サッポロワイン岡山ワイナリー
〜年間生産量、二千万本!?〜
外観
サッポロ岡山ワイナリーは日本酒の酒米として有名な「雄町」の産地である赤磐郡赤坂町にあります。近くにいくとあちこちに看板が出ているので、迷うことなく到着できるでしょう。
湖に面したそれほど高くない丘の上の、ワイナリーの門をくぐってしばらく歩くと、ツタで覆われた建物が見えてきます。
あたりには駐車場も多く、観光客を想定したつくりになっていますが、最初の印象は「あのサッポロのワイナリーのわりには大きくないような・・・」かもしれません。
しかし、このワイナリーは莫大な生産量を誇るサッポロのワイン事業の中核を担っているのです。我々が見る部分はまさに氷山の一角といったところでしょうか。
歴史
歴史に関しては当ページのサッポロ勝沼ワイナリーも参照してください。勝沼ワイナリーの弟にあたるワイナリーですが、勝沼のノウハウを活かした観光客向きの設備や、考えられた立地という面ではその上をいくといっていいでしょう。
出資はもちろんサッポロビールですが、経営そのものはサッポロワイン株式会社が行っています。
その総生産量は、勝沼と双方を合わせて日本で第三位と、ビールだけでなくワイン業界においてもトップクラスのシェアを誇ります。
ワイン造りの方針も親会社がビール会社だけあり、その醸造技術を生かした低温発酵・低温管理の「クールド・ワインシステム」によるフレッシュ&フルーティなワイン造りを基本としています。この実現のためにすべてのタンクに温度コントロール設備を設置するなど序の口で、醸造工程からびん詰め、出荷に至るまで一貫した温度管理を行っています。
まさに”工業”として合理化されたワイン造りで、中小のワイナリーとは方向性も設備も比較になりません。
その年間生産本数はなんと2000万本!!。この数値がいかに凄いかというと、生産量は中堅といわれる勝沼の中央葡萄酒の年間生産量は22万本、無添加ワインで有名な蒼龍葡萄酒が120万本ですから、文字どうりの桁外れの生産量。さすがは大手としか言いようのない圧倒的な生産能力です(なお、兄貴分のワイナリーであるサッポロ勝沼ワイナリーは約700万本)。
勝沼と比べると量を担っているぶん、「うれしい ワイン」などのブレンドワインに目がいきがちですが、中価格帯からは出所のしっかりとしたワインを造っています。土地ごとに収穫された葡萄の個性を活かすため、岡山、アメリカのワシントン州のヤキマバレー(自社畑)など各地域で収穫されたブドウからワイン造りを行なっています。
同じ会社が経営しているので、勝沼ワイナリーと商品ラインナップも含めてだいぶ似ていますが、どちらかというとラインナップは勝沼のほうが純国産の銘柄が豊富です。しかし、岡山ワイナリーの独自性を示す、マスカットワイン(原料はもちろんマスカット・オブ・アレキサンドリア)や、純国産のオリジナルブレンドワインなどの商品もあります。
施設の概略
ツアーで見学可能な工場は瓶詰めからセラーへの保管の工程は完全にオートメーション化されており、岡山ワイナリーの生産能力を支えています。まさにワイン生産工場。
変わったところで、大手としては珍しく巨大な大樽も現役ではたらいており、大量のワインが熟成されています。他、ブランデーも醸造しているため蒸留器や、ブランデー用のたて型の樽も見学可能です。
試飲・販売所では自社ワインはもちろんのこと、他にお土産もの類も充実しています。クラッカーなどのお菓子類もあまり通常の販売店では見ないものも置かれています。
他にレストラン「ワイナリーガーデン」があります。

葡萄畑
日本だけでなく世界各地で自社畑・契約栽培による栽培を行なっています。(サッポロ勝沼ワイナリー参照)
敷地内にも試験園があり、自由に見学することができます。垣根栽培が主体のようですが、栽培品種は不明です。
有名なマスカット・オブ・アレキサンドリなどは岡山の農家より買い取ったものなどを醸造しています。
ツアー
ツアーは工場を見学しながら職員が説明してくれるタイプのものです。
職員の案内なしでの工場見学ももちろん可能で、各所に置かれているボタンを押せば説明が流れます。見学コースの始めには、プラネタリウムのようになっている通路―――トレードマークの「北極星」(ポレール)にちなんだ星座の演出の「ポレールプロムナード」があります。低く威厳ある館内放送でポレールの意味や由来が説明されますが、暗いこともあって気の弱い子供が泣き出しそうな雰囲気があるため、やや演出過剰な気も(^_^;。
館内は場所ごとにわかりやすい説明文があるので、ワインについての知識があまりなくてもその場所に置かれている醸造施設が何に使うのかわからないということはありません。見学方式はガラス越しに醸造施設や貯蔵施設を見て回る方式になります。
直営レストラン
ワイナリーガーデンが敷地内にあります。ここは同じサッポロのグループ会社ではありますが、経営自体は完全に独立したレストランです。
ジンギスカンなどのパーティーメニューやソフトクリームなども販売されています。テラスのすぐ隣が湖なので、湖面を眺めながら食事をすることができます。
テイスティング
売り場で小さな樽に入っている銘柄を自由に試飲することができます。
試飲は小さいカップで飲む形式であるためなかなか味が把握できないので、参孝程度に呼んでください。
清少納言:北海道産のケルナーと岡山産マスカット・オブ・アレキサンドリアのブレンドワインで、値段は2111円。どちらも個性的な香りが信条というべき品種だけに、個性がぶつかりあってしまわないか飲むまえに少し不安がよぎりました。が、それは無用の心配。マスカット香が主体ですが、他にも百合の花のような香りもある、非常に華やかな香り。味わいはやや甘口で複雑味はなく爽快な印象、含み香りには上記の香りの他にローズの香りもでていました。香り高いワインがお好きな人にはお奨めです。
紫式部:岡山オリジナルの人名ワインのもう一方です。品種はケルナーとマスカットベリーAで値段は2111円。これまた変わった組み合わせ。香りはローズ香やマスカット香で、かすかにカシスのような香りがあります。飲みやすく、全体として非常にフルーティーにまとめている印象を受けます。ベリーAの香りはあまりでていないようです。
マスカットオブアレキサンドリア:やや甘口で、国産マスカット・オブ・アレキサンドリアを使用したワインです。値段は2539円とやや高め。香りは穏やかで、フルーティーなマスカット香があり、品種の個性がでています。甘口に仕立ててあり、爽やかで飲みやすいのですが、含み香にもこの品種の特徴がよくでています。香り高いワインが好きな人だけでなく、生食のマスカットが好きな人にもお奨めできます。
これ以外にマスカット・オブ・アレキサンドリアの上級ワイン、「グランポレールマスカット」もあります。こちらはフリーランの果汁を使用したワインですが、試飲はできませんでした。また、管理人のワイン記録にも記述しますが、「岡山マスカットベリーA〈赤〉」のレベルは値段と比べると高いところにあり、侮れません。他、岡山県産のピオーネを使用したワインもあります。
岡山ワイナリーは大手ワイナリーとしては試飲可能な銘柄がやや少なめ。また、販売されているワインでも岡山限定のものはそれほど多くありません。しかし、マスカット・オブ・アレキサンドリアを使用したワインは日本国内ではおそらくトップの出来なので少なくとも試飲する価値はあります。また、オリジナルブレンドワインはさすが大手だけあり隙のない出来です。どちらも価格が2000円を超えており、少し高い気がするのが難点でしょうか。
余談ですが、健康志向やダイエットを意識してかほとんどのワインにカロリー表記がなされています。
脅威の生産量を支えるタンク群。延々とタンクの列が続いています。
社名 |
サッポロワイン岡山ワイナリー
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住所 |
岡山県赤磐郡赤坂町東軽部1556
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電話番号 |
0869-57-3838 |
取寄せ |
オンラインショッピングあり |
HP |
http://www.sapporobeer.jp/wine/winery
/okayama/index.html |
畑 |
※調査中 |
ツアー等 |
あり(無料・予約不要)
テイスティング可(無料) |
栽培品種 |
マスカット・オブ・アレキサンドリア、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、マスカットベリーA、他 |
営業日 |
年末年始のみ休業
営業時間 9:00〜17:00 |
★ 2004年5月4日 |
備考:レストラン「ワイナリーガーデン」併設、ブランデー醸造 |
敷地内の自社畑。棚から垣根栽培へと改植がすすめられていました。
購入方法
直販以外にホームページによる販売も行なっています。全国の一般流通でも販売されていますが、地域名が付いた銘柄は生産数が多くありません。
ワイナリーアクセス
アクセスに関してはサッポロ岡山ワイナリーの公式ホームページに詳しく説明されているのでそちらを御参照下さい。
総論
ワインの全体傾向は勝沼ワイナリーと同じく、際立った個性が少ないかわりに安定した味わいがあるのが特徴です。醸造方法の関係からか、特に香りの華やかなワインが多い傾向があります。ただ、ワイナリーのオリジナル銘柄は少し値段が高い傾向がありますが、原料に岡山のマスカット・オブ・アレキサンドリアを使用しているものが多いだけにこれは仕方ないことでしょう。何にせよ、マスカット・オブ・アレキサンドリアを使用したワインでは日本でも有数。あまり知られていませんが契約栽培によるマスカットベリーAのワインも密かに高品質です。
ここは本来はサッポロの生産拠点ともいうべきワイナリーですが、さすがは大手。観光的な側面もきっちり押さえており、隙がありません。同経営の勝沼ワイナリーと比べると、眺望や景色もよく、葡萄畑も自由に見学できるので遥かに観光向きといえるでしょう。
広い駐車場、定期的に行なわれるツアー、手頃な値段のレストラン、多様お土産の販売、そして本業であるワインのコストパフォーマンス、その総合的な充実度は並のワイナリーの及ぶところではありません。唯一、あまり周辺に他の観光施設がない関係で混みやすいというのが難点といえば難点でしょう。岡山は葡萄の名産地の割にはワイナリーの数が少なく、大手はこのサッポロワイナリーのみなのでこれは仕方ないでしょう。
ワイナリーとしてはワインをよく知らない人をつれて気軽に遊びにいくのに向いています。また、ワインに造詣が深い人でも、オートメーション化の進んだワイナリーとはどんなものであるのかを学ぶために少なくとも一度は足を運んでみることをお奨めします。
小さな樽に試飲用のワインが入っています。この方式は観光客が多いワイナリーでよく行われています。
銘柄: |
マスカットベリーA |
生産元: |
サッポロ岡山ワイナリー |
価格: |
約900円 |
使用品種: |
マスカット・ベリーA |
備考 |
熟成感のある落ち着いたインク香や枯葉の香りが主体。含み香にはキャンディやシロップといったところがあり、味には濃縮感はないものの爽やかな酸味があります。バランスが良く、値段を考えると圧倒的にお買い得です。
醤油の焼き鳥などと合いそう。
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飲んだ日: |
2004年10月2日 |