岩崎醸造
〜品質良好、個性満点! 地元御用達ワイナリー〜
外観

ホンジョーこと岩崎醸造はちょっと油断していると見逃してしまうようなあまり目立たない建物で、控えめに掛けられている黒い金属製の看板が目印です。
販売店の中は接客を兼ねた事務所といった趣で、部屋の半分は本当に事務所、残り半分に試飲・販売用のワインやソファーがおいてあります。他には店内で一升瓶売りしているワインが多いところが少し目に付きます(理由は”歴史”、”テイスティング”の項目を参照)
また同じ建物内に醸造所があり、外の窓から中の機材を見ることができます。
歴史

岩崎醸造は、通常のワイナリーとは一風変わった経緯で設立されています。
まず、戦前に130の勝沼の葡萄栽培者が集まって”本醸造”という組合を立ち上げたのがその始まりです。このときの名称が今でも”ホンジョー”と呼ばれる所以となっています。
その後、1941年に醸造施設のある地域の名前をとり”岩崎醸造”と名前を改め、株式会社として新生し、今にいたります。
このように岩崎醸造は特定の会社や個人が出資して作ったタイプのワイナリーとは異なる誕生をしています(山梨には他にいくつかこういうタイプのワイナリーがあります)。
以上の経緯から岩崎醸造で使用する原料葡萄は株主の農家が栽培したものを主体としており、当然ながら全て勝沼産のものです。足りない際にも勝沼町から地元葡萄を買って補うので、輸入ワインや輸入原料の使用はいっさい行われていません。

面白いことにこのワイナリーの主な方針は、国際コンクールで受賞を目指す高品質ワインを作ることや、観光客向けのワインを作ることでもなく、地元の人が普段飲むためのワインを作る事です。従って醸造するワインは、辛口の安価なワインの醸造が主体となっています。また毎日飲むようなワインを通常のフルボトルで売るのは無駄が多いということか、一升瓶入りのワインが充実しています。

そもそも山梨の勝沼ではかなり以前から甲州ワインを飲むという習慣が地元にあり、日本では極めて珍しい「ワインを日常的に飲む習慣」が根付いている地域です。晩の食事のお供として、また自宅で行う祝い事や葬儀の際に、地元のワインが使用されているそうです。
こうした背景を考えれば、岩崎醸造が地元農家の好みに沿ったワインを主に醸造しているのは不思議ではありません。ただ、これが全国的にワインを飲む国ならともかく、日本という風土と文化で行われていることに岩崎醸造と勝沼の特異性があるといえるでしょう。

施設の概略
同じ建物内に醸造所と販売所があります。巨大な樽がある赤ワイン用のセラーやかなりの量の発酵タンクなどもあります。右図の写真の樽で赤ワインを何年も寝かせてからまた小樽に移し変えてさらに熟成させているそうです。地下にも、かなり大きなワインセラーがあり、瓶詰めされたワインが保存されています。
工場は見学をあらかじめ申し込んでいれば見ることができます。
販売所ではいくつかの銘柄が試飲可能です。


葡萄畑
株主となっている栽培者が自分の畑で収穫した葡萄を納入して、それを醸造する特殊な形態のワイナリーですから、ほぼ全ての原料葡萄を事実上の契約栽培のような状態で仕入れています。加えて自社畑も存在しており、そこでカベルネ・ソーヴィニヨンなどのヨーロッパ品種を栽培しています。
また、株主の栽培者のなかにもヨーロッパ品種を栽培している農家がありその葡萄も原料として使用しています。通常の契約栽培だと、どうしても農家も手を抜きがちになりますが、なにしろ自分が株主の会社なので手抜きなしで栽培した葡萄を納入してくれるそうです。
畑の見学ツアーなどは行っていません。
銘柄: ホンジョー・オールド(白)
生産元: 岩崎醸造
価格: 2000円(1.8リットル)
使用品種: 甲州
備考 甲州のフリーラン果汁を5年間タンク内で熟成したワインです。岩崎醸造を代表する銘柄として地元でもっとも愛飲されています。
※詳細なコメントはもうしばらくお待ち下さい。
飲んだ日: 2003年 月 日
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写真ではわかりませんが、実は物凄い大きさの樽です。相当に使いこんであります。
ツアー
無料ですが前日までに電話、またはFAXにて予約が必要です。ワインの醸造過程をこと細かに説明してくれるため、時間的には30分〜60分をみておいた方がいいと思います。
ツアーでは基本的なワイン工程を実際の醸造機具を見ながら説明してもらえます。ここで岩崎醸造のワインはほとんど全てが5年間、ステンレスタンクか木樽で熟成させたものを使用しているという、驚くべき話を教えてもらえます。(※1)
この樽貯蔵の施設は戦前からの木造建築で、見た目にも非常に古いものです。さすがに古くなりすぎたのでそろそろ改築するかもしれないとのことでした。戦前の醸造施設はそうは見られるものではないので、これを見たいならば早めにツアーを予約したほうがよいかもしれません。

また普通はあまり教えてもらえない火入れの工程や、活性炭濾過といった工程についても醸造機械をみながら説明してもらえます。これらの工程はワイナリーによって行っていないところもあるので、実物の機械をみながらの説明はワインの醸造に興味がある人であれば聞く価値があります。

岩崎醸造の地下に広がる大きなセラーもツアーに参加していれば見学させてもらうことができ、外からは小さいように見える岩崎醸造も実はかなり立派な設備をもったワイナリーであることを再認識させられます。
最後には試飲がありますが、これはツアーを申し込まなくても可能です。

余談ですが、岩崎醸造はワインだけでなく醸造所の方々や事務の方までもかなり個性的な人ばかりなので(もちろんいい意味で)、淡々とした事務的な説明を想像していくと面食らうかもしれません(^_^)。

※1 赤ワインの樽熟成は普通は2年以内というのがよくワインの本に紹介されています。と考えると5年というのはかなり長い樽熟成期間ですが、岩崎醸造で作られたワインは、熟成はしていますが劣化したような感じはありません。やはりワインは理屈でなく経験で作るもののようです。
外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  ツアー  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
こちらはステンレスタンク。この中で甲州が5年間の眠りについています。
自動瓶詰め機。合理化可能な工程の設備投資にも力を入れているようです。
銘柄: シャトーホンジョー 樽(白)
生産元: 岩崎醸造
価格: 1500円
使用品種: 甲州・セミヨン
備考 甲州とセミヨンのブレンドワイン。もちろん原料は全て勝沼産で、醸造後は5年間熟成させています。
※詳細なコメントはもうしばらくお待ち下さい。
飲んだ日: 2003年 月 日
テイスティング
試飲できるのは甲州の白のみで赤ワインのほとんどがヨーロッパ品種で作られた上級ワインであることもあって試飲できません。
勝沼に在るワイナリーは営業政策上や原料の点からも生食用葡萄を使用した甘口ワインを醸造しているのが普通ですが、ここは食中酒用のワインを主体に醸造しているため、試飲可能なのは原則として辛口のみになります。一応、巨峰ワインも販売されていますが、甘口ワインはその一銘柄のみと重視していないようです。

試飲させていただいたのは以下のワインです。工場見学に行った際にたまたま他のイベントと重なって多めに試飲させていただきましたが、普段はこれほどは試飲させてもらえないのであしからず。

「樽」(赤):熟成させたブラッククイーン、カベルネ・ソーヴィニヨンのブレンドワインです。ブラッククイーンが入っているためか、グリーンペッパーのようなスパイシーな香りがあります。厚みのある酸味と、ミディアム〜ライト程度のタンニンを感じるバランスの良いワインです。値段は1500円。

ホンジョー・オールド:詳細は管理人のワイン記録にゆずりますが、5年熟成のワインが一升瓶で2000円(720mlが1000円)というのは、驚くべき低価格です。品質でいっても岩崎醸造の売れ行きNo.1であるということに異議のない個性溢れるワインです。赤ワインと白ワインの二種類があります。

甲斐ノワール:日本初の国内コンクール「Japan Wine Competition 」で銅賞を獲得しています。葡萄の品種の問題から1年しか熟成を行っていません。杉の葉や、杉の木、黒胡椒に似た香りが主体です。タンニンはしっかりしていますが、やや酸は薄めです。余韻は短く、後口がすっきりしています。甲斐ノワールのワインとしては刺激が少なめですが、それでもスパイス香の強いワインが好みの人向きであるといえます。値段は1500円。

原産地認証ワイン:勝沼町の定める認証の既定にそって生産された甲州ワインです。ホンジョーオールドとくらべると、洗練された味わいになっています。ただ全体にすっきりし過ぎて個性にややとぼしい感じがあります。値段は3000円と高めです。

他に株主優待ワイン「かもしピンク」なる一升瓶売りのみの甲州ワインが目を引きます。どんなワインなのか伺ったところ「皮ごと発酵させた甲州ワイン」とのことでした。確かに甲州は皮が薄紫色なので赤ワインと同じ方法で皮ごと醸造すればもろみはピンクになるなと思いました。もっとも、製品となったワインそのものは黄色のワインだそうですが。
このワインは一升瓶で1300円ととんでもなく安価なのですが、「飲みなれない人は苦くておいしくないと思うから買わない方がよい」と忠告され、結局買わずに帰ってしまいました。次回こそは必ず入手してきます(^^;

またブランデーも販売されていますが、これは蒸留機が壊れてしまった関係でもう現在は作られていない商品です。昔はなんとブランデーまで一升瓶売りがあったそうです。

全体として勝沼の地元農家の好みを反映した個性あるワイン、という言葉がふさわしいラインナップです。フレッシュ&フルーティーなワインは、毎日食事に合わせて飲むには味がやや薄く香りも華やかすぎるので、長期熟成による香りの落ち着いた醇のあるワイン作りを重視しているようです。5年という長期熟成であるのに信じ難い低価格で販売されているのも、やはりそんな高いワインでは毎日買えないから、ということからなのでしょう。
購入するとレシートでなく、領収書が同封されるというのも変わっています。


総論
岩崎醸造は基本を地元消費用のワインにおきながらも、カベルネソーヴィニヨンやシャルドネなどヨーロッパ品種を使った上級ワインを作りに挑戦したりとユニークなワイナリーです。ヨーロッパ品種のワインはどうしても値段が高い(4000円)のがネックですが、こうした意欲的な姿勢はこのワイナリーのさらなる飛躍の可能性を感じさせるものです。
一番重要なことですが全般に岩崎醸造の製品の品質は良好でコストパフォーマンスに優れており、地元向けのワイン=低品質という認識は誤ったものであることを教えてくれます。新酒として発売したもの以外のほとんどの製品が長期熟成ということを加味すれば、群雄割拠している勝沼のなかでも、一際輝く個性をもった優良ワイナリーだといえるでしょう。

熟成したワインを求めるなら、いざホンジョーへ!
購入方法 
ワイナリーの販売所から直接購入、または電話による注文を受付けています。また、経営に参加している農家の葡萄園でも販売していることがあります。一般流通の販売は山梨県内のみとなります。


ワイナリーアクセス
・勝沼ぶどう卿駅からから車で10分。

以下のURLに詳細な地図がありますのでそらちを参照してください。
http://www.winery.or.jp/member/iwasaki.html

なお、上記URLのページは本ページとはなんら関わりがありませんので、当ページの内容について上記ページ管理者にお問い合わせになることがないようにお願い致します。
銘柄: ホンジョー・オールド(赤)
生産元: 岩崎醸造
価格: 2000円(1.8リットル)
使用品種: マスカットベリーA、ブラッククイーン、カベルネ・ソーヴィニヨン
備考 カベルネを含めて全て勝沼産の原料により醸造されたワイン。岩崎醸造を代表する銘柄として地元でも愛飲されています。
色はやや薄めの赤。香りはおとなしめながらも、カシスや、イチゴのような香りと木樽の香りがあります。特筆すべきは酸味で、赤ワインとしてはかなりはっきりとした酸味があります。ただ酸味も熟成のためか非常にまろやかで、刺激的な感じはありません。アルコール度数はやや低めの気がしますが、ミディアム〜ライト程度のボディとしっかりとした酸味が下支えとなっており、なかなか飲み応えのあるワインです。余韻は中程度にあります。
値段を含め、食中酒にj非常に向いています。
飲んだ日: 2004年1月12日
社名 岩崎醸造(株)
住所 山梨県東山梨郡勝沼町下岩崎957
電話番号 0553-44-0020
取寄せ 電話注文可 HP なし
自社畑あり、契約栽培畑あり(本文参照) ツアー等 あり(無料、要予約)
テイスティング可(無料)
栽培品種 甲州、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、セミヨン、甲斐ノワール、ブラッククイーン、マスカットベリーA 営業日 8月〜10月 年中無休
11月〜7月 日曜、祝日、休日 休み
午前8時30分〜午後5時まで
★訪問日 2003年10月12日、2003年11月22日