2021/08/27
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私が発見した超新星の紹介です。
SN2015as(UGC5460) ,SN2014cy(NGC7742)


SN2015as(UGC5460)
SN2014cy(NGC7742)
お断り 下記の文中の山岡先生の所属は当時です。現在は国立天文台です。 SN2015as UGC5460(おおぐま座)発見記 観測日2015 11 15.7778 (世界時) 超新星の位置 R.A. 10 08 11.37 DEC. +51.50 40.9 発見時の光度 16.0等級

おおぐま座 UGC5460 銀河に発見した超新星 SN2015as の発見状況について書きます。 なお、特別の断りがない限り日付は日本時間です。 上の写真は15秒露出のものをトリミングしています。 @それまで 初発見でやる気が出てそれまでよりも観測個数(撮影画像数)は増えてきました。 しかし、なかなか2個目を見つけることができませんでした。 10月ころから「今年はもう無理だなぁ」と思い始めました。 A発見日 2015/11/15(世界時) 日曜日のこの日でしたが、曇りのため11/15は観測できず眠りについていました。 深夜1:30ころに目を覚ますと晴れてきたようですので、起きまして2:00くらいから エリダヌス座から観測を開始しました。観測範囲を終了後、東側には目立った銀河はありませんので 11月ぐらいから始めたおおぐま座に場所を移しました。 アルファ星そばのNGC3471から観測開始して分割してある範囲を終了後、より内側(北側)にすべきか 外側にすべきか少し悩みましたが、それまで内側は観測していましたので、外側にしました。 次はNGC3468から順次、番号が若くなるほうに観測開始、分割した最後のほうのUGC5460になりました。 B突発天体と確認 UGC5460は2011htという超新星が出現していたため、昨シーズンまでは観測対象から除外していました。 しかし、どうも除外するのは間違っている、なぜならここ数年の短期間に再出現している銀河が多いからです。 UGC5460も2ビニングの画像はありましたが、ビニングなしの画像取得も兼ねて撮影し確認しました。 すると何と明るい星が写っているではありませんか! 瞬間的にノイズではない!星であると確信しました。 案の定、その後、2回撮影しましたが、きちんと写りました。 1時間ぐらい後でも移動はしていませんでした。 C測定 しかし、測定しようと精密測定ソフトにかけると「SN2011ht」である、となってしまいます。 検索してみましたが、変光星のような扱いになっているのかどうかよくわかりません。 画像も見つけられませんでした(英語が苦手なのが大きい理由)。 しかし、4年も経っているのに、まだこんなに明るいものがあるのか疑問でした。 なので位置と明るさを測定しました。 D九大 山岡先生にメール 不安なので山岡先生にメールをしました。 しばらくしてメールを見ると、何と早朝なのに返事が来ていました。 「LBVにしては明るいのでみんなで首をかしげているところでした」、 「でも登録しておけばよい」とのことでTOCPに登録しました。 E国立天文台へ留守電 ずいぶん明るくなってから国立天文台に電話することを忘れていたので留守電に入れておきました。 すると数分後に折り返しの電話があり、先の事情を説明しました。 先生(お名前を確認するのを忘れました)は画像を確認したが、場所が違っているということでした。 Fロチェスターで確認 https://www.rochesterastronomy.org/snimages/を確認したところ、もう登録されていたのと 2011htの画像があり、それをダウンロードしてYIMGで自分の画像を重ねたところ 明らかにズレがあり、一安心しました。 GタイプU 11/17にはお二人の日本の観測者に確認観測していただけました。 11/18にロチェスターを見たところ、イタリアのAsiagoチームが Asiago 1.82 m Copernico Telescope にて タイプUとしてスペクトル測定してくれていました。これで超新星と確定しました。 https://www.astronomerstelegram.org/?read=8291 これによると2−3週間経過しているようなことが書かれていました。 少なくとも1週間は過ぎているようです。 11/21にSN2015asの符号がつきました。 H最近の出現は関係ない! 明るい銀河だけでなく、このような淡い銀河にも明るい超新星が出現します。 しかも2011htは約17等で発見され、約14等台まで明るくなったようです。 たった5年間に2個の出現です。ほかの銀河では2年続けてというのもありました。 しかも珍しいことに今回のは前回の出現位置とそれほど大きく離れていません。 ですので次の出現はすぐかもしれない、銀河の種類は淡かろうと楕円だろうと関係ない、 雪国であろうと晴れた日には観測、あきらめることはない、ということを思い知らされました。 I謝辞 Cartes du Cielのようなすぐれた星図ソフト、ASCOM Telescpe Driver for E-ZEUS 、YIMGの画像ソフト などたくさんの優れたフリーソフトを使用しました。 さらに、九大 山岡先生ならびに超新星の観測をされている方々にも大変お世話になりました。 このようにいろいろな方々のご協力には深く感謝申し上げます。 メダルおよび賞状を受賞 2016/03/14から首都大学東京南大沢キャンパスで日本天文学会が行われました。 その2日目の3/15に2015年に「新天体を発見、独立発見、多大な功績」があった人に対するメダルと賞状の授与式がありました。 私もSN2015asを新天体として発見したため受賞しました。 観測者や先生方と歓談は楽しいひと時でした。 2016/10/28には東亜天文学会より表彰状を受賞しました。 本来は沼津市で行われた授賞式で授与されるものでしたが、不参加のため宅配されてきました。 2014cy NGC7742(ペガスス座)発見記 観測日2014 08 31.6621(世界時) 超新星の位置 R.A. 23 44 16.03 DEC. +10 46 12.5 発見時の光度 16.2等級
ペガスス座 NGC7742 銀河に発見した超新星 SN2014cy の発見状況について書きます。 なお、特別の断りがない限り日付は日本時間です。 上の写真は超新星をくっきり浮き上がらせるために5秒露出のものを2倍に拡大、トリミングしています。 @それまで 2014/6末からそれまでの2*2ビニング 30s露出を、ビニンクなし 15s露出にした新たな画像の取得を始めました。 もちろん撮影時にはそれまでに撮影した2*2ビニング画像と比較しながらの作業です。 8月末にはペガスス座に移っていました。 ペガスス座は秋の空では銀河の宝庫で、私はここを7分割しています。 西から順に早く陰になるためできるだけ南側を先に北側は後にしています。 私の赤道儀は改造のためか少々難があり、東から西に(赤経の大から小へ)写していきます。 本当は西から東に行きたいのですけど…。 A発見日 2014/08/31(世界時) 08/31(日)深夜からペガスス座の撮影を続行しました。ペガスス座を7分割した最後の部分です。 順調にNGC52 NGC41,42 などと行き、NGC7742になりました。 15秒露出を終えた画像をいつものようにDDPをかけ、それまでの2*2ビニング 30s と比較しました。 「おやっ?」、中心部の少し左上に明るい部分が見つかり、過去画像にありません。 またいつものノイズだと思い、再撮影しました。 ところが再撮影画像にもまた現れました。 これは「オカシイ」と早速、DSS画像をダウンロードしました。 しかし、いつもDSS画像は銀河面が薄くてわかりやすいのにNGC7742は濃いのです。 仕方なく他のウェブを検索しました。ウィキペディアをはじめとして、です。 しかし、目立つウェブはほとんどHSTからの画像ばかり、こんなものは役立ちません。 B突発天体と確認 その中に http://www.skyfactory.org/deepskycatalogue/NGC7742.html(現在、索引不可) がありました。銀画面は薄くわかりやすい画像でした。 右上に恒星があります。この恒星は私の画像にもかろうじて写っていました。 でも左上の比較的明るい点はありません。 これで「確信」しました。突発天体であると。 最新のTOCPリストにもありません。つまり誰も見つけていないまたは報告していないのです。 しかし、です。小惑星などの可能性は残っています。 精密測定ソフトを使って確認作業をします。 このソフト、大変に優秀で小惑星や彗星データを取得しておき、撮影画像に該当天体がないかどうかを確認できます。 で、怪しい画像に適用、確認したところ、該当していません。 ここで、恒星、既知の小惑星・彗星でないことがはっきりしました。 先の15秒露出2枚のほかに5秒露出2枚、時間もたっており移動天体(人工衛星含む)でもないようです。 なお、このソフト、札幌の観測者の方からご提供いただいたものです。 C測定 あとはこの精測ソフトを使って位置と光度を測定します。 画像は4枚ありますので位置はそれらの平均を取ります。 光度は5秒露出の画像が銀河面の影響をほとんど受けずに測定できそうだったので、スカイ値を減算せず測定しました。 NGC7742 C2014 08 31.66205 23 44 16.03 +10 46 12.5 16.2 と出ました。 C2014 08 31.66205 は撮影日(世界時)です。次はR.A. その次はDecl. で最後は光度です。 位置は平均を、光度は1枚の画像で求めたので、このデータは日付は最後の画像の日時とし光度も書き換えてあります。 これらの一連の手順はあらかじめ作ってありました。 D国立天文台へ留守電 もう9/1(月)になっていました。少しドキドキしながら、早速、国立天文台の留守録にTELしました。 ここでもドキドキしながら宿直の担当者からのTELが入るものだと思い待っていました。 しかし、待てど暮らせどまったく電話が来ません。 E撮影続行 電話はないし、ペガスス座はもう少しで終了するので残り4枚を撮影し、さらに次のうお座を撮影、 とうとう薄明近くになり長かった8/31-9/1の観測が終了しました。 F九大へ報告 国立天文台からは連絡が来なかったため、以前にお世話になった九大 山岡先生に3:51にメールを入れておきました。 TOCPへは登録済みでパスワードがあるので自分で書き込めますが、まったく初でしたので、絶対の自信はありませんでした。 9/1(月)の9時過ぎにTOCPリストを確認したところ、あら〜!!!登録されちゃっています! でもよくよく見ると自分が観測した日時、観測光度が掲載されているのです! 9時45分すぎだったでしょうか、メールを確認したところ、山岡先生から登録しておいた由の内容。 やっぱり山岡先生が登録してくださっていました。 ここで一安心しました。 山岡先生によるTOCP報告内容 Discovery Report from Ken'ichi Nishimura, Ebetsu, Hokkaido, Japan. Instruments: 0.35-m refl. + unfiltered CCD. 15 sec * 2 + 5 sec * 2 exposures. 内容は非常に簡潔な文章ですので、説明不要と思われます。 なので露出時間だけ説明しておきます。この時期、ビニングなし画像を15秒で取得している最中でした。 最初の15秒で怪しい天体が写ったため、同じ15秒で再撮影し、ノイズでないことを確認したのが2枚目です。 今度は5秒でも写っているかを確認しました。結果的にスカイ値を減算しなくてもよいバックになったことも確認。 最後にもう一度、ノイズではなく5秒で写っているかを確認したのです。 ちなみにこの5秒露出で位置、光度、中心位置を求めました。 結果的に翌日 9/2(火)に国立天文台 相馬先生からTELが入りまして、山岡先生に登録していただいた旨を伝えました。 Gメールが… 今回の件で知り合った東京のある観測者の方とメールのやりとりがあり、9/3(水)にテキサスなどのチームが 分光観測してIIP型であると確認できた、「おめでとう」とありました。 それまでATelというのはまったく知りませんでしたが、見ますと確かに私のPSN J23441603+1046125があり 詳しい内容が記されていました。 https://www.astronomerstelegram.org/?read=6437 https://www.astronomerstelegram.org/?read=6442 H確定 これで間違いなく超新星と確定したようで、国立天文台のホームページにも登録されました。 IIAU(CBAT)から 9/4(木)にはIAU(CBAT)のマネージャーであるDr. Dan Green氏からメールが入り、オフセットを知らせよ、との内容でした。 実は山岡先生に送付したメールにNGC7742銀河の中心位置から超新星の位置までのオフセット値を入れ忘れました。 そのためTOCPリストにも当然、入っていません(実は、9/1の山岡先生からその点の指摘があり、送付していました)。 Dan Green氏からは山岡先生にも同じメールが届いていました。 先生からはきちんとした英文で、私からは実にプアな英単語でメールを送信しました。 なお、その前に前述の東京の方から超新星と確定したらCBET(有料)が発行されるので、その前に 私の機材、観測所の名称、緯度、経度、標高、住所、連絡先Eメール、電話番号、FAX(あれば)、 発見時何枚の画像を撮影したか、使用機材での極限等級、過去の同銀河の撮影の有無などの詳細情報を 送付しておいたほうがよい、とのアドバイスを受けており、これまたプアすぎる英単語の羅列で送付してありました。 (ただし、使用機材での極限等級、過去の同銀河の撮影の有無はなし) J国立天文台から 9/6(土)に相馬先生から「確定しました。おめでとうございます」のうれしい電話がありました。 CBET(IAU)が発行されNGC7742に出現した23441603+1046125の超新星はSN2014cyの符号がつきました。 (ただし、CBETは有料で私は見ていませんが東京の方からのメールで知りました) K数人の方からメールが 新発見おめでとうのメールが数名の方からいただきました。 この場で失礼ですが、改めてお礼申し上げます。 L最後に 今後も今までとまったく変わらず観測していき、また「まぐれ当たり」をできたら、と思っております。 最後になりましたが、九大の山岡先生、ソフトを提供していただいた札幌の観測者 ならびに情報提供していただいた東京の観測者の方にお世話になり心よりお礼申し上げます。
メダルおよび賞状を受賞
2015/03/18から大阪大学豊中キャンパスで日本天文学会が行われました。 その2日目の3/19に2014年に「新天体を発見、独立発見、多大な功績」があった人に対するメダルと賞状の授与式がありました。 私もSN2014cyを新天体として発見したため受賞しました。 それはうれしいことですが、それよりも本格的に観測されておられる観測者ならびに山岡先生をはじめとする 研究者の方と話をさせていただいたのが何よりです。 2015/09/07には東亜天文学会より表彰状を受賞しました。 本来は09/05に松山市で行われた授賞式で授与されるものでしたが、不参加のため宅配されてきました。

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