〜卒業の日 主人公サイド〜
『永遠と一日』

(人間関係は、一方の意思で成立するものではない。
 なぜ、このヒロインはそこに気が付かないのか……)

 高校三年の文化祭。
 学園演劇で、氷室先生とわたしは主役の二人を演じた。
 演劇経験がまったく無いわたしに、先生はなにかと指導してくれて。
 そんな中、二人で台詞の読み合わせをしていた時に、
 そんな疑問を投げかけた先生の言葉を思い出す。
 ヒロインは本当に気付いていないのだろうか?
 人と人との繋がり……
 自分の想いと相手の想いが複雑に混ざり合い錯綜し、すれ違い……
 そして、時には触れ合いさえしないで終わる事を……

「諦めないわ。明日は明日の風が吹くのよ。」

 明日に希望を抱くヒロイン。自分自身を励ますように。
 強いからそう思えるのか、そう思う事で強くなれるのか。
 糸はもう切れてしまっているのに、それでも、再び結ぶ事が出来ると信じて
 ……そう信じて

(一方の意思で成立するものではない)

 わたしがどんなに想っていても、
 それはただ虚しく先生の身体をすり抜けていくだけかもしれない。

 わたしは強くなれるだろうか?
 わたしに向けられるその優しい瞳が、ただ『生徒』を映しているだけだとしても……

 たとえ、受け入れられずに終わっても、それでも立っていけるくらいに…………

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