【ジェクトのLove Story5】
 

あれから3日後に再び真剣勝負をしたが、また俺は負けちまった。
しかも宣言通りに抱っこされて帰るはめにまでなった。
やはり、戦い慣れているやつにはなかなか勝てねぇなぁ〜。
アーロンからは、まだ惚れたと言ってもらってないけど、素直に触れさせてもらえるようになった。

今は、ほんの少し前まで普通に見ていた建物が崩壊している風景を見ている。
ザナルカンド遺跡・・・・本当に遺跡だなぁ。

「ジェクト・・。」
「あぁ〜?・・・おまえがそんな顔をする事はねぇだろうよ。」
「ジェクト、今からでもあんたは帰る道を探すべきだ。」
「俺は言ったはずだぞ。おめぇを選んだって。」

お〜真っ赤だねぇ〜。本当に素直なやつだなぁ。

「そんなことより、おめぇは何か見つけたか?」
「いや・・・。」
「俺様の感だけどよぉ〜。究極召喚をもらう所で何かわかるんじゃねぇか?」
「その時点で、間に合うだろうか?」
「間に合わせようぜ。」


***

かぁ〜〜こんな展開を持ってきやがるかよ。
最悪の展開。何も分からず、選択を迫られる現状。
ユウナレスカは言った。

「あなたが選んだ勇士をひとり、私の力で変えましょう。
 そう、あなたの究極召喚の祈り子に。」

アーロンにやらせるわけにはいかねぇ。
それだけしか考えられなかった。他の道を探すにはあまりに時間がなさすぎて。
いや・・祈り子ってやつになったら、また別の道があるかもしれねぇ。
それにかけるか。

「決めた。祈り子には俺がなる。」

そして俺は、ブラスカの為の言葉を紡ぐ。
まぁ〜半分は俺様の素直な気持ち。でもこれが理由じゃねぇ。

アーロンが叫ぶ。
そうだよ。アーロン俺の方がおめぇより思っているさ。無限の可能性ってやつをよ。
でも、立ち止まるわけにいかねぇ現状がある限り、その中でその可能性を見つけようや。
俺は絶対おめぇを守る。祈り子になっても。
そして、祈り子になってブラスカをどうにかする!

「ブラスカ、ちょっとアーロンと話があるんだけど、いいか?」
「あぁ、私は先にユウナレスカ様の所に行ってよう。」

こいつ鋭ぇからな。どこまで気づいているか・・・つぅ〜かばればれ?
ま、ありがたくアーロンとの時間を使わせて貰うぜ。

「アーロン。」
「ジェクト・・・どうしてっ!」
「いいか、時間が無いからな、ちゃんと聞けよ。」
「あぁ・・」

そんな辛そうな顔するなって。

「俺は祈り子になって、その中で可能性を探る。
 おめぇは、ブラスカの側で最後まで諦めるなよ!諦めたら俺が殴りに行くからなっ!」
「ジェクト・・。」
「あぁ、まだ最後じゃない。分かったな!」
「分かった。分かった・・・でも・・でも・・・ジェクト・・おまえは・・」
「俺は、いつでもおめぇの側にいるから大丈夫だ。だろ?」
「ジェクト・・。」

あぁ〜泣かしちゃったよ。おめぇも泣き虫だよなぁ〜。
このまんまでこいつ残したら・・・そうだ、泣き虫同士くっつけるかね。
アーロンに息子を頼む・・これがあいつの足枷になるように。
そして、人としての最後のキスを送る。

「じゃ、お互いがんばろうな。決して諦めるなよ。・・・・・愛してるぜ、アーロン。」
「あぁ、ジェクト。任せてくれ。・・・俺も・・俺も愛してる・・ジェクト。」
「やっと言ったな。次に会う時にゃ、ご褒美にいっぱいHしてやるからよ。」
「ジェクトっ!」
「はは、じゃぁな。」

そう言って手をひらひら振りながら、俺は、ユウナレスカの元に向かった。


***

・・・なんか辛気臭ぇ所だな・・・なんだよこれ?
ただ暗い闇が広がるだけの世界。まわりに何の気配もなく・・・ん?!

「ジェクトさん、こんにちわ。」
「おめぇ・・・誰だ?」
「僕はバハムートの祈り子。まさか、こんな所であなたに会えるとは思わなかったな。」
「こんなとこ?」
「うん。それにあなたがここに来る選択をするとも思わなかった。」
「祈り子になった事か?」
「そう、だって、あなたは、どんな試合でも最後まで諦めなかったよね?
 どんなに時間がなくてもあなたは最後まで闘っていた。そして勝利をもぎ取っていた。」
「・・見た事あるような言い方をするな?」
「うん。僕はあなたの試合を何度も見たよ。」
「・・・おめぇ、俺の知りてぇ事を知ってるな?」
「知りたい事?あなたのザナルカンドの事?」
「違う。いや・・それもあるが、おめぇブラスカを助ける方法を知らねぇか?
 俺はそれを知る為にここに来た。」
「あなたは・・・そうか、あなたの試合はまだ終っていないんだね。」
「当たり前だろ。俺様の試合を見た事があるなら分かるだろうに。」
「そう、そうだったね。・・・長い話になるけどいいかな?」
「時間は沢山ありそうだ。ブラスカがシンに会う前に終らせてくれればいい。」

そして、俺はブラスカさえ知らなかった沢山の事を知った。
夢のザナルカンドの事。シンを作った理由。作ったエボン・ジュの事。
そして、俺が将来シンになる事。これをブラスカに伝えるすべがなく、ブラスカを助けられない事。

「なるほどな・・・しっかし、おめぇら皆後ろ向きすぎだ。
 夢は夢でしかないのに、どうして誰もそれを実現しようとしなかったんだ?」
「あまりに力の差が大きい戦争だったから。機械を利用しなかった僕たちは滅びる道しか見えなかった。
 でも、それでも幸せだったあの頃が忘れられなくて、あの頃にみな戻りたくて・・
 エボン・ジュが夢を召喚すると言った時は、皆それを希望の光として選択してしまった。」

俺より1000年以上年上なんだよな・・でもこんな姿をしていると、ティーダを思い出す。

「馬鹿だな。泣きたい時は泣けばいいんだぞ。」

そう言って頭をなでてやる。

「僕は、あまりに長いこと祈り子やっているからね。泣き方も忘れてしまった。」
「しょうがねぇなぁ。おめぇの望みは何だ?
 俺も祈り子になっちまったけどよ。出来る事はしてやる。言ってみな。」

そう、俺が祈り子になったからって理由もなく、こいつが来たわけじゃ無ぇはず。

「ジェクトさん・・僕・・いや僕達もう疲れちゃったんだ。静かに眠りたいな。」
「分かった。元凶は、エボン・ジュだよな?その馬鹿は、どうやったら倒せる?」
「エボン・ジュは召喚獣に寄生する。そしてそのもの自体を作り替えるんだ。
 ・・・・・・誰かが究極召喚無しにシンと対峙して、シンを倒せれば。
 そして、僕ら全てを消してしまえば。エボン・ジュは行き場をなくすから。直接闘う事が出来るだろう。」
「・・・それをブラスカに伝える事は本当に出来ねぇのか?」
「出来ない。それにあなたがもうすでにここにいる。
 あなたを消す事って、ブラスカさんがあなたを召喚するって事だから。」
「そうか・・・ブラスカが死ぬのと、俺がシンになるのは動かせねぇんだな。」
「ごめんなさい。」
「おめぇが謝る事じゃねぇだろ?
 それより、俺がシンになったら、直にこの記憶もなくなっちまうのかい?」
「前のシンは、5年ぐらいもったかな?でも結局エボン・ジュに呑まれてしまった。」
「精神力の戦いってことか?」
「そうだね。あなたが、あなたであるよう、ずっと闘わなければならない。」
「分かった。」

ブラスカの死を無駄にするわけにはいかねぇ。
折角俺がここにいるんだから、なんとしてでもこの死の螺旋を断ち切るっ!

「なぁ、おめぇさ普通の人間をザナルカンドに送る事は可能か?
 それと、今の話をそいつに伝える事は出来るか?」
「やった事はないけど・・何とかしてみる。アーロンさんだよね?」
「あぁ、あいつをザナルカンドに送ってティーダを育ててもらう。」
「息子さん?」
「そうだ、10年ぐれぇしたらこっちに来させて、召喚士かガードになってもらう。」
「ティーダ君に?・・・・いいの?」
「あぁ、いいさ。あいつに殺されるなら本望だ。それにアーロンもいるしな。
 ただ、ティーダには・・・・いや・・・こっちを知ってもらいてぇんだ・・・。」
「でも・・でも、最後の時には僕たちも居なくなってしまうんだよ。
 そしたら、ティーダ君もあなたも・・・・・。」
「気にするな。どちらにせよ俺達は夢なんだからな。目ぇ覚めたら消えるもんだ。」
「・・・ジェクトさん・・・・ありがとう・・・。」
「おう、いい夢にしてやるからな。さっきの事頑張ってくれや。」
「頑張るよ。絶対になんとかする。
 でもこの事は、直接アーロンさんに話して。どうせ、連れていくのはシンしか手段が無いから。」
「わかった。」


***

そして、俺は召喚された。
これが俺が試合の後半戦の始まり。目の前のシンを倒し。エボン・ジュを受け入れる。
ブラスカすまねぇ。おめぇが倒れてくのを俺はただ見つめるだけしか出来なかった。
アーロンすまねぇ。俺はそれをどうする事も出来なかった。
知らねぇおめぇは、もっと何も出来なかったよな。無理な事を言っちまった。
でもよ、ブラスカの死を決して無駄にはしねぇ。祈り子、早くアーロンを連れて来いっ!

「よぉ。」
「ジェクトっ?!」
「おめぇ、何やってんだよ。」
「ここは異界か?」
「違ぇよ。ここはシンの中だ。俺はシンになった。知ってるんだろ?」
「ジェクト・・。」

アーロンが辛そうに俯く。
何おめぇってば!おめぇのせいじゃねぇだろ?

「アーロン、祈り子から聞いたぞ。どうしてユウナレスカに戦いを挑んだ?」
「俺は、許せなかったんだ。何も出来ずブラスカ様を死なせてしまった事も、
 あんたが何かに変わっていくのに気づいたのに何も出来なかった事も
 俺は・・・何も、本当に何も出来なかった。・・・これでは、あまりに・・・・。」

泣くなよ・・アーロン。本当におめぇって泣き虫。

「ありがとよ。俺は祈り子になった時点ですべてバハムートの祈り子から聞いてたんだ。俺の未来もな。
 でもそれをおめぇに伝える術がなくてな、すまねぇ。おめぇを殺しちまった。
 ・・ただ・・その代わり、この意味のねぇ繰り返し、祈り子は死の螺旋と言っていたな。
 それを切る方法をおめぇに伝える事が出来る。
 生きているやつをザナルカンドに連れて行くのは難しかったらしくてよ。
 おめぇが死んだおかげで、俺はこうしておめぇをザナルカンドに連れて行ける。」
「ザナルカンドへ?」

俺は、アーロンに祈り子と出した死の螺旋を断ち切る方法を伝えた。
ただ、俺やティーダが消える事は伏せて。

「分かった。でも・・その間あんたは・・・・。」
「俺は大丈夫さ。俺がエボン・ジュなんかに負けるわけねぇだろ?
 俺はおめぇとティーダを待つ。10年なんてあっという間だ。
 それより、おめぇの方こそ大変だぞ。ティーダを育てて、俺の所まで連れてこなきゃならねぇ。」
「約束しただろ。俺はティーダを守ると。そのついでに連れてくるさ。
 ただ、本当に連れて来ていいのか?」
「あぁ、あいつにもこのスピラを知って欲しい。そして、俺と同じ結論を出してもらいてぇな。
 ・・・・無理かな?」
「あんたらしくない。あんたの息子だろ?大丈夫さ。」
「ただな、10年ほったらかした上に、無理やりこっちに連れて来て、しかも俺を殺してくれだろ?
 あまりに我が侭過ぎるよなぁ。(それにあいつまで消してしまう。)目一杯嫌われそうだ。」
「もう嫌われているんだろ?今更だ。」
「はは、そうだったな。わりぃアーロン、あいつを強くしてやってくれ。」
「任せておけ。」
「じゃ、この間の約束。Hでもしようや。終ったらザナルカンドに連れていくからよ。」
「ジェクトっ!」
「俺の事愛してるんだろ?それに当分会えねぇんだからよ。その分はしておかないとな。」

見事に真っ赤になるなぁ〜。

「ほら、こいや。」

無理やりアーロンの手をとって抱きしめる。

「こっちの目はまったくだめなのか?俺、おめぇの目俺大好きだったのによ。」

そう言いながら舌で傷をたどる。
あまりに痛々しくて、でもアーロンの想いを形作ったような傷痕をそのままにしておけなくて、
ただ、ただ、傷をたどっていた。このアーロンを忘れないように。

「ま、どんなおめぇでも、おめぇである限り愛しているけどよ。」
「ジェクト・・・俺は絶対に忘れない。そして絶対あんたの元に戻ってくる。」
「あぁ、俺も10年間おめぇを想って一人Hでもやってるさ。」
「好きにしろっ!」
「あ、ひでぇ〜見捨てただろ?今。」
「しらんっ!」

俺は笑いながら、アーロンにキスをする。
これからお互いに長い戦いになる。その前のこの一時をただ、お互いの為だけに、全てを忘れて。


そして、俺はアーロンをザナルカンドに送った。
 

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これが私的FFXの解釈です。
すべての始まりは、無限の可能性をもったジェクトさんから。
彼がひいた線路を上をティーダ達は歩みます。
そのティーダ達を導くのはアーロン。

どうでしょうか?
予定としては、次でこの話は・・・終る・・・と思・・います・・・(^-^;)