「まったり散歩道」の香月様のSS♪勿体無くも素敵な文章を絵に付けて下さいましたvvv〉

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にわか雨

 「……降ってきたか」

自分の肩に落ちてきた大粒の雫を目にして、氷室は厚い雲の立ち込める空を見上げた。
むっとするように湿度が上がり、先程から雨の匂いがしていた。
大粒の雨が次から次へと落ちてくる。
あまりに突然のにわか雨だ。
大粒の雨は予想外の勢いで激しさを増していく。

 氷室は行く手に視線を向け、やや大股で歩き始めた。
職員駐車場までは少し距離がある。車に着くまでにずぶ濡れになりそうだ。
ぱたぱたと軽い足音が追いかけてくる。自分の歩幅はどうやら少し大きすぎるらしい。
氷室は振り返り、一歩ほど後ろを小走りに駈けてくる少女へと目を向けた。

 カバンを上にかざして、雨を少しでも凌ごうとしているが、勢いを増してくる雨に晒された彼女の髪がぴたりと額に張り付き、襟の上には毛先から落ちた雫で模様が描かれている。
氷室はすぐさまスーツの上着を脱いで頭から被り、彼女を抱き寄せて上着の内へ彼女を入れる。きょとんとした表情で見上げられて、氷室はコホンと咳払いした。

「…これ以上濡れたら風邪を引く」

 激しい雨から氷室学級のエースを守るのは担任の役目であるはずだ。
自分に対してそう言い訳した氷室の目の前で、彼女の額から雫が流れた。
つぅっと滑らかな軌跡を描いて水滴が走る。
氷室は無意識にその雫を指で拭った。
彼女の唇の端に触れようとした雫の行く手を遮った氷室の指がそのまま彼女の唇に触れる。
わずかに開いたその柔らかな唇に目が釘付けになった。

 「……先生?……」

小さな呟きに氷室はハッと我に返る。
彼女の肩を抱くようにして身を寄せ合い、自分は一体何をしていたのか。

「…………急ぐぞ」
「…はい」

氷室の掠れた声に含まれた動揺は激しい雨音によってかき消された。
それはにわか雨の降ったある放課後の出来事。

雨の中の二人

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香月様、ありがとうございました〜〜〜!!!
感激です。光栄です。嬉しいです。私の拙き絵に勿体無いです!
私もこんな風に先生と一緒に帰りたい〜〜。くぅ(>v<)
ああ、描いて良かったです!