ニュー山梨ワイン醸造
〜農協が造る地元用葡萄酒〜
外観

御坂町はさほど大きくはないものの、葡萄などの果樹栽培を主産業とする町です。
しかし現存するワイナリーの数は意外に少なく笛吹ワイン、そして今回紹介するニュー山梨ワイン醸造だけがワインを醸造しています。
醸造所を探しにいくと、すぐに「ニュー山梨ワイン醸造」と書かれた看板を目にします。が、これで簡単にワイナリーを発見できると思うとさにあらず。
かんじんのワイナリーはそこからさらに交差点の多い入り組んだ細い道の奥にあるため、辿りつくのは容易ではありません。
そして最後の細道を抜けると、いきなり大きい駐車場が開け、そこに2階建コンクリート製の事務所や醸造所が姿を現します。
歴史

公式ホームページに歴史が書かれているのでそちらも参照してください。

ニュー山梨ワイン醸造がもつ現在の酒販免許は1963年に個人が取得したものだったのですが、そこから1980年、JAみさか(現在は市長村統合によりJAふえふき)が免許を引き継ぐ形で現在のワイナリーがスタートします。
設立当初から地元で収穫された葡萄を加工して御坂町の農家に販売することを目的とした、山梨県特有の地元密着型ワイナリーです。

社員数は3人と少なく、その生産量は約5万本。一升瓶ワインの生産が多く、まさに地元消費型ワイナリーというべきラインナップです。ワインはその設立の経緯からもわかるように御坂町のデラウェアや甲州、マスカットベリーAなどの葡萄を主原料としています。原料は農協経由(というよりワイナリー本体が農協ですが・・・)の生食兼用品種がほとんどで、生食用葡萄として栽培されながらも房の形などの関係から市場に出せなかったような葡萄も含まれています。また、ベリーA以外の赤ワインに関しては良質の原料の入手が難しいことから輸入ワインが使用されています。ただし一部で契約栽培の原料を使用したワインも手がけるなど、良質の原料の確保に無関心というわけではありません。

また農家向けワイナリーであるため低価格ワインのみで商品が構成されています。
地元農家に販売する価格と一般小売は同じ価格なのですが、その最低価格は一升瓶1200円、最高価格のワインでも一升瓶で2100円と720ml瓶に換算すると1000円を切ってしまうものばかりです。また、販売もあくまで農家に対するものが中心であるため直売以外の販売ルートはほとんどを持っていないなど、中規模程度の醸造所としては経営形態も特殊です。

現在、農家の高齢化などの深刻な問題も抱えていますが、低価格の地ワインを生産する御坂町の重要な工場として活動が続けられています。
施設の概略
工場の見学に関しては前もって電話による予約が必要です。予約しておけば社員の方に醸造施設などを案内してもらえます。

醸造所は一階建のかなり大きめの建物で、開放型の発酵タンクが並んでいます。かなり大形の破砕機や圧搾機もあります。奥には貯蔵タンクもみえますが、これもかなりの大きさと本数があり、とても生産量が5万本とは思えなくなります(※)。またよくよくみるとかなり新しいステンレスの発酵タンクなどもあり設備にきちんと投資していることが見て取れます。

瓶詰と瓶貯蔵は販売所と同じ建物で行われており、こちらも案内してもらえます。2階建てのコンクリートの建物はかなり大きく、また2階のスペースはほとんどが醸造作業のために使用されています。

※これはあくまで私の予測ですが、一升瓶ワインが主力であることから5万本とはいっても同じ本数を生産する普通のワイナリーと比べると、実際に生産しているワインの総量はかなり多いと思われます。

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外観  歴史  施設の概略   テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
テイスティング
少し年季の入った試飲・販売所が建物内に備えられており、全ての銘柄を試飲可能です。きちんとテイスティンググラスで飲むことができるうえ、陳列もわかりやすく行っているなど門外漢にもわかりやすく親切な対応がとられています。
参孝までにテイスティングコメントを表記します。

みさか甲州・白・辛口:詳細は管理人のワイン記録を。

みさか甲州・白・中甘口:価格は720mlで1260円。甘味がある分だけ飲み応えがあり、しかもそこまで甘いわけではないので極端な辛口派の人でなければ食中酒として飲めます。香りはかなりおとなしめで、洋梨のフルーティーな香り、また含み香には干し柿のような老ねた香りを感じます。ただ、個人的には酸味が少ないのでメリハリに欠ける感があります。

みさかフリーラン甲州・白・甘口:価格は720mlで1575円で、一応ニュー山梨ワイン醸造では最高値のワイン。フリーランを謳うだけあり非常に癖が無く飲みやすいワイン。香りは控えめで洋梨、銅のような鉱物系の香りがあります。非常にすっきりとしたワインで、さらにやや甘口なのであまりワインを飲みなれていない人にも抵抗なく飲めます。反面、個性に乏しく味わいも少なめなので個性的なワインが好きな人には向いていない銘柄かもしれません。

みさか巨峰・ロゼ・甘口:価格は720mlで1575円。唯一、一升瓶がない銘柄です。香りはキャラメルと朽木、ファンタグレープのような狐臭が主体となります。味わいは甘口ですが酸味がないためメリハリにかけ、また全体に構成要素が薄めです。巨峰ワインとしては、標準的な品質に思えます。

みさか青デラウェア:720ml で1050円。ワイン醸造を念頭にジベレリン処理(種なし葡萄を作るための処理)をいっさいすることなく種ありで契約栽培されたデラウェアを100%使用しています。青デラというと一般には未成熟なデラウェアを収穫してワインにするというイメージがありますが、どうもニュー山梨ワイン醸造では単純に種ありデラウェアのことをこのように表記しているようです。種のあるデラウェアは酸味が強く生食に適していないことから、生食用として出荷されることはあまりありません。が、ワインにするとかなり酸味の効いたワインになります。
このワインもやや甘口ですが酸味がしっかりしており、デラウェア特有の柑橘系の香りなどとも相まってフルーティーでメリハリのあるワインになっています。値段も種ありデラウェアのワインとしてはトップクラスに安いので非常におすすめ。


ちなみに私は試飲しなかったのですが、地元で一番売れているのは最安値のみさかデラウェア1,260円(一升瓶のみ)とのこと。他、かりんワインも生産しています。
ランナップは多いのですが、最も高いフリーランの甲州でさえ一升瓶で2100円と低価格路線をひた走っています。大量に買い込んでもあまりお財布が痛まないというのはありがたい限りです。
ほとんどが御坂町の葡萄を使用したワインですが唯一、カベルネを使用した赤ワインだけは輸入ワイン使用なので純国産ではありません。おそらくは地元消費者の要求や赤ワインブームの名残りなのでしょうが、こういった銘柄をみると日本におけるボディのある赤ワイン造りの難しさを再認識させられます。

意外にというと失礼ですが、農家向けの直販が主軸にも関わらず一升瓶を含めたラベルが垢抜けたデザインなのは興味深いところです。極論ラベルなどなくても問題ない販売形態に思えるのですが、訪問客を意識してのことでしょうか、地元重視型ワイナリーの中ではかなり「顔」の良いワインを売っています。
購入方法 
購入については歴史の項でも少し触れていますが、オンラインショッピングを含めた直販以外は入手困難です。ワイナリーに直接足を運ぶのがベストといえます。

ワイナリーアクセス
公式ホームページにアクセスマップがあります。が、高確率で迷います。問題は地図ではなく、細く入り組んだ道にあるので、どうしようもありません。迷って同じところを何周もするようならワイナリーの人に電話して聞きましょう(※)。
さすが農協直営だけあり敷地が広く、駐車場もこの規模のワイナリーとしてはかなり大きめです。

※あくまで最終手段です。・・・が、私たちはその最終手段を使用してしまいました。この場を借りてニュー山梨ワイン醸造の方にお礼とお詫びを申し上げます。

総論
まさに地元のために存在するワイナリーなので、「世界に通じる日本ワイン」を目指すタイプのワイナリーとは方向も客層もまったく異なります。

まず値段が安めです。高級指向のワインはまったくありません。
ワインは少し洗練というところからは離れており、主流のクリーンなワインと比べれば「田舎臭さ」が抜けないので専門家やマニア受けという点からみると評価されないことは納得がいきます。また、同じ地元消費型ワイナリーでも一目置かれるいくつかのワイナリーと比べると個性と品質で一歩譲っています。
しかし、では飲んでおいしくないかというとそれはまた別問題。昔の醸造方法・施設で造ったワイン(特に甲州)によくみられる独特の香りがあるのですが、これがあると癖のある料理に合わせやすくなります。糖をある程度残すことによりワインに厚みをもたせていることもあって沢庵などの発酵食品、炊きたてのご飯などとけっこう合うのです。和食の家庭料理などと抵抗なく合わせられるワインとしての価値は充分にあります。ラベルも良いので、「青デラ」や「甲州フリーラン」などといった癖の少ない銘柄をお土産に購入するのもよい思います。
欲を言うとあまりインパクトのある銘柄がないため、もう少しワイナリーを体現するような銘柄がでれば知名度も上がるのではないでしょうか。

惜しむらくは、地元消費層の高齢化、さらに次世代がいまいち地ワインを飲まないためにあまり未来は楽観できない状態にあること。多くのワイナリーが直面している問題だけに解決は容易ではありませんが、山梨ならではの消費文化を支えるニュー山梨ワイン醸造のようなワイナリーに奮闘を期待すること切です

ニュー山梨ワイン醸造は、私個人が低価格の純国産ワインに対してかなり好意を持っているという点を差し引いても、山梨のワイン文化などに興味があるならば一度は訪れておきたいワイナリーです。地元の方がどんなワインを常飲しているのか、それを直接感じ取ることは無駄になることはないでしょう。

ただし、再三書いていますが門外漢にはわかりにくい立地なので行くときには注意です。我々がもっとも道に迷ったワイナリーの一つ(すぐ近くだったのにワイナリー周辺をぐるぐると回っていました)ですが、考えてみれば地元に主な顧客がいるのですから途中にあまり看板が出ていないのは当たり前。迷いそうだと感じたら、さっさと地元の人に聞きましょう(^_^)
銘柄: みさか甲州・白・辛口
生産元: ニュー山梨ワイン醸造
価格: 1260円
使用品種: 甲州
備考 ヴィンテージは非表示。
色は薄い黄色。上立香はかなりおとなくしく、わずかに洋梨や青リンゴの果実の香りがします。
含み香は標準的なレベルで、白桃や洋梨の果実の香りが主体となります。味わいはフリーラン主体なのか非常に軽いのですが、そこそこの旨味と、地ワインらしい古酒が入ったような洗練されていない香りも感じます。
酸は弱く糖度を残してあることもあって、分類すればやや辛口ぐらいのワインでしょう。
あまり特徴はありませんが、価格も安く毎日飲むのに適しています。白身魚など軽めのネタのお寿司などのお供に飲むのもいいかもしれません。
飲んだ日: 2005年6月8日
数多くの発酵用ステンレスタンクが並ぶ工場内。古いワイナリーではないので設備は新しいものが多くあります。
社名 ニュー山梨ワイン醸造(株)
住所 山梨県笛吹市御坂町二之宮611
電話番号 055-263-3036
取寄せ オンラインショッピングあり HP http://www.onyx.dti.ne.jp/%7Enew-wine/
契約栽培畑あり ツアー等 訪問自由(工場見学は要相談)
テイスティング可(無料)
栽培品種 甲州、マスカット・ベリーA、デラウェア、巨峰 営業日 日曜、祝日休業 土曜日午後休業
見学時間:8:30〜17:00
★  2004年11月12日
備考:JAふえふき(笛吹市農協)直営
ワインの陳列風景。シンプルですが清潔感のある試飲所です。720mlもそうですが、特に一升瓶がどういうわけかデザインが垢抜けています。個人的には一升瓶ワインのベストラベルに推したいところです(^_^)