広島三次ワイナリー
〜千客万来、三次観光の中心地〜
外観
広島県北部の内陸に位置する三次市は、市街地もあまり大きいとは言えずそれほど都会的な印象も受けない市です。距離的にも、出雲市からも広島市の中間地点ということでほどよく大都市からは遠い場所です。
そんな三次市に建つ広島三次ワイナリーは、あまり規模的には大したことのないワイナリーであろうと、三次市の人に失礼なことを思いながら訪れました。
しかし、いざ着いてみると目の前には大きな赤色の洋風の建物、広い清潔感のある駐車場、「三次ワイナリー」と書かれたいくつもののぼり、なによりも平日の夕方だというのに大勢の観光客の姿がありました。
驚きとともに、自分の不明を思い知らされたのは言うまでもありません。
歴史

三次市に1994年、広島県初のワイナリーとしてオープンしたのが広島三次ワイナリーです。当初から観光客向けの施設の充実などを考慮して建設されていただけあり、経営難に苦しむ印象が強い第三セクター系事業でありながら業績は好調。設立時から来場者数は想定を上回り、以後も順調に業績を伸ばしています。さらにちょうど赤ワインブームの時期とオープン後が重なったこともあり、平成11年には来場者数が40万人を越えるなど、経営面においてまぎもれなく”大成功”の第三セクターワイナリーとして名を知らしめました。なんと、このワイナリーがオープンしてから三次市を訪れる観光客数は倍増したという話もあるのですから驚きです。
三次市の葡萄栽培は1955年ごろから創められました。最初はデラウェアなどだったのですが、やがて巨峰群のピオーネに目を付けて栽培に着手するようになり、ピオーネ栽培の先進地となりました。今でもピオーネの生産量が多いばかりか、ピオーネの交配品種のニューピオーネといった葡萄の栽培も行われているなど、非常に力を入れています。
このように葡萄の生産量が多くなると、通年商品ではない生食葡萄の販売だけでは経営に問題がでてきます。そこで加工品として販売していくことを考えていったところから、三次ワイナリーの設立が決まったといえます。実現のため本坊酒造に技術指導を受けながら、醸造技術者を育てヨーロッパ品種専用の葡萄園を設けるなどかなり本腰を入れた準備が行われました。

総生産本数は35万本。売上げは全ての施設総合で約7億5千万と、規模を考えてもかなりの売上です。ワインもほぼ毎年造った分は売り切っている計算になるのですから、非常に健全な経営状態であることは想像に難くありません。
ただし、この生産量だと当然ですが1500円前後のワインの一部には輸入ワインが使用されています(ブレンド技術は高く品質はけして低くありません)。
その他、興味深い試みとしてワイナリーの駐車場すぐそばに花木栽培の新規就農者の研修農場を開設しています。この農場は農業技術の訓練ばかりでなく、景観を充実させ、それを見た人に農業に興味をもってもらい就農者を増やしていくことを期待して造られている施設です。一つの施設で一石三鳥を狙ったものですが、行けば門外漢でも景観の美化という点については成功していることがわかります。

施設の概略

観光施設、というよりは本当に三次市の観光の中心地といえる施設の充実ぶりです。一つ一つを順に説明していきます。

まず醸造設備はガラス越しに丁寧に説明がされています。地下セラーにいくとワインが熟成している樽もみることができますが、その樽ごとの説明書きには、明らかにお客に見せるように造ってあるにも関わらず、入っている品種はもちろん樽の焼き具合から産地まで細かく書いてあるという熱の入りよう。・・・誰か樽のマニアでもいるのでしょうか?見学が終わる頃には試飲販売所に着くようになっているルート構成になっているあたりはサッポロワイナリーを彷彿とさせます。

CAFE VIN:喫茶店ですが、外売りでもピオーネソフトクリームなども売っています。この中でシャルドネソフトクリームを食べてみましたが、マスカットのような香りのするソフトクリーム。シャルドネは確かにタイプが多すぎて何をもってシャルドネの香りとするかはそれこそ議論百出ですが、マスカット香というのはちょっと意外でした。
この喫茶店、さすがはワイナリー直営だけあり三次ワイナリーのワインのグラス売りなどもされています。ワイナリーでは試飲できない銘柄もあったので、テイスティングに書いてある一部のワインはここで「有料試飲」しています。

バーベキュー会場:バーベキューの材料を買ってバーベキューができます。色々とコースがあり、でかでかと書いてあるので訪れて「見落とした」などということはあまりないはずです。

案内所:三次ワイナリーの案内所、ではなく三次市の観光案内所がワイナリーの敷地にあります。温泉や宿泊施設などの場所を聞きたければここに立ち寄って情報を収集が可能です(私たちはタイヤが磨り減っていたため、ここで”自転車屋”の場所を聞きましたが・・・)。
近くには小休止できる椅子や机があるばかりか、バス添乗員の休憩所もあるなど、細かい配慮がなされた施設となっています。


歴史の項でも書きましたが、近くには花の栽培の研修施設もあるうえに、ワイナリーも三次市を一望できる丘の上に建っているのでとても素晴らしい景観を備えています。この景色も味わってみるのもよいでしょう。


外観  歴史  施設の概略  葡萄畑 テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
葡萄畑
パンフレットを見れば葡萄畑の位置が書いてあります。やや、ワイナリーから離れていますが車でなら充分な近い距離です(※)。
約5haの自社畑ではそれぞれ区画ごとにシャルドネ、セミヨン、メルローといった品種が棚栽培で育成されています。

自社畑だけではまだ充分ではないので三次市の葡萄農家との契約栽培により、ヨーロッパ品種やデラウェアやマスカット・ベリーAといった葡萄の確保にも努めています。

※ただし、自転車では遠かったうえに夕方だったのであきらめました。我ながら自身の志の低さを垣間見る思いでした。
テイスティング
おみやげ物が色々と並ぶ売り場で、小さい樽から自由に試飲できます。カップは小さい使い捨てタイプのものになります。
試飲カップと、私自身の能力の問題から、コメントは参孝程度に読んで下さい。

三次ワイン(白):1253円。シャルドネやセミヨンの入ったワインで、輸入ワインもブレンドされています。リンゴ香と少しムスクのような香りがあります。酸味がしっかりしたフルーティーな辛口ワインで、金属香の余韻がわずかにあります。

三次ワイン(白) デラウェア:1020円。デラウェアを使用した甘口ワイン。しっかりとした酸味があるので、意外に全体がしまったワインになっています。香りはグレープフルーツなどといったデラウェアらしい香りが確認できます。
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異常に詳細な樽熟成ワイン情報。樽材・樽産地・トースティングまで書かれています。詳しく書きすぎです。
購入方法 
ホームページからの注文を受け付けています。また、ポイントカードというものもありますが、2000円のおまけをもらうのには20万円以上の買い物をする必要があるので、メリットを享受できる人は多くはないでしょう。

ワイナリーアクセス
アクセスに関しては公式ホームページを御参照下さい。


総論
本文中にも書いたように観光施設としてはほぼ完璧といっていいワイナリー。レストランも近くにあり、観光客が必要とするものはほぼ全てそろっています。その経営手腕と運営はさすがの一言です。お隣の島根ワイナリーと方向性などがかなり似ていますが、後発だけあっていきなりヨーロッパ品種を植えるなど、時代に対応としようとする姿勢があるのも好印象です。

ワインの品質に関しては、輸入ブレンドであることを気にしなければ1500円の三次ワインシリーズは飲みなれた人向きです。
宣伝しているピオーネワインは、確かに珍しいワイン(全国で数社しか製造していません)ですが、値段が高すぎです。ピオーネというネームバリューを考えても1000円台前半が適正な気がします。この値段、農協から購入するなどの事情で原価が高いことがワインに反映されているのではないかと想像しています。そうだとしても、もう少し値段と品質の折り合いをつけるべきです。個人的には三次産のシャルドネもやはり3000円は割高であるという感想をもっています。
栽培から真面目に取り組んでいるだけに値段とワインの品質のバランスについて、ぜひ一層の努力を願うこと切です。

広島三次ワイナリーは広島市と出雲市を結ぶルートのど真ん中にあるので、両市を行き来するなら必ず通る立地。観光や所要で通るならばついでに寄れてしまうというのは助かります。そのときにはワインを飲みにいくだけでなく、ゆったりと景色を味わう心をもって行きたいものです。
銘柄: 巴郷(はきょう)
生産元: 広島三次ワイナリー
価格: 1200円
使用品種: ???
備考 色は鮮紅色で綺麗です。香りは白砂糖、カシス、そして狐臭が主体となります。
甘口のワインですが、とにかくフルーティーで悪く言うとアルコール入り葡萄ジュース、となってしまいますが、これだけフレッシュな香りと味わいのワインは多くはありません。意外に酸があるので飲んだときにダレた感じがないのも個人的には好印象です。

醸造においてはズースレゼルブが行われているように感じます。
甘口ワインに抵抗がないなら少なくとも試飲することをおすすめ。ラブレスカ系(と推測される)甘口ワインとしてはかなり良い出来です。
飲んだ日: 2004年11月18日
「CAFE VIN」。こじんまりした外観ですが、奥行きがあり以外に広い喫茶店です
社名  (株)広島三次ワイナリー
住所 広島県三次市東酒屋町445−3
電話番号 0824−64−0200
取寄せ オンラインショッピングあり HP http://www.miyoshi-wine.co.jp/
自社畑あり 契約栽培畑あり ツアー等 訪問自由
テイスティング可(無料)
栽培品種 シャルドネ、セミヨン、ピオーネ、マスカットベリーA、メルロー、他 営業日 毎月第二水曜日休業
営業時間  9:30〜18:00
★  2004年6月2日
備考:「喫茶ヴァイン」・「バーベキューガーデン」経営、第三セクター、施設内に観光案内センターあり
三次ワイン ロゼ:マスカット・ベリーAを使用したロゼ。狐臭とイチゴ香がよくでており、香りはとてもベリーAらしいワイン。ただ全体に薄めで、味わいには香りほどのフルーティーさを感じないのが難点でしょうか。

霧の詩:1020円。甘口のロゼワイン。香りはプラムなどの香りを感じ、飲みやすいワインです。上記のロゼと比べると味わいがしっかりしています。

三次ワイン(赤) メルロー:1530円。三次市産と輸入のメルローのブレンドワイン。樽のロースト香の中にメルローの果実香を確認することができ、収斂味もしっかりしています。余韻には金属香も。個人的にはおいしかったので、ぜひこの値段のまま三次産メルロー100%で同レベルのワインを造って欲しいところです。

三次ワイン(赤) :1020円。ベリーAを使用したワイン。色は鮮やかな紅ですが、香り・味わいともにいまいち薄く個性に欠けている気がします。ただ、ベリーAらしさがないわけではないので繊細な肉料理などとは相性がいいワインであるとも思います。

以下はCAFE・VINで飲んだグラスワインのコメントとなります。当然ながら有料です(^^)

三次シャルドネ :3060円。三次市産シャルドネを100%使用した辛口白ワイン。色は薄い黄色で麦藁のような艶も。バター香とグレープフルーツ香とメープルシロップ、樽の香りなど。味わいはボリューム感がなく、酸味と後に残る苦味が強いのが特徴です。余韻には樽と短いグレープフルーツ香が残ります。3000円のワインとしては、もっと味わいに複雑味が欲しい気も。

三次ピオーネ:3060円。三次市のピオーネを使用したワインで、おそらくもっとも三次ワイナリーで宣伝しているワイン。色は薄い赤紫。キャラメル主体でラベンダーの香りもあります。甘口ですが酸味不足からかいまいちインパクト不足でだれた印象を受けます。意外にわずかなタンニンも感じました。
個人的な感想では3000円は高すぎです。また、甘口ラブレスカのワインとしても個性に欠けています。

銘柄比率でいくと甘口ワインが多くなります。ワイン全体の品質は、薄めで単純な味わいなものが多い気も。単一品種のワインよりは品種をブレンドしたワイン(輸入ワイン使用も含む)のほうがワインとしての骨格を備えている印象を受けます。輸入ワイン不使用のもののなかでは管理人のワイン記録に書いた「巴郷」という甘口ワインは葡萄果汁のフルーティーさが香りと味わいによくでており、甘口ワイン好きであるならばおすすめです。
平日の閉店直前というのに混みあう販売所。その経営の成功ぶりを肌で感じます。
一升瓶で1260円の”葡萄ジュース”朝霧の町。かなりリーズナブルな葡萄ジュースです。いささか量が多すぎますが