サッポロワイン勝沼ワイナリー
〜ビール技術をワインに応用〜
外観
サッポロ勝沼ワイナリーは山梨県の勝沼でも中心地からだいぶ外れた、遠くからでもわかる赤い屋根の大きな建物です。広大な敷地の植え込みのバランスも良く、清潔感があり洒落ています。
正面だけ見てもわかりませんが、実際にはかなり奥行きのあるワイナリーで勝沼でもトップ3に入る巨大ワイナリーです。
駐車場は三ヶ所もあり、近くには食事のできるワイナリーガーデンも完備され、観光地として申し分のない施設が揃っています。

 
歴史
勝沼ワイナリーはサッポロビール創業100周年を記念して、1976年よりワイン醸造を始めました。ワインの商標名のポレール(POLAIRE)はフランス語で北極星のことで、サッポロビールの星印に由来しています。
サッポロビールの出資ではありますが、経営そのものは子会社として独立しています。
従業員数は約50人と、さすがは大企業だけありかなりの人数。その生産量はなんと年間で720ml瓶にして660万本(約475万kリットル)!
山梨県でもサッポロ勝沼ワイナリーは相当の大規模なワイナリーなのですが、同じくサッポロビール出資の後発会社のサッポロ岡山ワイナリーは施設・規模・人数ともにこの遥か上をいく巨大ワイナリーというのですから驚きです。
双方を合わせたワインの生産量は日本で第三位と、ビールだけでなくワイン業界においてもトップクラスのシェアを誇ります。

ワイン造りの方針も親会社がビール会社だけあり、その醸造技術を生かした低温発酵・低温管理の「クールド・ワインシステム」によるフレッシュ&フルーティなワイン造りを基本としています。この実現のためにすべてのタンクに温度コントロール設備を設置するなど序の口で、醸造工程からびん詰め、出荷に至るまで一貫した温度管理を行っています。
まさに”工業”として合理化されたワイン造りで、中小のワイナリーとは方向性も設備も比較になりません。

その段違いの生産能力ゆえに最低価格のバルクワインのブレンドワインに目がいきがちですが、1000円以上の中価格帯からは出所のしっかりとしたワインを造っています。土地ごとに収穫された葡萄の個性を活かすため、北海道、長野、山梨(岡山にも畑がありますが、これはサッポロ岡山ワイナリーが担当)、アメリカのワシントン州のヤキマバレー(自社畑)から生まれるブドウを使用し、各地域ごとの名前を冠したワイン造りを行なっています。

また、山梨大学の研究により発見された海洋酵母を使用したワインを生産していることでも有名です。この海洋酵母ワインは2000年に発売され当初は10万本しか造られませんでしたが(それでも純国産ワインとしては凄い本数です)、すぐに完売したことから現在は100万本近くを生産しているという超人気商品。サッポロワイナリーは知らなくてもこのワインは知っている人も少なくないでしょう。


施設の概略

ツアーで見学可能な工場は瓶詰めからセラーへの保管の工程は完全にオートメーション化されており、勝沼ワイナリーの生産能力を支えています。まさにワイン生産工場といった趣です。
試飲・販売所では自社ワインはもちろんのこと、他にお土産もの類も充実しています。クラッカーなどのお菓子類もあまり通常の販売店では見ないものも置かれています。
他にレストラン「ワイナリーガーデン」があります。



外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  ツアー  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
葡萄畑
日本だけでなく世界各地で自社畑・契約栽培による栽培を行なっています。
北海道では余市で84年からケルナー種の契約栽培、長野市では75年にヨーロッパ系ブドウ、山梨では甲州種のブドウを栽培しています。さらにワシントン州のヤキマバレーでは、90年から自社ブドウ園「スナイプスビンヤード」でブドウを栽培しています(醸造は日本で行なっています)。
新しい試みとしては山梨県で長期熟成を狙って甲斐ノワールの栽培を始めていることが挙げられます。この葡萄をワインにするとかなり個性的なものになるために万人受けが難しいのですが、もしかしたら新しいタイプの甲斐ノワールワインが生まれるかもしれません。
敷地内にも試験園がありますが、こちらは見学できません。

ツアー
二種類のツアーがあり、詳細はサッポロのHPにあります。一つは案内の職員が説明してくれるタイプのもの、もう一つは説明用の館内テープを聞きながら工場内のプラントを見学するものです。
無人の見学コースでは、瓶詰めのプラントや瓶の貯蔵施設をガラス越しに見学することが可能です。平日にいくと実際に工場が稼動している様子を見ることができます。

30分ごとに行われる社員の方によりツアーは、まずブランデーの蒸留器を外から見学し、次にサッポロのステンレスタンクについての説明を受けます。このブランデーはいわゆるもろみの粕を再発酵させた粕取りブランデーではなく、ワインを蒸留して作ったもの。ブランデーに使用されるワインは完全にブランデー生産用として造られておりアルコール度数が7〜8度と低いのが特徴です。

外側の施設の開設の後に施設内部のプラントの説明に移りますが、これ以降は無人の見学コースとさほど差はありません。

直営レストラン
ワイナリーガーデンが敷地内にあります。ここは同じサッポロのグループ会社ではありますが、経営自体は完全に独立したレストランです。
ジンギスカンなどのパーティーメニューがそろっています。

テイスティング
売り場で置いてある銘柄を自由に試飲することができます。
口直し用に自社で販売しているスナック菓子が置いてあるのがちょっと変わっています。
定価が3000円までの銘柄を無料で試飲することが可能で、テイスティンググラスではなく、使い捨ての容器で試飲するタイプのテイスティングとなります。
テイスティングの項は小さいカップで飲む形式だとなかなか味が把握できないので、参孝程度に呼んでください。

北海道余市ケルナー:北海道産のケルナーによるワインです。香りが信条のケルナーだけにこういったタイプの試飲方法ではその個性の把握は困難でした。しかし味はフルーティーで値段も1000円前半と安く、買っても損はないものではないかと思います。

長野古里カベルネ・ソーヴィニヨン1994:香りはカップの関係でわかりずらかったのですが、純国産としては酸味・タンニンともにしっかりしており、カベルネを使用した葡萄であるとわかるレベルに達しています。値段が1500円と純国産としては割安で、コストパフォーマンスに優れています。

この長野古里カベルネはヴィンテージごとの値段の差が凄く、2000年は5000円を越えています。おそらく、栽培方式などや収穫制限などの結果このようになっているのでしょうが、ほとんど別の銘柄のような値段設定です。

海洋酵母ワイン:甘辛によって数種でていますが、原料は甲州です。飲むと含み香にフルーティーな香りと一緒に、潮風やあわびのような香りがあるのがかなり特徴的です。私は標準的な甲州を飲みすぎているために違和感を感じてしまいましたが、お刺身や寿司などと合わせると面白いかもしれません。
海洋酵母を使用したワインを醸造しているのはサッポロワインだけであるにも関わらずかなり有名な商品で、コンビニでもよく販売されています。

購入方法 
直販以外にホームページによる販売も行なっています。全国の一般流通でも販売されていますが、地域名が付いた銘柄は生産数が多くありません。

ワイナリーアクセス
アクセスに関してはサッポロ勝沼ワイナリーの公式ホームページに詳しく説明されているのでそちらを御参照下さい。


総論
一見、大量生産主体のワイナリーのようですがそれとは別に品質を重視したワイン造りにもかなり力をいれています。中価格帯以上の地域名の入ったワインは値段と品質のバランスが良好です。純国産で、飲むに値するカヴェルネのワインを1500円で売っているのは特筆もので、ヨーロッパ品種によるコストパフォーマンスに優れた赤ワインを消費者に提供しています。
さらに国際級の高級ワイン造りに挑戦するなど、その姿勢は前向きです。

不満があるといえば、せっかく海外の畑で葡萄を栽培しているというのに、日本にもってきて醸造してくるところでしょうか。輸送するために−1℃の冷蔵貯蔵を行うことが、どれほどワインに影響するかは素人ゆえにわかりませんが、個人的には海外に畑がある場合はサントリーのように現地で取れた葡萄をそこで醸造し、「海外産ワイン」として日本に持ってきてほしい気もします。
また海洋酵母のワインは、飲んだところやはり醸造用酵母のワインの味とはだいぶ異なったもので、あくまで私個人の感想ですがあまり優れているとは思えませんでした。新しい試みや自社ならではの特徴をだすというのが重要なのは理解はできますが、このワインを雑誌やポスターなどで宣伝していることが、サッポロワインに対する正当な評価を歪めている部分がある気がします。
これらに関しては賛否分かれるところでしょう。

何にしても観光で行くには抜群のワイナリー。広い駐車場、定期的に行なわれるツアー、手頃な値段のレストラン、多様お土産の販売、そして本業であるワインのコストパフォーマンス、その総合的な充実度は並のワイナリーの及ぶところではありません。
どちらかというと、栽培者や生産者の話が聞きたいようなディープな人よりは、ワインをよく知らない人をつれて気軽に遊びにいくのに向いています。また、ワインに造詣が深い人でも、オートメーション化の進んだワイナリーとはどんなものであるのかを学ぶために少なくとも一度は足を運んでみることをお奨めします。

ワイナリー内の試験園。レインカットを使用して、数種の品種を栽培しています(本来は見学できません)。
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社名 サッポロワイン(株)勝沼ワイナリー
住所 山梨県東山梨郡勝沼町綿塚字大正577
電話番号 0553-44-2345
取寄せ オンラインショッピング有り HP http://www.sapporobeer.jp/wine/
自社畑あり(海外含む)、契約栽培畑あり ツアー等 あり(無料・予約不要)
テイスティング可(無料)
栽培品種 甲斐ノワール、甲州、ケルナー、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、他 営業日 年末年始及びお盆以外は年中無休
営業時間:9:00〜16:30
★  2004年3月20日
備考:海洋酵母を使用したワインあり、レストラン「ワイナリーガーデン」併設、ブランデー生産
飲酒運転厳禁ということでツアーを申し込むと受付で車のドライバーはこのようなシールを貼られます。