北 海 道
2023/07/25
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【地域特性】 北海道では、留萌・後志・檜山・渡島の各地方で調査を行いました。このうち、留萌・後 志地方は1975年から1976年にかけて、また檜山・渡島地方では2017年の実施となっています。 確認された風位名の体系は10方位に及び、北方からの風は、北北東や北北西を含めてアイノ カゼが主体で、一部にシモカゼが伝わっています。東方から南東にかけてのヤマセ、南風の シカダあるいはヒカダ、西風のニシについては、ほぼ共有化された呼称といえるでしょう。 また、北西からの風をタマカゼあるいはタバカゼと称する地域があります。 なお、北斗市のヨイチという呼称は、秋口になると吹くヤマセの1種で、特別な風と捉え られています。これは夕方から吹き始める強風のことで、やがて津軽方面から黒雲が来ると 風向きは次第に西から北へとまわり、海上は大荒れとなったようです。
【伝承事例】 |
風 位 | 積丹郡積丹町 | 松前郡松前町 | 北 斗 市 | 函 館 市 |
北 | ![]() |
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北北東 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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北北西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
青 森 県
2023/12/25
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【地域特性】 青森県は、太平洋から津軽海峡、そして日本海に及ぶ多様な海域に接しています。かつて はイカ釣り漁の盛んな時代があり、津軽半島や下北半島周辺では多くのイカ釣り船が点す漁 火(集魚灯)が見られました。 調査は、1976年に下北半島沿岸と八戸市で実施したほか、2015年と2016年に三陸沿岸北部 や津軽半島沿岸域で聞きとりを行いました。風位体系は10方位を数え、基本の8方位に西南 西および北北西を加えた構成となっています。風位名の特性は、北風がキタおよびアイ系を 主体とし、東から南東にかけてはヤマセ、南の風がミナミおよびクダリ、西風がニシでほぼ 共有化されています。また、南西から西の風位に対するシカタ系も特性の一つです。
【伝承事例】 |
風 位 | 東津軽郡外ヶ浜町 | 西津軽郡深浦町 | 下北郡大間町 | 八 戸 市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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西 | ![]() |
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宮 城 県
2023/11/25
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【地域特性】 宮城県では2014年から2018年にかけて、中部から北部沿岸域を中心に調査を実施しました。 風位名の構成は、基本的な8方位で体系化されています。ただし、風位別にみると呼称が 共有される度合いは弱く、比較的緩やかな捉え方が認められます。特にナレェ(ナライ)や コチ、ヤマセなどについては、対象となる風位が複数に及び、地域的な特性が表れています。 それでも、北方ではキタやナレェが、さらに東方のコチ、南東のイナサ、南方のミナミ、西 方のニシについては、ある程度の共有化がみられます。 なお、南三陸町ではハマゾイとモウギ(北東の風)が記録されていますが、これらは岩手 県南部の沿岸域と同じ分布圏を形成しており、星名における特性とよく似た状況を示してい ます。その他の風位名としては、塩竈市の浦戸桂島にテマドリサンという西風の呼称があり ます。テマドリとは、朝から始めて夕方に終了する手間取り仕事を指し、昼間どれだけ吹い ても夕方には凪いでしまう西風の特性を「手間取り」に譬えたものです。
【伝承事例】 |
風 位 | 気仙沼市 | 本吉郡南三陸町 | 東松島市 | 塩 竈 市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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南 | ![]() |
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西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
秋 田 県
2023/09/25
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【地域特性】 秋田県では、2012年に男鹿市からにかほ市にかけての沿岸域で調査を行っています。この うち、男鹿半島一帯や南部の象潟周辺で比較的多様な伝承が記録されました。 風位名の体系は全体として9方位で構成され、北の風位はアイノカゼやキタを主体とし、 南西の風はヒカタあるいはシカタが、そして東風のヤマセ、西風のニシ、北西風のタバカゼ が共有化された呼称となっています。その一方でダシに関しては、地域によって東風・南東 風・南風と風位が分散しており、各々が立地する地形の特性が影響を及ぼしているものと推 察されます。 その他の風としてナガセがあり、特定の時節を象徴する存在です。
【伝承事例】 |
風 位 | 男鹿市A | 男鹿市B | 由利本荘市 | にかほ市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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南東 | ![]() |
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南 | ![]() |
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南西 | ![]() |
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西南西 | ![]() |
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西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
山 形 県
2024/04/25
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【地域特性】 日本海北部沿岸域の一部を形成する山形県では、1974年の飛島における調査を出発点とし、 その後2011年から2018年にかけて、沿岸域や内陸部の調査を行いました。 風位名は基本的な8方位による体系ですが、その構成をみると同じ呼称が複数の方位にわ たって伝承されており、特に北東から南東にかけてはヤマセとダシに対する認識に地域的な 特性が表れています。それ以外では、シモカゼ(北風)、クダリあるいはシカタ(南西風)、 ニシ(西風)、タマカゼ(北西風)などで呼称の共有化が認められます。 山形県といえば鳥海山や飛島などがよく知られていますが、各地の伝承でもこれらが風の 予測に重要な存在となっていることが分かります。
【伝承事例】 |
風 位 | 飽海郡遊佐町 | 酒 田 市 | 鶴岡市A(北部) | 鶴岡市B(南部) |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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その他 | ![]() |
茨 城 県
2024/03/25
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【地域特性】 茨城県では、利根川河口から北へ、鹿島灘を経て勿来に至る沿岸に漁港が点在しています。 また、霞ヶ浦や北浦などの内水面における漁業も盛んに行われてきました。調査は、1992年 から2019年にかけて内陸部と沿岸部で合わせて30回以上実施し、一部内水面漁業の従事者か らも伝承を記録しています。 確認された風位名の体系は11方位と多様性が認められ、このうち6方位についてはほぼ共 有化が図られています。北の風がキタゲと呼ばれるほか、北東から東の風はコチあるいはコ ヂ、コヂゲなどで、南東風がイナサ、西の風はそのままニシとなります。南の風については、 北部沿岸域で南東風と同じイナサですが、南部沿岸域ではヤマゼが主体です。北西の風もマ カダを主体に、北部の一部地域ではナライが伝承されていました。内水面を有する小美玉市 でも、ナライは北西風のことです。 なお、その他の風としてひたちなか市にナダゲが、大洗町にはタカノカゼがあります。い ずれも海風・陸風を指した呼称です。
【伝承事例】 |
風 位 | 北茨城市 | 日 立 市 | ひたちなか市 | 東茨城郡大洗町 |
北 | ![]() |
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北北東 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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南西 | ![]() |
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西 | ![]() |
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西北西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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北北西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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千 葉 県
2023/09/25
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【地域特性】 千葉県の沿岸域は、太平洋に面した外房地域と東京湾に面した内房地域に二分されます。 南部の館山市や南房総市では、いずれの海域にも接していますが、中部から北部にかけては 外洋あるいは内湾域という異なる海洋環境の対比が際立っています。ただし、風の伝承に関 しては最東端の銚子市を除いて、風位呼称の体系に大きな変化は認められません。 調査は、沿岸部のほぼ全域に亘る漁港で2008年から2018年にかけて断続的に実施され、全 体として11方位に及ぶ体系とともに、多くの伝承記録を得ています。したがって、ここでは 基本的な8風位について、県内の特性を整理してみましょう。 @ 北の風 内房の沿岸一帯から外房の九十九里以南の沿岸にかけて、ナライあるいはその転訛形であ るナレェがほぼ共有化された呼称となっています。また一部の地域でキタの記録がみられま す。ただし、銚子市においては茨城県以北に連なるマカダやキタマカダの系統が主流です。 A 北東の風 北風系のナライや東風系のコチと同様に認識されている事例が目立ちます。内房では、ナ ライの他にシモサやヂダシがあり、外房ではコチがやや優占する傾向がみられ、一部でキタ ゴチやオキゴチが伝わっています。 B 東の風 沿岸の全域において共有化されているのは、コチです。また、内房の一部でヒガシモンが、 外房の一部でオキモノあるいはオキモンが記録されています。 C 南東の風 コチとともに全域での共有化がみられ、イナサがその主役です。地域によってはイナサモ ンやオキモンと呼ばれ、銚子市にはイナサゴヂ(東南東の風)があります。 D 南の風 銚子市を除く各地でミナミと呼ばれるものの、伝承がない地域も目立ちます。総じて、南 方からの風に対しては関心が低かったものと推察されます。なお、銚子市ではヤマセあるい はヤマゼと呼ばれます。 E 南西の風 一般的な呼称はナンセイで、一部西風系のニシと捉えている事例がみられます。全体とし て、伝承のない地域が目立ちます。 F 西の風 外房・内房ともに、ニシの呼称で共有化されています。一部で北西風系のサガやサニシが みられ、他にマニシやオオニシなどの記録があります。 G 北西の風 銚子市を除く沿岸域全体を通じて、サガ・サガニシ・サニシを主体とした呼称が伝承され ています。一方、銚子市においては北風系と同じマカダやキタマカダと呼ばれ、ほぼ同じ領 域として認識されているようです。他にオヤマカゼやカラッカゼ(木更津市)、ニシバイテ (鋸南町)などの記録があります。なお、サガに関してはサガメ・サガッポ・サガンマイ・ サガモンなど多様な転訛形が確認されました。 H その他の風 館山市のヒガンジケ、南房総市のヤマオロシ・アメナレエ・サガナレェ、鋸南町のアマハ ラシ、市川市のシオテカンダチ・ニッコウカンダチなどがあります。これらの詳細は、以下 の「伝承事例」に記しました。
【伝承事例】 |
風 位 | 銚 子 市 | いすみ市 | 勝 浦 市 | 南房総市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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西北西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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風 位 | 館 山 市 | 富 津 市 | 木更津市 | 船 橋 市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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東 京 都
2024/10/25
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【地域特性】 かつては、江戸前の海として多くの漁師が漁労に従事した東京湾北部の沿岸域も、湾岸の 開発によって大きく変貌しました。現在は、羽田や大森、佃、葛西などで細々とした漁が行 われているだけです。また、内陸部の多摩や奥多摩地域においては、農業や製炭業にかかわ る聞きとりのなかで風の伝承を記録しました。 島嶼部を除く都内の風位体系は7方位で構成され、主体は漁業における利用です。風位別 に共有化が図られているのは、北風のナレエ(ナライ)、東風のコチ、南東風のイナサ、南 風のミナミで、これらは房総半島から三浦半島、伊豆半島東部沿岸域に至る広範な地域の標 準呼称となっています。 一方、内陸部における風位名は北風と南風のみで、漁業のような体系は認められません。 イリとダシの関係も、上り風と下り風の対比が本来の意味であり、方位は地域によってさま ざまです。
【伝承事例】 |
風 位 | 江戸川区 | 中 央 区 | 大 田 区 | 多摩・奥多摩地域 |
北 | ![]() |
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北東 | ||||
東 | ![]() |
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神奈川県
2023/12/25
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【地域特性】 神奈川県の沿岸域は、三浦半島を介して東側が東京湾に面し、西側は相模湾の一部を形成 しています。横須賀市や三浦市は双方の海域に接しており、特に漁業の盛んな地域として知 られています。 調査は、一部の漁港を除いて2008年から2018年にかけて断続的に行われ、半島南部を中心 に多くの伝承が記録されました。風位体系は、全体として11方位あり、基本的な風位呼称は 千葉県などと共有する事例が多くみられます。以下に、標準となる8風位の特性を示します。 @ 北の風 東京湾および相模湾ともに、ナライあるいはその転訛形であるナレェがほぼ共通の呼称で す。一部でキタの記録があるほか、西部の二宮町においては真北の風を特別にヤマジと称し ていました。 A 北東の風 伝承記録のない地域もありますが、千葉県と同じようにコチあるいはシモウサ系の呼称が みられます。コチは、東風に対しても使われています。 B 東の風 コチが沿岸全域で標準化されており、一部でヒガシモンも併用されています。これは、千 葉県の東京湾沿岸地域から連なる特性といえます。 C 南東の風 どの沿岸域もイナサで共有化が図られ、東北の宮城県から西は静岡県の沼津あたりまで広 範囲に分布します。南東風の代表的な呼称の一つといえるでしょう。なお。横浜市金沢区の 一部ではシモウサ系の呼称がみられます。 D 南の風 通常は重要な風位ですが、神奈川県の場合は総体的に関心が低いと感じられます。東京湾 沿岸ではミナミあるいはシタヨウキが伝承され、相模湾沿岸でも表に掲載されていない横須 賀市荒崎や茅ヶ崎市、大磯町などでミナミの記録があります。 E 南西の風 この風については、いずれの沿岸域でも風位名の共有化はみられず、サガ、ナンセイ、ナカ ニシなど変化に富んでいます。ナカニシは、愛知県や三重県で主に北西の風に対する呼称とし て知られ、それが湘南地域に伝わった可能性があります。ちなみに、三重県紀北町では南西の 風をナカマニシと呼んでいます。 F 西の風 総体的に、ニシあるいはニシモンの呼称で共有化が図られています。千葉県と同じように、 一部で北西風が主体のサガを伝承している地域があります。 G 北西の風 東京湾の千葉県側で主要なサガ系の呼称は、さらに相模湾沿岸一帯から駿河湾の沼津や静岡 辺りまで分布しています。ただし、一部の地域にはナライ系やダシ系呼称があり、前者には横 須賀市でアカンボナライと呼ばれる事例があります。 H その他の風 台風通過後の吹き返しの強風はベットウと呼ばれ、藤沢市ではニシベットウと称しています。 二宮町のアテカゼあるいはオトシカゼも、前線の通過に伴う特別な風として恐れられた風です。 具体的な伝承内容は、以下の「伝承事例」に記載しています。
【伝承事例】 |
風 位 | 横 浜 市 | 横須賀市A | 横須賀市B | 三 浦 市 |
北 | ![]() |
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北北東 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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北北西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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風 位 | 三浦郡葉山町 | 鎌 倉 市 | 藤 沢 市 | 中郡二宮町 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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南 | ||||
南西 | ![]() |
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西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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新 潟 県
2024/01/25
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【地域特性】 新潟県では、1976年に佐渡島北部で聞きとりを実施したあと、30年以上の空白を経て2012 年から2015年にかけて新たな調査を行いました。したがって、島嶼以外の沿岸域では全て近 年の記録となります。 風位体系は標準的な8方位で構成されていますが、個々の風位呼称では北風や南風を中心 に多様性がみられます。風位別の地域特性で共有化が図られているのはほぼ西風に限られ、 それ以外の風位では同じ呼称が異なる風向を示す事例が多く認められます。これらは、カミ カゼ、クダリ、シモカゼ、ダシ、ヤマセなどによく表れています。たとえばダシを例にとる と、東風が村上市、南東風が出雲崎町、南風が出雲崎町および柏崎市・糸魚川市、西風が村 上市という具合に、同じ市内にあっても正反対の風向に利用されていることが分かります。 また、日本海沿岸を代表するアイノカゼについてみると、北風を示すのが村上市と出雲崎町 で、糸魚川市では北風と東風を対象としています。このうち、村上市の場合は古い世代の呼 称とされているのが特徴です。 その他の風位名では、村上市で台風に関係した呼称としてフキカエシがあり、出雲崎町に は本来の南西風だけでなく、5月という期間限定の西風を対象とする2種類のクダリが伝承 されています。
【伝承事例】 |
風 位 | 村 上 市 | 佐渡郡相川町 | 三島郡出雲崎町 | 糸魚川市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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富 山 県
2023/07/25
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【地域特性】 富山県の沿岸域については、2012年から2013年にかけて概ね調査を実施し、このうち4ヵ 所ほどの自治体で体系的な風の伝承を記録できました。その構成は、9方位によって示され ます。 まず、北方からの風は北北東や北東も含めて、アイノカゼが主体です。東風はシモカゼ・ ウチアイ・ヤマセ、南東風はヤスイ・ヤスモン・クダリ、南風もダシ・アラセ・ヒカタなど、 南西風も含めて多様な呼称があり、地域(漁港)によって対象となる方位が入れ替わるとい う特性がみられます。また、西風についてはニシを主体にカミカゼなどがあり、北西風は西 部の沿岸域でタバカゼあるいはタカカゼと呼ばれています。 なお、氷見市では山(ヘタ)側から海へ吹く風をヘタカゼ、反対に海(オキ)側から陸へ 吹く風をオキカゼと称しています。いずれにしても、アイノカゼ以外は漁港の位置や地形な どの違いによって、同一呼称であっても風位が異なる実態がみられるようです。
【伝承事例】 |
風 位 | 下新川郡朝日町 | 魚 津 市 | 射 水 市 | 氷 見 市 |
北 | ![]() |
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北北東 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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石 川 県
2024/05/25
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【地域特性】 石川県の漁業においては、やはり能登半島が重要な存在として位置づけられます。奥能登 地域を中心として豊かな漁労文化が育まれ、また北前船に代表される日本海航路の風待ち港 として栄えたいくつかの地区には、方位石が現存します。それらが利用されていた当時は、 まさに風を読む力量が問われる時代でもあったのです。 調査は2013年と2018年に実施され、標準的な8方位による風位名体系が確認されました。 各風位名にはやや多様性が認められるものの、北風のタカカゼやアイノカゼ、南風のダシや ヤス、そして西風のシカタやクダリなどは比較的共有化が図られています。隣接する富山県 や福井県の伝承と共通する事例が多いことも、特色の一つです。また、ヤスカゼとアイノカ ゼを組み合わせたヤスアイと呼ばれる風位名は、地域によって北東から南東という具合に、 やや広い範囲に及ぶ風向が対象となっています。
【伝承事例】 |
風 位 | 珠 洲 市 | 鳳珠郡穴水町 | 七尾市A | 七尾市B |
北 | ![]() |
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西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
風 位 | 輪島市A | 輪島市B | 羽咋郡志賀町 | 白 山 市 |
北 | ![]() |
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西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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福 井 県
2023/11/25
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【地域特性】 福井県の調査は、2013年から2018にかけて3回実施しています。主体は若狭地方ですが、 越前地方も3ヵ所ほど歩くことができました。風位体系の構成は11方位に及び、呼び分けの 多様さがみられます。特に美浜町において、西北西(ニシマカゼ)、北西(マカゼ)、北北 西(アイマカゼ)の各風位について具体的な目標物を設定していたことは、微妙な風位の変 化を捉える必要があったからに相違ありません。 風位別の構成をみると、北の風はアイノカゼが主体で、南の風ではダシあるいはミナミが、 西風はニシという具合に共有化が認められるものの、他の風位に関しては比較的多様な呼称 が伝承されています。たとえば、高浜町においては南風をヘタカゼあるいはヘタノカゼと呼 び、これより東に寄るとヒガシノヘタ、また西に寄るとニシノヘタと呼び分けています。ヘ タカゼは、富山県氷見市にも伝承されており、北陸地方特有の呼称と考えられます。なお、 ヘタカゼに対応する北方(沖合)からの風がオキカゼとなります。 その他の風位名では、越前町にオオクダリがあり、カミカゼ(南風)の特に強い場合に使 われます。また、美浜町のアラシカゼは3月中旬から12月中旬にかけて朝方(4時から8時 頃)に吹く南の風で、アサアラシとも呼ばれます。
【伝承事例】 |
風 位 | 丹生郡越前町 | 美方郡美浜町 | 小 浜 市 | 大飯郡高浜町 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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南東 | ![]() |
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南 | ![]() |
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南西 | ![]() |
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西南西 | ![]() |
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西 | ![]() |
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西北西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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北北西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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静 岡 県
2024/06/25
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【地域特性】 静岡県は、相模湾から駿河湾、遠州灘という多様な沿岸域を有しています。特に伊豆半島 や駿河湾北部の沿岸域には多くの漁港があり、漁業が盛んでした。 調査は、県東部から中部の沿岸部を中心に1975年以降断続的に2019年まで実施しており、 伊豆地方を主体に多くの伝承が記録されました。これらの対象となった風位は全体で11方位 に及び、比較的多彩な風位が認められます。総体的には、各地域間の伝承体系に大きな差異 は認められず、一部の地域で特徴的な呼称が伝わっています。 風位別に整理すると、北風は相模湾沿岸でナライやサガが優占する一方、駿河湾東部から 北部、西部の焼津辺りまでがダシとなり、その先遠州灘にかけてはキタあるいはキタッポへ と変化します。北東風はほぼナライで共有化されますが、東風ではコチを基本としてナライ、 ヒガシ系の呼称が混在します。南東風は、伊豆半島と沼津付近でイナサを標準とし、それよ り西はコチ系が主体です。さらに、南風はミナミを中心に、西風はニシで共有化が図られて います。ただし、北西風に関してはサガニシがやや優占する傾向を示すものの、地域によっ て異なる伝承が目立ちます。熱海市のオダワラマワシや沼津市のオオカワラなどはその典型 的な事例といえるでしょう。 なお、オオカワラについては沼津市内でも風位の分散がみられ、北西風(我入道、内浦、 戸田)以外に西風(馬込)や北北西風(戸田)が対象となっています。
【伝承事例】 |
風 位 | 熱 海 市 | 伊 東 市 | 賀茂郡東伊豆町 | 賀茂郡河津町 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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南東 | ![]() |
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南 | ![]() |
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南西 | ![]() |
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西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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風 位 | 下 田 市 | 賀茂郡南伊豆町 | 賀茂郡西伊豆町 | 伊 豆 市 |
北 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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南東 | ![]() |
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南 | ![]() |
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南西 | ![]() |
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西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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風 位 | 沼津市A | 沼津市B | 静 岡 市 | 焼 津 市 |
北 | ![]() |
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北北東 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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南東 | ![]() |
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南 | ![]() |
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南西 | ![]() |
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西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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北北西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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風 位 | 榛原郡吉田町 | 牧之原市 | 御前崎市 | 浜 松 市 |
北 | ![]() |
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北北東 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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東南東 | ![]() |
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南東 | ![]() |
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南 | ![]() |
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南西 | ![]() |
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西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
愛 知 県
2023/10/25
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【地域特性】 愛知県の調査は、2012年から2019年にかけて3回実施しました。知多・渥美の両半島に囲 まれた内湾域と伊勢湾を中心に、一部の島嶼を含む漁業地が対象です。風の伝承では、知多 半島の沿岸域で多様性が認められます。 風位を構成する体系は、複数の方位を示すベットウゴチ(東北東中心)を含めると12方位 に及び、漁師らの風に対する関心の高さが窺われます。各地域に共通するのは、キタッポ (北風)、ベットウあるいはナライ(北東風)、コチ(東風)、ヤマゼあるいはイナサ(南 東風)、マゼ(南風)、ニシあるいはマニシ(西風)、ナカニシ(北西風)です。南西風に ついては、常滑市にコウヤマやヒカタ(ヤマゼともいう)があり、前者がそよそよと吹く風 に対し、後者をシケ風とする呼び分けがみられます。他にシタブキ(東南東風)、オオマニ シ・スズカオロシ(西南西風)、アマゴチ(東風)、イブキオロシ(北西風)などが知多半 島で伝承されていました。
【伝承事例】 |
風 位 | 田 原 市 | 西 尾 市 | 常 滑 市 | 知多郡南知多町 |
北 | ![]() |
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北北東 | ![]() |
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北東 | ![]() |
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東 | ![]() |
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東南東 | ![]() |
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南東 | ![]() |
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南 | ![]() |
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南西 | ![]() |
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西南西 | ![]() |
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西 | ![]() |
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北西 | ![]() |
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その他 | ![]() |
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