2022/11/05
電力増幅の
説明訂正

初心者のための3極管アンプの設計の解説です。

真空管アンプの基本設計を解説します。

記載内容や画像の無断で引用・流用はお断りいたします。

  1. はじめに
  2. 真空管に流れる電流?
  3. Ep-Ip曲線図の読み方
  4. 回路図と照合すると
  5. 電圧増幅管の増幅度
  6. 増幅度の設計
  7. 電力増幅
  8. 真空管の定格
  9. 電源部
1.はじめに
3極管の真空管を基にします。5極管やビーム管などは扱いません。 3極管はまだまだ入手できます。 また増幅は基本中の基本であるA級増幅のみです。 またオームの法則も真空管の構造も回路図の見方も知っている前提です。 知らない人は本などで改めて勉強しましょう。 ウェブより本をお勧めします。ずっとよく理解できるからです。 また単位の基本も知っている前提です。 たとえば 1A の 1/1000 は 1mA つまり 0.001A だと。 この記事を書いている私も初心者、なのでもっと難しいことを知りたい人や 知っている人はどうぞお引取りください。 また歪や雑音、周波数特性をよくしたい、ということもここの範疇ではありません。 記事は私が設計し製作した 6EM7 シングルアンプを基にします。 (この 6EM7 という球は電圧増幅と電力増幅の2つがひとつの球に入った複合管というものです。 モノクロテレビに多用されたものですので今でも安価に入手できるはずです) 初心者が設計できないのはオームの法則しか知らないからではなく、 真空管に流れる電流がわからないからだと思います。 私がそうだったから。 それがわかれば設計はできます。ただし動作するというだけではありますが。
2.真空管に流れる電流?
 
上の左の回路図を見て右図のような電圧値や回路に流れる電流量は わかりますよね? コンデンサーはありますが、直流は通りませんので コンデンサーがなくても電圧は同じです。 コンデンサーは交流だけを通します。(信号も同じ交流です。覚えておきましょう)
真空管のプレートとカソードの電圧を見てみてください。 今度はどうでしょう?ここでまったくわからなくなったのではないでしょうか? わかるのは180Vがあって1.78Vがあるってことですね。 1.78V が 1.3kΩの両端にかかっていることがわかれば、 1.3kΩに流れている電流は 1.78V / 1300 = 0.0013A つまり 1.3mA です。 これが真空管に流れている電流量です。 これがなぜ 1.3mA になるのかを理解するのがこのページの肝です。
3.Ep-Ip曲線図の読み方
ここからが本題、Ep-Ip曲線図というのが出てきます。 いきなり難しくなったように見えますが、そんなことはありません。 最初は戸惑うかもしれませんが、何回も読み直すうちに理解できるようになります。 それさえ理解できれば真空管に流れる電流がわかり、 3極管アンプの設計ができます。がんばりましょう。 Ep-Ip の Ep の E は電圧のこと、p はプレートのことです。 つまりプレートにかかる電圧、プレート電圧のことです。 同様に Ip の I は電流のこと、p はプレートのことです。 つまりプレートに流れる電流、プレート電流になります。 注意するのは Ep はプレートのみの電圧ですが、 Ip は3極管に流れている電流に なることです。つまりカソードにも(電圧は違いますが)同じ電流が流れています。 真空管の電流とはカソードをヒータで熱したときに出てくる熱電子の量なのです。 電子なので電圧の低いほう(つまりカソード)から高いほう(つまりプレート)に 引き寄せられます。 電流は電子の流れの逆になるので、プレートからカソードに流れていることになります。
少々、見にくいですが、これが 6EM7 の電圧増幅部のEp-Ip曲線図になります。 これは RCA 6EM7 の PDF から持ってきました。(http://frank.pocnet.net/です) 縦軸がプレート電流量( mA )、横軸がプレート電圧( V )になります。 中のグラフは右肩上がりの斜めに幾本かが引かれていますが、これはグリッド電圧によって どれかを選ぶことになります。-1 , -2 などは単位は V です。 グリッドはグリッド抵抗を介しますが、通常は接地されており 0V と見なします。 プレートもプラスですし、カソードもプラスの電圧をかけます。 3極管は本来はカソードを設置して(0V)、グリッドにマイナスの電圧をかけるのですが (これを固定バイアスといいます。つまりグリッドの -1V -2V とかを バイアス電圧ともいいます)、マイナスの電圧を作り出すのは面倒なので グリッドを接地してカソードにプラスの電圧をかけると、 結果的にグリッドとカソードの電圧は G < K となります。 このことわかりますか? 基本は必ずグリッドのほうがカソードよりも低い電圧にしなくてはいけません。 これは規則だと覚えておいてください。(下記に例外を書きます) もう一度書きます。 グリッドを接地するとシャーシと同じ電圧となり 0V と見なすことができます。 カソードにプラスの電圧をかけますので、結果的に G < K となるのです。 これを自己バイアスといいます。 先ほど書いたように、マイナスの電圧を作る必要がないので回路が簡単になるのです。 (ごくまれにグリッドをカソードよりプラスにするものもあります。 これはグリッドからカソードに電流が流すことになるので(=グリッド電流) A2 ドライブというものです。 普通はグリッド電流は流さないで使うので A1 級ドライブといいます。 1 は省略することが多いので A級ドライブ= A1 級ドライブになります) ようやく次は本題のEp-Ip曲線図の読み方です。
赤印を見てください。 プレート電圧はだいたい 180V 付近ですね。 プレート電流は 2mA の少し下あたりですね。 そのときのグリッド電圧はだいたい -2V を指していますね。 これが真空管 6EM7 の電圧増幅部の動作点を示しています。
4.回路図と照合すると

今度は赤印を通る直線(負荷線)を書きました。 右には先ほどの電圧増幅部の回路図をもう一度、載せました。 この赤の直線は 230V / 36000Ω = 0.0063 (6.3mA) の線なのです。 6.3mA は縦軸になっていますね。 36000Ωはプレートにつながれている抵抗値です(36kΩ)。負荷抵抗ともいいます。 36kΩにはプレート電流=0.0013A(1.3mA=図の赤丸)が流れています。 抵抗を通る前はだいたい 230V の電圧がかかっていました(図にある228V)。 36000 * 0.0013 = 47V ですね。230V - 47V = 183V となり、 図のプレートにかかる電圧、180V とほぼ一致していますね。 さらにカソードは 1.8V かかっていますね。 カソードの抵抗 1300Ω * 0.0013A = 1.7V となり、 回路上の 1.78V とほぼ一致していますね。 先ほどグリッドを接地するのは自己バイアスと書きました。 自己バイアスのときはカソード電圧はプレート電圧(B電源…下記)に含まれることに注意してください。 なので正確には先のプレート電圧は 180V - 1.8V になるのですが、 ここでは誤差の範囲になるので 180V としています。 この230Vや180VはB電源ともいい真空管を動作させるための電源をいいます。 A電源というのもありますが、これはヒーター電圧のことです。 真空管に流れる電流?の最後に これがなぜ 1.3mA になるのかを理解するのがこのページの肝です。 と書きました。わかりましたか? ※この 1.3mA はまったく入力に信号が入らないときでも(無信号)常時流れる電流値です。  A級ドライブ(正確には A1級ドライブ)のとき、直流動作ではこの電流が常に流れます。  (さらに電圧増幅部では必ずA級ドライブにします) もうひとつのやり方。 動作点から計算するやり方もあります。 180V / 36000Ω = 0.005 (5mA) この 0.005A に動作点のだいたいの値 0.0013A を加えます。0.0063A です。 0.0063A をグラフの左端の電流値にします。その点と動作点をまず線で結びます。 その線を横軸に延長するとグラフのとおりだいたい 230V 付近にたどりつきます。 このように動作点を決めて、あまり急角度にならない直線(グラフの赤線)になるような 負荷抵抗の値を決める方法もあることがおわかりになりますか? こちらのほうが現実的なやり方かもわかりません。 後者のやり方の場合の負荷抵抗は、当然、動作点のプレート電流が流れますので、 その電圧を加えると電源側の電圧が決まります。 普通は出力管のほうが高い電圧が必要ですので、まず電圧増幅管の必要な電圧を求めて それから出力管の電圧を決めて、最終的にどの程度の電源トランスが必要かを決めるほうが 現実的なのです。 電圧増幅管の必要電圧に落とすのはデカップリング回路という抵抗とコンデンサーの組み合わせが 必要です。 6EM7 回路図のプレートを電源部のほうに戻っていくと 10KΩ(5W)と47μF(450V)および出力管の1KΩ(10W)と100μF(450V)がそれです。 信号はプレートからこのデカップリング回路のコンデンサー(電圧増幅部は47μF(450V))を通り カソードのコンデンサー220μF(16V)を通るように真空管を中心にループします。 ですのでこの3点のアースはなるべく近くになるようにする必要があります。 これが離れていたり、出力管の近くや電源部の近くにあると雑音やハムの原因になり、クロストークが悪化します。 真空管アンプの事例を見るとアース母線を張ってそこにアースを落とす方法が多く見受けられますが、 そのやり方では雑音は低下しません。3点を配線はなるべく短く近くにアースします。 見かけは悪いですが雑音はかなり低くなります。(ニアバイアースといいます) 整理すると(また逆に書きますと) ・プレートにかける電圧を電源トランスの2次側電圧から高電圧の出力管を決め  もっと低い電圧増幅管の電圧の上限値がだいたい決まる。 ・プレート電圧(B電圧)を決めたら動作点を決めるためにプレート抵抗値を決める。 ・プレート抵抗を決め、Ep-Ip曲線図に動作直線を描くとプレート電流が決まる。 ・さらに実際にプレートにかかる電圧(プレート抵抗を通った後の電圧)がわかる。 ・Ep-Ip曲線図からグリッド電圧がわかる。 ・自己バイアスのとき、グリッド電圧がわかれば、プレート電流値が決まっているので  カソード抵抗が求められる。 となります。 ただ実際に電圧を測定すると、上の回路図や計算からもわかるように完全に一致はしません。 これはテスターの誤差、測定時の電源電圧、抵抗誤差、真空管の誤差や固体誤差などが 生じるからです。大きな違いはミスですが、小さな違いは誤差とみなしてかまいません。
5.電圧増幅管の増幅度

上図の緑の線をご覧ください。 グリッドの電圧がだいたい 0〜-4V のとき、プレート電圧は105V付近から230V付近になっていますね。 グリッド電圧の中心は-2V付近でプレート電圧の中心は180V付近です。 この幅が増幅度合いになります。 つまり入力に ±2V ぐらいの電圧が入ると出力は230-105=125V程度の幅で出力されることを意味します。 半分として ±60V となり、だいたい30倍程度の増幅度となることがわかります。 なお、-4V 付近でプレート電流がほぼ 0 になっていますが、これはたまたまです。 -2Vを中心としたときプラス側(0 〜 -2V)、マイナス側(-2V 〜 -4V)の間隔は同じになるようにします。 同じ間隔にしたときたまたま 0A になっただけです。 CDなどの場合、私の手持ちのCDプレーヤー DENON DCD-1650AR では2V、 SACDのPIONEER PD-10は200mVrmsの最大出力となっています。 なので中心を-2V付近にすれば間に合うことになります(実際には約-1.8V)。 設計はそのように行います。ただし、1V以下にはしないでください。 詳しくは本を見てほしいですが、グリッド初速度電流というのが発生し、具合が悪いからです。 また斜めの線が比較的等間隔に並んでいるあたりが歪が少ない動作点になることも覚えておきましょう。
6.増幅度の設計
6EM7の電圧増幅部のプレート損失(Plate dissipation)は 1.5W(max)となっています。 動作点のプレート損失は 180V * 0.0013A = 0.234W ですので十分な余裕があります。 ところで動作点や負荷線はたったひとつではなく無限に存在します。
上図はプレート負荷抵抗は前述の回路と同じ 36KΩ ですが、プレート電圧を変化させたときの負荷線です。 水色は 250V に、青色は 200V にしたものです。 水色 250V / 36000Ω = 0.0069A 青色 200V / 36000Ω = 0.0055A となります。 グリッド電圧を -2V ( =自己バイアスですのでカソード電圧 -2V)であっても -2V のグリッドの右肩上がりの斜め曲線に水色点、赤点(オリジナル)、青点のように 交差するところが変わり、動作点が変わることがわかります。 青点はだいたい 160V 0.001A少々、水色点は 185V-190V 0.002A弱といったところでしょうか。 なので青点では B電圧はオリジナルの約230Vでは大きすぎ、 プレート負荷抵抗 36KΩ での電圧降下は 0.001 * 36000Ω = 36V ですので、 B電圧は 160V + 36V = 196V 程度にします。 水色点は同様に電圧降下は 72V 、 B電圧は 260V 程度も必要になります。 下げることはできますので 196V は供給できます。 でも260V は出力管よりも高くなりますので供給は大変難しくなります。 (整流後は約300V ありますので、できますが回路は大きく変更になります) 動作が変わってきますので出力管の動作に変化がない(電流が変わらない)ときでも 電圧増幅での電流が変わりましたので、1kΩ 10W 10KΩ 5W も変わることになります。 正確には整流直後の 311V の電圧も全体の電流が減れば高くなり、増えれば低くなります。 つまり全体のバランスも変化するのです。 またどちらもカソード抵抗を変更する必要があることはいうまでもありません。 青点では 2V / 0.001 = 2KΩに、B電圧がクリアーできれば水色点は 2V / 0.002 = 1KΩになります。
今度の図はプレート電圧は前述の回路と同じ約230Vですが、負荷を変えたものです。 今までのことがわかれば簡単にわかりますね。 B電圧は同じ約230V ですが、プレート負荷抵抗が変わりますので、 紫は 230V / 56000Ω = 0.0041A となります。 よく見ると動作点の紫点が変わっていますので、カソード抵抗は 2V / 0.00055A = 3.6KΩ に、 オレンジは 230V / 30000Ω = 0.0076A となり、オレンジ点が変わり、カソード抵抗は 2V / 0.0018 = 1.1KΩ となります。(計算数字はグラフからだいたいの値を読み取ったものです) もちろん電流値が変わりますので上記と同様に全体の電圧が変化します。 今までグリッド電圧はすべて -2V に取りましたが、これも当然、変えてもまったく問題ありません。 -1V 程度や -4V のような上下がいびつになる(-2 の上下ということ)極端な値ではだめです。 さらに動作点や負荷が変われば回路全体のバランスが変わりますが、 電圧増幅部ではさほど大きな変化ではありません。 これは所詮流れている電流値が小さいためです。 要はいろいろな動作を選ぶことができる、動作が変われば全体の電圧配分も変わる、ということ理解してください。
7.電力増幅

上図は 6EM7 の電力増幅部のEp-Ip曲線図になります。 電力増幅ではプレート抵抗ではなく、トランスが負荷になります。 トランスでは ・巻き線の直流抵抗は小さいので電圧降下はごくわずか ・負荷はインピーダンスで表される(例 1次 5KΩ : 8Ω 2次) ・このインピーダンスは絶対値ではなく2次側のインピーダンスで1次側の値も変化する (例 ノグチトランス PMF-10Ws では 2.5KΩ : 4Ω は2次側が 8Ω になると 5KΩ : 8Ω 、 3.5KΩ : 4Ω は2次側が 8Ω になると 7KΩ : 8Ω 、 2.5KΩ : 8Ω は2次側が 16Ω になると 5KΩ : 16Ω 、 3.5KΩ : 4Ω は2次側が 8Ω になると 7KΩ : 8Ω 、 3.5KΩ : 8Ω は2次側が 16Ω になると 7KΩ : 16Ωとなる。 この2次側の 4Ω 8Ω 16Ωというのはそれぞれのインピーダンスのスピーカーが接続されたことになる) ・2次側の出力電圧はインピーダンス比ではなく巻き線比で変化する。 ・インピーダンス比と巻き線比は2乗の関係である (例 3.5KΩ : 8Ω なら巻き線比は 約21 : 1 となる。 3500 / 8 = 437.5 , √437.5 = 約21 5KΩ : 8Ω なら巻き線比は 25 : 1 となる。 5000 / 8 = 625 , √625 = 25 ) ・2次側には 1 / 巻き線比 の電圧が出力される。 ・シングルアンプではトランスのコア(鉄芯)が大きいほど豊かな低音が出る=インダクタンスが大きいという コアが大きい=重たいトランスなので大きくて重たいトランスほどいい トランスはこのような少し複雑な組み合わせになることを覚えておいてください。 1/21(3.5kΩ:8Ω)になるのなら、出力トランスなど用いずに直接、スピーカーを接続したほうがいいのに、 と思うかもしれません。 しかし、スピーカーのインピーダンス 8Ω は出力管の負荷になるのです。 計算して先のグラフに負荷線を書くと(200V / 8Ω = 25A)ほとんど垂直の負荷線になるのがわかりますね。 つまり電圧の増幅がほぼ行われないことになるのです。。 そのためのインピーダンスマッチングのために出力トランスを用いるのです。 今までのことを踏まえて、Ep-Ip曲線図に動作点や出力部の回路図を加えますと  
赤丸点が動作点でグリッド電圧=約30V プレート電流=約50mA です。 負荷は抵抗ではなく出力トランス 3.5KΩ になりますので、赤丸点を通るような赤の直線が負荷線です。 ところで負荷線グラフの最大側の 380V という値に不思議さは感じませんか? 知識が浅いため意味合いは説明はできませんが、負荷線は交流つまり信号について記述しており、 こういう電圧になるのはトランスのコイル(インダクタ)として磁界の変化を妨げるように働く 自己誘導作用のためです。 200V 50mA は回路図からプレートに230Vがかかりカソード電圧は30Vの自己バイアスです。 (下記の計算はすべて「約」です) 図の赤点は 230V - 30V =200V 30V / 610(Ω)= 0.05A です。 赤線は負荷線ですがその最大値を求めます。 0.05A * 3500(Ω)= 175V です。このときの 0.05A は先に求めた電流値です。 3500(Ω)は出力トランスの1次巻き線の負荷値になります。 この 175V に自己バイアス分を除いたプレート電圧 200V を加えます。 200V + 175V = 375V となりグラフの赤線のX軸になっています。 負荷線は直線ですのでY軸側に引きますと図になります。 6EM7 の最大プレート損失は 10W ですので私のアンプの動作では若干、オーバーですが GE の球は丈夫なようです。 6EM7 のEp-Ip曲線などの動作特性は下記にあります。 https://frank.pocnet.net/sheets/049/6/6EM7.pdf
8.真空管の定格
真空管には ・最大プレート電圧 ・最大プレート電流 ・最大プレート損失 があり、どの値もその上限を上回ってはいけません。すぐに寿命になってしまいます。 自己バイアスのとき最大プレート電圧にはカソード電圧を含んでいませんので、 その分を上乗せすることはできます。 最大プレート損失はプレート電圧 * プレート電流で求めます。 どれも余裕を持ったほうが安心して使用できます。何しろ真空管は今は貴重品です。 ・ヒータ電圧 ・ヒータ電流 これは電源トランスになりますが、こちらは余裕を持つことはなく定格で使ってください。 とくに電源トランスの電流量に余裕がありすぎるとヒータ電圧が高く出てしまいますので注意が必要です。 そのほかに相互コンダクタンス、増幅度、プレート内部抵抗などがありますが、本などから勉強してください。
9.電源部

PMC-170M 電源トランスは 290V 170mA を使います。ほかの端子は高く出すぎます。 170mA 取り出せますが、このアンプのように 100mA 少々という少な目のときは高い電圧が出力されます。 どの程度になるかは実際にやってみないとわかりませんので、 設計ではおおよそ 1.1倍程度と見積もり、高すぎるときはチョークコイルを通った後で抵抗を入れます。 整流管は定格電圧が使用する電圧より高いものを使用してください。 最大電流も同じです。 ヒータは 6.3V 0.9A 使用しますので、それが間に合うものを使用します。 消費電流が小さいと電圧が高く出ますのでなるべくちょうどよいものを使用します。 なお、6.5V 程度なら差し障りありません。低すぎるのは問題です。 整流管のヒータは 5V です。 5Y3 は 2A 使用しますので、電源トランスのヒータ電流は間に合うようにします。 なお、倍電圧として利用します(要は回路図のとおり)。 整流管、増幅管のすべてのヒータ配線は交流を流すため、必ず捻ります。 さらに片側はアースします。 このアースポイントは電源トランス付近であればいいのでバラバラでもかまいません。 PMC-1520H チョークコイルは最大 200mA DCR=125Ω(直流のときの抵抗値)です。 インダクタンスが 15H ありますので十分なものです。 コンデンサーは電源の交流分(倍電圧なので倍の周波数)であるリプルが取りきれる値にしますが ここはいろいろな回路を参照すれば十分です。6EM7は回路図の値と使用法で十分です。 製作時、アースポイントをどこに設定するかで雑音がかなり違ってきます。リプル対策です。 整流管直後は無論ですが、チョークコイル通過後もかなりのリプルがあります。 100μF2個を含めて電源トランス2次の 0V 点になるべく短い配線で戻し、0V 点近辺にアースにします。 ここはハム(倍電圧整流後なので倍の周波数成分)がすごいので、2本の配線は必ず捻ります。 このアースポイントには増幅部のアースを持ってきてはいけません。 ここもニアバイアースを心がけてください。アース母線などはもってのほかです。 330KΩは電源オフの後、回路上のコンデンサーに蓄積された電気を放電させるためにあります。 なお、もちろんここは垂れ流すだけですが、電流が流れますので W数や総電流量に加えます。 これを置かないとオフ後に相当な時間が過ぎても放電されないため テスターで電圧測定する際に感電する恐れがあります。高電圧なので忘れずに。 最後にアンプ内部にある金属という金属はすべて片側をアースしないといけません。 アースせずに浮いた金属があると内部の電磁波が悪さをして雑音悪化の要因のひとつになります。 真空管ソケットの中央部の金属や使わっていない端子なども同じです。 VRのケースも取り付け時にシャーシーに確実に接触するようにします。 製作時にテスターでシャーシーと金属の導通を確かめながら製作するといいでしょう。 ですのでシャーシーに非金属を使うことはもっての外です。


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