大和葡萄酒
〜無添加ワインからビールまで〜
外観
大和葡萄酒は勝沼でも中堅クラスのワイナリーとしてなかなかの規模を誇ります。
醸造所の近くにいくと『甲斐ドラフト』の看板。が、本社はけっこう見落としやすい場所にるのが困りものでした。近くにあるコンビニの隣から入る細い道にあるうえに、ワイナリーの場所を示す看板も目立つところについていないので通り過ぎやすいのです。
自動車で入るとまず、勝沼のワイナリーでは珍しい本社ビルが。そのすぐ近くにバースタイルの綺麗な試飲販売所や工場が立ち並びます。
その威容には驚かされるでしょう。
 
歴史
大和葡萄酒は、醸造開始が1913年となかなかの老舗。この醸造免許そのものは第十葡萄酒という共同醸造所のものでしたが、それを法人として萩原家が買い取ったのが現在の大和葡萄酒の始まり。もともと萩原家は現在の山梨市落合にて250年前から代々油問屋を、庄屋を兼ねて営んでいました。しかし、明治の文明開化と共に灯り用の油屋はすたれ、当時の当主である保太郎が農地を利用し葡萄を作り、ワイン造りを始めたところから萩原家とワインとのつながりが生まれます。 色々なワイナリーがありますが、前身が油屋であったというのは珍しい例。

生産本数は総計で50万本とかなりの規模。無添加ワインの製造や、低価格の商品には海外ワインをブレンドしていますがそれでもなかなかの数量です。これに加えて、ワイナリーと同じ敷地内でビールも製造する手広い経営ぶり。営業範囲も広く、ほぼ全国を網羅易しているのですから、かなり営業には力を入れているといっていいでしょう。
営業だけでなく栽培面にも力を入れており、長野県の四賀村にもワイナリーを所有。そちらでは主にヨーロッパ品種の赤ワインの栽培・醸造、本社のある山梨では甲州のワインを主体として醸造を行っています。近年、不可能ないしは採算に合わないといわれていた甲州の垣根栽培による白ワインをリリース、さらに2004年には赤ワインで「Japan wine challege」で最優秀日本ワイン賞を獲得。自社ホームページにも謳われていますが、その受賞暦は大変なもので、数多くのコンテストに参加する姿勢も含めて、かなり積極性の高い姿勢を貫いています。


施設の概略

昔は定食屋と間違うようなテイスティングルームでしたが、改装後はバースタイルのおしゃれな場所に変わりました。基本的に生産工場であるため、これ以外は特に訪問客を意識した施設はありません。
銘柄: 古代甲州2003
生産元: 大和葡萄酒
価格: 1582円
使用品種: 甲州葡萄
備考 色合いは薄く黄色。香りは洋ナシの他、その後ろにデリシャスリンゴ、杏といった熟した香り。時間とともに洋ナシが主体となります。
味わいはアタックは甲州としてはなかなかのインパクトがあり、完全に辛口といっていいワインながら味わいもなかなか。少しだけ皮のニュアンスがあり、後半にかけてはしっかりした酸味と、洋ナシ主体の余韻が残ります。

コストパフォーマンスからみても良いレベルの白ワインといえ、特に食事とともに楽しみたい方にはおすすめ。
飲んだ日: 2007年1月16日


外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  ツアー  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
葡萄畑
自社畑はありますが、拡散していることもあって見学は大変。シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンといった品種が栽培されています。
有名な100年以上の樹齢をもつ甲州の場所は町内にあるので、ここは見つけやすいでしょう。「中央園」と書かれた看板が目印。
また、垣根栽培による甲州を商品化したという快挙を達成しているので興味があるところですが、残念ながらまだ行っていないためコメントできないことをお詫びいたします。

ツアー
あらかじめ申し込めば無料の工場見学ツアーを行ってくれます。
社員が一人ついて工場の設備などを醸造の順番に沿って説明する形式で、少なくとも私の場合には醸造の担当の方によるツアーでした。
まずはビールの製造施設へ。ここはワイナリーの敷地内とはいえ、まったく別の棟になっており製造から瓶詰めまで完全に独立した製造工場となっています。こちらはビールの醸造器具に詳しくないとなかなか情報をつかみづらい場所ですが、焙煎の器具などをみる限りではそこまで大量生産といった雰囲気はありません。

ここの紹介が終わるとワインの工場へ。古いワイナリーだけあって施設や器具は総じて新旧入り混じった状態なのですが、歩いていると敷地がかなり広いことに気づかされます。おのおのは巨大な棟ではないにも関わらず、棟から棟への外での移動距離が長いというのは珍しいパターン。スペースの使い方が贅沢なのでこうしたことが起こるのですが、50万本も製造するとなるとせまっ苦しいところで製品を移動させるよりは余裕を持った方が合理的かもしれません。

案内されたセラーには瓶詰めされたワインや樽が、生産量を誇るかのようにうずうず高く積み上げられていました。醸造所の圧搾器具等はおおむね最新ですが、目を引いたのは巨大な濾過機。最初は何の機材だかさっぱりわからなかったのですが、大量の酒かすのようにみえるものが付着していたので、濾過機かなと思い聞いてみるとそのとおりでした。

最後に自動瓶詰め機のある場所まで行くとツアーは終了。この瓶詰め機は半クリーンルーム状態になっている特色があり、これをみると工程に細心の注意を払っているのがわかります。

工場見学を申し込んでおかないと、醸造器具からセラーまで見学することができないので、こうった事柄に興味がある方は要予約。
テイスティング
販売されているワインを数銘柄選んで試飲することが可能(ビールは不可)。社員がカウンターごしにサービスする形式ですが、必ずしも醸造などに詳しい人ばかりが担当ではないようなのでマニアックな質問などがあるならツアーで醸造の方に聞いたほうがよいでしょう。

鳥居平甲州 2002:価格は2100円。香りは洋ナシや白い花が主体ですが、おとなしめ。酸が強いわりには味わいはやや軽めといったところでしょうか。糖度を残した造りなので完全にドライというわけではなく、また樽による香りもひかえめについています。甲州最良の区画と言われる鳥居平でしかもグッドヴィンテージのわりには厚みに欠けるのが残念ですが、内容のある甲州。

古代甲州:詳細は管理人のワイン記録を。

コリーヌ・ゴールド・ルージュ:2117円。山梨県のカベルネと長野県のメルローをブレンドした赤ワインです。味わいはやや軽めなのでライト〜ミディアム、果実香よりもししとうやピーマンといった香りのほうがより強め。アタックはやや強めで、含み香は青い香りとベリー系の香り、また樽のヴァニラ香もついています。コクはなく、後味にかけては軽めという印象。

一升瓶のワインも販売しており、こちらには価格を安くするために海外産ワインをブレンドしたものもあります。
白ワインはほとんどが甲州、あまりデラウェアなどラブレスカ系葡萄を使った銘柄がないのはこのクラスのワイナリーとしては珍しいこと。
赤ワインは山梨県産と長野県産のものをブレンドしたものや、各産地を銘打ったものなどがあり、こちらのヴァリエーションは白以上に豊富といえるでしょう。
ワインの中身以外で特筆することの一つとして、ラベルの多くが和紙によるものというのが挙げられます。これは障害者施設に製造を依頼しているもので、全て手づくりによるもの。どこかで和紙ラベルのワインを見たならば高確率で大和葡萄酒である思ってよいでしょう。
他、無添加ワインなども数銘柄販売されています。

購入方法 
ワイナリーの販売所から直接購入、ホームページからの注文を受付けています。取り扱い店等に関しては公式ホームページを参照してください。現在はホームページもリニューアルされ、だいぶ見やすくなっています。

ワイナリーアクセス
公式ホームページに詳細な地図が載っているのでそちらを参照してください。



総論
営業を頑張っており、無添加ワインだけでなく通常のスティルワインも注意しているとスーパーやら酒屋さんでも見かけることができます。
となるとさぞ充実した巨大な施設が、と考えるのは普通。そして、そのうち半分は当たります。
生産工場、という側面だけならば文句無しに巨大、とはいわずとも相当なもの。敷地面積も駐車場がほとんどないことを考えれば、規模にふさわしい広さでした。が、寂しいことに来客を想定した施設の充実という面においては規模相応とはいえず、洒落たミニワイナリーとさほど変わりがありません。直売でなく、あくまで商業ルートを重視したスタイルと見受けられます。

ワインは、古代甲州などの宣伝を大々的にやっているのでどうもそちらの方に目がいってしまいますが、低品質なものは売っていません。白はほとんど甲州ばかりですがスタイルとしては完全に辛口のものは少なく、やや辛口以上の糖度を残したものが多い傾向があります。内容はけして悪くは無いのですが、2000円を越える価格帯の甲州は価格分の価値や個性があるかといわれると、ちょっと疑問。おすすめは古代甲州。
赤ワインに関しては中価格帯のものは樽香が少なく、果実香をだすようにするスタイルであるとは思えるのですが、こちらは全体にインパクトがなく、まだまだといったところ。さすがに5000円オーバーの右八はかなり良いワインですが、これは価格の問題から「おすすめ」とはいえないのが残念です。
なお、よく売り切れてしまっていますが「萌芽」の赤はかなり面白いワイン。カベルネ・フランを甘口でしかもアマローネ(陰干し)という幾重にもユニークなことをしているワインで、フラン特有の葉野菜の香りなどもしっかりでており好みは分かれるにしていも少なくとも飲む価値があるワインといえるでしょう。
なお、ビールに関しては本ページの趣旨に沿わないので省きますが、ピルスナーも含め大会社の市販品のような軽いビールではなく個性が強いスタイルのものが多くなります。ヘレスを試しに買って飲んでみたところ、麦芽の香りにつばきや青リンゴの香りも隠れており、また酸味がはっきりと感じられるスタイルでした。ただ、品質に比べて総じて高いようには思えます。

大和葡萄酒に以前訪問した際にはいまいちなワインだらけで良い印象を抱けませんでした。しかし、再び訪れその内容は向上していることを確認できたのは確かです。
でも、個人的にはさまざまな媒体で受賞暦を謳っているほど良いワイン造ってる?というのが私の本音。営業利益を上げねばどうしようもないというのは大変によくわかるのですが、古い甲州の苗木を使った甲州の話題性を強調したりモンドセレクションなどの受賞暦を前面にだすスタイルの売り方はどうも好きになれないのです。
ですから大和葡萄酒の関する私の記載は相当に色メガネが付いているのでご注意を(^_^;。
それはさておき、ワインの内容はなかなかのレベルです。品質の向上著しい国産ワインにあって遅れをとらないよう努力していることはいくら私でも飲めば理解できました。
が、訪問はというとこれは前述のようにあまりおすすめできません。ビール工場を含めた工場見学をしたいというなら別ですが、あまり自由に試飲できる雰囲気のワイナリーではないうえ、営業の方などが試飲ルームを担当していることも多くマニアックなワインファンを満足させるような質問もしづらいのです。試飲がしたい方はむしろ、勝沼町にあるぶどうの丘の方が自由にいろいろ飲めるのでよいかもしれません(ただし全銘柄が試飲できるわけではないので注意)。

なにはともあれ、大和葡萄酒のワインはけして悪いものではありません。機会があるならば、ぜひ飲んでみてください。
選果台。実物はメルシャンなど大手以外で見ることはまれな機械の一つ。
これが何なのかビール好きならすぐわかりますね。大和葡萄酒でのビール工場の一角の写真です。
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社名 大和葡萄酒(株)
住所 山梨県甲州市勝沼町等々力776-1
電話番号 0553-44-0433
取寄せ オンラインショッピング有り HP http://www.yamatowine.com/
自社畑あり 契約栽培畑あり ツアー等 あり(無料・要予約)
テイスティング可(無料)
栽培品種 カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、甲州、他 営業日 元旦以外、年中無休
★  2006年12月8日
備考:長野県にワイナリー所有、樹齢100年の甲州あり、ビール醸造、無添加ワインを生産
画面中央に見えるのが、濾過樹です。このサイズのものはなかなかありません。