SB2000DXの修復


 このリニアアンプは、フロンティア社製ものでご家族から友人の形見として14年前にいただき、我が家の倉庫で冬眠していたもの。

 開局60年の道しるべ maroon.dti.ne.jp/~ja2eib/1_kilo_watt/1_kilo_watt.html)のページの様に今年3月に改造、整備して、令和5年7月21日に変更検査を受け、令和5年8月1日付けで1KW局の免許を取得したアンプだが、8月のお盆に「バッチーン・・・・!!」と大音響の別れの声と共にご先祖様と一緒に天に帰ってしまった。

 私は、2003.3.12PM23:20頃に発症した心筋梗塞で三途の川を見る事無く生還した。このアンプも三途の川を渡らせてなるものかとその修復に全力を注いだ。

 蓋を開けて、「何だこれは・・・・・!」が、が、第一声だった。画像の様にプリント基板、ソケットまで焼損している.
プレート電圧3、500Vを使う整流回路にカードエッジコネクタが使われている。多分、運搬時の振動なので緩むであろう事は、全く考慮されていない設計だろうと想像される。

 正確な回路図は、無く、ネットで「SB2000DX」と検索すると出てくる JH7BMF局さんの「JH7BMF Ham Radio diaryHam Radio diary」ページの「何故かフロンティア SB2000DX」の画像のみだった。この画像を頼りに解析を進めると、スタンバイ用のリレー駆動回路が、当局の物とは違っていた。他のメーカーにも同じような基板を使ったアンプの写真を見たが、OEMの製品と直ぐ判った。

 この基板は、高圧整流回路、プレート電流検出回路、グリッド電流検出回路、ALC回路、バイアス電圧及びリレー制御電源の各回路が、搭載されている。
 焼損部分は、高圧電源回路と何故かプレート電流検出回路が激しい。

     
 基板表面 0.5Ωの抵抗とグリッド電流検出回路の分圧抵抗が焼損している。基板の裏面
 黒い2本の巻き線抵抗の左側0.5Ωがプレート電流計の分流器、右側0.5オームはグリッド電流計の分流器。

     
  焼損部分とソケットの状態    ソケットも熱で熔けていて、端子も焼損している
  中央で直線に下りて来ているパターンが、プレート電流計へのパターン。メーターまで焼損している事を考えると、最初に高圧整流回路のパターンが損傷し、次にこの電流計側に回り込んだと想像される。

    
 グリッド電流計(マルチメーター)も内部が焼損     ツェナーダイオードも短絡(8V_50W)

 こんな状態になっていたが、「やるっきゃ無い」と長期戦を覚悟した。




まず、回路を調べないと何もできないから基板スケッチを起こし、必要な部分の回路を調べた。 
  

 スケッチ画像 ALC系は空中配線で処理されていた
 
 入出力のリレー間は、単純だ

 余談だが、フロンティア社製の多くのアンプの高圧電源は、2倍電圧整流回路だが、このSB2000DXはブリッジ整流回路だ。


 基板上の必要な回路の解析

 メーター迄焼損していた事から、手持ちでよく似た外形寸法の物を交換する為、メーターの校正作業が必須となり解析
            
 プレート電流計、グリッド電流計の回路は、上図の様になっていたが、ALC回路についてはこの部分だなと確認のみ
 保険の意味で高圧整流器との間にヒューズを空中配線だが、挿入し安全を期した。


 プレート電流計、グリッド電流計の校正

      

 ツェナーダイオードは、50W_8Vの物を購入し、下図の様に凝った取り付け方をしたが、ミスで高圧部分をショートさせて一度も動作することなく一巻の終わりとなってしまった。(元々の取り付け金具とは、ツェナーダイオードの形状が異なったので製作)

                
    50W_8Vの取り付け金具                電流ブーストしたツェナーと取り付け。オリジナルの金具に銅板を追加

 ツェナーダイオードは、再度の故障を考えた場合、小電力のツェナーダイオードをトランジスタでのブースト回路に武があり、手持ちのNPNダーリントンMJ11016を使い、2V_500mWのツェナーダイオードを4本直列にして基準電圧を作った。所定の電圧のツェナーダイオードを一個でと思ったが、2V間隔で調整できる様にと、又、500mW×4=2Wのツェナーダイオードと考えられるのではと考えた。もし、1Vの電圧調整なら整流ダイオードの順方向の0.6Vを加えれば良いものと考えてもいた。

 合理的か否かは、判らないが、ツェナーダイオードが耐電力500mWなので2Vで250mA流せる。しかし、これでは多分熱で壊れてしまう。ブーストトランジスターは、ダーリントン接続だからベースエミッタ間の電圧は、約1.2Vとなる。このベースエミッタ抵抗を75Ωとして、16mAの電流がツェナーダイオードに常時流れて安定した基準電圧になるはず。そして、これ以上の電流は、ブーストトランジスタのベース電流になる。単体で予備実験をして確かめたが、実験用の定電圧電源の電圧から電流2.5Aまでは、安定した電圧が得られる事を確認した。



 メータの交換

             
    オリジナルのメータ                 取り替えたメータ
  外形がよく似た、同じメーカーで5Aと30Vの物があったので、この分流抵抗と分圧抵抗を取って、単体で使い上記の様に校正した。目盛り板は、オリジナルと同じスケールにドローソフトで描画した



 電解コンデンサーの交換

 修復の途中、ミスで電源をショートしてしまい、幾つかの整流ダイオードが、不良となった。この整流ダイオードを交換したが、基板のパターン修復にミスがあり、2個のダイオード短絡した状態になった事に気が付かず、電解コンデンサーの不良と考えて交換してしまった。
         
   上がオリジナル           交換した電解コンデンサー         コンデンサーユニット組み立て用のアクリル板
   450V680μF×8         400V560μF×10            端子は、丸穴部分に出る

 オリジナルは、コンデンサーをバンドで取り付けていたが、画像の様にアクリル板でベーク基板と挟む形式で組み立てた。アクリル板は、30ミリΦのホルソーで端子部分をくり抜き、その残材をコンデンサーの台としてベーク板に乗っけて沿面距離を取ってみた。



 修復完了した基板

   
 修復した基板の表面と裏面

 高圧部分は、ネジ止めに変更した。焼損した端子への配線と空中配線されていた配線は、コネクタ端子を増設して脱着が出来る様にした。パターンの焼損部分は、錫メッキ線で補修している。赤丸で覆った部分は、ソケットを基板に固定するねじに長ナット足した柱に結束バンドで固定した様子。又、この基板のアースは、基板取り付けネジへ基板周辺のアース部分の僅かな面積でネジ止めになっていた。そこで、3本の取り付けネジ部分に基板パターンに追加して錫メッキ線を増設して圧着端子を設け、基板取り付けの金属製の長ナットを介してしっかりアースされるように加工した。



 真空管ソケットの更なる改良

 ヒーターピン部分は、ステンレス線で捕縛しているが、他のピンもよく見ると思わしくない。JA3のあるOMから、「俺は、文房具でメタルダブルクリップ(小)と言うのが有って、これで挟みこみクリップのハンドル部分を外している」と聞いていたのを思い出してやってみた。この方法の方がスマート出し、均一に力が加わる

           
   オリジナルソケット       メタルダブルクリップ(小) 実際の組付けの状態(ヒーターピンは、ステン線で捕縛)


      

 蛇足かも知れないが、入力回路のセラミックコンデンサーとヒータ間のセラミックコンデンサーを一回り大きな面積の物に取り替えた。
 茶色が、入力用で青色がヒーター間のセラミックコンデンサー。パラレル運転の場合、入力は、2本とも5番ピンからドライブしてバランスを取らなくてならないと巷で言われている配線となっていた。
 高圧配線に使われていた耐圧電線も手持ちの一回り太い耐圧電線交換し、更にスパイラルチューブを巻付け絶縁の向上を考えた。


参考にと思い調べた
 因みに巷のうわさの元であるTL-922のヒーターは、調べて見るとヒーターを直列して10Vで点灯している。
 参考にと思い調べてみたら、TL-922だけではなく他にも有った。
              
 これは、ヒーターチョークの線径を「細くする為なのか?」としか思えないが?。上図の左入力回路は、右は巷で推奨されている回路




 参考  往年のHeathKitSB221
  
    
  シャーシ内部                         そのソケット 接触部の金具が、バネで挟まれている。
 
  この形式のソケットでも接触不良でヒーターピンのハンダが熔けた話を聞く。TL-922は、多い!!!!。
      
   東芝製のソケットは、40年程前に手に入れていたが、、待てよ?と思い出して掃除したもの
   金メッキのソケットの画像を手に入れたので使ったが、ピンク色の線の様にすれば、しっかり接触する。
   

 前回と同じ運搬作業

      
  前と同じでソリに乗り、シャックに向かって出発 斜面に乗って机の定位置に 向きを変えて、所定の位置に到着


 一番心配した真空管3−500Zの不良の最悪の事態にはならず、変更検査時と同じく各バンド所定の出力を確認できた。

 これで、安心して運用出来る様になったが、調整中に真空管の微かなグローを見たのが、今後の心配の種だ。




                     開局60年の道しるべ
             (maroon.dti.ne.jp/~ja2eib/1_kilo_watt/1_kilo_watt.html



               

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