での電力効率は90% SWR=1.5で電力効率は95%を考えると輻射効率を無視すれば、この測定範囲の周波数でそのまま使えると思われる。その時、受信される信号強度は、どれほどの変化があるのだろうか?。

 SWRと電力効率を考える時、SWR≒1とは、いかに効率よくアンテナから電波を輻射するかを目指した訳だから、その努力との得られる結果を考えるとまったくのマスターベイションと言えそうだ。
 ただ、SWR≒1を達成したとの達成感は、何者のも変えがたいのは、アンテナ製作の醍醐味ではと思う。

 中に通す5D-FBのことだけを考えて5D 用のコネクタを使ったが、同軸の仕上がり外径から考えるとコネクタが高価になっても8D系のコネクタ使えば、8Dケーブルの外径は、11Φ位なのでマストになるパイプを通す為にナットの穴明けをしなくても済みそうだ。

 今回、ネットアナライザーにて測定してもらったのでより細かく分析でき、もう少し、もう少しと切断し、この寸法に追い込んだ。

 感想としてこの構造で作る時、寸法精度を守ればかなりのものが作れそうだと思った。更にスリーブパイプの径をもう少し大きなものを使ったほうが良いかなとも思えた。


 思い付きからお願いし、測定を快く引き受けていただいたJA2GUJ局に感謝します




 追試(2016.1.12)

  下図のような寸法でスリーブ形を19φo、グランドをλ/4波長の円盤として作ってみた結果です

 
                           実際に試作したANTでグランドは、円盤

   
     計測中の様子                        その測定画面 マーカー(矢印)の数値
                                     1.27GHz(レピーターアップリンク) SWR 1.20
                                     1.29GHz(ダウンリンク)       SWR 1.10
十分実用になる結果を得た



 蛇足

  下図のような(1/4λ)のかたまりのようなスリーブアンテナではどうなるのだろうとの疑問が湧いてきた。

 物は、「ついで」と言う言葉がある。その寸法の円筒を作るのは難しいが、近い寸法の缶(例えばコーヒー缶)を利用し、長さを調整するとして製作するならば、それなりに出来ると踏んでいる。下部のスリーブと上部のエレメントの隙間は、同軸の中心線のハンダを缶の中から出来るようにすれば、数ミリに以下に出来るのでは?と考えているが、どうなるんだろう。


  


                                     
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