京都府
2024/02/25
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【地域特性】 京都府の沿岸域は、日本海の若狭湾と山陰海岸に挟まれた領域です。丹後半島や天橋立な ど豊かな自然景観に恵まれ、特徴的な漁労文化を今に伝えています。 調査は2015年から2018年にかけて3回実施し、丹後半島沿岸を中心に7方位の風位体系が 確認されました。各地で共有化が図られているのは、北の風(キタ)、東の風(イセチある いはヒガシ)、南の風(アラシあるいはミナミ)、西の風(ニシ)、北西の風(ウラニシ) となっています。なお、日本海の代表的な風位呼称であるアイノカゼについては、北から東 寄りの風が対象ですが、北風を指すのは宮津辺りまでで半島から西は「キタ」に置き換わる 傾向がみられます。
【伝承事例】 |
風 位 | 宮 津 市 | 与謝郡伊根町 | 京丹後市A | 京丹後市B |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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大阪府
2024/05/25
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【地域特性】 かつて、大阪湾東部の沿岸域は漁業の盛んな地域でしたが、関西国際空港の誕生によって 大きく変貌しました。漁業の衰退が著しい現況ではあるものの、地区によっては現在も活況 を呈し、多様な漁労文化を伝えているところがあります。 この沿岸域では、2014年から2019年にかけて、岸和田市以南の主な漁港を対象に調査を行 いました。本来であれば、少なくとも標準の8方位を基本とした風位名体系が伝承されてい たはずですが、調査ではいずれの地区でも北東風に関する記録がありません。 全体として、隣接する和歌山県と類似した体系を有しており、キタあるいはカミカゼ(北 風)、コチ(東風)、マゼ(南風)、ニシ(西風)などに共有化の傾向が認められます。な お、その他の風位名として、岸和田市にヨウズが伝わっています。
【伝承事例】 |
風 位 | 岸和田市 | 泉佐野市 | 阪 南 市 | 泉南郡岬町 |
北 | ![]() |
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兵 庫 県
2023/11/25
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【地域特性】 兵庫県は、近畿地方において瀬戸内海と日本海にそれぞれ沿岸域を有する唯一の自治体で す。このことは、地勢や気候・風土などで異なる特性を育んでいます。調査は、2014年から 2018年にかけて、島嶼部を含め4回行いました。 確認された風位名の体系は、全体として9方位で構成されており、風位名によっては呼称 の共有化が図られています。キタ(北風)やニシ(西風)はその代表ですが、北東の風では 瀬戸内海沿岸域や島嶼部のキタゴチに対し、日本海沿岸域ではアイノカゼが伝承されていま す。南方風についても県南部のマゼあるいはヤマゼ系に対し、北部ではミナミが一般的で、 南東風も含めてアラシの呼称も使われます。 なお、坊勢島に伝わるタカニシは南西寄りの春の突風のことで、家島のキタウケマゼに関 しては、北風の後に吹くことからキタウケのマゼ(南方風)という意味があります。
【伝承事例】 |
風 位 | 明石市A | 明石市B | 姫 路 市 | 赤 穂 市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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風 位 | 豊 岡 市 | 美方郡新温泉町 | 淡 路 市 | 洲 本 市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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北西 | ![]() |
和歌山県
2023/08/25
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【地域特性】 紀伊半島西部の沿岸域を占める和歌山県では、紀伊水道に面して漁港が連なっています。 調査は2013年から2019年にかけて実施され、風位に関する伝承は、和歌山市から那智勝浦町 に至る地域で記録されました。体系の構成は基本的な8方位で、北風のキタッポや北東風の キタゴチ、東風のコチ、南風のマゼ、西風のニシについてはほぼ共有化されていますが、南 西風や北西風では地域により特性が異なります。特にヤマゼに関しては、広川町の北西風に 対し、田辺市や那智勝浦町では南西風の呼称となっています。ただし、『風の事典』等によ ると北部から中部沿岸域の北西風は、アナゼあるいはアナデが優占する傾向を示しており、 分布圏としてはアナジ・アナゼ系に入るようです。 体系として最も多様度が高いのは、和歌山市加太の事例で、南東方向を除く7風位に呼称 があり、このうち南西風のマレニシやタカニシ、北西風のサゲニシは比較的分かり易い風位 名といえます。 なお、その他の風位名として、田辺市にタイワンボウズがあり、2月頃に吹く風で4〜5 mの大波をもたらすとのことです。また、広川町に伝わるトウセンボは北方から吹く突風を 指しており、『風の事典』の事例からは本来トウジンボウと呼ばれる人物由来の風位名と考 えられ、西日本の各地で多くの転訛形がみられます。みなべ町のカミカラについては、特定 の風位ではなく南から西へ変化する風とされています。
【伝承事例】 |
風 位 | 和歌山市 | 有田郡広川町 | 田 辺 市 | 東牟婁郡那智勝浦町 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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鳥 取 県
2024/01/25
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【地域特性】 日本海に面した長い沿岸域を有する鳥取県の調査は、2014年および2017年に実施され、主 要な漁港で聞きとりを行いました。 伝承された風位名は、標準的な8方位の体系で、北風がキタあるいはアオキタ(地域によ ってはアオギタ)と呼ばれ、西風はニシでほぼ地域的な共有化が図られています。また、ア イノカゼが北東から東の風位に、ダシやハエについてはそれぞれ南あるいは南西の風位に対 する呼称として定着しているようです。 なお、トビウオ漁に深くかかわる風位名として大山町にアゴカゼが伝えられているほか、 岩美町のオキノカゼは風向が特定されない呼称となっています。
【伝承事例】 |
風 位 | 岩美郡岩美町 | 東伯郡湯梨浜町 | 東伯郡琴浦町 | 西伯郡大山町 |
北 | ![]() |
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島 根 県
2024/10/25
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【地域特性】 長大な山陰海岸の西部に位置する島根県には多くの漁港があり、特に中海や宍道湖を含め た島根半島周辺は濃密な分布を示しています。調査は2014年と2017年の2回で、松江市と出 雲市を中心に西部の一部で聞きとりを行っています。 風位名の体系は10方位から成る構成で、コチ(東風)、ハエまたはダシ(南風)、ニシ (西風)に共有化が認められます。一方、北風や北東風、南西風などで多様化の傾向がみら れるようです。浜田市では、北西方向からの風に対し細かな呼び分けが行われており、他 の地域でも伝承されている可能性があります。
【伝承事例】 |
風 位 | 松江市A | 松江市B | 出 雲 市 | 浜 田 市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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岡 山 県
2023/10/25
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【地域特性】 瀬戸内海東部の主要な沿岸域を占める岡山県では、2014年から5回の調査を行い、一部の 島嶼を含めて風の伝承を記録しています。 風位名の体系は、標準的な8方位で構成され、キタ(北風)、キタコチあるいはキタゴチ (北東風)、コチ(東風)、ニシ(西風)、アナジ(北西風)がほぼ共有化されている一方 で、南東から南・南西の風位にかけては、地域によってヤマジとマジが混在しています。 さらに、南西風ではマエマジ(瀬戸内市)やヤマジニシ(倉敷市)などの変化形も確認され ました。ただし、備前市においてはアナジが北風として伝承されており、北西風にはニシキ タの呼称が充てられています。
【伝承事例】 |
風 位 | 備 前 市 | 瀬戸内市 | 倉 敷 市 | 笠 岡 市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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山 口 県
2023/08/25
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【地域特性】 山口県の沿岸域は、日本海から響灘、関門海峡、周防灘、瀬戸内海とさまざまな海域に面 しています。漁港や漁場をとりまく環境も多様性に富んだ状況ですが、風位呼称に関しては ほぼ共有化が図られているようです。構成は8方位の標準型で、具体的には北風がキタ、東 風がキタゴチ、東風はコチ、南風がハエまたはハイ、西風がニシ、そして北西風のアナジと 共有化された体系がみられます。また、南東風と南西風については、南風のハエあるいはマ ジにかかわる呼称が主体です。 その他の風位名としては、長門市油谷で夏季に突然吹き始めてすぐに止む南西からの強風 をハアテ(はやて)と呼んでいます。なお、下関市豊浦町では、春一番に吹く強風をオオゴ チと称していました。
【伝承事例】 |
風 位 | 長 門 市 | 下 関 市 | 宇 部 市 | 大島郡周防大島町 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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徳島県
2024/08/25
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【地域特性】 徳島県の海岸域は、渦潮で知られた瀬戸内海の鳴門海峡から紀伊水道を経て太平洋へと続 いています。このうち主要な沿岸域の漁港を対象に、2016年と2018年に調査を実施しました。 確認された体系は11の風位に及び、特に牟岐町において詳細な呼び分けが行われています。 伝承者のひとりは、「細かな風向きがよめないと、漁師はやっていけない」と話していまし た。風位名の共有化はほぼ県内各地に及び、キタ(北の風)、キタゴチ(北東の風)、コチ (東の風)、イナサ(南東の風)、マゼ(南の風)、ニシ(西の風)、アナゼ(北西の風) という具合に標準的な体系を構成しています。 なお、牟岐町のニシマはニシマゼが、サンニシにつてはサニシが転訛した呼称と考えられ ます。
【伝承事例】 |
風 位 | 鳴 門 市 | 海部郡美波町 | 海部郡牟岐町 | 海部郡海陽町 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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香 川 県
2023/12/25
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【地域特性】 瀬戸内海に面した香川県では、島嶼部を含めて各種の網漁が行われてきました。一部で継 続されているものの、瀬戸大橋の開通以来、漁業を取り巻く環境は大きく変貌を遂げていま す。特に西部の沿岸域では、生業としての衰退が顕著にみられます。 調査は2014年に始まり、東かがわ市から観音寺市までの沿岸域を対象に2018年にかけて実 施しました。確認された風位体系は、標準タイプの8方位が記録され、ほぼ各地域で共有化 された風位名による構成となっています。特に、キタ(北の風)、キタゴチ(北東の風)、 コチ(東の風)、マジあるいはヤマジ(南の風)、ニシ(西の風)、アナジあるいはアナゼ (北西の風)については、四国地方の代表的な風位体系といえます。 その他の風位名としては、丸亀市の島嶼部に風位が特定されない突風としてハヤセノカゼ が伝わっています。
【伝承事例】 |
風 位 | さぬき市 | 丸 亀 市 | 仲多度郡多度津町 | 三 豊 市 |
北 | ![]() |
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高 知 県
2023/08/25
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【地域特性】 高知県では、香南市から宿毛市にかけての沿岸域で2015年と2018年に調査を実施していま す。風位名の体系は標準型の8方位で構成され、キタ(北風)、キタゴチ(北東風)、コチ (東風)、マゼ(南風)、シラ(南西風)、ニシ(西風)でほぼ共有化が図られています。 南東風では、土佐清水市にヤマゼとイナサがあり、南西風についても通常吹くシラに対し、 干潮時に吹く風はシオメジと称していました。文字通り、潮目の風という意味でしょう。な お、マジは北西風だけでなく、同じ土佐清水でも南西風として捉えている漁師がいます。
【伝承事例】 |
風 位 | 香 南 市 | 高 知 市 | 幡多郡黒潮町 | 土佐清水市 |
北 | ![]() |
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佐 賀 県
2024/02/25
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【地域特性】 北九州にある福岡・佐賀・長崎の各県は、いずれも日本海側と有明海側の双方に海岸線を 有しています。佐賀県はその中心に位置し、2014年に東松浦半島を主体とした調査を実施し たほか、2018年には有明海に面した太良町でも聞きとりを行いました。 風位体系を構成するのは、基本の8方位に西北西を加えた9種の風位で、唐津市や太良町 では伝統的な体系が確認されています。共有化の状況をみると、北風はキタが主流で、以下 東風(コチ)、南風(ハエの系統)、西風(ニシ)、北西風(アナゼ)があります。このう ち、アナゼについては近世の『物類称呼』に「西北の風を名づけてあなぜといふはあなじの 転語也」として、『後拾遺集』の歌を掲載しています。一方、『風の事典』ではアナジとア ナゼの地理的分布に注目し、「こうした地理的分布から判断すると、アナゼはアナジより古 く、縁辺のへんぴな地方に追いやられているように見える」という見解がみられます。調査 では、中国・四国地方と東九州がアナジを主体とし、近畿や北九州・西九州でアナゼが優占 する傾向を示しています。こうした状況について、どのように解釈すべきでしょうか。さま ざまな観点から検証する必要性を感じます。なお、瀬戸内地域には北風をアナジと称する事 例があるほか、『能嶋家傳』のアナシは西風が対象で、冬春に多く吹くとしています。 ところで、北西の反対側は南東ですが、唐津ではこの風位をオシアナと呼びます。『風の 事典』によるとオシアナジのことで、「台風時の南東からの暴強風」とされます。伝承地は ほぼ西九州に限られており、長崎県や熊本県にはオシャナの記録があります。
【伝承事例】 |
風 位 | 唐 津 市 | 東松浦郡玄海町 | 伊万里市 | 藤津郡太良町 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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長 崎 県
2023/10/25
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【地域特性】 日本海から東シナ海、そして内湾の有明海という具合に三方を海に囲まれた長崎県には、 壱岐・対馬・五島列島など多くの島嶼があります。調査は2014年と2018年に実施しましたが、 島嶼部での記録は生月島だけです。 体系の構成は8方位の標準型を示すものの、南東風に関しては総体的にあまり注目されて いなかったようです。各地で共有されていた風位名は、北風がキタで、以下キタゴチ(北東 風)、コチ(東風)、ハエ(南風)、ニシ(西風)、アナゼ(北西風)となっています。ま た、南西風については平戸市のサガリニシを除くと、他の3地域はオキバエです。その他の 風として、地域固有の呼称と思われるミツデノカゼやカカシラズノカゼが伝承されています。
【伝承事例】 |
風 位 | 平 戸 市 | 長 崎 市 | 大 村 市 | 島 原 市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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熊 本 県
2023/09/25
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【地域特性】 熊本県の沿岸域は、北の有明海から南の八代海へと連なり、さらに天草諸島を介して東 シナ海にも接続しています。このうち、南部沿岸域と天草諸島では2015年に、有明海沿岸域 については2018年に調査を行いました。 風位名の体系は標準的な8方位で構成され、北風がキタあるいはキタンカゼ、北東風がキ タゴチ、東風がコチ、南風がハエ、西風がニシ、北西風がアナゼという具合に、ほぼ共有さ れています。また、南東風のオシャナ、南西風のオキバエあるいはオクバエは、いずれも地 域特性に根差した呼称です。 その他の風位名として、熊本市にカミカゼが、宇土市にはアガルカゼが伝承されています。
【伝承事例】 |
風 位 | 熊 本 市 | 宇 土 市 | 宇 城 市 | 天草郡苓北町 |
北 | ![]() |
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大 分 県
2024/03/25
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【地域特性】 瀬戸内海と豊後水道に面した大分県には、国東半島という特徴的な地形がみられます。そ の沿岸域には多くの漁港が連なり、風の伝承も豊富です。調査は2016年と2018年に実施しま したが、南部では一部の地域だけが対象となっています。 風位名の体系は、8方位の標準型を示します。キタ(北風)、キタゴチ(北東風)、コチ (東風)、コチマジあるいはコチヤマジ(南東風)、マジ(南風)、ニシ(西風)、アナジ (北西風)など、多くの共有された呼称が認められます。また、その他の風として、国東市 にジリギタが伝承されていました。
【伝承事例】 |
風 位 | 国東市A | 国東市B | 宇 佐 市 | 津久見市 |
北 | ![]() |
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鹿児島県
2024/01/25
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【地域特性】 九州の南端に位置する鹿児島県は、太平洋と東シナ海に接し、二つの大きな半島や奥深い 鹿児島湾など、多様な沿岸環境を有しています。調査は、2015年から2018年にかけて3回実 施しているものの、島嶼部での聞きとり記録はありません。 風位名の体系は8方位の標準タイプで、北風はキタ、北東風がキタゴチ、東風のコチ、南 風のミナミあるいはハエンカゼ、西風のニシなどが地域共有の呼称です。また、南西風では 南風と同じハエンカゼ(ハエの転訛形)が使われるほか、オキバエについてもほぼ共有化が 図られているようです。さらに、クンバエ(南東風)やシラハエ(南西風)など、広く南方 からの風に対してハエから派生したと推察される呼称が伝わっています。 その他のオッバエもやはり南東からの強風であり、通常吹くクンバエとの呼び分けが行わ れていたことは、総じて南方系の風位への関心の高さを窺わせるものです。
【伝承事例】 |
風 位 | 阿久根市 | 南さつま市 | 指 宿 市 | 肝属郡南大隅町 |
北 | ![]() |
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沖 縄 県 T
2024/04/25
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【地域特性】 南西諸島の南に位置する沖縄県は、広大な海域に多くの島嶼を有しています。ここでは、 沖縄本島を中心とした沖縄諸島における風の伝承について整理しました。ただし、調査は本 島内の沿岸域が主体で、他の島嶼はごく一部に限られています。実施したのは、2019年です。 風位名の体系をみると、記録されたのは5方位に限られ、南東や南西、北西方向からの風 位に対する呼称は採集できませんでした。従来の資料でも、北東風を含めて全般的に少ない 傾向がみられることから、風位の認識は東西南北が基本であったと推察されます。これら4 方位の呼称は各地で共有化されており、北風がニシ(カジ)、東風がアガリ(カジ)、南風 はへェカジあるいはヘイカジなど、そして西風がイリ(カジ)となっています。ここで注意 したいのは、奄美地方以南のニシがいわゆる西ではなく北を意味していることです。 その他の風位名として、本部町と伊江村にタイワンボウズが、またうるま市にはニンガチ ノカジマヤーが伝承されています。
【伝承事例】 |
風 位 | 国頭郡本部町 | 国頭郡伊江村 | うるま市 | 南 城 市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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南 | ![]() |
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西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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