綾ワイナリー
〜日本最南端の観光ワイン工場〜
外観

宮崎県の南部に位置する綾町は、標高100m以上の内陸に位置する町です。意外に平地が多く、田んぼもあちこちで見られますが、同様に少なくない畑で、棚式の栽培が行われている葡萄の樹を頻繁に見かけます。
その綾町屈指の観光名所である酒泉の杜は、平日でも観光バスがひっきりなしに行き交いするという盛況ぶりです。この施設の中には数々の醸造所や、それに伴う色々な酒類が販売されていますが、そのなかにある教会風の白い建築物が目を引きます。
雰囲気は教会のようでありながら、どことなく醸造所のようなところもあるこの建物が、日本で最南端に位置する綾ワイナリーです。

歴史
親会社は有名な雲海酒造です。1967年に五ヶ瀬酒造有限会社として設立し、1978年に現在の雲海酒造と社名を変更しました。設立当初からの焼酎会社で日本初のそば焼酎”そば焼酎雲海”により一躍有名になりました。雲海酒造の焼酎は全国で販売されていますが、独特のボトルに入った高級そば焼酎”マヤンの呟き”などを目にした人は多いでしょう。他、麦焼酎”大河の一滴”など有名な焼酎を生産しています。
その雲海酒造が経営している一大観光施設が酒泉の杜で、そのなかに綾ワイナリーがあります。この酒泉の杜は主力である焼酎はもちろん、日本酒やビール、ワインといった雲海酒造の商品が全て販売されている日本唯一のお酒のテーマパーク。1996年に建設されて以来、綾町でも屈指の観光名所として観光客の姿が絶えません。

綾ワイナリーは、1993年から醸造を開始と若いワイナリー。南九州で初めての観光ワイン工場として設立されました。
総生産量は約30万本。原料はほとんどが宮崎県の葡萄で、ナイアガラなど一部の原料は山梨など県外のものを使用しています。輸入ワインのブレンドは行っていません。
ラブレスカやハイブリッド品種によるワイン醸造が主体で、観光客向けを強く意識したラインナップです。葡萄の味を活かすために、非加熱充填(火入れをしない)によりフレッシュなワイン造りを目指しています。また、国産のシャルドネによるワインもあるなど、本格ワイン造りにも力を傾けています。
宮崎県の南部、実質的に日本最南端のワイナリーであるため高温多雨、さらには台風の直撃コースという重度のハンデを背負っており、けして恵まれた環境にはありません。それでも、地元農家とともに屋根の下や温室による栽培などで、何とか悪条件を克服する努力が行われています。
施設の概略
酒杜の杜そのものが一大テーマパークなので、細かい紹介をすると長くなりすぎるためワイン関連についてだけ記述します。
ワイナリーの販売所では、ワインはもちろん他にも綾町の特産品やおみやげ物が大量に販売されています。全体に落ち着いた雰囲気の内装ではありますが、いくつもある販売用のカウンターとレジが盛況ぶりを物語っています。
販売所とは別棟の建物のほうに醸造所があり、ここの見学ルートから醸造施設を眺めることができます。入り口には自動演奏のピアノが音楽をかなでるなど、高級感があり、醸造所としては異色の雰囲気です。
見学ルートからは、ワインの醸造工程の順番に、圧搾機やステンレスタンク、瓶熟しているセラーをガラス越しに見ることができます。ルート上には宮崎県のどの地域でどういった葡萄を栽培しているのかという説明もあり、県内の葡萄栽培の状況をうかがい知ることができます。

蛇足ですが、焼酎や日本酒の試飲可能な”杜の酒蔵”という施設にもいってきたのでそのことを記載します。ここでは雲海酒造の焼酎と日本酒の有料・無料試飲を行っています(日本酒はあまり多くありません)。
高級そば焼酎「マヤンの呟き」も有料で試飲できます。飲んでみると、そばの香りなどはまったくなく、ライチのようなフルーティーで複雑な吟醸香のする焼酎で驚きました。訪れたなら試飲してみることをおすすめしたい銘柄です。

酒泉の杜の他の施設については公式ホームページを参照してください。


葡萄畑
敷地内にある葡萄畑では主にブラックオリンピアという生食葡萄を栽培しています。ブラックオリンピアは綾町で栽培がさかんな生食用葡萄で、オリンピアという生食用葡萄の改良品種。大粒の品種で、名前にブラックとついていますががそれほど強い黒色の葡萄ではありません。
キャンベル・アーリー、デラウェアやベリーAといった原料に関しても農家の契約栽培か農協によって入手しています。

このように原料は生食用葡萄がメインなのですが、五ヶ瀬町で栽培されているシャルドネも使用しています。ここは宮崎の北西に位置するかなり冷涼な高地ですが、農家の方々の努力と地勢が良いことから良質のシャルドネが収穫されています。

直営レストラン
一大観光施設なので、レストランや食事ができる場所だけでも5ヶ所もあります。お土産ものや露店も多く、かなり選択の幅は広くなります。
詳細については酒泉の杜の公式ホームページをご覧ください。
銘柄: 綾ワイン ロゼ キャンベルアーリー
生産元: 綾ワイナリー(雲海酒造梶j
価格: 1050円
使用品種: キャンベルアーリー
備考 ノンヴィンテージのロゼワイン。
薄く少し茶色がかった朱色。香りはグレープジュースと、オレンジピールの強い香りがあります。甘口のワインなので糖度は高く、含み香には爽やかな柑橘系の香りと狐臭を感じます。酸味はそれほど強くありませんが、全体にバランスがよいワインです。強い香りのワインで個性的ですが、それほど人を選ぶタイプではない気がします。
個人的には綾ワイナリーに行ったならば購入を考えてよいワインだと思います。
飲んだ日: 2004年10月9日
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テイスティング
販売されているほとんどのワインを無料で試飲することが可能です。ワイナリーに置かれた小さなテイスティング用の樽から、使い捨てのカップに入れての試飲になります。

ナイアガラ:値段は1575円。使用している品種のわりには軽い狐臭とわずかにマスカット香があります。苦味と甘味を強めにかんじ、余韻にはこの品種特有のグレープジュースのような香りを感じます。山梨県産の葡萄を使用。

ブラックオリンピア:値段は約2100円。綾ワインを代表する銘柄です。が、少し狐臭は確認できるものの全体に香りは少なく、酸味もなく味わいも薄くあまり特徴がありません。

巨峰 :1470円。香りも味も非常にぼやけていて個性は感じられませんでした。かなり薄いので生食用の転用かもしれません。

キャンベルアーリー:値段は1050円。詳細は管理人のワイン記録を参照してください。個性と価格からいって、お奨め度の高いワインです。

マスカットベリーA :1260円。他醸造所のベリーAと比べると、香りも味も鮮明ではありません。10度程度まで冷やして飲むと、爽やかで良いかもしれません。

シャルドネ:1575円。五ヶ瀬町で栽培されたシャルドネを醸造したワインです。アップル、トロピカルフルーツの香りと、きちんとした酸味のある本格ワインです。飲んだ際にはその低価格と内容の良さから、輸入ワインのブレンドを疑ってしまいました(^^)。辛口の本格ワインがお好きな方には迷わずおすすめ致します。

生食用の品種に関してはいまいち特徴の少ないワインが多いといえます。
そのなかでもキャンベル・アーリーとシャルドネはかなり印象が異なります。キャンベル・アーリーは好き嫌いは別にして、個性的なキャラメル香のするワインになっています。この品種はいくつか他の醸造所のものも飲みましたが醸造所ごとに極端に品質に差がなく、特性が良く出ているのでなかなか面白い品種のように思います。
シャルドネはまさに白眉です。品質もそうですが、これだけの低価格で飲めるシャルドネのワインが新興地の九州にあるというのは本当に驚きでした。
購入方法 
ワイナリーから直接購入、電話やFAXによる注文を受付けています。地元のスーパーやデパート、酒販店でも多くの綾ワイナリー製のワインをみかけます。ただ、生産量の少ない銘柄に関してはやはりワイナリーに問い合わせたほうがよいでしょう。

ワイナリーアクセス
酒泉の杜の公式ホームページにアクセスマップが掲載されていますから、そちらを参照してください。


総論
設立目的が観光用に設立したワイナリーなので、主力商品は観光客向けのラブレスカやハイブリッド品種を使用した甘口ワインです。その品質に関しては、個人的には生食用の品種を使っているとはいえあまり満足のいくものではなかったように思います。あくまで想像ですが、水っぽいニュアンスからは生食用として栽培されて市場に出回らなかった葡萄が使用されている印象をもちました。
そんななかにも本格ワインの名に恥じないワインもあったのもまた事実で、なかなか簡単には割り切れるワイナリーでありません。
品質の問題は別にして、観光用ワイナリーとはいえ出来る限り地元の葡萄を使用してのワイン醸造をするという姿勢は立派です。地元の農家と結びつくことによって、地域産業の育成といった部分も担っているはずですから地域への貢献度の高いワイナリーといえるのではないでしょうか。

綾ワイナリー、というよりテーマパーク「酒泉の杜」はお酒好きには興味深いテーマパークなので、宮崎県に行ったなら立ち寄ることをおすすめします。さすが焼酎メーカーだけあって焼酎の銘柄も豊富なうえ、そのほとんど試飲できるというのは嬉しい限り。焼酎が好きならば迷うことなく行きましょう。

ただし、こと綾ワイナリーに関しては現状ではワインも設備もいまいち個性が見えにくいワイナリーという気がします。
非常に雨が多い気候など重度のハンデを背負っているだけに、地元農家と協力して生食用の品種といえどワイン醸造を念頭に入れた栽培を行わいと、なかなか品質面での存在感の向上は難しい気がします。醸造技術は飲んだ限りではハイレベルだったので、雲海酒造の余力を栽培に向ければまだまだ伸びるように思います。
ワインの品質向上が著しい九州だけに、その存在をアピールできるワイナリーになれるのか注目です。
外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  直営レストラン  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
意外にも照明の暗めの落ち着いたテイスティングルームです。ワインの保存を意識しているのでしょう。
非常に醸造所らしくない高級感溢れる表玄関部分。しかし、2階にあがれば醸造施設が並んでいます。。
社名  雲海酒造(株) 綾ワイナリー
住所 宮崎県東諸県郡綾町南俣1800-19 電話番号 0985-77-2222
取寄せ 電話・FAXによる注文可 HP http://mori.unkai.co.jp (酒泉の杜HP)
自社畑あり 契約栽培畑あり ツアー等 訪問自由
テイスティング可(無料)
栽培品種 デラウェア、シャルドネ、マスカットベリーA、巨峰、ブラックオリンピア、キャンベルアーリー、他 営業日 年中無休
営業日:8:30〜19:00
★  2004年5月23日
備考:国産葡萄のみ使用、日本酒・焼酎醸造元、「酒泉の杜」敷地内