笛吹ワイン
〜”ワイン造り体験ツアーあり”〜
外観

国道沿いを走るとまず目立つのは、葡萄狩りや土産物等の販売で有名なグレープパーク御坂農園とやたらに広い駐車場。看板には今日の訪問客の予定がずらりと記載され、なかなかの盛況ぶりがうかがえます。
しかし、ワイナリーを求める人間が用があるのはこちらではありません。
さっそく館内の指示に従い、裏にある細い道を歩きました。
道は草が多く、途中でスプリンクラーに水をかけられたりと苦労しながら進むと、古びたタンクが置かれた建物に。ここにきて、初めて今回の目的地にたどりついたのです。・・・もっとも、わざわざ御坂農園内から裏手に回っていらない苦労をしなくても、車道沿いに歩けばすぐの距離だったことは予想外でしたが。

のぞきこむとレストランと間違えるほどに席数の多いテイスティングルームがその最大の特徴で、これには誰しも驚かされるでしょう。
歴史
申し訳ないことにこのワイナリーと親会社にあたる御坂農園についてはほとんど調べられませんでした。機会があったらまた掲載しますので気長にお待ちください。しかし、何にも書かないのも寂しいのでわかっていることだけを記載しておきます。

笛吹ワインは1987年に創業。御坂町は有名な葡萄産地にしてはワイナリーが少なく、この笛吹ワインとニュー山梨ワイン醸造だけしか存在していません。どちらもあまり古いワイナリーではなく、勝沼とはかなり異なるワイン文化の道をたどったであろうことが想像できる地域です。

ワインの生産量は約4万本。ボルドーから輸入したワインをそのまま瓶詰めした銘柄が一つあることのぞき、山梨県産葡萄を使ったワインだけを製造しています(上記簡易紹介に『山梨県産葡萄のみ醸造』とあるのはこのため)。原料は農家からの購入と観光葡萄園も兼ねた自社畑によるもの。生産量は多いのですが周辺の酒屋などに卸すことはなく、全て自社か御坂農園で販売しています。
施設の概略
工場の見学は可能。これはワイン造り体験ツアーを申し込んでいなくても可能ということです。説明は大変に丁寧に行ってもらえました。
まず圧搾機のところにいくと、大型の圧搾機とともに子供用を含めて20足はあろうかという長靴が下駄箱に。一瞬、まさか従業員がこんなに!などと思ってしまいましたが、よくよく考えれば”子供用”があるのですからこれはもうツアー用であるのは明らか。同じ場所にはワイナリーではあまり見られない非常に大きな洗面器のような器具が置いてあり、これに葡萄をいれて足で潰すのだろうということも想像できます。
圧搾作業は少し古典的。「品質第一主義」のワイナリーなどは果汁の鮮度を重視するため収穫した葡萄を即座に圧搾して醸造しますが、笛吹ワインでは納入された葡萄が圧搾機を使える量にたまるまで待って、充分な量がたまったところで圧搾を行う手法をとっています。器具も現在主流の空気圧による圧搾機と異なり、その一つ前の世代に属す両側から機械で押しつぶすバスラン圧搾機でした。

隣の区画には赤ワイン用の発酵タンクと圧搾機。タンクは最大のものでも5394リットルとあまり大きくはありません(他社の大きいタンクは10kリットルを越えます)。独特なのは赤ワインの醸し工程を圧搾機でそのまま行うことがある点。破砕した黒葡萄(主にベリーA)を圧搾機にいれ、発酵とともに充分に色が溶出されたところでそのまま絞るという手法をとっています。場所をとらない手法としては、なかなかユニーク。
タンクはホーローとステンレスで、現在徐々にステンレスタンクに変更中です。

では白ワイン用の発酵タンクはというと、その扉をくぐりぬけた部屋の中に。ここは部屋全体が冷蔵庫となっており、発酵タンクはそのなかにあるのです。室内には数個の樽、瓶詰めされたワインまでがここにありセラーとしても使われているのも、ちょっとびっくり。低温発酵や温度管理のためとはいえこの部屋は肌寒いのであまり長居したくない場所ですが、笛吹の社員によると例え人間には寒かろうと白ワインの低温長期発酵に必要な冷却能力はなく、やはり冷却用のジャケットなどを使用しないと、現代的な白ワインを造るのは難しいというお話でした。

他、ブルーシートで覆われたセラーもありますがこちらは案内されなかったところをみると見学はできないようです。
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外観  歴史  施設の概略  自社畑  直営レストラン  ツアー テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
葡萄畑
ほとんどを地元の農協などから購入しており、自社畑はワイン造り体験用の葡萄園だけとなります。ここではデラウェア、マスカットベリーA、甲州が栽培されており、観光用葡萄園も兼ねていることもあって栽培は生食用のもの。ワイン造り体験ツアーではここの葡萄を摘みながらの食べ放題となるので、自分が好きな葡萄の季節にいくのがよいでしょう。
経験上、最も量が食べられるのはデラウェア⇒甲州⇒ベリーA。ベリーAは糖度が高く、生食用としては香りがおとなしい葡萄なのであまり量を食べられない人が多いと思います。甲州は素朴でおいしい葡萄ですが生食用として「食べ放題にきてよかった」と満足度が得られるのはやはりデラウェアでは。なお、デラウェアを狙うなら早生葡萄ですので8月中に申し込まないと終わってしまうので注意。


テイスティング
テイスティングルームというよりホール。カウンターに並べられたワインの陳列量はともかく、レストランのような席数と机はワイナリーとしては膨大な数。本気でレストランも兼ねているのか思えましたが、醸造ツアーを行っているのでかなりの人数がいっせいに訪れるのでしょう。
試飲用ワインが置かれており、いくつかのの銘柄が試飲できました。銘柄数は多くはないので、それほど時間はかかりません。

デラウェア 2005:詳細は管理人のワイン記録にて。これはなかなかのワイン。

甲州 辛口:価格は720mlで1200円。果実香よりもクヌギや枯草といった皮のニュアンスが強くでています。プレスランが多いような気がするので厚みはまずまずあるのですが、いかにしても酸味が不足しており後味の部分でインパクトに欠けています。やはり後味に強く出る樹物の香りや紙のような香りなど、全体的に昔のスタイルの甲州に近いかも。

甲州 やや甘口:価格は720mlで1200円。こちらも果実香よりもクヌギやゴム、また少し白砂糖のニュアンスもあります。甘口ワインとしはやはり酸味が不足しておりメリハリに欠けるところが。こちらも昔のスタイルの甲州に近いかも。

ベリーA:価格は720mlで1200円。狐臭とベリー香り。香りと味わいともに軽く、シンプルで素直なワイン。少し成分的にシンプルすぎて物足りないところがありますが、手堅くまとまったベリーAという印象です。

品質は銘柄を問わず共通しているのは軽く、シンプルな味わいという点。ワインの専門誌でよく紹介される有名ワイナリーばかり行っている人にはちょっと厳しい内容です。醸造所の方自身がおっしゃっていたように甲州は華やかな香りにとぼしいのでインパクトが弱いのは否めず、ベリーAもあまり味わいがないので特筆すべきことはありません。
しかし、値段設定はミステリーで一升瓶は物凄いことになっています。通常の720mlがほとんど1200円なのに対して一升瓶は1500円!。内容はまったく同じもので容量は2.5倍になっているのに、値上がりが300円とは・・・。一応、社員の方に理由を聞いたところ、720mlの瓶詰めの方が容量のわりには手間をとられるからということですが、にしても凄い価格設定ということは確かでしょう。ぶどうジュースも販売していますがこちらも1800mlで1,500円。
・・・酒税とか発酵の手間はいったいどのへんに消えているんでしょう?

余談ですが公式ページをのぞくと既に売り切れながらアジロンダックのワインの存在を確認。が、いったいなぜなのかはわかりませんがこちらは3000円と、知りうる限りもっとも高いアジロンダックのワインでした・・・う〜ん。


直営レストラン
厳密にいうと直営ではありませんが、隣の姉妹会社である御坂農園でほうとうやそばといった和食主体のレストランがあります。価格は1200円から1500円の間ぐらい。ただし、私たちはここで食事をしていないため体験等を書くことはできません。

ツアー
これこそ笛吹ワインの現状における最大のキモ!というべき重要な部分です。
そして私はこれを体験していない!
・・・本当に申し訳ありません。
よってここに書くツアーの内容はどのようなことが行われるのか、社員の方や体験した人々のお話をもとにしたものであることを前提にしてください。
まず、葡萄畑に案内されそこで食べ放題で葡萄を心ゆくまで食べた後、二房ほどの葡萄をワイン用に持って帰ります。ワイナリーでは長靴をはいて葡萄をつぶし、小型の圧搾機で果汁を絞りとります。出来立ての果汁を試飲させてもらいながら、ワインの発酵過程などについて社員が説明。そしてラベル作り。自分の好きなデザインのラベルを書き、そこでツアーは終了です。さすがにワインはその場ではできるわけがないので、後日自作ラベルが貼られた状態で送られるとのことでした。
簡潔にまとめれば工程は
ぶどう狩り→・踏み潰し→・ラベルつくり
ぶどう狩りに時間制限がないので、ツアー全体での所要時間は異なります。

ツアーのお値段は一人2300円。ワインを送ってもらうと別途送料として二本あたり700円がかかります。
姉妹会社の御坂農園の方でも葡萄狩りや桃狩りツアーをやっているのですが、これはまったく別物なのでお気をつけを。
購入方法 
購入はオンラインショッピングと直接購入により可能。隣の御坂農園でも試飲・販売していますが、酒屋等には卸していません。

ワイナリーアクセス
公式ホームページにアクセスマップがあります。ワイナリー自体も道路沿いにあるので見つけやすいですし、グレープハウスと書かれた御坂農園を目標にすればもっとわかりやすいでしょう。

総論
笛吹市では有名なワイナリーなので、このページをごらんの方には「笛吹ワイン」と調べたらたまたまこのページを見つけてしまった方などもおられるかもしれません。

ワインの品質は残念ながら、あまり特筆する部分はなし。赤・白問わず、香りと味の要素が薄いのです。昔よく売られていた(まあ現在でも売られていないわけではありませんが)「お土産物」っぽい甲州ワインをイメージできる方ならば、かなりそのイメージに近い品質ではないかと。価格は安いのですが、同価格帯でかなり良いワインを売っているワイナリーが複数存在してしまっているのでコストパフォーマンスも充分とはいえません。一升瓶だけは確かに安いので、とにかくすっきりした軽いワインを大量に飲みたいという方ならば悪くは無いと思います。白眉なのはデラウェアで他の優良ワイナリーのデラウェアのワインに見劣りしない内容。香りなどの総合的な面で一番好みに合うワインでした。醸造所の方自身は本当はもっとヨーロッパ品種や質の良い葡萄を入手して醸造したいそうですが、姉妹会社の御坂農園の経営方針に沿った観光用ワイナリーとしての側面が強いのか希望はかなえられていません。

と散々けなしておいてなんですが、ツアーを申し込むという条件付ながら訪問は老若男女問わずほぼ全ての人にとって有意義なワイナリーというのが私の考え。「なんで?」と思われる向きもあるでしょうが、葡萄を収穫してから果汁にする工程を、しかもこちらの予定をあわせやすい長い受付け期間があるうえで実体験できるのはここだけというのが最大の理由です。ワインの造り方というのは、ほとんどの方が一瞬で理解できるほど単純極まりないものですが、実際にそれを体験するというのは別問題。葡萄は潰そうとすると意外とつるつるして潰れにくかったり、びっくりするほど甘い果汁(絞ったものを飲ませてくれます)が、いざワインになった時には別物になってしまうこと、こういったことを実際に体験するというのは書物で得る知識とはまた別のことを気づかせてくれるでしょう。
さらに、ここは今まで数々紹介したワイナリーの中ではじめて「家族でいっても楽しめる」と書くことができます。というのもワイナリーとは、ワインを飲まない人や、それ以前に未成年が訪問して楽しい場所ではけしてありません。が、ツアーがあるのでこういった人たちでも問題なく足を運べるのは利点。それにワインから縁遠い人々に造り方を実体験で説明するというのは、下手なワインCMを流すより遥かにワインを飲んでみようという気にさせそうです。

笛吹ワインは、私のごとく知識ばかりで実体験がともなっていないワイン愛好家、家族サービスしようと考える人、たまには趣向の違う葡萄狩りがしたい人など、多くの人にとって興味深い醸造所。
葡萄狩りのシーズンには、旅行先の一つに上げてみては?
銘柄: デラ 2005
生産元: 笛吹ワイン
価格: 1200円
使用品種: デラウェア
備考 色は、ほぼ無色。香りはわらびやわさびといった、香りの強い植物の香りがありそこに、みかんやレモンといった柑橘類の香り、少し白砂糖の香りも加わります。
アタックは優しく、含み香にははっきりとしたみかんや狐臭が感じられなかなかのインパクト。やや甘口ですが、酸が強いので後半はかなりボリューム感がありベタついた感じをさせることはありません。余韻はないものの後味はクリーンで、爽やかな甘口ワインといえると思います。

他社の評価の高いデラウェアのワインと比較しても見劣りしない良い銘柄ではないかと思いますが、醸造所の方によると特に厳選したデラウェアを使ったり種ありのデラウェアを使ったりといったことはしていないとのこと。
醸造所の方のセンスでカバーしているのか、ちょっとミステリアスなワインです。
飲んだ日: 2006年12月3日
発酵タンク置き場、ワインセラー、樽貯蔵庫などずいぶん色々と兼用されている冷蔵区画。寒いです。
社名 笛吹ワイン(株)
住所 山梨県笛吹市御坂町夏目原992
電話番号 055-263-2299
取寄せ オンラインショッピングあり HP http://www3.ocn.ne.jp/%7Efuefuki/index.html
自社畑あり、契約栽培畑あり ツアー等 あり(工場見学は無料)
テイスティング可(無料)
栽培品種 甲州、デラウェア、マスカット・ベリーA、他 営業日 見学時間:8:00〜17:00
★  2006年7月12日
備考: ワイン醸造ツアー、山梨県産葡萄のみ醸造(注:赤ワインの一部銘柄は輸入したワインをそのまま瓶詰め)
     グレープパーク御坂農園と隣接(姉妹会社)
席数の多いワイナリーのテイスティングルーム。大画面のテレビなども確認できます。
こちらが親会社の御坂農園。この裏手にある笛吹ワインがあります。
その御坂農園にある、なぞの石柱。しかもこの認定者が宇宙人・・・。普通に考えて北極と南極の両極点が真ん中なんですが。宇宙人の真ん中の概念は我々と異なるようです(^_^)