勝沼第八葡萄酒
〜勝沼最後の「番号」醸造所〜
外観

日本ワイン通を自認する人でも、おそらくあまり行かない醸造所の一つ。
もともと小売を重点に置いていないこともあって、看板が一つあること以外にこの醸造所と一般の葡萄農家を区別するものはありません。

砂利道の入り口の奥に見えるのも洋風の一般住宅だけなので「場所間違えたかもしれない・・・」と不安に駆られます。
しかし、勇気をもって踏み出し観察力を動員すれば、あちこちに一升瓶の空瓶が多いこと、さらに勝沼第八葡萄酒のマークの入ったケース、そして右手にはワインの貯蔵庫とおぼしき建物が確認できるでしょう。

それでも「本当に一般売りしてるの?」と問いたくなるほどの目立たない醸造所であることには変わりはありませんが。
歴史

勝沼の約50件の農家によって運営された共同醸造所がその前身。
誰もが気になるのがその社名で勝沼全体の醸造所の歴史を知らないと、「第八」の意味がわからず混乱します。何かかこれに抽象的な表現などを想像する人もいるかもしれませんが、「第八」はまさに”八番目”という意味に他なりません。いったい何が八番目なのかを説明すると、勝沼の醸造所の成り立ちと深く関わってくるのです。
ご存知の方も多いように勝沼町のワイン造りの歴史は古く、正確な数を把握することが困難なほどに明治以降から数々の醸造所が生まれては潰れ、または合併されていきました。その会社の形態は個人経営から法人まで様々でしたが、その中の一つに共同醸造所という形式があります。これは醸造所の管理や原料の納入、さらに醸造までを農家だけで行っていくという方式のものでどちらかというと自家消費用のワインの生産の意味合いが強い形態。第二次世界大戦後しばらくはこうした形式の醸造所は多くあり、そのいくつかは地区ごとに番号を付けられて呼称を定められました。現在の醸造所でもこれが前身であるワイナリーは少なくなく、例えば中央葡萄酒はもと「十三」、大和葡萄酒は「十」の番号を与えられた共同醸造所でした。
しかし共同醸造所は法人として成立しておらず酒税の徴収が難しいことから、国税局による法人化が指導されます。この過程で農家の寄り集りの醸造所という形態は消滅し、全ての醸造所がは法人となりました。この時に社名の変更(前身は会社ではないので厳密には変更とはいえませんが・・・)も合わせて行われたこともあり、「番号」を冠した醸造所はほとんど消え去りました。そして塩山市にある牛奥第二葡萄酒と、「勝沼第八葡萄酒」の二つの醸造所だけが残ったのです。

現在原料の供給は昔と同様に周辺の葡萄農家に100%頼っており、販売対象もほとんど原料の納品農家と昔ながらの方式が続けられています。なんと醸造は代表の方が一人でやっており、この方自身も葡萄農家であるので仕込みの時には奥様が全ての農作業を行っているのだそうです。
総生産量は14〜15kl(720mlで約2万本前後)と多くはありませんがそれなりの量を生産。

ワインは熟成が必要という考え方から、全てのワインを1年間倉庫で熟成させてから出荷したり、マスカットベリーAと甲州以外の品種は使わないなど造りにはこだわりをもっており、その品質は低レベルなものではありません。
施設の概略
醸造施設の見学はできないので外観を見るだけとなります。この施設は1942年に建ったのですが、太平洋戦争の真っ最中だったために予定どおりには完成せず漆喰が塗れなかった部分をトタンで囲うなどの処置が行われました。現在もその姿を留めているので歴史の一部を垣間見ることが出来ます。
なお、お話によると機器はイタリア製の除梗破砕機と、バルーンプレスと昔ながらのたて型のプレス機を使用、機械による作業の効率化も図られているようです。

セラーは見学可。1年熟成させてから出荷させる方針であるためびっしりとセラー内はワインで埋め尽くされています。

葡萄畑
周辺農家の方々が原料を納入、代表の方も畑を持っています。。
醸造に使用されている品種は甲州と、マスカットベリーAのみ。生食品種によるワイン造りは行っておらず、同じくラブレスカのアジロンダックも熟成させると色素が落ちやすいために使いません。
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外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
テイスティング
テイスティングはありません。しかし、購入は普通に可能です。

甲州の甘口・中口・辛口、そしてマスカットベリーAの赤の4種類だけと銘柄数は極少で、何を買うかはそこまで悩む必要はないでしょう。
細かいコメントは管理人のワイン記録にありますが、意外というと失礼ですが味わいはクリーンで粗野なところはなく、ワインとしての体裁をしっかり保っているので購入しても損はありません。
一升瓶がメインで販売されていますが、面白いことにこの一升瓶にはコルクが使われています。普通は王冠だけなのにわざわざコルクを使っているのは大変にユニーク。また昔は「ぶどうの丘」にも出荷していたこともありラベルもあることはあるのですが、現在ではほとんど外販していないことからラベルは貼っていません。キャップシールの色で銘柄が分けられており、甲州を複数買ってキャップシールの色と銘柄が何だったのかを忘れると判別する方法がなくなります。「えーと、これは辛口だっけ甘口だったっけ・・・え〜い飲めばわかる!」というような事態に陥ります。これは陥った私が言うのですから確か(^_^;
価格は全銘柄720mlは1000円、一升瓶は2000円です。
購入方法 
このワインを販売している名産品の産地直売所がありますが、直販以外は入手困難と考えてよいでしょう。昔は葡萄の丘にも置いてあったそうですが現在は、そちらでは販売していません。
事前連絡をして向かうのが一番確かです。

ワイナリーアクセス
下記ホームページに地図が掲載されています。
http://yamanashi.visitors-net.ne.jp/~wine/map_html/map39.html
なお、下記のホームページは当ホームページとはいっさい関係ないため、このホームページの内容についてお問い合わせすることのないようにお願い致します。

総論
基本が地元消費用の共同醸造所であり、ワインの小売はあくまでサイドビジネス。
銘柄も少なく、外販にはまったく熱心でないことからしても普通の観光で行くには向いておらず、ましてワインにさほど興味がない人と行くなど厳禁といっていい醸造所です。

が、品質はしっかりしたものを造っていることに注目。甲州は甘口・中口・辛口とありますが、それぞれの特徴がよくでており、特に辛口は本当にドライに糖分を酵母に食わせており、「辛口」の名に恥じない銘柄。しかもフルーティーな香りと軽やかながらも繊細な食事と合わせられる程度のコクもあります。ベリーAも良い原料を使用しているのかシンプルな味わいながらもバランスがよく、飲みあきない味。この2銘柄は火入れによる「沢庵臭さ」とでも表現したくなるような香りがないのも好印象。
総じてニュートラルで、インパクトのあるワインはないもののけして薄っぺらな内容のものではありません。あまり国産品種に力を入れていない中堅醸造所の、個性も何も無い甲州やベリーAなどよりは遥かにまともな出来栄えです。同じく株主農家による共同醸造所の中では、甲州・ベリーAともに中ほどぐらいのレベルではないでしょうか。

人が行ったこともないような醸造所、という言葉に魅力を感じる人や、数々のワイナリーを巡った猛者であれば訪問を推奨。
たとえ雑誌などで取り上げられなくとも、熱意ある個人が造ったワインは価値があり、なにより飲んで楽しめるものだと思えるはずです。
銘柄: なし(マスカットベリーA)
生産元: 勝沼第八葡萄酒
価格: 1000円(720ml)、2000円(一升瓶)
使用品種: マスカットベリーA(勝沼産100%使用)
備考 ヴィンテージは非表示ですが、2004年のワイン。ラベルは・・・・なし。ボトルシールに法律上必要な最低限なことだけが記入されています。
色は鮮やかなガーネット。香りはカシス、バナナ、キャンディ、ローズなど。
アタックはやさしめですが、なかなか果実味があり、コクもほどほど、とてもバランスがとれたワインです。タンニンはライトながらもしっかりあるので「赤ワイン」を飲んでいると実感できるのも好印象。
余韻はほとんどありませんが、果実の香りが少し残ります。

マイナー醸造所なのでさぞ洗練されていないワインが・・・という先入観をもちがちですがなかなか洗練された内容。味わいは値段だけにシンプルで、錦城葡萄酒のベリーAとタイプは似ているもののそこまで強力な果実味はありません。しかし、その分飲みあきせず良い葡萄を堅実に醸造した雰囲気が漂っており、中堅会社のパッとしないベリーAを買うよりは遥かに購入価値があります。
飲んだ日: 2006年3月30日
中央に見える瓦葺の建物が醸造施設。よく考えてみると醸造所では珍しい屋根です。
セラー内の一枚。木枠のセラーにびっしりと一升瓶が並んでいます。
社名 勝沼第八葡萄酒(有)
住所 山梨県甲州市勝沼町等々力53
電話番号 0553-44-0162
取寄せ 電話などで受付 HP なし
自社畑あり ツアー等 訪問自由(事前連絡推奨)
工場見学不可
栽培品種 甲州、マスカット・ベリーA 営業日 一般住宅なので規定なし
良識の範囲内で訪問を
★  2005年12月14日
備考:勝沼町産葡萄のみ使用、農家による共同経営型ワイナリー
銘柄: なし(甲州 辛口)
生産元: 勝沼第八葡萄酒
価格: 1000円(720ml)、2000円(一升瓶)
使用品種: 甲州(勝沼産100%使用)
備考 ヴィンテージは非表示ですが、2004年のワイン。ラベルは言うまでもありません。
色はごく薄いレモンイエロー。香りは果実の香りがほとんどなく、麹のような香り、若い洋ナシ、白い花などで香りの要素はシンプル。
アタックはやさしめで、辛口の名にふさわしく非常にドライで軽やかなワインです。ふくらみはなく苦味があるもののそこまで気になるレベルではなく、旨みや酸もそれなりにあるのでワインとしての体裁が保たれています。
田舎くさいところはなく、クリーンな品質であるところには驚きを隠せません。共同醸造所系統のワイナリーの甲州のなかではなかなかのものです。

意外にも・・・というと失礼ですが火入れ(パスツリゼーション)を行ったような香りや味わいはありません。ここまで糖分を切ってしまえば確かにその必要はほとんどないのですが、このためなのかワインとしてのフレッシュさが残っています。
軽く飲みやすく値段もリーズナブルなので買ってみる価値あり。ただ、度数が高い割には飲み口が軽い感じなので飲みすぎ注意!。
飲んだ日: 2006年4月2日

これも同上

ラベルがないです

何もないと寂しいので・・・
今回は遊んでます

銘柄: なし(甲州 甘口)
生産元: 勝沼第八葡萄酒
価格: 1000円(720ml)、2000円(一升瓶)
使用品種: 甲州(勝沼産100%使用)
備考 ヴィンテージは非表示ですが、2004年のワイン。
色はごく薄いレモンイエロー。香りは洋梨、米酢。やや甘口で、含み香の印象も上立香とだいたい同様、全体として軽い味わい。酸は少なめですが軽い苦味があるので、そこまでバランスの崩れたワインにはなっていません。味わいには余韻が無くすっと消える感じ。余韻や含み香にはこの銘柄は火入れした時にでる甘めの沢庵のような香りが少しあるように思えます。
やはり甘口は酸が少ないと締まらない味になってしまいやすいので、このワインも冷やしてから飲んだ方が楽しめるかも。

なお、甲州の3銘柄(辛口・中口・甘口)のなかでは生産量がもっとも少ない銘柄とのこと。
飲んだ日: 2006年4月10日